電王少年ロジカルユーノ

 

『いらっしゃいませー』
 あれから数日が過ぎて、この日ユーノは高町夫妻に頼まれて共に翠屋の手伝いをしていた。
 来客は例によって例の如くクロノとヴェロッサだったのだが、二人とも疲労で顔が憔悴しきっている。
「クロノ君?」
「ヴェロッサさんも、どうしたんですか?」
「徹夜続きでやっと帰って来れたんだよ。淫獣は楽そうでいいな……。キリマン一つ」
「ここの所、魔導師の傷害事件が多発してるんだ、ユーノ君。僕はモカでお願いします」
 帰って来てもほとんど休む事が出来ないようだ。
 詳しい話を聞くと高い魔力を保有する魔導師が何者かに襲われ、リンカーコアをえぐり取られていると言う話だ。
「で、その被害者なんだけどね」
「揃いも揃って、『カラスの化け物』に襲われた。と言う証言が多いんだ。まったく、からかっているのかと疑いなくなる」
 クロノもヴェロッサもお手上げと言った感じなのだ。
 だが、ユーノには心当たりがある……むしろありすぎていた……。
(ひょっとして……イマジン?)

 

『The train of exceeding time 『Lyliliner』. Is the next station past or future?』
(ナレーション:レイジングハートもといDonna Burke)

 

 #3『悪魔ノ二挺拳銃』

「ユーノ! 大変だよッ!」
 バターンと勢い良くドアが開けられる。
 そこには、ツーテールに纏め上げた髪を揺らす赤い目の少女の姿があった。
「ふぇっ! フェイトさん!?」
 ユーノにとって彼女の登場は瓢箪から独楽だった。よほどの事がないと電車から出ないと思っていたからだ。
 だが、ユーノが意識する点はそこではないことにまだ気付いていない。
「へー、やるねえユーノ君」
「なのはに劣らず、可愛い娘じゃない♪ ほら、座って座って♪」
「えっ!? あ、あの私はっ!」
 士郎と桃子に流されるように、フェイトは席に座らされる。
「ユーノ君、今日はもう上がっていいわよ♪ はい、二人にね♪」
 おそらくこの喫茶店では誰も桃子に逆らう事は出来ないだろう。ユーノはフェイトと同じテーブルに座らされ、コーヒーが並べられる。
「で、ユーノ。いったいこの娘とはどういう関係なんだ? 返答によっては……」
「なんでデュランダルを構えるんだよ! そんなんじゃないからっ!!」
「クロノはほっとくとして、紹介してくれないのかい?」
 迫るクロノと焦るユーノの間に入ったヴェロッサが助け舟を出してくれた。
「あ、ええと、この人は……」
 しかし、言われてユーノは困った。正直な話、彼女の事は何も知らないのだ。流石に『イマジン』や『リリライナー』、『電王』の事など話せるはずも無い。
「フェイト・テスタロッサ、歳はユーノと一緒です。彼とはただの知り合い、それ以上でもそれ以下でもありません」
 しれっとしたドライな口調で、フェイトは臆面もなく答えた。


 

「またか……、また私は……」
 シグナムは負傷した多くの魔導師たちがベッドに伏している現実に対して、己の力をまた嘆く……
 出動の要請を受けて自分が駆けつけた時には、既に多くの犠牲者が出た後だった。
 そして、もう一つ気になる『カラスの化け物』と言う証言。
(一体、何が起きている。アレはどういう意味だったのだ……?)
 シグナムは先日自分が直面した事を思い返す。
 真っ白なこの世の物とは思えない砂が意思を持つかのように具現化して自分に問い掛けてきた。

『お前の望みを言え! どんな望みでも叶えてやろう。お前が払う代償はたった一つだ……』

 シグナムは『今より多くの人を救える力が欲しい』と願うと、その砂はカラスの姿に実体化して何処かへ飛び去った。
 もしも、カラスの化け物と言うのがイコールこの事件の犯人だとしたら? だが考えはそこで反転する。人を救うと願ったのなら逆に人が襲われる事にはならないはずだと結論付けた。
 あるいは、既に勘付いた真実を自分の中で捻じ曲げて、そう思いたかっただけなのかもしれない。
 まだ想像もつかない代償によって成立した契約の恐ろしさを……

 

「ふーん、魔導師が襲われる事件ねえ……」
 場所は変わって『リリライナー』の食堂車。
 隼のイマジン『エンデューロ』は興味深いと言ったような声を漏らす。
「リンカーコアなんざ奪ってどうする気だよ?」
 黒い竜のイマジン、ムルシエラゴは理解しがたいようだ。
「とにかく、急いで契約者を探さなきゃ! 早くしないと大変な事になる!」
「あ、あのフェイトさん? そんなに焦らなくても……」
 ユーノにはフェイトが焦っている理由がわからなかった。フェイトは眉間に皺の寄った表情でユーノを睨みつけて来る。
 しかし、彼は彼で状況がわかっていないのだ。睨まれてもどうすればいいかわからない。
「あのさ、彼に全部説明したの?」
 エンデューロが口を挟んで、フェイトは頭に上っていた血が急速に下がったように見えた……
「そうだった……イマジンはね、望みを叶える代償に契約した人間の『時間』を奪うの。そして、その人の記憶にある最も強い後悔の日にタイムトリップを行う。
 こいつ等の目的は、過去に干渉して現在(いま)も未来も変えることなんだよ。だから、こいつ等を一匹残らず根絶やしにする為に、電王の力が必要なんだ!」
 バンッ! とテーブルと叩きながらユーノに迫るフェイトは鬼気とした迫力があった。
「ユーノのヤツ、ビビッってんじゃねーか? 今にもちびりそうなツラしてんぞ?」
「うるさいっ! イマジンのくせに馴れ馴れしくしないでッ!」
『おー怖っ……』
 二人のイマジンは同時に感想を漏らした……

 

 

 

あとがき、と言うか「なかがき」
ちわーっす、続きでした。シグナムがイマジンと契約してしまいました。
実はこれまだ途中です。間に合わないのでやむを得ず。
後日、残りを書いた完全版を送ろうと思いますそれではっ!





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