これは、なのはの世界では起こりえなかった話……

 これから数分間、あなたの目はあなたの体から離れて、この不思議な世界へ入り込んでいくのです……

 ダラダラダラダラ、ババーンチャラーン ひょろろろ〜〜〜〜♪(BGM:ウ○トラQ)


 魔法少女リリカルなのは『もしもシリーズ』


 Part.1『騎士と死神』


 もしも……、シグナムが男だったら……


 フェイトは初めて出会った。接近戦に於いて自分を圧倒する存在に……
 赤紫色の短髪に合わせた白い外套、つり上がりながらも澄んだ眼が真っ直ぐにフェイトの事を見据えている。
 凛々しく夜空に佇む様はまさしく一振りの刃。騎士は外套から弾丸を取り出し、剣に装填する。
(あの弾丸で、魔力を一時的に高めているんだ……)
「終わりか? ならじっとしてろ。俺も女子供を斬る趣味は無い……抵抗しないなら命までは取らん」
「誰がッ!」
 子供の自分が持たない体躯、女の自分が持たない筋力。
 あの相手は自分が持たない物を総て持っている。それが羨ましいと同時に悔しい、そして歯痒かった。
 これが、烈火の将シグナムとの最初の出会い……

†         †         †

「シグナムは私達の後に入りますか?」
「いや今日はいい、俺は明日の朝に入る」
「お風呂好きが珍しいじゃん」
「たまには朝風呂を浴びたくなるんだ」
 3人が風呂場へ消えたのと同時にシグナムは顔をしかめ、わき腹を押さえた。
「先の戦闘か?」
「聡いな。……あの娘、澄んだ良い太刀筋だった。良い師に教わったんだろうな……
 主もあの魔導師たちも『本物の過去』を持っている。誰かに造られた俺たちとは違う……」
 そう、まともな人間としての記憶も想い出も何も無い、彼等にあるのは血塗られた足跡だけ……。

†         †         †

「なのははどう思う? あの人たちのこと?」
 フェイトはなのはに問う。闇の書の守護者たちの事を……
 だが、なのはは突然の襲撃に応戦したぐらいで、相手の印象もへったくれも無かった。
 むしろ、現段階で最も接触し歩み寄っているのはフェイトの方だ。
「なんか変だけど、あまり強い悪意なんかは感じなくて、でも強い意志を感じたよ」
 フェイトはあの騎士を見ていると、過去の己を思い出していた。
 強すぎる意志は視野を狭めてしまう……あの騎士もそうなのだろうか?
 信じる者の為に己の命さえも棄てる覚悟を持った眼は、誰にささげる正義なのか?
 彼から話を聞くためには、自分自身がもっと強くならねばならない……
 喩えそれが傲慢だとしても、それしか方法が無いのなら戦うしかないだろう。

†         †         †

「強ェな、テスタロッサ。それに、バルディッシュ……」
 シグナムは、再び己が前に立ちはだかる魔導師に対し、素直に感嘆していた。
 この短期間にベルカの技を自分のものにしてくるとは思いもしなかったと言うのが大きい。
『Thank you……』
「あなたとレヴァンテインも、シグナム……」
 フェイトもまた、目の前の相手の変わらぬ強さを認める。
 曲がりなりにも、相手から事情を聞くに至らない。戦い勝つためなら本当はもっと敵対の意思を見せなくてはならないのかもしれない。
 なのに、それなのに……
(私、ドキドキしてる……)
 自然と笑みがこぼれて来る……。ピリピリと肌を刺すこの空気を好きになり始めている自分がいた。
「成さなければならない使命さえなければ、いい戦いになったかもしれないが……そうも言ってられない。
 殺さずに済むか分からない俺の未熟を赦してくれるか?」
「構いません。勝つのは私ですから」
 シグナムもまた笑みを浮かべる。
「面白い娘だ。違う出会いをしていれば……あるいは」

†         †         †

 熱砂吹き荒れる世界で、二人は再び相見えた。
 フェイトはどんどん強くなっていく。シグナムは閃光のようなスピードを持った娘と刃を交える事に楽しみを覚え始めていた。
 次第に分からなくなっていく、自分はこの娘と戦う事に心を躍らせているのか。それともこの娘と顔を合わせ話す事に心を躍らせているのかが……。
 だが、この戦いは水を刺される結果となってしまった。
 シャマルから聞いていた仮面の男が、彼女のリンカーコアを貫いたからだ。
「さあ……奪え」
 一度は戸惑った……、決闘の邪魔をされた事に対しての怒りがあった。しかし、闇の書完成以上に優先されていい事は今のシグナムにはない。
「済まん……テスタロッサ」
「シグナム……」
 それは、傍から見ていれば逢い引きの最中に引き裂かれた恋人の様でもあった。

†         †         †

 クリスマス・イブの黄昏時に、とうとう全てが互いにばれてしまった……
「もう止められないんだよ、テスタロッサ……。俺はもう決めた。主の笑顔の為なら、騎士の誇りさえも棄てるとなッ!」
「止めます! 私とバルディッシュが!」
 幾度も交えた刃、幾度も交し合った言葉、それが妙な懐かしささえも感じていた。
 そして、消えていく。無情にもあの仮面の男たちの手によって……
 主の笑顔が遠のいていく。
 そして、この娘との決着を付けられないこともまた、消えぬ未練として浮かび上がる。

†         †         †

 そして、全てが終わって……

「テスタロッサ、預けておいた勝負、いずれ決着をつけよう」
「はい。正々堂々と、これから何度でも」
 心が何故か晴れ晴れとしている……
 何かがおかしい、彼女を戦える事よりも、彼女と一緒にいられる事の方が嬉しく感じるなんて……
「主、俺は一体どうしてしまったのでしょう?」
「それってもしかしなくても……なぁ、シャマル」
「そうですよねぇ。あれしかないですよねぇ♪」
 心なしか主と参謀が妙に愉しそうな事が腑に落ちなかった……


 おまけ

「普通だね」

「普通やね。シグナムって元々男っぽいし」

「これだとさー、シグナムってロ○ペ○野郎じゃねー?」

「だけどー、シグナムは年をとらないからStSになれば、はれてフェイトちゃんと同い年ですから♪」

「随分楽しそうやな、シャマル」

「しかも、10年あれば自分好みの女の子に出来ちゃうんですよ♪ これのシグナムは」

「でも、兄さんが結婚しちゃうなら……」

「どうしたの? フェイトちゃんさっきからブツブツ言って」

「はやて。データ書き換えてシグナムを男の人に出来ない?」

「ふぇ、フェイトちゃん?」

「なのは、なのははいいよねぇ。ユーノと仲良くしてて……」

「あ、あれは! 持った人が地獄に堕ちる伝説のベルト、ホッパーゼクター!?」

「あっれー、三人でどうしたの?」

「エイミィもいいよねぇ、クロノと結婚できて……」

「フェイト〜。一緒に昼ごはん行こー!」

「アルフもいいよねぇ…、ザフィーラといい雰囲気で。どうせ私なんか、なのはに恋してるレズ女としか思われてないんでしょ?」

「あかん! フェイトちゃんが壊れてもーたッ!」

「はやて……私と一緒に、地獄に堕ちようよ」

「よりによって妹候補はウチかーい!?」

「はやてちゃんは、紅薔薇だから」

「別世界のネタはいらへんわッ!」

「フェイト、何があったんだい!?」

「今、誰か私を笑った? まぁいいや。これからなのはとヌードなツーショットポスターで、
 私をレズ女に仕立て上げやがったメガ○マガジンの編集室に行って来るね」

 オチないので続かない…



 あとがき

 なんかものすごいバカやってしまいました。
 でも、シグナムとフェイトって根底が良く似ているのでドラマ作り易そうですけどね。
 かなりステレオタイプなガジェットのキャラになってしまいますけど、シグナムは男でも面白かったかもしれない。
 この、もしもシリーズ。好評なら、他にもやってみようかと思います。それでは





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