シグナムは窮地に追い込まれていた。
『ストライクフォース』という全ての攻撃力を最大にするこの結界内での戦い。
腕自体は自分の方が上で、何度もシェリルの武器の破壊に成功したが、その度に再生されてしまいきりがない。さすがのシグナムもレヴァンティンも限界を迎えていた。

「(これ以上長引くとマズイ・・・。)」

だが、戦いは予想だにしない結末を迎えることになった。


魔法少女リリカルなのは The Ending Chronicle 第3話


「お前は一体誰だ!?」

シグナムの叫びが響き渡った。今シグナムの前にいるのは交戦していたシェリルではない。彼女は突如乱入してきた何者かの奇襲でやられていた。それをやったのは大柄な男だった。

「俺はゼスト。」
「何故私を助けた?」
「助けたわけではない。あいつを討つ理由があっただけのことだ。」
「理由?」
「スカリエッティ一味をやったのはあいつらの一味だ。俺自身はスカリエッティはあまり好きではなかったが、ルーテシアはよくスカリエッティ達に世話になっていた。だから仇だけはとらせてもらった。」
「なるほど。しかし、スカリエッティ一味をやったのはあいつらと言ったな。奴らについて知っていることを話してもらおうか。」
「残念ながら何も知らない。それよりいいのか?お前たちが何者かの襲撃によって混乱している間に俺も地上本部に入らせてもらったのだが。」
「何!?」

ゼストは語る。元々、スカリエッティ一味が襲撃し、混乱したところで自分も中に潜入し、目的を達する予定で、地上本部近辺に潜んでいた。しかし、一味壊滅により潜入ができなくなったと判断し、あきらめて帰ろうとした。だが、突如地上本部が何者かの襲撃にあった。そして混乱していた。ゼストはこの機を逃す手はないと判断し、潜入したのだという。
そして目的を達成して、帰る際にシグナムの戦いを発見して、奇襲を敢行したのだという。

「何が・・・目的だったんだ?」
「レジアス・ゲイズに関係がある、とだけ言っておこうか。」
「何故わざわざそれを話した?話せば私がどうするかは予想できるだろう。」
「戦士が戦いを求めてはいけないか?少し暴れたい気分でな。」
「なるほど。ならばあなたを逮捕させていただく!」
「やってみろ。管理局の騎士よ!」

その直後、シグナムとゼストの戦いが開始された。



「で、結局引き分けっちゅーことでええんやね?」
「はい、申し訳ありません。捕らえることができず逃げられてしまいました。」
「まあ、しゃーないって。その前の戦いでシグナムもレヴァンティンもボロボロになっとったんやし。」
はやてとシグナムがそう話しているここは機動六課内である。
地上本部の戦いが終わってすでに丸1日たっていた。被害は相当なもので元通りになるまでかなりかかることが容易に予想できた。その1番の原因がレジアス・ゲイズ中将にある。何があったのかは不明だがあれ以来目を覚まさないようだ。非公式だが精神的な理由らしい。ゼストとの間に何かがあったらしいことは一部の人間だけの秘密となっていた。

機動六課メンバーも忙しく働いていた。1人を除いてだが。ティアナだけは機動六課の医療室で療養中だ。彼女が本部破壊活動を行っていた、いや、やらされていたことは幸いにもスバル、ギンガなど六課の人間しか知らない。監視映像が全てつぶされていたためばれなかったのだ。


だが、機動六課に更にショッキングなニュースが入るのはすぐのことだった。


次の日、六課メンバーは休憩のため一度機動六課隊舎に帰されていた。ティアナもそのころには回復してみんなと合流できていた。もう誰にも操れていないのは明らかだった。

色々報告などを兼ねてみんなで食堂で食事中にある人物から連絡が入った。それは
「クロノ君?」
クロノ・ハラオウンからであった。
「はやて、フェイト、なのは、久しぶりだな。ようやく連絡できる状態になったようだ。」
「どうかしたんか?」
「そっちのことも聞いてる。だが本局も大変なことになったんだ。」
「大変なこと?」
「ああ、実は・・・」

クロノの話が終わるとすぐにはやては許可をもらってから、なのは、シグナム、スバル、ティアナを伴って時空管理局本局に向かって出発していった。


場面は時空管理局本局に変わる。
ここは本局内医療施設。その中のある部屋に1人の青年が入院していた。無限書庫司書長ユーノ・スクライアである。
今部屋の中にいるのはユーノの他にはなのはだけであった。なのはが来たのはクロノから本局襲撃によりユーノが大怪我したと聞いたからである。今はやて達4人はユーノの病室の外でクロノ、ヴェロッサと共に少しなのはを待っている。

「ユーノ君、大丈夫?」
そう不安げに語りかけるなのはに対してユーノは
「何とか大丈夫。外傷は左腕の骨折だけだったから・・・。」
「そう・・・。でも命に別状がなくて良かったよ。私、ユーノ君が大怪我したってクロノ君に聞いて、すごい心配だったから・・・。本当に良かった・・・。」
「心配かけてゴメンね、なのは。」

なのはは涙を目に浮かべていた。よほどユーノのことが心配だったのだろう。

「一体何があったの、クロノ君?」
「地上本部とほぼ同時刻に本局にも襲撃があったことはさっき話したとおりだ。だが、侵入者は妙な能力を用いてきて局員がどんどん倒されていった。そして、」

「そして侵入者の目的は無限書庫だったんだ。」
「無限書庫?」
「うん。あっという間にみんなやられて、そして僕もやられた。幸いにも死者は出なかったけど。」
「そうだったの・・・。」
「・・・情けないよね。」
「え?」
「これでも何かあったらなのは達の力になれるようにって思って空いてる時間によくトレーニングしてたんだ。苦手な攻撃魔法も練習してたんだ。でも結局何もできなかった。」
「そんなこと・・・。」
「僕、情けないね。結局、弱いままで、なのは達に心配かけて、何もできなくて、」
「・・・。」
「弱いね、僕は・・・。」
「ユーノ君・・・。」

ユーノは泣いていた。
なのはは何も言えなかった。自分が今何を言っても無駄だろう。だからユーノの右手をそっと握ってあげた。
ユーノは涙を流し、なのははただ黙ってユーノの手を握ってあげている。2人はしばらくそのままでいた。


「そういうわけだ。本当なら昨日中に連絡を取りたかったんだが通じなくてな。彼が言うには本局の襲撃者は地上本部の襲撃者とも関係があるようなんだ。だから君たちを呼んで、会議をと思ってな。」
ユーノと親しい関係にあるなのは、結界を展開していた戦闘機人と戦ったシグナム、内部で何者かに操られたティアナ、そのティアナと交戦したスバル、部隊長であるはやてが六課とボロボロの地上本部を代表して呼ばれたのだった。
「ところで彼って?」
「そこにいる少年のことだ。ユーノを助けてくれたのが彼なんだ。」
「はじめまして。僕は・・・」

その後、ユーノの様子が落ち着いたので、病室でその日あった事がユーノから話されていた。


その日ユーノはいつも通り無限書庫内で忙しい時を過ごしていた。しかし、突然本局全体にアラートが鳴り響いた。ひとまずクロノに連絡を取ろうとしたが通じずどうしたものかと考えていると無限書庫内に侵入者が現れた。

「こんにちは。俺はルッツ。でも覚えてもらったところでさようなら。」

その言葉を聞くやいなや、数名の司書が侵入者に向かっていった。無限書庫にはユーノが結界魔導師であることからそこそこの戦闘力を持つ司書が配属されていた。ユーノの能力や価値を考えれば当然のことであった。しかし、彼らは侵入者の妙な能力であっという間に倒されてしまった。

「ある人はスバルさんと似たようなタイプの人で、ある人はなのはと同タイプの砲撃魔導師だった。だけど・・・」
「例の能力か。」
「うん。」

スバルタイプの司書は真っ先に殴りかかった。しかし、攻撃されたのはなぜか司書の方だった。予想外の攻撃だったせいか、一撃で倒されてしまった。
なのはタイプの司書は砲撃を放った(ちなみに本はユーノの結界で守られている)。しかし、侵入者がニヤリと笑ったその瞬間、


「入れ替えられたんだ。」
「入れ替え・・・って何を?」
「互いの立場だよ。司書とルッツの位置が真逆になったんだ。だから司書は自分で放った砲撃を自分でくらう羽目になった。」
「望めば互いの場所を入れ替えることができるっていう能力?」
「ちょっと違う。立場そのものが真逆になるんだ。最初の司書も場所が変わっただけならやられはしなかった。『攻撃する司書』と『攻撃される敵』という立場が真逆になって、『攻撃される司書』と『攻撃する敵』になったんだ。だからやられた。そして僕もそれを利用してやられたんだ。」


ユーノは司書たちがやられたのを見て相手の能力を大体理解した。迂闊に攻撃すれば自分もやられるのは明白だった。しかも相手は常時強力なシールドを展開している。少し前になのは達が相手にしていたISという能力のようだった。練習中の自分の力ではそれは破れない。だから攻撃はせずに防御に徹して何とか時間を稼ごうとした。
そう決めたのとほぼ同時に、ルッツがこちらに向かってきた。攻撃方法は左腕の正拳突き。だからユーノは全力でシールドを張った。そのままなら防げる一撃だった。しかし、

――世界は一瞬で真逆になる

そう聞こえた瞬間、ユーノは左腕の正拳突きを放っていた。強力なシールドを張っているルッツに対して。ユーノは気づいて拳を止めようとした。しかし、全力で放たれていたそれは全く止まらず、そのままの勢いを持って、相手のシールドに激突した。そしてユーノの左腕が

「――――!!!」

ユーノの声にならない叫びと共に砕けた。

通常、人は自分の体が壊れないように無意識の内に制限をかけている。自分は100出しているつもりでも肉体的には70しか出ないようになっている。しかし、ルッツは戦闘機人であったためか100の力で放つことができ、そしてそれがそのまま真逆になったため、ユーノは人の肉体の限界を超えた一撃を放ってしまい、更にそれがユーノでは破れないシールドに当たってしまったため、そのようになってしまった。

「立場を真逆にする能力名は『ワンダーランド』。自らが望めば自分に対する行動をとった者と自分の立場を真逆にする能力らしいんだ。それは攻撃だけじゃない。僕は彼に対する防御行動を取って、彼は僕に攻撃を仕掛けた。それが真逆になって僕が攻撃する立場になってしまった。ギリギリで入れ替えられたからどうしようもなかった。本人に対する行動であれば何でも真逆にできるらしいんだ。」
「それはまた厄介な能力やね。」
「そうだね。で、ユーノ君、それからどうなったの?」
「左腕が砕けた後、もう一撃くらっちゃって僕は気を失ってしまったんだ。だから僕の話はここで終わりなんだ。」
「ここからは僕がお話します。でもその前に改めて自己紹介します。僕はアレク・ヴァレンタイン。ある理由によりここが襲撃されるのが予想できたのでここに来ました。残念ながら間に合わなかったようですが。」
「予想して?」
「はい。そこら辺の事情は後で話します。まずはユーノさんの話の続きからいきましょう。ユーノさんが気を失ったのとほぼ同時に僕は無限書庫内に入りました。それからルッツの攻撃をしのぎながらユーノさんたちを外に出して救助しました。ユーノさん達は助けることができました。でも、ルッツを倒すことはできず、無限書庫の封印を許してしまい、彼にも逃げられてしまいました。」
「無限書庫の封印?」
「ああ、昨日騒動が終わってから行ってみたが入ることはできなかった。入口がそいつにより封印されてしまったようだ。」
「破ることはできないの?」
「なのはのSLB級の攻撃なら破れるだろう。だが、代わりに書庫内の資料も間違いなくぶっ飛ぶだろうからそれはできない。」
「僕も見てみましたがあの封印は現代とは全く異なる封印です。今の時空管理局では解除できません。物理的な手段で破るかルッツに解除させるしかありません。」
「ていうことはそのルッツっていう戦闘機人の目的は・・・」
「無限書庫の封印だったというわけか。」
「でも何でわざわざそんな危険をおかしてまで封印したかったんでしょうか?いくら『ワンダーランド』があってもリスクが大きいと思うのですが。」
「その辺の事情はアレクが知ってそうだな。」
「はい、知ってます。今からそれをお話しします。」
「よろしく頼む。」
「はい。でもページがないのでまた次回♪」
「こんなシリアスな話でボケるな!ここでそんな微妙なボケはいらんねん!!関西人なめるな!!!」
「は、はやてちゃん、落ち着いて・・・。」
「やれやれ・・・。」

続く


あとがき

久しぶりに3話を書きました。オリキャラ共はまとめて次回に詳しく。司書長は話の都合上こういう役になってしまいましたが、こんなことでは終わりません。この後色々オイシイ思いをする予定です。そういやせっかくついて来たのにスバルがしゃべってないな・・・。
ではまた。こんな僕の文を読んでいただいてマジで感謝です。





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