君がくれた勇気は、億千万、億千万
 過ぎ去りし季節は、ドラマティック



『BEYOND ALL SPACE & TIME:Side.C 中編』



 10年後のエリオがやって来た事実確認も一段落が付いて、はやては仕事が増えたと執務室へ戻って行った。
 その時ついでに、青年エリオは自分が所持する自動二輪免許証の取得、更新日時、その他諸々の偽造をちゃっかり頼むあたり、妙な要領の良さにヴィータとユーノが呆れたのは別の話……。
 その報復のつもりなのだろうか、エリオの管理はキャロに一任と言う事で決着が付いた。そして、2人ともども強制的に休暇と言う事にされたのだ。
「それにしても……、本当に懐かしい」
「あの、エリオさん?」
 隊舎の屋上から景色を見て呟くエリオにキャロが声をかける。
「エリオでいいよ……って無理か。この頃はまだ、そこまでの仲じゃなかったね」
 クスリと笑いながらエリオはキャロを真っ直ぐに見て返す。
「エリオさん……未来ってどんな感じですか?」
「そうだね……あんまり多くのことは話せないけど、一つだけ言えるのは、どんな未来だろうと『理想』を叶える事はできるけど、『奇跡』を起こす事は出来ないってことさ。
 特に『闇の書事件』見たいなことはまず起こせない。あれは女好きで好色なカミサマのえこ贔屓、もっと簡単に言えば『ご都合主義』ってヤツだよ」
 しれっと言い放ったエリオにキャロは少し驚く。きっとこのエリオは自分がまだ知らない10年の時を、幾多の修羅場、死線、あるいは挫折を乗り越えて来たのだ。
 立ち振る舞いや、表情には何処か深い影のような雰囲気を感じる……
「そんな顔するなよ。別に地獄みたいな世界になってるわけじゃないんだ。
 人間って言うのはいつまでも子供のままじゃいられない、いつか大人になる日が来るんだ。大人になって得る物もあれば、失う物も、忘れたい事もいっぱい出てくる。ただ、それだけの話だよ」
 キャロはちくりと何かが刺さったような気分だった。
 現在(いま)と未来を繋ぐ一本の糸、その間に何が待ち受けているのか? それを知ってしまう事は許されない。
 キャロにとって未来と言うのは希望の塊だと思っていた。そう考えるようになったのは彼女の過去が影響している。
 強すぎる力を持って生まれてしまった故に一族を追われ、特異な体を珍種動物を見るかのごとく研究の材料にされた。あの時は、世界の全てがキャロにとっては恐怖そのものだった事は今でも記憶に刻み込まれている。
 そうして、ようやく見つける事が出来た居場所がここにある。そして、だからこそこの居場所を、友人を失いたくない。
 もしも、エリオをこんな風に変えてしまう未来だとしたら、眼を背けてしまいたかった……
「キャロ、ひょっとして不安になってる?」
 エリオの問いに無言でキャロはうなずいた」
「だろうね。俺もそうだった」
 キャロは眼の色を変えてエリオを見る。
「10年前、つまり今まさに昔の俺は未来へ飛ばされてる。そして、今から10年後の君に会ったよ。
 『人生』ってタイトルがついた連ドラの十話以上先を見させられた気分でさ、自分の未来に何が起きるのかを考えれば考えるほど恐くなって行くんだ。だけど、未来の君が言ってくれた」

『ありのままを受け止めてまっすぐに見据えれば、どんな未来にだって希望が見えるんだよ』

「ってね。だから未来は恐れることじゃない。いずれ見据える事になる景色だ。それがどんな風に見えるかは、気持ちの持ちようでいくらでも変わってくる。ただそれだけだよ」
 エリオはまた微笑を浮かべながらキャロの頭を撫でる。
 不思議だ。とキャロは思う。さっきまでの不安が洗い流されるように消えていく。
「お昼食べようか?」
「はいっ!」
 2人は屋上を後にして食堂へと向かう。そして始まる騒動その1……

「ねー、ティア〜。お昼ご飯食べに行こー」
「仕方無いわね。付き合ったげるけど、あんたの奢りね」
 聞くや否や、スバルは思いっきり不満の叫びを上げた。
「えええーーーーッ!!?」
「冗談よ」
 そんなやり取りを交わすうちに食堂の入り口へ差し掛かると、聞きなれない話し声が耳に届いた。
「やっぱ、肉あんまり食べないんだ」
「はい、自然保護隊にいた頃から菜食中心でしたから」
「そうだったな。俺は逆にもっと野菜食えって言われてたっけ」
 片方はいつも顔を合わせている同僚だと解るが、もう一人聞きなれないテノールの男声。誰かの客人だろうか?
「ティア、外来の予定ってあったっけ?」
「さあ……」
 中に入ると、キャロと一緒にどこかで見たような青年が同じテーブルで食事をしているのが見えた。
 自分たちも各々の分を注文してキャロのテーブルへと向かう。
「やっほー、キャロちゃん♪ ご一緒してもいい?」
「あ、スバルさん。ティアナさんも、どうぞ……ティアナさん?」
 キャロの声など耳に入ってないと言わんばかりに、ティアナの視線はエリオの方に釘付けだった。
 心なしか、微妙に頬は赤く染まり眼の焦点が微妙に合ってない……。
「あ、あのっ! ……わたし、ティアナ・ランスターって言います。も、もしよろしければ、お名前を教えていただけないでしょうかっ!」
 しばしの間、食堂が静寂に包まれた……。
「ティアナさん。俺、エリオなんですけど……」
「へっ?」
 眼が点になったティアナにエリオとキャロは事情を説明すると彼女は……

「嘘だッッ!!!」

 なんか物凄い剣幕を放って凄まれる。
「いえ、だから本当なんですってば……ってなんでナタ持ってるんですか!?」

「あいあむごーーーーーっどっ!

 ひっさぁつ! ゴッドサンダァーーーーーッッ!!!!」

「なんだよ! そのネーミングはっ!?」
 いろんな意味で発狂してテンパっていた……それほど一目ぼれしたのがエリオと言う事実が衝撃的だったようだ。
 ティアナはしばらくの間ナタを片手に大人エリオを追い掛け回していた。

「変なとこ見せちゃったけど、とりあえずは慣れたわ」
 ティアナな落ち着いた様子で優雅にハーブティーをすすっている。血まみれで倒れたエリオを背にして……。
「どんなに綺麗な花が咲いても、人はまた吹き飛ばす……」
「今度は股間に鉄拳くれてあげようか?」
「あんたは一体なんなんだーーーーっ! ぐはぁっ!」
 傷がふさがらないまま叫んでしまい、派手に吐血するエリオをティアナは冷ややかに見下していた。
「しっかし、あのがきんちょが十年経ったらここまでかっこよくなっちゃうのか。今のうちにマークしとこうかな」
 その一言を聞いて、キャロはティアナを不安そうな眼で見つめてくる。
「冗談よ♪ 取ったりしないって、流石に年下は趣味じゃないから」
「ティアにはわたしがいるんだもんね♪」
「うっさい! あたしにレズの性癖は無いのよ! どいつもこいつも揃いも揃ってレズ扱いしやがって気色悪い!
 一部のキショイ男共ってのは、レズに幻想持たなきゃ気が済まないんでしょうね! 蜂の巣にしてやりたいわ!」
 スバルの一言にブチキレて、ある意味言ってはならない事をティアナは思いっきり叫び出した。
「でも、確かにこの職場って男の人が少ないですね……」
「キャラ萌えでグッズとか作って売ろうって腹よ。で、変態ヤローが○○○ーする為にフィギュア買ったりするわけ」
 彼女は最早恐れを知らない……
「ティア、やけに詳しいね」
「士官学校にいたじゃない。そう言うネタが大好きな女!」
「あー、いたよね。カッコイイ男の子同士がホモに走る話が好きな娘!」
「男の人も女の人も、やってる事って変わりませんね……」
 一番年下なハズのキャロが、三人の中で最も冷静なツッコミを入れていた……
「俺たちがここでこうやっている事を、産業として金儲けの手段にしてるヤツらがいるのさ。下手したら、なのはさんよりよっぽどバケモノかも知れないって事。俺たちは結局、何者かに踊らされているマリオネットなんだよ」
「あ、大人エリオが復活した」
「もうちょい、痛めつけとけばよかったわね」
 そんな風に皆で談笑していたその時、誰もが予想外の事態が起こった。
「へ〜、誰がバケモノだって? もう一度聞きたいなぁ〜♪」
 全てが凍りついた……。
「ねぇ、怒らないからもう一回聞かせてくれない?」
 そこには、前科百犯の次元犯罪者は愚か、魔界の住人ですら恐れ慄くと言われた白い悪魔こと高町なのは一等空尉の姿があった。天使のような悪魔の笑顔と声に、誰一人として会話を成立させられる者はいない……
「な、なのはさん、いつ戻ってきたんですか?」
「ついさっきだよ♪ みんなの声が聞こえたから来て見たんだけど、お邪魔だったかな?」
「なのはさん。言ってたのはエリオだけですよ」
 ティアナは大人エリオを生贄に捧げて逃げる魂胆のようだったのだが……
「なに勘違いしてるの? 一人の責任はみんなの責任だよ。だーかーらー……」

「覚悟しろなの! この虫野郎共ッ!!!!!!!」

「速攻魔法発動! 《バーサーカーソウル》!」
『All Right!』

 ちゃ〜、ちゃらら〜ららら〜♪ BGM:ずっと俺のターン(※正式曲名『クリティウスの牙』)

「この魔法は手札を全て棄てて、モンスターカード以外が出るまで何枚でもカードをドローして墓地に棄てる魔法。
 そしてその数だけ(※攻撃力1500以下じゃなくても)追加砲撃出来る! 行くよ! まず一枚目!
 ドロー! モンスターカード《淫獣フェレット》を墓地に棄て! 《スターライト・ブレイカー》追加砲撃!
『ユーノさんが棄てられたー!?』
『Ster Light Braker!』

 ズドオオオオオオオーーーーーーーーン!!!!!!

「ドロー! モンスターカード! 《使い魔のこいぬ》!」
『ひっ! ひいいいっ!』(4人全員)
『Ster Light Braker!』


 ズドオオオオオオオーーーーーーーーン!!!!!!

「ドロー! モンスターカード! 《御神流の剣士》!」
『Ster Light Braker!』

 ズドオオオオオオオーーーーーーーーン!!!!!!

「ドロー! モンスターカード! 《ツンデレの令嬢》!」
『Ster Light Braker!』

 ズドオオオオオオオーーーーーーーーン!!!!!!

「ドロー! モンスターカード! 《甘党の艦長》!」
『Ster Light Braker!』

 ズドオオオオオオオーーーーーーーーン!!!!!!

「ドロー! モンスターカード! 《オートマータ・メイド》!」
『Ster Light Braker!』

 ズドオオオオオオオーーーーーーーーン!!!!!!

「ドロー! モンスターカード! 《双仔の猫》!」
『Ster Light Braker!』

 ズドオオオオオオオーーーーーーーーン!!!!!!

「ドロー! モンスターカード! 《十二宮の使い手》!」
『本編のキャラじゃないのにーーーー!?』
『Ster Light Braker!』

 ズドオオオオオオオーーーーーーーーン!!!!!!

「ドロー! モンスターカー…」
「もう止めて! なのはーーーーーー!」
 かつての登場人物たちをモンスターカードに見立てて次々と墓地に棄てていくなのは。そのあまりの惨状に見かねて一緒に戻って来ていたフェイトがなのはを止めに割って入った。
「は・な・せ・なの!」
「とっくにみんなのLPは0だよ! もうみんな虫の息だよ……」
「なに勘違いしてるの? まだわたしのバトルフェイズは終了してないよ」
「可愛そうななのは……、ごめんね」
 ドスッ!
 フェイトは背後からなのはの延髄を狙って打撃を加え、なのはを気絶させた。

「ユーノ? なにそんなとこでうずくまってんだ?」
「ヴィータか……。どうせ僕なんか、なのはにとっては簡単に棄てられるだけの存在だったんだよ……。
 結局はなのはとフェイトは相思相愛で、魔法とレイジングハートさえあれば僕はとっくの昔に用済みだったって事さ」
 自虐的な乾いた笑みを浮かべるユーノは今にも地獄に堕ちていきそうなぐらいの落ち込みっぷりだった。

 なのはは医務室へと運び込まれて状況はひとまず落ち着いた。
 次にフェイトの事を考えて先にエリオの事情の方をざっと説明する。
「そっか、じゃあ、エリオは無事なんだね」
 よかった……と言った感じにフェイトは胸を撫で下ろした。
 しかし次の瞬間、違う意味で誰もが予想のしえない行動にエリオが出た。
「フェイトさん……」
 エリオはフェイトの事を抱きしめていた。
「ちょ、ちょっと、エリオ?」
「懐かしいんです……何もかもが。公衆の面前でなければきっと大泣きしています……。また会えて、本当に嬉しい」
 そう言うとエリオはフェイトを解放する。
「ってこれじゃまるで、マザコンですね……」
「エリオ、ひょっとして10年後にフェイトさんと何かあったの?」
 スバルの口から出た言葉にエリオはびくりと身を震わせる。
「あ、その、いろいろとあって中々会えないんでつい……」
「エリオも10年経って忙しくなったんだね」
「おかげさまで、今は武装隊で頑張ってます」
「キャロは? 10年後ってみんなはどうなってるのかな?」
 エリオはフェイトに聞かれて口ごもった……
「あんまり未来の事は喋るなって、ユーノさんから言われてますので、あんまり聞かれると」
 言われてフェイトははっとした表情で思い直したようだった。
「そうなんだ……。じゃあ、私はまだ仕事があるから、これで行くね。スバルとティアナも特に命令は出てないけど、スクランブルにはいつでも出られるようにお願い。エリオとキャロはお互い他の人を邪魔しない事、いい?」
『了解です』
 それだけ言って、フェイトは食堂を去って行った。
「変わらないな……フェイトさん」
「10年後もですか?」
「……まあね。そうだ、10年前の街を見て置きたかったんだ。そろそろ免許の方もどうにかなるだろうから、一緒に行かない? もちろん外出許可は取るよ。それにちょっと一つだけやらなきゃならない事がある」
 キャロを誘うエリオの表情は何か隠しているような、妙な雰囲気があった……
「やらなきゃいけないこと?」
「ああ、信じて欲しい……。それにどうせなら10年前の君とデートってのも悪くないと思ってね♪」
「で……でーと、ですか」
 キャロは顔を真っ赤にしてエリオを見つめ返していた。


 続く







 あとがき
 
 10年後エリオ、第2話でした。でも真面目シーンとギャグシーンの温度差が激しすぎるわ
 パロディネタ多いわ、ある意味読み手を小馬鹿にするようなシーンがあるわで
 そして、またしても使ってしまいました「おっくせんまん」。
 ロックマンX4の映像がついたMAD見たら、仲間由紀恵よりいーじゃねーかと思ってしまいました。
 と言ってもアクションゲーム苦手で、初代を中古で買ってボス一匹で死にました。
 ボンボンの漫画版が見たいと思う今日この頃、だけど復刻版は高すぎです、一冊2千円って……orz
 改めて自分の癖の強さがよーく解ると言うかなんと言うか。
 次回は10年後エリオとキャロで戦闘をやろうかなーと思ってます。そして最終回のつもりです。
 それが終わったら、今のエリオが10年後に行った方の話をやろうかなと。それではまた次回に





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