空想の自由はホラ 偽善者の茶番劇…… 盲目の大衆共が 無条件に騙されちゃって…… 妄想の平和はホラ 蓋開けりゃ地獄絵図…… 虚像の独裁者演じて あなたをエスコートしましょう…… StrikerS Other World Episode −2 『PERFORMANCE』 響きは良いけど、どんな言葉も薄ら寒いパフォーマンス……。 「ティアナは……待機から外れておこうか?」 その一言は今の彼女を絶望させるには充分すぎる威力を持っていた。 震えている……無意識に……。 かろうじて今は顔に出ていないが、それでも見るものが見れば気付いたかもしれない。 今立っているヘリポートが、ティアナの周囲だけ陥没し崩れ落ちていくような錯覚に彼女は見舞われた……。 「才能が無い奴は……使い物にならないって事なんですね……」 思わず口走ったその言葉は、誰も想像がつかなかったのだろうか……沈黙が再び場を支配する。 「やっぱり、そう言うことだったんですね。可笑しいと思ってましたよ」 「ま、待ってティアナ!? 私は、なにもそんなつもりで……」 慌ててなのはは口を開く。が、ティアナは止まらなかった。 「結局、あたしなんか最初から必要なかったって事じゃないですかッ! 用は、人数とランクのバランスを調整するためだけに引き抜いたんでしょう!? 疑われないように、体裁だけを取り繕ってッ!!」 ティアナの目はなのはに語っていた。誰の目にも明らかな強い拒絶、猜疑、そして敵意の色…… 「力を証明しなければ、あたしみたいな凡人は生き残れないじゃないですかッ!? それさえもみんな、見下して影で嘲笑っていたんですね……? 身の程知らずが無駄な足掻きをしているって……」 口走った瞬間こそ激昂していたティアナの口調は尻すぼみに消沈していく。 言葉に表せば表すほど、自分が思い知った現実を肯定してしまい、どんどん惨めになっていった…… 更なる沈黙が訪れようとした瞬間…… 「ふざけるなっ!!」 間隙を縫って拳を振りかざしたのはそれまで静観していた烈火の騎士だった。 頬に拳が直撃したティアナの体は何の抵抗もなくよろめいて数メートル先で倒れこんだ。 「シグナム副隊長!?」 信じられないと言わんばかりにエリオ・モンディアルが狼狽の声を上げる。 「加減はした……。こちらの意図を分かろうとせずに、何も懲りていない莫迦にはこれで充分だ……」 「こんな……こんな一方的に撃たれて殴られて、何を分かれって言うんですかッ!? 自分なりに強くなろうとするのが、そんなにいけない事なんですか? ティアも私たちも機械みたいに何も考えずに頷いて動けばいいんですかッ!? 少なくとも、ティアや、エリオや、キャロは機械なんかじゃないッ!! 納得出来ない事だってありますッ!!」 あえて冷徹な態度で臨むシグナムに対し、スバルまでもが激昂して反抗し出す。本来ならばこの時点でスバルもティアナも営倉行きは確定だろう。このままでは出撃する事が出来ない……。 「間違ってるってわけじゃないよ」 新人全員が声のした方向へ向き直る。 そこには状況を見かねたのか、いるはずのないデバイスマイスターの姿があった。 別室で4人に話されたのは、かつてなのは達が直面した出来事、そして味わった苦い経験の映像だった…… 「だから、みんなに無茶な真似をして欲しくないの」 「あの場面は本当に命をかけねばならなかったか?」 他の3人は納得したような表情を見せている。シャリオとシグナムは真剣な表情でこちらを向いている。 だが、ティアナだけは…… 「これがなんだって言うんですか? 『なのはさん達はこんなに凄くて可愛そうなんだぞ』なんて言うつもりなんですか? だから見習え、従えと? これ見てハッキリ分かりました。ここでは力が全てなんでしょう? なのはさんや隊長たちは強いから認められるんでしょう? ま、自然の摂理ってヤツですか。 自分のミスは認めますけど、これには納得できません。謹慎でも転属でも用意してくれていいですよ」 ティアナはそれだけを言うと部屋から去って行く。 誰もが呆然とするしかなかった…… そして、誰も想像し得なかった…… これが機動六課そのものに地獄のような苦しみを与える引き鉄になろうなどと…… あとがき ちわーす! 久々の地獄ティアナ、今回は前日譚となりました。時間軸的には『ANSWER』よりも前となりますね。 まあ、ぶっちゃけ9話のアレンジです。 もっと人間の負の部分を前面に押し出しつつ、TVへの皮肉、そしてスバルのセリフに自分が機械であることを密かに漏らすような言い回し等。 でもって、酢飯とニートもとい、シャーリーとシグナムは本編以上のウザさと無能さをかもし出させました(笑えない いろいろと時間の都合で書けなかった話をと言いつつ実の所、続きのほうが芳しくなかったので出したんですけどね。 まぁこんなアレな野郎ですが、見て下さった方には感謝の意を込めて投げチュー(←キショイわ! 少し捕捉:サブタイトルの及び冒頭文の元ネタは『PIERROT』の同名曲『PERFORMANCE』です。 メンバーのソロ活動以前にリリースしたため、図らずも最後のアルバムとなってしまった『FREEZE』に収録 されています。この曲や地獄ユーノ6話に使った『Utopia』はいわゆる社会風刺的な歌なんですが、 見方を変えてみると、なのはStSへの皮肉にこうもしっくり来るのが自分でも意外でした。 |