このSSはネタ的にいろいろとヤバイ方向に行ってます。
 何があろうが動じない自身がある人だけこの先をどうぞ





『PSYCHEDELIC LOVER』




 初めて知った感情、視界埋め尽くす逆光、砕け散ったガンジガラメのアイデンティティ……


「ふぅ……」
 クロノはまたため息を付いていた。本日何度目になるか分からないため息だ。
「どーしったのっ? クロノ君♪」
 向かいに座っているエイミィが聴いて来る。ここは本局の食堂だ。
 クロノの皿は何分経っているのかはわからないが食が進んでいない。
「別に、君には関係ないよ……」
 しかし、エイミィは引き下がろうとはしない。彼女は面白そうな事があればどんな障害があろうと首を突っ込まずにはいられないのだ。しかも普段から口では勝てない彼女をやり過ごせるわけがない。
「その様子からして、誰か気になってるコがいるね? なのはちゃん? フェイトちゃん? はやてちゃん?
 シグナム? ヴィータちゃん? シャマル? それとも、あ・た・し?」
「少なくとも君は100パーセント違う」
「ぎゃぼー!!」
 なにかは分からなかったが妙な言語でショックを表現するエイミィに呆れてクロノは食堂を後にした。

 エイミィの言っている事もあながち的外れではない。確かに今、いろいろな意味で頭から離れない。
 だが、それを肯定したくない。ありえない。そう、ありえないはずなのだ……
 とりあえず、飲み物とカロリースナック類を本局の購買施設で買って見る。
「落ち着け……落ち着け僕……、こいつは差し入れだ。ああそうだ、それ以上でもそれ以下でもない……」
 クロノは呟きながら目的地を目指す。
「あれ、義兄さん? どうしたの?」
 丁度現れたのはフェイトだった。小学校の制服を着ているのを見るとここに呼び出されて間もないようだ。
「ちょっと差し入れにな。君はこれから任務か?」
「うん。はやて達と共同の捜査任務」
「そっか、頑張れよ」
 ぽん、とフェイトの肩に手を置いて激励してから分かれた。

 クロノが辿り着いた先は無限書庫。
 ついこの間までは書庫とは名ばかりの厄介な部屋でしかなかった場所だが、闇の書事件から評価は一変し、資料室としての有効利用が可能と判断され、資料を扱う専門の司書が集められつつある。
 ここに、これからクロノが会いに行こうとしている人がいた。
 入り口に差し掛かると、誰かの声が聞こえる。
 それは亜麻色の髪の少女と、《そいつ》が楽しそうに談笑している光景だった。
 クロノの胸中に痛みと圧迫感が走る……。どうしてか分からない……この感情の正体が……
 やがて、話が終わって少女の方がこちらへとゆっくり降りて来て、そのまま空中ですれ違う……
「あ、クロノ君! 偶然だね、クロノ君も差し入れ?」
「まあな、君もだったのか? なのは?」
「うん!」
 可愛らしい笑顔で答えるなのは、クロノはずきりと胸に痛みが走った……。今度は彼女に嫉妬している……
 会いに来た《そいつ》はもう目と鼻の先にいた。クロノは名前を呼ぶ。
「ユーノ!」
 名前を呼ばれて少年は振り向く。柔らかい瑪瑙色の髪に翡翠の様な瞳、女の子だと言っても信じてしまいそうな可愛らしい顔立ちの美少年……
「クロノ? なんだよ? また仕事増やしに来たの?」
 ユーノのほうは不機嫌そうにクロノを見る。クロノは黙って右手に握った袋を投げ渡した。
「差し入れだ」
 そう言われてユーノは袋の中身を見ると、呆れたように笑う。
「君らしいよ。この中身の素っ気なさ……」
 どくん! と胸の中で何かが跳ね上がった……、ユーノの顔を見ているだけで落ち着かなくなる……。
 クロノはどうしてこんな感情を抱くのか分からない。
 確かにユーノは可愛らしい、男にしておくには勿体無いほど綺麗な顔立ちの美少年だ。
 だが、いくら『美』の文字をつけようとも少年は少年、クロノと同じ『男』なのだ……。
 歯痒くて仕方が無い……、ユーノが女として生まれてきてくれれば、あるいは自分が女として生まれていれば……
 こんな複雑で言い表しがたい想いを抱く事も無かったのだろうか?
 クロノは答えの無い思考の無限螺旋を辿り続けるだけだった……


 あとがき

 うわっ! とうとうやってしまった! ユーノきゅんに恋するクロノ!
 はっきり言ってノーマルよりもファンの需要が無いよ、やおいカップリング!
 と言うか俺自身もBLはそこまで詳しくないし、手を染めるのは初めてですが。
 さすがに、掘ったり掘られたり、濃厚に愛し合う様を書くのは無理でした……orz





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