今回は死にネタです。誰が死んでいるかはお楽しみ(←オイ

 

『HELLO』(???×???)

 

 暗闇に慣れた目で 君の面影さえも 綺麗なまま消えればそれもいいかと……
 絶望に目覚めた朝 一筋こぼれおちた 意味の不明な何かが問いたけた……

 

「今日は風が穏やかだ……。君がいなくなって、もう5年、また一つ歳をとったよ……」

 一つの墓石を前に、帰ってくることのない一方通行の会話を始める。

「あの子たちも大きくなったよ……。プレシアは……10歳になった」

 墓石の主を思い返しながら、帰ってきそうな言葉を想像しながら、会話が続く。

「それで、管理局に入りたいって言い始めたんだ……、君なら喜ぶか? それとも怒るか?」

 上の子供が生まれた時、自分も『彼女』も幸せに満ちていた。だけど、それは喜びだけが全てではなかった……

 生まれたのは、彼女が二十歳を迎えて半年ぐらいだったか。

 彼女はその時から、気付かぬほどにゆったりとしたスピードで、体が衰弱し始めていた……

「アリシアは7歳になった……。魔力は持ってないから普通の学校に通い始めたんだけど。
 宿題がイヤだって騒いでてさ、困ったもんだよ。僕か? 僕は相変わらずだ」

 今もまだ自分は艦長職を務めているが、そろそろ誰かに自分の席を譲りたい所だった。

 母が面倒を見てくれてはいるが、やはり子供は親が傍にいて欲しい所だろう。

「ただ、譲れそうな人間がいないのが問題だ……。能力的にはヴェロッサかはやてなんだが……」

 そう言えば、あの二人が結婚すると言い出した時、自分は夢を見ているのかと思ったものだ……

 はやても今や一児の母でヴォルケンリッターの面子が日替わりで面倒を見たりもしている。

 なのはが翠屋の2代目と教導官の二足の草鞋、ユーノは偶に子供を連れて遺跡発掘してると聞いていた。

 機動六課の面子も管理局に於いては曲者でありながら粒ぞろいの部隊として多くの逸話を聞いている。

 そう言えば、エリオとキャロが自他共に認める仲の癖に未だに結婚へ踏み込めないらしい……

 時代は変わっていく。彼女がいなくなっても、世界の時間は自分たちを乗せて絶えず変わっていくのだ。

 

 後から調べてもらって解ったことだった。

 作られた命だったからなのか、彼女の遺伝子を構成していたテロメアが極端に短く、普通の人間と比べれば驚くほ

ど短命だったのだ……。

 フェイトは20歳を超えてプレシアを生んでから、頻繁に発作や貧血を起こして倒れるようになり、体力も魔力も極端に

弱まっていた。歳を取るごとにそれは激しくなり、3年後にアリシアを生んだ時には1ヶ月間昏睡状態に陥ったほどだ。

 

『プレシア……、アリシア……、クロノ……、みんな……、わたしは……、しあわせだったよ……』

 

 5歳になったプレシアと2歳のアリシア、そして夫の自分、なのは、はやて、ヴォルケンリッターや機動六課の面々に

寝たきりになった病床で囲まれ、フェイト・T・ハラオウンと言う名の命は25歳と言う若さで天に召されて逝った……

 

 

「父さん……」

 ふと、声を掛けられる。そこにいたのは、腰まで届く黒髪の目立つ大人びていて利発そうな少女だった。

「ああ、ごめんよ。プレシア……、お父さん、変だったかな?」

「ううん……、でもアリシアがうるさくて」

 プレシアの傍でわめいていた次女のアリシアを抱き上げる。

 母親に良く似た金色の髪と真紅の瞳は太陽を浴びて輝いていた……

「おとーさーん! かえりたいよー!」

「そうかそうか、ごめんなー。3人でお昼ご飯食べに行こうか?」

「うわーい♪」

 それを聞いてアリシアはけろっと表情を変えて笑う。

(フェイト……僕と君の子は元気に育っているよ……)

 

 前を見つめ…… 両手を広げ…… もう過去に別れ告げよう……
 たとえそれが…… 行き場の無い…… 涙を秘めた朝だとしても……

 

 END

 




 

 あとがき

 どーも、今回は死にネタでした。別に某聖痕さんに対抗しているわけではありません……
 ただ、人造人間であるゆえの欠陥を別のベクトルとして書いて見たかったのです。
 それと、このお話はどの長編とも繋がっておりません。ある意味、もしもこうだったら? な話です
 あー、でもこう言う未来でも悪くないかもしれません。スタンダードなファンは怒るでしょうがね……
 本当はもっとジワジワと弱っていく様を書いてみたかったりもしましたけど
 んなもん誰も見たがらないと思うので泣く泣くカットいたしました。





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