その日、機動六課には任務中に偶然発見されたロストロギアが運び込まれた。 正確にはレリックに酷似した性質から誤認されて改修された者だ 太陽の光に晒されたそれは角度によって変わる色鮮やかな虹色の光を放つ宝石であった。 材質を解析したところ地球で言う『水晶』に近いが、中には膨大な魔力が秘められているようだ。 元々は大きな塊であったのが30近くに細かく砕かれた破片の状態で改修されていた。 これは、この欠片が起こした機動六課内部のちょっとした騒動を記録したものである。 『かけらに眠る勇者の心・前編』(オールキャラ・ギャグ) 「なんやろーなーこれ?」 「きれいですぅ〜」 「でもこれ、ロストロギアなんだから、不用意に触っちゃ駄目だよ。リィン」 保管室まで運び込んで、改めて面子全員が水晶の欠片の中身を確認している。 「かけらでこれだけの魔力を秘めてるって言う事は、元の状態だとどれ程になるんでしょう?」 エリオは疑問を投げかける。 「いい所に気付いたね、エリオ。単純な足し算にはならないぐらい膨大なエネルギーの集合体ってところね。 だからこそ危険性を感じて、これだけ細かい欠片にしたんじゃないかって言うのが、私の推測」 シャリオが自分の推測と合わせて居合わせている全員に説明する。 「とにかく、悪用すればレリック並みの危険性を孕んでいるって事は変わらないってわけね」 「でもさーティア〜? これ昔の人はどんな風につかったんだろうね?」 「んなもん分かるわけないでしょうが! てゆーかあんたも偶には自分で考えて見なさいよ脳天お花畑ッ!」 ティアナとスバルはいつも通りの掛け合いに入る中で、キャロは3人に問い掛けた。 「あの、なにか聞こえませんか?」 ポロロロロロロロ…… たとえあの存在が物語のシンボルでなくなっても某ゲームの代名詞として知られるBGMがスバル、ティアナ、エリオ、キャロの四人の耳だけに響いてきた。 「なんだろ? この音楽……」 「スバル、あんたにも聞こえるの?」 「綺麗な曲ですね」 他の面子は4人に起きた変化を息を飲みながらも見ているしか出来なかった。 そして次の瞬間! 水晶の欠片から不思議な4色の光が4人の体を貫いた! 真紅の光がティアナの体に入り込む。彼女の視界には光と同じ真紅に燃え盛る熱界の光景が見えた。 『炎の心、《勇気》』 蒼い光がキャロの体に飛び込んでくるとその視界には蒼く限りない大洋の中を泳いでいる自分が見えた。 『水の心、《いたわり》』 黄色の光がスバルの体に突っ込んでくると、遥か遠くまで広がる大地に芽吹く生命を感じ取った。 『土の心、《希望》』 最後に、青緑の光がエリオの体を纏うと、どこまでもどこまでも世界を駆け巡る光景が飛び込んできた。 『風の心、《探求》』 心に直接伝わってくる勇者の心。それはかつて過去の彼方に起きた戦いの記憶…… 「つまり、それは大昔の人が戦う力を手に入れるために使った魂の器なんやな?」 「ええ、この《土》、《水》、《火》、《風》の力を封じ込めた水晶、《クリスタルのかけら》一つ一つにそれぞれ違った《勇者の心と記憶》が保存されているみたいです」 「これはその勇者の記憶に意識を共鳴させて、その勇者と同じ力を手に入れるロストロギア。もっと僕たちの常識に近い言葉で言えば《ユニゾンデバイスの亜種》のようなものだって事です」 あの後エリオとティアナが、クリスタルのかけらを通じて伝わってきた情報を、可能な限り理論的に分析して他の面子に説明する事になっていた。 「で、その事に関してなんですけど……」 キャロが申し訳無さそうに口を挟む。 「どうやらこのかけら全部……私たちの事を持ち主に選んじゃったみたいで……」 スバルが苦笑いしながらキャロの話を引き継いで説明する。 「私たち以外は使えないだけでなく、引き離そうとしても戻ってくるみたいです……」 驚愕の叫び声が保管室を揺るがした……。 自動的にティアナ達の元へ戻ってきてしまう。つまり、管理局の施設に保管することが事実上無意味と言う事だ。 しかも、4人の立場はロストロギア保有者となってしまう。ある意味闇の書と同レベルに性質が悪かった…… 「と、とにかくまずは実験して性質を分析する事から始めましょう♪」 シャーリーだけ何故か妙に楽しそうな表情で4人を訓練室へと連れて行く準備をしていた…… 続く あとがき あー、久しぶりに阿呆な短編書いたかも。今の中高生は知らない方が多いかもしれない…… しかし今の20代前半にとっては一種の神ゲーと名高い『ファイナルファンタジーV』ネタでした。 ストーリーはきわめてオーソドックスですが、システムが歴代でも一、二を争うほどに完成度が高いシリーズです。 そして敵キャラが約一名、主人公パーティーよりも味のあるキャラで以後のシリーズでもちょこっと顔見世で出たりしています。次回はその要因となった《あのシステム》と《あのキャラネタ》を出しまくったパロディギャグを連発します。 |