古い結晶と無限の欲望が集い交わる地。 死せる王の下、聖地よりかの翼が蘇る。 死者たちが踊り、なかつ大地の法の塔はむなしく焼け落ち、 それを先駆けにあまたの海を守る法の船も砕け落ちる 魔法少女リリカルなのは The Ending Chronicle 第1話「終わりの始まり」 その日は時空管理局地上本部の公開意見陳述会が行われることになっていた。 そのため、地上本部は中にも外にも数多くの魔導師が警備に当たっていた。 もちろんその中には機動六課の面々も含まれていた。 「いよいよこの日が来たわけやけど・・・。まさかこういう事態で迎えることになるとは思いもせえへんかったなぁ」 と話すのは機動六課部隊長八神はやてである。彼女はなのは、フェイトと共に内部の警備に当たっていた。ちなみに残りの六課前線メンバーは外の警備である。 彼女らが話すのは聖王教会の騎士カリム・グラシアの予言のことである。なのは、フェイトは少し前にある予言のことを聞いた。カリムの予言に数年前から記された内容、それは「地上本部の壊滅」。そしてそれを未然に防ぐために六課が設立されたということを。 そして、予言の日は地上本部の陳述会の日であることがわかり、その日にスカリエッティ一味によるテロ行為が予想され、 「それをなんとか乗り切ってレリック事件も解決に向かうからがんばろうとみんなで気合を入れたのが5日前。」 「けど3日前に突然事態が変わった、と。ホントにびっくりしたよ。」 ―――話は3日前にさかのぼる。 その日は陳述会に備えながらも、六課メンバーは普段通りの1日を過ごしていた。 突然の思わぬ来訪者が来るとも知らずに。 フェイトはその日は仕事の都合で少し遅れて訓練に合流することになっていた。準備を済ませて、なのは達のところへ行こうと隊舎を出たところで 「だ、大丈夫ですか!?」 フェイトは人が倒れているのに気づき、急いで救助に向かった。しかし、フェイトは倒れている人物を見ると自身の目を一瞬疑った。 なぜならその人物とはスカリエッティ一味のナンバーズの1人、No.4クアットロであったからである。少し前に市街地で派手に一戦やった相手であったためフェイトはよく覚えていた。 だが、彼女は見るに耐えない無残な状態であった。左腕はなくなってる、腹に穴が開いている、足は変な方向に曲がり、体のあちこちで内部の骨格がむき出しになっている。今自分がどこにいるかも、目の前にいるのがあのフェイトであることも気づいていない様子で、もう見るからに瀕死であった。フェイトはそんな状態の彼女を見て 「と、とにかく医療室に運ぶから!」 と医療室に連れて行こうとした。しかし、クアットロは 「い、い・・・。ど、うせ、も、う、もた、ない・・・。」 もはやまともな声も出せない状況でそうフェイトに告げ、そして彼女はなぜ自分がこういう事になっているのかを最後の力でフェイトに語り始めた。 フェイトはなんとか助けようとするが、クアットロはそれを拒否し、ただ語るだけである。せめて誰かに伝えたかったらしい。フェイトはそれが彼女の最後の言葉になることをなんとなく理解し、一言も逃さないように必死で聞いた。 そして 「・・・」 全てを語った後クアットロは力尽きた。 「ごめんね・・・。ありがとう・・・。」 フェイトは助けてあげられなかったことへの謝罪の言葉と自分に全てを語ってくれたことへの感謝の気持ちを述べ、彼女の死を見届けた。 「でも、これはいったいどういうことなの・・・?」 フェイトはクアットロの話を理解するのにしばらくかかった。 その後、フェイトは六課メンバーを全員招集し、クアットロから語られたことをそのまま話した。 「でも、それはホントのことなんですか?」 と真っ先に質問したのはスバル・ナカジマである。彼女は信じられないという顔をしていた。最もそれは六課全員に共通していることであったが。 なにせフェイトがクアットロから聞いた話とは 「スカリエッティ一味が壊滅した・・・?」 ―――その前日、つまり陳述会4日前のことになる。 クアットロによるとそれは本当に突然のことだったらしい。地上本部襲撃に備えて力を蓄え、ナンバーズの戦力も整い、ガジェットも準備万端。あとは最終調整を済ませればいつでも襲撃できる状態になり、全員がその日を心待ちにしていた。 だが、その時アジトに突然アンノウン接近の報が入った。トーレとノーヴェが様子を見に出て行ったが、まもなく2人の反応が消失、急ぎ警戒レベルを上げたナンバーズたちとスカリエッティだった。しかし、クアットロが言うには「気づ、い、たと、きには、み、んな、や、ら、れて、た」と何者かにあっという間に全滅させられたらしい。 自分はかろうじて生きていたセインと共になんとか脱出したものの、まもなくセインも死亡。最後の力で転送魔法を使い、跳んだ先が機動六課であったという。 フェイトの話の後、六課はクアットロから得たデータからスカリエッティのアジトの場所を割り出し、すぐ向かった。そこで六課メンバーが見たのはクアットロの話通りの光景であった。 捜索でわかったことはまずジェイル・スカリエッティの死亡、ナンバーズの全滅、開発途中であった戦闘機人の生体ポッドも破壊され、ガジェットもなくなっていた。 丸1日にわたる捜査の末の結論は「スカリエッティ一味は完全に壊滅した」であった。 話は陳述会当日に戻る。 「いったい誰が何のためにそうしたかはわからないけど、スカリエッティによるテロの可能性はゼロになった、と。」 「でもどっちにしろ今日の警備はがんばらないとね。」 「そうだね。何があるかわからないから気合入れないと。スカリエッティ一味を壊滅させた犯人も不明だし。みんなもいい?」 『はい!!』 「みんな大丈夫そうやね。」 だが、この時まだ誰も気づいてなかった。 嵐はすぐそこまで来ているということに。 地上本部近傍の上空、誰にも気づかれず、だが、確かにある存在がその時を待っていた。 「準備はいいか?」 「いつでも。指示さえあればすぐにでも。」 「結構。ならば始めよう。・・・待っていてくれ。必ずお前を・・・」 「・・・行きますよ。―――発動!!」 その瞬間、地上本部付近に何かが響いた。 「な、何今の?」 「なんやろ、何か聞こえた気がするけど。」 その時なのは達3人に異変が発生した。それは 「え、リミッターが解除された!?」 突如なのは達のリミッターが解除されたのである。 それも 「完全解除!?私もSSランクまで解除ってどないなってるん!?私、クロノ君にも解除なんて申請してへんで!?」 「ロングアーチ、応答して!」 「はい、こちらロングアーチ、シャーリーです。状況ですけど、なのはさん達を含めてリミッターがかかってる人全員のリミッターが突然解除されたんです。誰も許可出していないのに勝手に!」 「私たち以外もみんな!?」 「はい。それと、現在地上本部付近に何か結界のようなものが確認されています。おそらくそれが原因ではないかと思います。」 シャーリーがそう報告した、まさにその時、地上本部全体にアラーム音が響きわたった。 同時に確認されたのは大多数のガジェットドローンであった。 すぐさま迎撃に向かう魔導師たち。だが、異変はまだ続く。 ある男性魔導師はガジェットに向けて砲撃魔法を放った。その男性は実力は中堅程度。しかし、次の瞬間、ありえないほどの大出力砲撃が放たれ、デバイスがそれに耐え切れず砕け散った。それはなのはのSLBを遥かに上回る威力の一撃であった。撃った本人も反動に耐え切れずかなり吹っ飛ばされてしまった。ガジェット数体が跡形もなく破壊されたが、男性は信じられないと言った顔しかできなかった。 「一体どうなってるの、なんであんな大威力が!?」 「なのはさん、フェイトさん!」 外からスバルフォワード部隊とシグナム、ヴィータ、ギンガが隊長たちのデバイスを持って合流した。だが、 「キャロ、・・・何でフリードがその姿を?」 フリードは真の姿をとっていた。 「わからないんです。さっき何か聞こえたと思ったら突然こうなっちゃって。」 「う〜ん、いったい何がどうなってるかわからないけど、みんなとりあえずデバイスを起動して!私たちも迎撃に出るよ!」 「わたしはこっちで指揮を執るからみんながんばってな!」 「はい!」 「セットアップ!!」 はやて以外の六課メンバーは各々のデバイスを起動した。しかし、 「レイジングハートどうしたの!?」 「バ、バルディッシュ?」 「レヴァンティン?」 「アイゼンもだ!なんかデバイスもリミッターが解除されてるみたいだぞ!?」 ヴィータの言うとおりレイジングハートはエクシードモード、バルディッシュもサードフォームでいきなり起動し、レヴァンティンもリミッターが完全解除され、グラーフアイゼンに至ってはギガントフォーム(巨大版)である。 「キャリバーもストラーダも一緒です。こっちも解除されてます。」 スバルたちも同様のことを訴えた。 「こちらロングアーチ、理由は不明ですがデバイスたちもこちらの許可なしにリミッターが完全解除されています!」 わけがわからず困惑する六課メンバー達。と、ここで 『私から一つよろしいでしょうか?』 「何?レイジングハート。」 『先ほど結界が張られた時でしょうか、あの時私には声が聞こえました。』 「声?」 「はい、内容は確か『攻撃力は無限大になる』だったと思います。」 『私も同意見です。』とバルディッシュ。 その時爆音が響き、音源の方を見ると警備を突破したガジェットの攻撃により、地上本部外周がどんどん破壊されていた。ガジェットは出せないはずの威力の攻撃を放ってきている。そのことから得られた結論は、 「この結界内ではあらゆる攻撃の威力が無限大になって、そして出力を制御されていて余力を秘めているものはその全てを引き出されるってこと?」 『そうであると思います。だから私たちもマスターたちもフリードもリミッターが解除されたのでしょう。』 「己の全てを強制的に引き出されたというわけか。誰かは知らんが見事な作戦だな。下手に撃てば本部まで破壊してしまう・・・!!」 「でも早くガジェットかこの結界を何とかしないと大変なことになる・・・!」 だが、なのは達の焦りを尻目にガジェットはどんどん接近してくる。 「各自迎撃!みんな気をつけて!下手に戦うとデバイスが壊れてまうやろうから!特になのはちゃんとティアナ!ええか?」 「うん、アクセルシューター中心で戦うよ!」 「私もなんとかやってみます!」 六課メンバーもガジェット迎撃に参加する。 時を同じくして、地上本部から少し離れた上空では 「そろそろ頃合いかと思います。」 「そのようだな。では俺は中に入らせてもらうことにする。シェリル、『ストライクフォース』の維持を頼むぞ。」 「はい、ジェネシス様もお気をつけください。」 「誰に言っている。」 そう言うとジェネシスは片翼の翼を広げ地上本部へ向けて飛び去っていった。 その場にはシェリルと呼ばれた戦闘機人だけが残された。 その後、混乱する地上本部内部に侵入者ありの連絡が届けられた。内部で下手に戦えば本部に深刻なダメージを与えてしまう、そのためらいにより、侵入者の侵攻をなす術もなく許してしまっているという報告が届けられた。 「中が何かやばい事になっとる!スバル!ギンガ!中に入って侵入者の追跡をお願い!」 「あ、はい!行くよ、スバル!」 「OK、行くよ、相棒!」 『了解!』 だが、この時まだ誰も気づいていなかった。 ティアナがいつの間にか現場からいなくなっていたことに。 続く あとがき どーも。何か長編に挑みだしたアルです。本編16話以降のオリジナルの話を作ってみました。気づいた方もおられるかもしれませんが「終わりのクロニクル」というラノベで使用されたものを使っております。この先も終わクロで使われた概念をこっちに応用してみようかなと思います。結構シリアス物の予定です。 ただ僕の文章下手くそですいません・・・。 |