『エリオとキャロのお爺ちゃん(?):おまけ』

 

「改めて、お久しぶりです。父さん」
「かしこまるなって」
 教導が終わり、ディルカはフェイトの執務室へ御邪魔していた。
 今現在、午後の5時半。計画している事までまだ時間があった……。なのはもはやても、二人を気遣ってくれている。
「にしても、驚いたぞ。子供2人の保護者してるって聞いた時はよ。で、クロノとはどうなってる♪」
「どうして兄さんが出て来るんですか? 兄さんは多分エイミィの事が……」
 ディルカは茶化すつもりで言ったのだが、フェイトの返答にがくっと肩を落とす。

(※このシリーズはTV本編とは微妙に繋がっておりません。ご了承下さい)

(済まねぇクロノ! この天然ぶりはオレからの遺伝だ……)
 ディルカは心の中で報われない提督に謝辞を送る。
 思えば昔は『恋愛感情』と言う物が理解できず、友人としての『好き』と恋人としての『好き』の区別が全くつかなかった
ものだから、プレシアとその友人たちをどぎまぎさせた覚えがある……
「どうしたんですか? 父さん?」
 そんな苦悩など露知らず、この天然執務官は唸るディルカの事を気遣っていた。
「ちょっとクロノに同情した……。ま、形はどうあれ孫が出来たみたいで嬉しくねぇってワケじゃねーよ」
 ディルカはそう言ってフェイトに笑いかける。実際にあって見てあの2人の事は本当に気に入っているのだ。
 フェイトもそれは模擬戦を見た時点で察している。特に、エリオは戦っているとき自分の時よりもシグナムの時よりも楽
しそうに戦っていた……
「父さんの目から見て、あの子達はこの仕事に向いてると思いますか?」
 それでもフェイトは心配だった。まだ年端も行かない子供がこうして前線に出て、命懸けの戦いを余儀なくされる。
 この現実にエリオとキャロが耐えられなかったら? もしもそのせいで肉体(カラダ)が、精神(ココロ)が壊れてしまっ
たら? フェイトの不安は尽きる事が無い……
「それは、お前が心配する事じゃない。あいつ等自身が乗り越えなきゃならない壁だ。オレ等に出来る事はそうなる前に
道を指し示してやる事と、そうなっちまったら見守ってやる事だけなんだよ。
 あるいは、何十年も前からこの世界は本当にどっかがイカレちまってるのさ。年端も行かねえガキに命懸けの仕事を
任すって時点でな。用は『無責任なオトナ』がガキに手前ェの尻拭いをさせてるようなもんだろ? ま、そう言うオレも『無
責任なオトナ』の一人なんだけどよ……」
「父さん。あまり自分を卑下しないで下さい……あなたが皆に言った事じゃないですか」
 フェイトはディルカの事を父と呼んでくれる。それは素直に嬉しい。しかし、今でも手放しで喜べないのだ。
 理由はどうあれ愛する妻と娘、プレシアとアリシアを手離してしまった。悪く言えば棄ててしまった。フェイトは彼が8年
前に姿を現したときに戸惑うしかなかった事も、後から聞いた彼がフェイト以外の皆に言ったことも忘れていない。

『オレが傍にいてやれれば、プレシアは狂わなかったかも知れない……、アリシアは死なずに済んだかも知れない
……、あの娘も……、フェイトもオレとプレシアの本当の娘として生まれて来れたかも知れない……
 そう思うとやり切れないんだよ。オレはあの娘が幸せならそれでいい。その為には邪魔なんだ、オレの存在は』

「悪りぃな。暗くしちまってよ……。しばらくこっちにいるから、お前が空いてるなら二人で墓参りに行かないか?」
「そうですね。私も今年はまだ行ってませんから」
 しばらく二人は周りで起きた出来事を肴に与太話にふける。フェイトに関してはその半分以上がエリオとキャロのこと
だった。ディルカの方はあまり楽しくは話せない物が多く、改めて住む世界が違いすぎる事をフェイトに認識させる。
「そう言えば、エリオの事なんですけど? 凄く楽しそうでしたね。父さんの方も……」
「ああ、このまま真っ直ぐに育てば、4〜5年後はモノになるぞ」
「もしかして、父さん……あの子を『ネロスの闘士』に?」
 フェイトは最も大きな不安を投げかけた。ディルカの本職と言っていい……、邪欲に囚われて怪物と化した人間を狩る
為に魔導の力を行使する、アルハザードに生きる闇の魔導師たち『ネロス闘士団』……。
 ディルカは今でもその中で最強の闘士階級『骸聖(がいせい)』の称号を持つ闘士の一人なのだ。
「まさか! バケモノを狩るために人間を棄てちまう外道に誰が導くかよ。単に闘いの技を教えたいと思っただけだ。
 あいつ、模擬戦の時に最後まで残ってオレの戦い方を観察してやがった。胸を借りるんでも、教わるんでもなくて、あ
いつは一人だけ、オレを倒すつもりで挑んで来たんだ。道は違うが、成長を促がしてやりたい……」
 それは、光り輝く原石を見つけ出した喜びなのだろう。自分の手で至高の逸品にしたいと思うのは……
「そうですか……あの子がそれを望むなら、それもいいかも知れません……」

『スターズ部隊、ライトニング部隊の皆さんは一九〇〇時までに食堂へ集合してください』

「おっ! 用意出来たらしいな。フェイト行こうぜ」
「あんまりハメを外さないで下さいね」
 フェイトはため息を一つ付いてディルカに返した。
 食堂に辿り着いて見れば、全部のテーブルに巨大な網目のついたコンロと生肉の乗った皿が置かれていた。
 いわゆる『焼き肉』なのだが、これには訓練生一同も唖然としていた。
「うーし、集まったな! こいつはオレが手配したもんだ。あと少しすればロングアーチのヤツらも来る。
 今日はガンガン喰ってガンガン騒げ! ランクも階級も関係無ぇ! これから三時間、今夜は無礼講だッ!
 ただし酒は飲むなよ! 万が一事件が起きた時にへべれけじゃどうしようもねぇからな! 以上!」

 宴会が始まった。最初は訓練生たちも戸惑いはしたものの、ディルカの性格をなんとなくでも理解していたからか、思
ったよりもすんなりとこのノリは受け入れられた。
「ちょっとスバル! その肉はわたしが狙ってたのに!」
「そんな細かいこと言ってると胸おっきくならないよ♪ ほら、ティアも気にしないで食べた食べた♪」
 と食べながらも日常茶飯事を繰り返す凸凹コンビがいたり……
「エリオくん♪ あーん♪」
「ちょっとキャロ! 恥ずかしいよ!」
 10歳とは思えないほどストロベリってる二人がいたり……
「悪くは無いが……もう少し静かにして欲しい……」
「おいしいのですよ〜」
「リインてめえ食いすぎなんだよ! あーもう肉がねぇ!」
「ええい! 鬱陶しい! 暴れるなッ!」
 ペースを掻き乱されたり我が道を行く騎士達がいたり……
「へー、いい肉取り寄せたもんだね」
「アルフ……口の周りにタレがついてるぞ」
「じゃあ、取っておくれよザフィーラ〜、舐めて♪」
「冗談は止せ……」(紙ナプキンで拭き拭き)
「ちぇっ……」
 人間そのものな食べ方をしている犬二匹がいたり……

 機動六課始まって以来のドタバタした一日はこうして幕を閉じるのだった……

 

 終わり

 

 



 あとがき
 ふぅ、ようやくおまけまで終了。フェイト父の怪しい本職、名前と概要だけ公開いたしました。
 ちなみに、ネーミングの元ネタは『超人機メタルダー』の悪の組織『ネロス帝国』より拝借してます。
 今月のバイト代はたいてDVD-BOXを購入したのですが、予告のセリフ通りに『こいつはすごいぜ!』な出来です。
 1話目にして40人近い怪人が登場するわ(しかも戦闘員がいません)、その組織の目的と活動が当時としては非常に
リアリティが高いわ、1話目でヒーローのメタルダーが敵に敗北するわ、凄いハード路線突き進んでます。
 その怪人に階級が上から『凱聖(がいせい)』、『豪将(ごうしょう)』、『暴魂(ぼうこん)』、『雄闘(ゆうとう)』、『爆闘士』、『激闘士』、『烈闘士』、『強闘士』、『中闘士』、『軽闘士』と10階級あって、そこから拝借してます。
 ただ、人間だった化け物を狩るってのはどっちかと言えば『牙狼−GARO−』から持ってきてます。
 まあ、用は俺が常軌を逸した特撮狂いだと言うことの現れ見たいなもんですね。





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