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 月村邸の庭。
 ポカポカ陽気に当たりながら、膝枕をしてたら何時の間にか眠ってしまった。
 目が覚めると、そこには彼の顔が大きく映ってとても近くにいる事が解って驚いた。
 ああ、顔が赤くなっているなと思ってたら、彼の方も目が覚めて同じ様に驚いて顔を赤くした。


「あはは、ゴメンねユーノくん」
「いや、良いよ。こっちこそ……あの、膝枕……ありがとう」
「どういたしまして……」

 沈黙。
 どうしよう。

「えっと、取り合えずどうしようか?」
「……どうしたら、良いのかな?」

 二人して変な事を聞くと思う。
 一見落ち着いて対応してるように見えても、心臓の方は早鐘みたいに動いてる。
 顔も熱い。多分真っ赤になってると思う。

「もう少し……寝ようか?」
「それも良いかも」

 冗談で言ったのかもしれないけど、良い案かもしれないと思えた。
 思考が纏まってない所為か、まだ少し眠い感じがする所為かは解らない。
 確かに、もう少しこんな近くにいられるならそれも良いと思う。
 でも、他愛無い事でも良いから話がしたいとも思う。
 これって我侭かな。



リリカルなのは 外伝話ほのぼの系?
 My Heart to You Heart

〜英語表記の最後に来るSの意味は一体? 編〜


 暫くして、家の方の煙も収まったので家の中へ戻る事にした。
 自分の所為で、家の所々が煙で煤けてしまっていたのが少し恥ずかしかった。
 一応メイドの皆さんや黒尽くめの人達が一生懸命に掃除をしてくれるので、いくらかはマシになってきてると思うけど。

「凄い爆発だったんだね」
「あはは」

 苦笑いしながら言われた言葉に、同じ様に苦笑して返す。
 返す言葉もないとはこの事でしょうか。
 メイドさんや黒い人達が慌しく動く中、ゆっくり歩いている事にちょっと居心地の悪さを感じたりもする。
 中にはネコを抱えてサングラスをネコパンチで粉微塵に砕かれたりしてる人もいて一層居心地が悪かったり。
 でも、自分で撒いた種なのだから仕方ない。

「こっちだったよね」
「うん」

 まだ煙が立ち込めてて視界が利き辛いけど、何度も通ってる廊下なので迷ったりはしなかった。
 慌しい廊下を歩いて、自分の研究室と化してる部屋に入ろうと扉を開けて。
 振り返って後ろ手で扉を閉める。

「ユーノくん、ちょっと待っててくれるかな?」
「え、うん」

 急いで中に入って、惨状と化した部屋を片付ける。

「はわわわわ、急がないと。あれはここで、えーとこれはそこで……あーでこーでってキャー!?」

 ドンガラガッシャーン!
 多分棚にぶつかって、その上に吹き飛んでた荷物が倒れて下敷きにされたんだと思う。
 思うって言うのは、慌ててたから、何処をどう動いてたのか判らないからなんだけど。
 ちょっと、重い。

「すずか!?」
「むぎゅぅ……」

 圧し掛かる圧迫感に喉の置くから変な声が出た。
 多分、目が廻ってるか×の字になってるんだろうな。
 ユーノくんが、必死に荷物を退かしてくれてるけど、結構重たいみたいで苦戦してる。

 ガコォン!! ドゴォオン!! ガキィン!! メキィ!! ガラゴォン!!

「これで……最後!!」
「ふぅ……ありがとうユーノくん」
「ど、どう……いたしまして……へへっへ」

 積まれた荷物を崩れないように、上手く通り抜けられるくらい退かしてくれたお蔭で苦もなく出られた。
 御礼を言うと、彼は大量の汗を掻いて息を荒くしながら答えて、凄く疲れてることが解った。

「すずか……良くこんなのに潰されて平気だったね」
「ふぇ?」

 心配してくれてるのかな。
 確かにちょっと重かったけど、そんな大した怪我はしないと思うんだけど。
 首を傾げてると、何故か彼は顔を引き攣らせて苦笑してた。

「じ、じゃぁデバイスの人工知能の講義。始めようか?」
「うん」

 今日、彼を呼んだのは別世界の技術を少しだけ見せてもらう為。
 本当は良くない事らしいんだけど、彼はそういった技術の中から出しても問題ない技術の本を持ってきてくれたりする。
 忙しい中、自分の為に……いや、自分だけでなく知人以外の人も含めて、他人の為に動いてくれる彼に私は惹かれている。
 その事に気付いたのは何時だっただろう。

「恋は何時だって唐突だぜボーイ」
「ふぇ!?」
「誰!?」

 突然の声に二人揃って辺りを見渡す。
 けど、ここにいるのは私達二人だけな訳で。

「にゃ〜」

 訂正、一匹の子猫が窓際にいました。
 私達が外にいる時に入ってきちゃったのかな。
 近づいてヒョイと持ち上げてみる。うん、女の子だね。
 首輪してるけどうちの子じゃないし、どこから来たのかな。

「ども、猫です」
「……」
「喋った!?」
「にゃ〜?(猫は喋らない、猫はにゃーとしか喋らないよ〜?)」

 彼が驚いて近づくと、その子は首を傾げて鳴く。
 はぁ、やっぱり猫さん可愛いよぉ。
 マジマジと見てると、この子の額に絆創膏がついてる事に気が付いた。

「ユーノくん。この子怪我してるのかな?」
「どうだろう? 見たところ別に何ともなさそうだけど」
「取ってあげたほうが良いかな?」
「そうだね。もし怪我してたら小さいものなら治せるし」

 彼の承諾も貰って、この子の額についてる絆創膏を剥がす。

「今だ! 逝けぇ!! 僕等のエース!!」
「へ?」
「やっぱり喋ってるーーー!?」

 彼のノリツッコミと、この子の額が強く光りだしたのは同時だった。
 丁度正面にいた私は額に強い違和感を感じると、次第に身体全体にも違和感を感じるようになった。
 何だか、一旦裸になるような……そこから新しく服を着せられていくような変な感じ。

「猫キャラと言えばこれしかない! と、甘いSSが作れない作者の叫び」
「それはチョコSSを諦めたって事だね」
「……にゃー?(あれ? 我輩へのツッコミは無し?)」
「何を話してるの?」

 楽しそうに話す二人に聞いてみると、どういう訳か彼は目を瞬かせて動きを止める。
 驚いてるっていうか。ちょっとどうコメントしたら良いのか迷ってるみたい。

「すずか……その格好は?」

 私の格好?
 言われて自分の体を見てみると、白いロンググローブにロングブーツ
 青色をしたミニスカートに胸元には紫色のブローチにリボン。
 昔、テレビでこんな格好をした月の皇女様を見た事があるような。

「更にオプションパーツ!!」
「キミは一体なんなんだ!?」

 悩んでたら猫さんが飛びついてきて、思わず胸元で受け止める。
 結構猫ってジャンプ力あるんだよね。
 感心してたら尻尾が私の鼻元に来て、くすぐる様に動く。
 毛並みが良くってフサフサだよぉ〜。
 鼻がムズムズしてくすぐったいけど気持ち良いよぉ。

「にゃにゃ!(必殺猫の尻尾くしゃみの術!)」
「は、ハックチ!!」

 ボン!!!!


「……うにゅ?」
「……」(///ヱ///)
「にゃー」

 なんだろう。
 頭とおしりの方から変な感じがするんだけど。
 それに、彼を見てみると露骨に顔を逸らしてるような気がする。

「どうしたの?」
「あ、いや」

 ピコピコ。

「どうしたのそのカチューシャ?」
「いつも着けてるよ?」
「いや、そうじゃなくて」

 彼の疑問の言葉に手を頭へ持ってって、カチューシャを触ってみる。

「あれ?」

 いつも身につけている白のカチューシャに触れようとしたら、なにかフサフサしたものに手が触れた。
 両手で頭を抑えてみると、くすぐったい様な変な感覚と一緒にこれが猫の耳だと言う事が判った。
 あれ、でも頭の違和感が猫の耳だとするともう一つの違和感は。
 少しだけ嫌な予感がしながら、私はその違和感のする場所を振り返って見てみる。
 そしたら予想通りスカートの下から、猫の尻尾が柔らかな動きをしながら揺れていた。

「え? え?」
「えっと、取り合えず落ち着いてすずか」
「う、うん」

 困惑してた所に話しかけられて一旦自分自身を落ち着かせる。
 でも、落ち着いてから色々と考えてみると、この格好は結構恥ずかしい。
 只でさえ短いスカートだから少し動いただけで見えちゃいそうだし。
 それに尻尾もスカートの下から出てるから、何て言うか一層危なっかしい気がする。
 後ろ手で押さえてても落ち着かないし、やっぱり変な感じ。

「あ、あの……」
「な、なに?」
「……これ、どうなってるのかな?」
「僕に聞かれても」
「にゃー!(ここで更にもう一押し!)」
「わ、なに!?」

 突然子猫が自分の肩に上がって驚く彼。
 そのままその子は彼の頭の方で何かを割った。

「わっぷぷ、なんだこれ?」
「あ……」

 彼が自分の体についた物を払うと、なにか心地良い匂いが飛んできた。

「ぁ……ん」
「すずか?」
「ユーノ……くん」

 気が付けば何時の間にか彼に近寄る私がいた。
 どうしてだろう。身体が熱い。瞼が重い気がする。心臓が勢い良く動いてる。
 そんな気持ち良い様な、何とも言えない感覚が私を支配していく。

「ゆぅのくぅん」
「どうしたのすずか? ねぇ、何で猫撫で声なの? どうして瞳が潤んでるの? 耳と尻尾が動いてるのは何故?」
「んにゃーぁ」

 彼がなにか難しい事を聞いてくるけど、よくわかんない。
 やわらかそーだなぁ。スリスリしたいなぁ。ダメかな。
 ん〜……べつにいっか♪

「んに〜ぃ」
「腕にしがみ付きながら押し倒してきたー!?」
「くんくん」

 良いにおい。
 あったかい。
 きもちいい。
 おいしそう。

 あれ。
 なにかちがうかな。
 んぅ……ん〜、いいよね。

「ペロペロ」
「うわひゃぁ!?」

 ん、にげちゃだめ。
 じっとしてて。
 ね?

「つ、爪で押さえないで!? ちょっと痛いから、ね!?」

 いたかった?
 ごめんね。

「んにゃ」
「別の所押さえながら、爪立ててた所なめないでぇええええ!!!」

 ダメなの?

「そんな純粋な目で首を傾げられても」
「う〜、にゃぅ♪」
「あ、ひゃう!? やめって……くすぐった、ひやん!? やめて、頬もダメぇ!!」
「みゃぅ〜う〜」
「抱きついて動きを止めないでー!! あ、ダメだってすずか! 駄目! ダメ!! だめぇ〜〜〜〜〜〜〜〜!!?」



「予想以上の事態に猫、ビックリ!! 何か言われる前に逃げるが吉さ」

 トテトテトテ、ガチャ。

「それではサラバ!!」

 ライダージャンプ気味に空を跳ぶ。
 CG処理で何処までも遠くへ跳べるのが最近の凄い所。

「なんだ今のは?」
「ユーノくんと同じようなものじゃない?」
「フェレット以外も喋るのか」
「あ、はぁ……は、恭也さん忍さん!! 助けてぇーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ユーノ?」
「あ、ユーノくんにすず……か?」

 コスプレした(義)妹。
 押し倒されている(美)少年。
 着崩れしている二人(主に彼)の洋服。
 互いの顔を近づけながら(違う意味合いで)息の荒い男と女。
 そんな妙な暑さを持つ空気を放つ二人を見て、恭也と忍は満面の笑顔を向けて。





 パタン。

 閉めた。

「良いのか止めなくて」
「了承」
「御両人ーーーーーーーーーーーーー!!!!??」
「みゃぁ〜あ〜! みゃぅー♪」
「あ、だめ!? みみぃ……だ、だれか……たすけ……てぇ」
「にゅーのくぅん♪」



「所であの猫はなんだったんだ?」
「猫でしょ」
「猫が喋るかぁ!!」

 恭也がノリで蹴ったモニュメントが砕け飛び。
 そこら辺を飛び跳ねていたMIBの方を打ち落とした。



 数日後。
 無限書庫司書長室にて四人の女の子に囲まれるユーノの姿があった。


「ゆ、ユーノくん」
「ユーノさん♪」
「あの……なのは、リイン、それにアリサまで」
「あ、あたしは嫌だって言ったのよ! でもすずか達が無理やり」
「でも、可愛くて似合ってるよアリサちゃん」
「なんで皆でそんな格好してるの!?」

 四人が着ているのはすずかが着ていた物と同じ。
 色違いの某美少女戦士のコスチューム。
 リインはX2バージョンなので、色々と危険な香りを漂わせている。
 ような気がする。
 ちなみにネコミミと尻尾は今はまだ無い。

「ユーノくん。この格好が好きだって言うから」
「言ってない言わない言う訳ない!! 誰が言ってたのそんな事!!?」
「誰か」
「だれ!?」
「ユーノさん……似合いませんか?」
「い、いや……みんな可愛いし合ってると思うけど」

「ここで再び猫、参上!」
「なにぃ!?」
「猫の策謀パートU!!」
「マタタビぃいいいーーーーーー!!?」

「わ!?」
「ふぇ?」
「きゃぁ!?」
「ん♪」

 四人からポンと楽しい音が立つと、全員に色違いの耳と尻尾が現れる。
 それぞれ耳や尻尾がが動くのを驚いてたり楽しんで確認する。
 尻尾を確認するとき、ちょっと見えそうになるがそこは紳士。
 顔を赤くしながらも直視しないように心がける。

「みんな変わったみたいだね♪」
「そうだけどすずか。あんたが一番楽しんでない?」
「されじゃぁみんなネコさんに変わったと言う事で」
「ユーノくん♪」

 四人のネコミミ少女に囲まれ、追い詰められたユーノ。
 じりじりと壁際に追い詰められ、逃げ場が立たれた彼に待っていたのは。


 ここから先は皆さんのご想像次第。
 最後に書いておくなら、司書長室では何種類もの猫の鳴き声が聞こえ。
 布の擦れ合う音や何かを嘗める音、司書長の艶めかしい悲鳴も絶えず聞こえてきたと言う。


 作り話の未来はもういらない。
 形のないリアリティ感じてるかい。
 騒がしい情熱に言葉なんていらないさ。
 熱くなる身体、心、冷めて逝く誰かの瞳。
 強くなる意味を何時か判る時もっと強く。
 BELIEVE YOURSELF 明日へ。
 熱くなる身体、心、それに只従う本能。
 強くなる想い願い。それにただ独り動く。
 BELIEVE YOURSELF (彼に)明日はあるのか。



 薄れ逝く意識の中でユーノは思った。
 このオチ、冒頭のシーンでは予想すらしてなかったよ―と。
 作者もこんな風になるとは思わなかったが同情はしない。
 無計画のままでも突っ走る。それしかできないそれが私のクオリティ。






 前回の荒筋。
 メビウスが爆発してるあたりで、なのは達は企業会社製作ロボと対峙していたよーな気がする。
 いや、違った。リインフォースが大きくなったらなのはの嫉妬ゲージも上がり、巻き添え親友二人が温泉でユーノフラグを立て創めたっぽい。
 ついでにサラリーマンが仕事サボってなのは達にデュエルを吹っかけてロボット出してきた。以上。



 巨大な建物を下から突き上がりながらぶち壊し、その巨体を現した懐かしのロボットダイ・ガード。
 青空に輝く太陽に照らし出されてその赤く輝く装甲の色が際立たされて映し出されるその雄姿。
 赤い装甲は建物との無理な衝突により彼方此方凹んでいたり、裂け目が出来たりオイルが噴出したり腕がもげてたり。
 角は半分くらい折れて緑色の眼は中身の機器がモロに見え、間接部からは今にも崩れ落ちんばかりに脂の切れた鉄同士が擦れ合う音が響く。
 勢いよく召還されたロボットダイ・ガードは、最初からクライマックスだった。

「そ、そんな……僕の夢のロボットが負けるなんて」
「自滅しただけでしょ」
「僕の……負けだ」

 アリサの突っ込みを全く聞いていないサラリーマンマスオは勝手に負けを認めた。
 その後、彼は「これからは寄り道しないで家に帰ることにするよ」とだけ言い残し、元気良く手を振って去っていった。
 何故か異様に晴やかな表情だった。


りりかるなのは? 廬山!×亢龍!+覇王!?=後は一気に墜ちるのみ


「これで良いの。しかし、また何時か新たなる何かが」
「なのはさん、なのはさん。まだ終わってませんよ」

 閉めに入るなのはを珍しくリインが止めた。
 そして、二人が適当に雑談を始める中、アリサは薄々この後の展開を予想していた。
 やがて二人がユーノとすずかがいない事に気付き、慌て始めるとその予想は確信に変わる。

(ああ……あの頃が懐かしい)

 戻らない日々に思いを馳せながら、アリサはすずかに最後に言われた事を思い出していた。


『わたしが途中でいなくなったら、なのはちゃん達に温泉に行くように伝えてね?』


「本当に何を考えてるのよすずか」
「アリサちゃん(さん)」

 ポン。
 ゾクッ!!?

 手で額を抑えた直後両肩を軽く叩かれ、イヤ掴まれる。
 軽く触れられた筈なのに、異様に重く圧し掛かるような、それでいて奇妙な冷たさを感じさせる中、おぞましい熱気が背中越しに伝わってくる。


「ユーノさんの場所を知ってるんですかぁ〜?」
「それと、すずかちゃんは何をしてるのかなぁ〜?」
「な、なんで二人とも語尾が延びてるのよぅ?」

 暗い雰囲気を纏いながら問い掛ける二人に、涙目になりながら聞き返す。
 だが、そんな愛らしい懇願など恋する網膜暴走機関車特急・二人は恋愛バーストハートには通用しない。
 この状態だとむしろ一般常識など、ゴジラを目の前にした国会議事堂に等しい。

「アリサちゃん。すずかちゃんとユーノくんの居場所……教えて欲しいな?」


 笑顔が恐かった


「す、すずかの場所は知らないけど……ユーノなら温泉に行ってると思うわよ」
「温泉ですか。ありがとうございますアリサさん」
「あ!? リインフォースちゃん抜け駆けはズルイよ!!」

 機動戦士が飛び立つような駆動音の後に、これまた機動戦士の如く飛び立つ二人。
 青空に霞む二人の姿を見ながら、ここらは一体どんな立地状態なのかと疑問に思うと同時に、腰が抜けてその場に座り込むアリサ。

「たすかったぁ?」

 思い切り脱力すると、アリサは一息吐いてからこれまでの事を思い返す。
 半分興味本位で首を突っ込んだのが間違いだったと本人も後悔している。
 だけど、それで命の危機に曝されるのは、幾らなんでも割に合わないと思う。
 もうこれ以上深く係わるのはよそう。
 アリサはフッと乾いた笑みを浮かべた。
 そこで立ち上がろうとした時、不意にお腹の方から空腹の訴えが上がる。

クゥ〜……

「……ぅ」

 お腹を押さえながら、周りに人がいて今の音を聞かれてないか見渡す。
 当然だが周辺にはすでに人の姿はなく、あるのは瓦礫の山とスクラップと化し、何処か激戦を繰り広げたように見えるダイ・ガードだけ。
 ホッとしつつ、アリサは取り合えず近くで適当に腹ごしらえでもしようと歩き出す。
 なのは達の事は色々ともう……諦めた。

(すずか…何も出来ないあたしを許して。ユーノ……自業自得なんだから収拾はつけなさいよね)

 何かを画策してそうな親友と、争いの中心点の男に心の中で語りつつトボトボと歩く。
 アリサ……一時戦線離脱。


 は、問屋が卸さなかった。

「お前!! そんな所で何をやっているんだ!」
「え!? な、何って、アンタこそなによ!?」
「私か? 私は料理大臣だ!!」

 料理大臣を名乗る男は、瓦礫と化した旅館の元厨房で中華料理を作っていた。
 何故かコンロや調理台といった器具は無傷で、ガスの元栓は無事だったのか止め処なく炎が噴出る。
 熱き濃ゆくクドイ顔のおっちゃんが中華鍋を巧みに操り、時折炎を舞い上がらせながらチャーハンを炒める。
 その姿、正に炎帝!!


 この時アリサは思った。
 自分は多分、もう元の日常には戻れないだろうな―――と。
 呆然としているうちに、何時の間にかどこぞの厨房へと連れてかれているのに彼女が気付いたのは―――
 ウルトラマンが地球上にいられる時間(体感時間は除く)ぐらい掛かった。



 時間は少し遡る。
 鈴鹿の言い付けを護ったアリサに指示された通り、温泉へ向ったユーノ。

「ふぅ……温泉かぁ」

 入浴道具一式持って脱衣所で着替えを行なう。
 彼の一挙一動に周りの野郎共がちょっとドキドキしている事に本人は気付いていない。
 中には何故女の子が!? と驚いてるのもいるが、そんな事は知った事ではない。
 そして、ユーノが服に手を掛けて一枚一枚服を脱いでいく度に野郎共の心拍音が高まっていく。

(何だか変な空気を感じる?)

 シュルッシュル……パサッ。

 白くしなやかな細腕、髪に弱冠隠れるうなじが服を脱いだ時に垣間見え、整った顔立ちと相まって危険な香りを漂わせる。
 書いてて変な感じになってきた。
 もう良いや、一気にいこう。




パオーン!!


(男!?)
(う、嘘だろ!!? 俺は何を信じればいいんだ!?)

 馬鹿な男共の心の叫びがBGMの如く脱衣所に流れ溢れた。
 そんな事液知らず、タオル一丁になりながらユーノはお風呂場へと向う。
 始めに頭、次に体を丁寧に洗ってからお風呂へ入る。
 濡れた髪が光沢を放ち、俯くと少し長い髪に顔が隠れて妖しい色気を人々に見せる。

「ふぅ……ん」

 髪を掻き上げ、お湯に足をつける。
 少し熱目だったのか一旦足を話し、次はゆっくりと足を湯船に漬けていく。
 その動作が妙にエロく見えて、近くにいる野郎共は既にのぼせ気味で中には鼻を押さえているものまで出る始末。

「良いお湯だなぁ」

 周りの視線が気にならなくなるくらい、心地良さに身を委ねるユーノ。
 暫く内部の湯を堪能していたが、外にも温泉があると知って表に出る。
 彼の出た後の室内温泉では、赤色をした新しい温泉が湧き出ていたとか何とか。

「わー、良い景色」

 所々岩が立ち並ぶ露天風呂。
 何故かユーノ以外に人の姿はなく、貸切と言って良い位だ。
 疑問に感じたユーノだが、そんな事もあるだろうと割り切り奥のほうへと進んでいく。
 適当に座れそうな所を見つけ、腰にタオルを巻いたまま湯船に浸かる。

「気持ち良いなぁ〜。そう言えばここの人達って皆頭にタオルを乗っけてるけど、なんでだろう?」
「それがマナーだからだよ。ユーノくん」
「ふーん。そうなんだ」

 すずかの相打ちに短く返す。
 カポーンと遠くから聞こえるような音に心癒されながら、二人は同時に一息吐く。

「「は〜……」」





「すずかーーーーーーーー!!?」
「どうしたのユーノくん?」

 盛大に水飛沫を上げて驚き、手が滑って転びかけるユーノ。
 慌てまくりである彼に対してすずかはキョトンとした表情を向ける。

「ななな、なんで。ここ男湯だよ!?」
「ユーノくん、ここは露天の方は混浴だよ♪」

 笑顔で答えるすずか。
 そこには策略とか腹黒さとか、そういったダークサイドは見当たらない。
 純粋に楽しんでると言うのが正しい答えだろう。
 何にと聞かれれば、それはNOアンサーと返させて貰います。
 敢えて言うなら、無垢な子供ほど残酷なものは無い。

「ぼ、僕男湯に戻るよ!」
「ユーノくん。私と一緒にいるのって……嫌かな?」

 俯き加減に呟かれた言葉に足が止まる。

(うっひょー! やるねぇお穣ちゃん)

 黙れ。
 初期ガンダムに乗り換えて出番を無くした死亡フラグ男。

 ソレはさて置き、ここで一気に走り去れば、ヘタレとして妙な自体にはならないだろうに。
 それが出来ないのが彼であり男の性。
 仕方が無いので、ユーノは再びお湯に方まで浸かる事にした。
 仕方が無いだろう。だって男の子だもんさ。

 すずかは色々と考えてて背を向けたままのユーノに近づき、その背中に寄り添うようにくっ付く。

「す、すずか!?」
「ユーノくん。温泉、気持ち良い?」
「ぁぁ……うん、きき、気持ち良いよ!?」

 背中に感じる二つの福与かな感触に意識の九割を持っていかれながらも答える。
 頭の中で繰り広げられる、理性と欲望の闘いの状況を語るならこんな感じであろう。
―やめてよね。本気で迷ったらキミ(理性)がぼく(欲望)に適うはずがないだろ?―
―うわぁあああああああああああ!!―

 と、するならすずかの頭の中では歌姫か偽者か最終話で散ったタカビー女がいるのだろうか。
 なんて限りなくどうでも良い事を思ってしまうくらい動揺しているようだ。
 混乱に比例するように心臓の鼓動が異様に早く鳴り響く。
 同時に二人の体温も徐々に上がっていく。

―あああ熱い、いや厚い? なんでこんなに熱いかなぁ?
 あ、これは体温じゃなくて温泉の熱? あっはっは、やっぱり温泉は早めに上がるのが良いね。
 うん。いくら気持ちよくても長く浸かりすぎちゃいけないよ。
 背中に気持ちよい感触があっても、心地良くってもほらもう逆上せそうだしねー。

 思考さえ呂律が回らなくなってきたようだ。

(こ、このままじゃ拙いよ色々と!! な、なにか。なにかこの場を乗り切る良い手は?!)

 己の欲望との板ばさみによる葛藤。
 折角の幸福を捨てるような事をユーノは祈り願った。
 そして、その切なる願いは見事に聞き入れられた。






「ユ〜ノさーん♪」



 悪魔っ子に






〜Nanon〜
嘘予告・需要があればそのままプロローグ




 夢。

 夢を見ている。

 毎日見る夢。

 終わりのない夢。




 駅前のベンチで一人の少年が座り込んでいる。

 雪の降る中、頭に大量の雪を積もらせて、体を震わせながら。

 唇の色は紫。もう既にヤバ目な感じだった。



「遅い…」

 何をやっているのだろうと思いながら、近くにある時計に眼を向ける。
 僕は今、迎えに来るはずの従姉妹を待っている。
 家が発掘業を営む両親が海外への仕事へ掛かる為の転勤。
 まだ自立が許されない僕は、これから来る従姉妹の家に厄介になる事になっている。
 約束した時間は1時、現在は3時を指している。
 待ち合わせの場所は間違えていない筈。
 何かあったのか。

「……」

 身体を震わせながら不安に思ってると、目の前に一人の少女が屈んでこちらを覗き込んでいた。

「雪……積もってるよ?」
「……それは、二時間も待ってるからね」
「わ、びっくり」

 全然ビックリしたようには見えないよ。

「まだ二時くらいだと思ってたよ」

 二時でも一時間の遅刻なんだけど。

「ねぇ」
「なに?」
「寒くない?」
「正直……寒い」

 ここで体裁を作る余裕なんて微塵も無い。

「だよね、ごめんね」

 彼女が申し訳なさそうに誤りながら、頭に積もった雪を払ってくれた。

「七年ぶりだね……わたしの名前、まだ覚えてる?」
「そっちこそ僕の名前、憶えてる?」

 そして、二人で笑い合いながら、一拍置いてから名前を言う。

「ユーノくん」
「久遠」


「違うよ」
「なのほ」
「……本気で言ってる?」

 そう言った彼女の瞳は陰で隠れ、口元はニヒルな笑みを浮かべていた。
 拙いコレ、選択肢が出たら9割方死亡ルート確実だよ。

「これ以上ここにいると本気で風邪引きそうだね」

 ベンチから立ち上がりながら、荷物を背負って歩き出す。
 苦しい話題の変え方だと自分でも思うけど身の危険は出来る限り避けたい。
 そんな僕に後ろの方から恨めしそうに、ちょっといじけた様に彼女は佇んで訴え続ける。

「わたしの名前……」
「そろそろ行こうか」

 これ以上は可哀そうかな。
 それに色んな意味で危ない。


「なまえ」
「いくよ、なのは」
「ぁ……うん♪」


 数年ぶりに戻ってきたこの町で――――


 僕は少女達と出会う。



〜Nanon〜



嘘になるかは本当に需要次第。



多分無いだろうけど(笑)






Nanon 配役位置づけ一覧

初期案

水瀬名雪 )的位置 高町なのは 「わたしの異名、まだ覚えてる?」
水瀬秋子 )的位置 高町桃子orリンディ・ハラオウン(投票求む)
相沢祐一 )的位置 ユーノ・スクライア
月宮あゆ )的位置 リインフォースU「約束……ですね」

沢渡真琴 )的位置 ヴィータ「おめーだけは絶対に許さねーからな!」
天野美汐 )的位置 シャマル「そんな酷な事はないでしょう!?」
ピロシキ  )的位置 紫電改「ニャンダフル!」

美坂 栞 )的位置 月村すずか「起きないから奇跡って言うんだよ?」
美坂香里 )的位置 アリサ・バニシングス「あたしにすずかなんて知り合いいないわ」

川澄 舞   )的位置 フェイト・T・ハラオウン「わたしは、SEED(種)を狩る物だから」
倉田佐祐理 )的位置 八神はやて「うちはちょっと頭の悪い、普通の関西人ですから」


北川 潤   )的位置   クロノ・ハラオウン―誰かのクセッ毛を移されたらしい。
栞の友達  )的位置   石田医師? ―出番的に。
久瀬 何とか)的位置   仮面の男 嫌味キャラに適してそうだから。
斉藤 完とか)的位置   アレックス・ランディって言うか局員―顔すら出てないから局員になると思う。
その他  同様


 実際、真琴の位置にアリサを持ってくるか。栞の位置にはやてを移動させようか本気で迷う。
 サブキャラは結構的を得てると思うんだけどな〜。他に配役良い候補無いか?

 ん、なんで突然こんなクロスしたいのかって?
 それは最新のアンソロ買って、理性がキャストオフフルバーストオーバードライブしたからさ。
 奇跡再び! 栞のストールが四次元なんだよ!! 大胆なんだよ!!笑顔が良いんだよ!!
 またキたんだよ!! あの感動が甦ったんだよ!! だっつんだよ!!
 想像してみるんだ!! リリカルヒロインであの名シーンをやったとしたら……

リイン「リインの事……忘れて下さい」
なのは「遅れたお詫びだよ……それと私の気持ち」
すずかorはやて「わたし……笑ってられたかな?」

 良くね?
 え? 俺だけ? そうか病んでるのは我輩だけか。
 畜生orz






 その日の無限書庫もやっぱり〆切に追われていた。

「あははははははははははははははははは」
「いひひひひひひひひひひひひひひひひひひ」
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
「えへへへへへへへへへへへへへへへへへ」
「おほほほほほほほほほほほほほほほほほ」

 近寄りたくない雰囲気を醸し出す司書達。
 それでも作業は続けている分彼等は優秀と言えよう。
 書庫内の空中其処彼処に漂っている他の局員を見る限り、そうとうキツイ状況にある事が窺える。

「あ〜、やっぱりキツイな司書長がいないと」
「だよね〜。絶対人員の割け方間違ってると思う」
「これで足りるのはやっぱあの人が凄いってことだよな〜」

 辛うじて精神崩壊が起きていない組がぼやく。
 そう、今この無限書庫の司書長ユーノ・スクライアは有給を使って少しの間留守にしていた。
 精々2〜3日程度の事なのだが、彼が留守にした直後大量の資料請求がきた為、最早既に機能不全を起こし始めていた。
 仕事場がそんな修羅場に立たされている中、ユーノは何処に入るのか。
 事情を知らない者からすれば、タイミングよく休んだと思うだろう。
 しかし、一月前の騒動を知っているものは、彼のこれから苦労に見舞われるであろうと予想していた。
 だから泣き言も最小限までに止めつつ、司書達は思った。

−司書長……どうか五体満足で帰って来てください。でないとここ、死人が出ます−


リリカルなのは 外伝話ほのぼの系?
 My Hert or You Hert

〜先延ばしにすると後で色々面倒なんだけど、やってしまうのが人間
 (そして断念するのも人間だから地味に後編に続く)編〜


 ここは八神家リビング。
 ソファーで寝転びながらリインフォースが嬉しそうにパタパタ足を振っている。

「〜〜〜♪」
「どうしたんだリイン。やけに楽しそーじゃん」
「えへへ〜、解りますか?」

 ヴィータの言葉に幸せ満杯腹一杯を体現する笑顔を向ける。
 純粋にして眩し過ぎる笑顔だった。後光まで見える気がするのは気のせいだろうか。

「って、何やってんだよシャマルにはやて」
「いや〜親としては子供の成長を誇張したいっちゅ〜か」
「ちなみにこのライトセットは局員さん達から頂きました」
「ふ〜ん」

 心底どうでもいいと思いながら、ヴィータはリインフォースを見る。
 まるで、これから楽しみがやってくる。そんな雰囲気が見て取れた。
 不意に彼女の頭の触覚のようなクセ毛がピコっと動いた気がした。
 同時に八神家玄関のチャイムがなった。

「あ♪」
「誰だ?」
「ふふ、リイン。お客さんやで〜?」
「はい。リインが出てきます」

 軽快な足音を立てながら、リインフォースが玄関へと走っていく。

「は〜、っとと! いけません。確認を怠っちゃいけませんね。どちら様ですか〜?」
「あ、リイン。ユーノだよ」
「はい! いま開けます♪」

 はやての言い付け、知らない人対策講座を律儀に護るリインフォース。
 彼女の褒めてオーラを感じたユーノは笑顔を向けながら優しく頭を撫でてやる。
 そうしてる内に、リビングにいた面々も集まってきた。

「よ〜来たなユーノくん」
「はやて、こんにちわ」
「うん。今日は一日リインをよろしく頼みます」
「そんな畏まらないでも良いよ」
「なんだ? どっか行くのかリインフォース?」

 ヴィータの言葉に幸せ一杯の笑みで返す。

「デートやもんな〜。そら楽しみやろなリイン♪」
「は、はぅ〜……はやてちゃん」
「あはは」

 頬に両手を当てて赤くなるリインと後ろ頭を掻くユーノ。
 何時の間にかシグナムがさり気なくユーノの背後に位置取り、レヴァンティンの柄を押し当て。
 首元にはシャマルが今にも刺さんばかりに待機させたクラールヴィント。
 ハッキリ言って脅し以外の何物でもないが、リインフォースが幸せそうなら何の問題も無い。
 なんでこんな事になってるのかと言えば、バレンタインのお返しの順番はリインフォースを最初にと言う家族愛の所為だ。

「ふ〜ん。でどこに行くんだ?」
「リインの行きたいところかな?」
「ん〜っと、別に決めてないです。一緒にいられるだけで嬉しいですから♪」
「ああそう」

 リインの言葉に甘いものを感じ、半ば呆れたように返す。
 甘いものは好きなヴィータだが、この甘さは何と言うか体が受け付けない。
 自分には関係無さそうなので家の奥へと戻っていく。

「あんまし遅くなるなよ〜」
「はーい」
「ほな、ユーノくんと楽しんでやリイン」
「はいです!」
「じゃ、行こうか」

 ユーノが促し、手を差し伸べるとごく自然に手を繋ぐリイン。
 一連の動作の間にシグナムとシャマルはリインの視界に入らないように退散する。
 黒服の方々もビックリな動きと働きを見せた彼女達に、はやてはグッと親指を立てて念話で賞賛を送った。

「さて、ヴィータも出かける準備して〜!」
「なにはやて? どっか行くの?」
「尾行や!」
「え?」
「冗談や」

 はやての言葉を一瞬本気にしてしまったヴィータ。
 ユーノはそれなりに信用できるし、なによりリインフォースが幸せそうなのを邪魔するようで嫌だ。
 だが、この後の言葉で尾行の方がどれだけマシだったかと思うようになる。


「リインフォース。この間はありがとう。これお返し」
「ありがとうございます。ユーノさん♪」

 今日はホワイトデー。
 と言う事で、知識と節度ある年齢にそぐわぬほど大人らしいユーノはバレンタインのお返しを渡す。
 綺麗にラッピングされた袋の中には単調だが、どこか手作り感のあるクッキーが入っていた。

「おいしそうですね」
「翡翠屋で教えてもらって作ったから大丈夫だと思うけど……」
「ユーノさんの手作りですか?」
「うん。ちゃんと味見したから、不味くはないと思う」
「ユーノさん♪」
「わっ!?」

 嬉しさのあまり抱きつく。
 ユーノは踏ん張るが、勢い余ってその場で回転してしまう。
 傍から見たらどんなバカップルだお前等と思える光景だ。
 抱きしめながら、つい頭を撫でてあげると予想通り気持ち良さそうに微笑む。

「ねぇリイン。どこへ行こうか?」
「んう? ユーノさんはどこへ行きたいですか?」
「うーん。じゃあ、僕が行きたいところへ行って良い?」
「はい」



「で、どうしてそこであたしの家にくる訳?」

 出迎えてみれば、独り身を苛立たせるみたいにこれ見よがしにくっ付くリインフォースとユーノがいた。

「この間のお礼に来たんだよ」

 詳しくはリリカルなのは 外伝話ほのぼの系? My Heart to You Heart 〜無意識下の行動って良く解らない編〜
 を参照してもらいたい。

「そう言えばユーノ。あんたなのはにあの時の事話したみたいね」
「うん。なんでか解らないけど、なのはが怒ってたのはなんでだろう?」

 自覚なし……本当に解ってないのかしら?
 意図して無い分、余計に性質が悪いわね。
 まったく、あの後あたしがどんなに恐ろしい目にあったか。

「どうしたのアリサ?」
「何でもないわよ」
「そう? っと、この間はありがとう。これ、大したものじゃないけど」

 言いながら差し出してきたのは、袋詰めにされたクッキー。
 以前のお返しと言うには、かなり安上がりに見える気がする。
 でも、見返りを求めていた訳ではないし、こういうのは気持ちだ。

「ん、ありがと」
「ユーノさんの手作りですよ〜」

 手作りと言う言葉に、少しドキッとしてしまった。
 あれ、でもちょっと待て。

「リインフォースも貰ったの?」
「はい、おいしかったですよ♪」
「……そう」

 自分だけじゃ無かった事がちょっと残念だった。
 なんだか一瞬、ムカッときたのは何でだろう。

「ど、どうしたのアリサ?」
「なに?」
「もしかして、クッキー……嫌いだった?」

 ユーノとリインが震えながら抱き合う。
 それに内心またムカッときながらも、それを出さないように振舞う。

「別に嫌いじゃないわよ」
「そ、そう。良かった」
「それで、これからどうするの?」
「次はすずかのところへ行こうと思ってるんだ」
「ああ、そういう事」

 全員にお礼を返しに行くと言うことか。
 でも、その子同伴っていうのは……何て言うか、好ましくないわよ。
 特になのはの前ではね。
 そう思いながらクッキーを摘んで食べる。
 結構美味しいじゃない。

「おいしい」
「良かった」

 後は少し談笑して、ユーノはすずかの所へ行った。
 そんなアッサリ行かなくても良いんじゃないかと思う。
 まったく、少しくらい女の子の事考えなさいよね。
 こんなのを好きなんて、なのはに同情するわ。
 そう言えば、なのははどうしてるのかしら。
 ユーノ、あんたもどうするつもりなの。





リリカルなのは 外伝話ほのぼの系?
My Hert or You Hert

〜先延ばしにした面倒事も何とかなる時は片付けよう
 (でも、それやると高確率で余り物が出る)編〜


 挨拶は爆音の後から行われた。

「こんにちわ。ユーノくん、リインちゃん」
「こんにちわすずか」
「こんにちわ。すずかさん」

 煙の立ち込める部屋の扉前で、三人とも煤だらけのまま挨拶をする。
 なんだか変な感じだなぁ。あれから結構経つのに、どうして爆発しちゃうのかなぁ。

「どう、調子は?」
「あはは」

 この惨状を見てその言葉は酷いんじゃないかな。
 確かに訪問していきなり爆発して吹き飛ばされたら嫌だろうけど。

「すずか、この間はありがとう」
「気にしなくても良いのに」
「そういう訳にもいかないからね」

 言いながら彼はラッピングされたクッキーを渡してくれた。
 そういう律儀なところも好きだな。でも、それで苦労する事も多いんだよね。
 無理はしないで欲しいんだけど、なのはちゃんが心配するのも無理ないよ。

「リインちゃんも貰ったの?」
「はい。アリサちゃんもおいしいって言ってましたよ」

 わたしは三番目か。
 ちょっと残念な気もするし寂しいかな。
 でも、それより気になるのは。

「なのはちゃんには?」
「これから」
「……大丈夫?」
「うーん。多分話せば解ってくれるよ」

 確かに普通なら大丈夫だったと思うけど。
 最近のなのはちゃんは、何だか様子がおかしいから心配だよ。
 なのはちゃん。この笑顔が自分に向けられてるって解ってる?

「じゃ、行くね」
「気をつけてね」
「そんな戦争に行く訳じゃないんだから」

 苦笑して返すけど、口元が引き攣ってるよ。
 多分自分でも解ってるけど、行かなくちゃいけないんだね。
 そんな貴方を私は見送るしか出来ない。
 それが胸が締め付けられるように辛い。

「またね、すずか」
「うん。またね」

 だからね、ユーノくん。
 せめてリインフォースちゃんを連れて行くのはやめた方が良いよ。


 その頃のなのはさん。

は〜やてちゃ〜ん♪ ど〜してこんな事するかなぁ?
「なのはちゃん。なしてルパン風な口調なんや?」
別に深い意味は無いよ? ただ、どうしてなのはがユーノくんの所へ行こうとするとシグナムさんが模擬戦仕掛けてきたり
 シャマルさんが診察の名目で閉じ込めようとしたり、ヴィータちゃんが珍しく自分から世間話しに来たりするのか聞きたいだけ?
「それだけでどうして全員を熨す必要があったん?」

 ここまで来るのに足止めを行なった三人は、その意図をなのはが理解した瞬間吹っ飛ばされた。
 シャマルさんはさり気なく睡眠薬使用を画策した瞬間組み伏せられ、その姿勢から超至近距離のSLBを喰らわされての重症だった。
 ヴィータ、シグナムはギャグ設定だったので、全身が真っ黒コゲになる程度で住んだ。
 そして、殺意の波動を醸し出すなのはの前に立つはやては膝が笑って震えまくっている。
 主達が最大級のピンチを迎えてる中、守護の獣は雷の女神の使い魔と乳繰り合っている為にこの場にはいない。

「リイン……どれだけ裏切られてもその優しさを忘れんでな……それがわたしの願いや」
「ここで語っても助けはこないの」

 ゆらり、と愛杖をゆっくりと掲げる黒い影。
 瞳の輝きは十字星を現し、その姿は冥府の王がペガサスの聖闘士に止めを刺す様に似ていた。
 だが、はやての仲間達は別の場所でエリシオン―――花畑で蝶々を追いかけ駆け回っている最中。
 獣は獣で花畑を追いかけっこしてる。必殺技を合わせて撃破という展開は望めない。

「あかん! 殺られる!?」

 桜色の魔力が込められ、まるで鉄球のようになったソレを振り下ろす。
 超破壊力を秘めた魔力の塊が床に叩きつけられ、幾重もの床をブチ破り穴が開く。

「ひぃぃぃ――――!!? ってあれ?」

 ブチ破られたのははやてのすぐ隣の床だけだった。
 あまりの破壊力にかなり大きい穴が開いているが、都合良くはやてには届いていなかったらしい。

「良いよもう……別に」
「なのはちゃん?」
「だって、もう……バレンタイン終わっちゃったもん」
「あ」

 杖を力なく伏せたなのはは俯きながら短く、とても悲しそうに呟いた。

「ユーノくんも来てくれなかったし……もう……いいよ」
「なのはちゃん」

 さすがにやり過ぎたかと、罪悪感を感じながらなのはを見る。

 顔を伏せている為に表情は窺えないが、肩を震わせて必死に耐えているのが解る。

「えっと……なのはちゃん」
「行こっか。はやてちゃん」

 何か、全てを諦めてしまったかのように覇気の無い口調。
 まるで消えてしまいそうな雰囲気を出しながら、なのはは背後を振り返り立ち去ろうとする。

「なのは」
「え?」

 突然呼びかけられた事に、と言うより聞き覚えのある声に驚き顔を上げる。
 まさかと思うより早く、とても合いたいと思っていた人物。ユーノ・スクライアが目の前にいた。

「こんにちわ。なのはさん♪」

 リインフォースと仲睦まじく腕を組みながら。
 なのはは目頭が黒いもので覆われ、はやては顔を青褪めて頭を抱えながら店を仰いだ。

(ゆ、ユーノくん、リインなんで!? なんで今ここで二人揃って来てるんやー!?
 わたし等の苦労が全部ぶち壊しやんかー!!?? シグナム達の死は何だったんやぁ!!)
「ふーん。そっか。そういうことなんだ。あは、あはははは」
「な、なのは?」
「ユーノくんのロリコン主義者ーーーーーーーーーーーーー!!!?」
「な、ちょっと待って!?」

 なのははアクセルフィンも行使せずに、凄まじいスタートダッシュを決めてユーノ達とは反対方向の通路を走っていく。
 危うくはやてが轢かれそうになったが、紙一重の所で横に飛んでかわす。
 ユーノは何となく予想してはいたが、実際に逃げられるのはちょっとキツイものがあった。
 兎に角落ち込むのは後にして走り出し、リインフォースも一緒になのはを追いかける。

「なのは待って!!」
「バカバカ、アンポンタン! おたんこナス!! 可愛い系ー!!!」

 脳裏に渦巻く不満、不平を叫び、さらには罵詈雑言、それも通り越して世迷言まで高らかに叫びながら突っ走る。
 なのはも自分でも勝手だと思っている。別にユーノは自分のものではない。誰と付き合おうと自分には関係ない。
 なのに何故こんなにも腹が立ち、落ち着いていられないのか。

<<それが嫉妬さ! 知りながらも突き進んできた道だろう!!!>>
「!?」

 かつて戦った変体仮面の言葉が脳裏を過ぎる。

<<キミは気に入らないと言うだろうがね>>
「気に入らないの……(ユーノ×リインの)流れに乗るのも、(純愛路線に)逆らわないのも!」
<<だが、(愛が)勝てないものもある>>
「!?」

 仮面の男の言葉に過去の戦いがフラッシュバックする。


「もはや止める術はない! 新しいカップリングが成立すればユノリンSSSが開始される!」
「え?」
「(ユーノの)理性は焼かれ…何かと(歓喜の)悲鳴は新たなカップリングの幕開けとなる!!」
「そんな!?」
「もはや止める事はできん! 人(ユーノ&リインファンクラブ)が数多持つ予言の日だ!!」
「そんなことお!!」
「(このSSSが始まってから)それだけの(ユーノくんとの)日々…重ねてきたのは誰だぁ!!」


「―――っ!!」
「なのは!」
<<ユーノくんはもういないんだよ。だが、心配する事はない。キミ(の妄想の中に生きる彼)もユーノくんだ>>
「え?」
「なのは! なのはってば!! ああっもう!!」

 必死に叫ぶが、なのはは冥王へ覚醒させられるような幻聴を耳にしていて聞こえていないようだった。
 埒が明かないと思ったユーノはリインフォースへ目配せすると、彼女は頷き魔力を行使する。

「フリーレンフェッセルン!!」
「生温いのぉおおお!!!!」

 リインフォースが発した魔力を無理やり且つ強引に自分の魔力を放出する事で霧散させる。
 種でも弾けているのかまたは別の要因か。その反応スピードは神速を超えていた。
 今の彼女はピザ屋を営めそうな気がする。凄まじき現代の侍の血筋。
 しかし、そこで無理が生じた。ヴォルケンリッターとの死闘。
 精神的な消耗に限界速度を超えた事による体への負担。
 それらが一気に重なり、なのはの身体が一瞬引き攣り硬直してしまう。

「ごめんなのは!!」
「へっ?」

 ユーノが両手をパンと叩くように合わせ、床に叩きつけるように置く。
 直後、なのはの足元の床が音を発して虎バサミの様に彼女を挟み込んだ。
 パラパラと欠片が舞い落ちる音が鳴り、少しの間静寂が辺りを包み込む。

「ここまでする必要あったんですか?」
「桃子さんの案だから大丈夫だと思う」

 曰く士郎さんの娘だから大丈夫との事。
 良いのかそれで……

「リンフォースもありがとう」
「いいえ、今日は楽しかったです。また一緒に出かかたいですね」
「そうだね」

 短く言葉を交わした後、リインフォースははやての元へ走っていく。
 残されたユーノは盛り上がった床に挟み込まれたなのはを助け出す。
 案の定、なのはは目をナルトにして気絶していた。
 もしコレで気絶してなかったらと思うと恐くなるが、後は計画を実行に移すだけだ。

「ぅぅ〜……」
「なのは?」
「……ひどいよ……ゆーのくん」
「……なのは」

 それは罠に掛けられた事に対する寝言なのか。
 ユーノはなのはの閉じた瞳に溜まっている涙を優しく指で拭う。

「遅くなっちゃたけど……ちゃんとお返しはするよ。なのは」



 で。

 目が覚めると視界一杯に星空が見えた。
 自分の置かれている状況が良く解らなかった。
 でも何処か冷静な部分で現状を把握しようとしようとしている自分がいる。
 なんで外で寝転がっているんだろう。
 何となく思い出したくない。
 けど、普段は褒められる頭の回転の良さが、つい先程までにあった事をアッサリ思い出してしまった。

「……ゆーのくんの……ばか」
「うん。ごめんねなのは」
「ふぇ?」

 頭から聞こえた声に、首を動かそうとすると止められた。
 優しい手が自分の頭に触れて撫でてくれる。
 この感覚に身を委ねたいと思いながら、眼が上がるだけ上に向ける。
 そこには月明かりを背にして、自分に微笑みかけてくれる彼の姿。

「ゆーのくん?」

 思考が追いつかなくて、呆けた声で語り掛ける。
 よくよく考えてみると、今の自分の状態はどうなっているのだろう。
 自分の頭は横に寝かされてて、彼がすぐ近くにいて、後頭部には柔らかいどこかで感じた感触。
 これは確か……

「僕の膝じゃ……寝心地悪いかな?」
「えっへ?」

 彼から紡がれた言葉を理解するのに数秒を要した。
 それから解る事はつまりそういう事で、それが恥ずかしくて、でも嬉しくもあって混乱しそうになる。

「はい、なのは」

 どうして良いのか分からないでいると、彼がリボンを結んでラッピングされたクッキーを差し出す。
 最初は受け取りたくないと少しだけ思ってしまった。
 けど、その思いとは裏腹に手が勝手にそれを受け取っていた。

「……もう、ホワイトデー過ぎちゃってるよ。ユーノくん」

 意地悪く呟いてみる。
 けど、彼はなにか考えがあるように笑って見せた。

「なのは、ここが何処だかわかる?」
「え?」

 そう言えば、ここは何処なのだろう。
 地面に手を乗せようと思うと、ジャリッとした感触があった。
 これは、砂?

「ここ……どこ……?」
「ハワイだよ」

 現在時刻3月14日午後23時50分。

「え……え〜〜〜〜〜〜〜〜!!?」

 なんで?
 どうしてハワイ?

「以前ちょっとあってね。日本から時間がずれてるから、ホワイトデーには間に合ってるよ」
「えぇと、えと」

 そういう問題じゃないと思うんだけどな。
 けど、精一杯彼が自分の事を思って行動してくれたという気持ちは伝わった。
 ここに来る前の経緯は複雑だけど。

「順番が最後ならゆっくり出来ると思ったんだけど、あんまり上手くはいかないね」

 苦笑しながら頭を掻く。
 そんな彼を見ていたら、さっきまでイラついていたのが何だかバカらしく思えてきた。
 冷静に考えると眼も当てられないと思うけど、そこは置いておく。

「ねえ、ユーノくん」
「なに?」
「これ、食べて良い?」
「うん。その為に作ったんだから」

 許可を貰ったので一口食べる。
 彼が私のために作ってくれた。
 それだけでもうおなか一杯になれそうなくらい嬉しかった。

「なのは。この後時間ある?」
「え? うん、特に用事はないけど」
「じゃあ、久しぶりにゆっくり出来るね」
「あ」

 そう言えば、二人きりでゆっくり過ごすなんて何時以来だろう。
 恋人なんて関係じゃないけれど、二人きりになれない事は寂しく思ってた。

「二人きり……だね。ユーノくん」
「だね」

 そう言って二人で笑いあう。
 久しぶりだった。
 その後は二人で並んで座って星を眺めていた。
 特にこれといった事はしないで、ただ話しをするだけだったけど。
 それがとても嬉しい事なんだって思えた。


「ユーノくん」
「ん?」
「これからも一緒だよね?」
「うん」






「ユーノくん」
「ん?」
「これからも一緒だよね?」
「うん」
「……よかった」

 ユーノの返事を聞いたなのはは、コツンと頭をユーノの肩に乗せる。
 ユーノもなのはの頭に手を乗せて優しく撫でて、自分の顔を近づける。
 海の見える星空の下、砂浜の上で月夜に照らされた二人の姿は一つに重なっていた。



 その影で泣いてる者達がいる事も知らずに……


リリカルなのは 外伝話ほのぼの系?
 My Heart to You Heart

〜先延ばし作業の後始末(壊)編〜


 管理局某所病院。

「ム〜。ム〜……モガもガ、モガもガモんももが〜……!!」
 (う〜ん。う〜ん……あくまが、あくまがやってくるぅ〜……!!)ガクリッ。
「フシュ〜コー……シュコーシュコーパーコパー! シューシュシューコーホーコホー……シュコー!!」
 (うぅぅ……エクスカリバーは鍛えなおされる! 平和の為にもう一度、ただ一度だけ……正義の為に!!)
「重症なんだか元気なんだか良く解らないお二人さん」

 悪夢に魘され、呻きながら包帯でグルグル巻きにされた腕を宙に伸ばすヴィータ。
 その隣のベットで酸素供給装置に全身包帯巻きのミイラ女となったシグナムが痙攣するかのように叫ぶ。
 珍妙な光景の足元で、ネコ(?)らしきナマモノが溜息混じりに呟いた。


「ムグ? ムンムムムームムムンムムムムンムム〜〜!?」
 (あれ?なんでおめーがここにいるんだ紫電改〜〜!?)
「シュ、シュコーパコパー! シュコー!!」
 (な、なにぃ紫電改! どこだー!!)
「ムッグムググ!! ムグーグ! ムグング、ムグムグッグムグンム!!」
 (ちょっとまて! 千切れる! 呼吸器、千切れるってシグナム!!)
「これでも会話が成立してるのが凄い」

「ムング、ムングムグーグムグムググンググムグング?」
 (っていうか、なんであたしたちはこんな事してんだ?)
「シュコー……シュコパコシュー」
 (言うな……主の命を全うできなかった我等には何も語る資格はない)
「ムグング、ムングムグググングムグングングムングググムググググ」
 (シグナム、そんな短くして話せるなら最初からそうしろよ)
「それが面白いのさ!」
「ムググムング」
 (帰れお前)
「シューコー!」
 (ヴィータ! 折角紫電改が見舞いに来てくれたのに、帰れとは何だ!!)
「ムッグー! ムググムグング ムググンムムムグムムンムグッグムッグング! ムムムグムムムンムググムグームグ!!」
 (うっせー!だからあたしはあいつ等に係わりあいたくないって言ったんだ! はやてが言わなきゃ誰が行くもんか!!)
「飼い主に忠誠誓うその姿は哀愁を感じるネコ」
「シュコンココーー! シュコーコーホー! コホー!!」
 (紫電改ーー! 私も忠誠心は誰にも負けてない! 紫電改ー!!)

ブチッ!

「シュこ!?」
 (うグ!?)
「ムガッ?! ムガンム!?」
 (えっ? シグナム!?)

 テコテコテコ……ピトッムニゅン。
 ネコ、胸に手を置き脈拍計り中。
 ・・・ピー。

「……返事がない、ただの屍のようだ」
「ムゴー!!? ムググー!! ムゴムゴムー!!」 カチカチカチカチカチ!!!
 (うわー!!? はやてー!! 看護婦さんー!!) ナースコール連打!!!
「この膨らみでデンプシーロール!!」
「ムゴムガー!!」
 (遊ぶなー!!)


 病室の外。

「なにしてるのはやて?」
「いやーなんや楽しそうな事してるなぁ思て」

「し、しでんかい……うふふ、しでんかいのにくきゅうが〜ぷにぷに〜……がふっ」
「む〜ぐ〜ぐ〜!!」
 (は〜や〜て〜!!)
「そろそろ集会があるので失礼します」 ピョイン。ネコ退場。
「そんな、しでんかい〜……」 プルプル……
「ムングムムムムムグムグ〜!!」
 (そんな体で動くな〜!!)

「そう言えばシャマルさんは?」
「シャマルは今頃べムスターと戦ってるかババルウ星人に氷付けにされてる頃や」
「にゃ!!」
 (胸に輝く丸は流星!!)
「関係ないでしょ?!」
「そないな事言うてもなぁ。これ自体ラジオに対しての時期ネタやし」
「ブッチャケすぎだよ!?」
「にゃ〜」
 (惜しむらくはパーソナル絵が無い事)
「いや、普通にいらないでしょ」
「でもあるのと無いのとでは雰囲気が結構違うもんやと思わへん?」
「う〜ん。どうだろう?」
「にゃにゃん」
(何気に上手く進めそうな気がするこの二人)

「し・・で・・・ん・・・・か・・・・・・ぃい〜〜〜〜〜!!」 ズルズル……
「ムゴォォオオオオ……ムグゥ〜」 ガシッズルズルズル……
 (待てぇぇぇえええ……とまれぇ〜)

 這いずって出ようとするシグナムを必死に止めようとするヴィータ。
 この騒ぎが原因で、二人の入院期間が長引いたのは言うまでも無い。

「にゃ?」
 (病人はちゃんと寝てなきゃダメだよ〜?)




「ちょ、ちょっと待って!? なのはは!? なのはの出番は!? ユーノくぅ〜〜〜ん!!」 パタパタ!!
「リインも! リインも忘れないでほしいです〜!!」
 ピョンピョン!!
「……わたしも負けないよ?」


 ……多分、神なるG−(仮名)さんの効果で凄い事になってるよ。
 と、勝手に名前を出す愚か者。
 みんなはこんな駄人間になっちゃ駄目だぞ!♪
「にゃ」
 (みんなも気をつけよう!!)






 世界はこんな筈じゃなかった事ばかりだ。
 いくら否定したくても、現実は何時もそこに在る。
 そこに到るまでの過程は知る由も無く。逃れようも無く。
 世界は人を弄んでいるのではないだろうかとさえ思えてしまう。
 どれだけ世界を怨もうと、起こってしまった事柄は変えようが無い。
 変えようが無い物事。それを人は運命と呼ぶのだろうか。
 ならば、ここに在る現象は運命の悪戯による物なのか。

 背中には普段はほとんど前に出ようとはせず、儚くも強い優しさを持った可憐な少女。

「ユーノくんの肌って綺麗だね」
「あ、ありがとう」

 背中に腕を回し、後ろから頬擦りしてくるから背中に感じる福与かな感触が気になるけど、今はそれ所じゃない。
 隣には何故か雪の日に散り、夜天の空へと還った悲しき人の姿をした空を思わせる無垢だった少女。

「ユーノさん。あの、リインの身体、どうですか? あの……その、えっと……色々大きくなったと思うんですけど……ユーノさんは……おおきぃのと……ちっちゃいの……どっちが、すきですか?」

 隣から色々と危険な事に繋がりそうな発言が聞こえてくる度に、体中から嫌な汗が流れ出る。
 逆上せからくる汗ではなく、過度の緊張から来る汗がダラダラと異常なほどに流れていく。
 その原因は背中と隣にいる少女達も十分起因しているが、それ以上の理由が目の前にある。

「ユーノくん。すずかちゃんと一緒にお風呂入ってて楽しそうだね♪」

 体液がダラダラと流れ出る。ような気がする。
 身体中の血の気が引いていく音が聞こえた。んじゃないかと思った。
 そして、意識は一旦ブラックアウトした。



りりかるなのは? 修羅場!×告白?=急展開?!


 作者が面倒になってしまったのでここからはうすた京介風ダイジェストでお楽しみください。
 なのは達はユーノを求めるあまり暴走し、禁忌のアテナ・エクス・クラメーションを発動して世界を崩壊させてしまう。
 アリサは途中で厨房のオバちゃんから伝説の出刃包丁を譲り受けた御蔭で事なきを得た。
 すずかは音叉を使って夜の一族の本領を発揮し、超人的肺活量で悪魔の実ビックリな波動を出してなんとかした。
 当時の事をリインはこう語った。

「あれは本当に複雑でしたね。皆さんなのに皆さんじゃないみたいな……恐くなかったって言えば嘘になりますよ」

 その後のバトルも本当に凄かった。新しくデバイスを手に入れたアリサがやっぱり手強く、燃えていた。
 デバイスの無い(不要な)すずか、なのは、リインは熱血系のノリで目立った。
 ここでなのはにインタビュー。

「う、て……ジェネシス……ごふ」

 (2)憎しみの果てに、雄々(00)しき少女達は立っていた。その名(7)は世紀末が過ぎようとも決して失われる事はないであろう。
 2007年愛憎渦巻く憎しみなの♪(語呂で覚えよう!!)
 巻き込まれたユーノはとんでもない災難だった。
 最後に残った状況は四人による視線攻撃。ユーノの絶体絶命の危機、ここで最強の救い手が現れた。

「あ、彼方はホモおだ――」
「ちがーう!! カメーン・ノリダー参上、ニッ☆(キラン)」
「ドゥエーイ! 分身岡村参上ニッ☆(キラン)!!」
「おじんがーZ」

 時空を超えた伝説のお笑い戦士の登場で、なのは達と分身岡村は崖から足を滑らせて転がり墜ち爆死。
 凄まじき激闘の果てに、世界は救われたのだ。


 そして10年後―――


「ふふっ懐かしいなぁ」

 アルバムを開きながら、昔を懐かしみ微笑むユーノ。

「あれ? ユーノくん。なに見てるの?」
「ん、これかい? なんだと思う?」
「え、なになに?」

 その問いに、ユーノはフッと微笑んで晴やかな笑顔で答えた。



「ひ・み・つ♪」
「可笑しなユーノくぅん」

 それは、ちょっと切ない秋の午後の出来事だった。




 りりかるなのは? シリーズ





  





「はっ!? ゆ、夢か……恐ろしい……って言うか別の意味で凄い夢だった」
「どんな夢見てたのよあんたは」
「うわっ!? あ、アリサ?」

 突然話し掛けられ、身体全体で驚きを表現してしまうユーノ。
 振り向くと、旅館の物と思われる着物を着たアリサが呆れたような顔をしてそこにいた。

「なによ?」
「アリサ、今までどこに?」
「それは聞かないで、お願いだから」

 フッと何かが燃え尽きたような雰囲気に、色々あったんだと心の中で納得する。
 それは良い(のか?)として、現在どんな状況なのかが今一理解できなかった。

「僕は一体……」
「アンタは脱水症状で倒れたって聞いたわよ」

 一体どれだけ汗を流したのだろうか。
 そう言えば身体が異様に干乾びてるように思えたのはその所為かと、ヤケに冷静な頭で納得できた。
 超古代の戦士も、こんなカラカラな気持ちでグロンギを封印していたのだろう。
 深く考えると凄い事になりそうなので、話しを真面目に戻そうと試みる。

「あ、あのさ」
「な、なに?」
「えっと……」
「ん……」

 駄目だった。
 なにか良い案は……というかこの状況は一体なんなんだ。

「あ、っと」
「だから……なによ?」
「ええっと」

ぐぅ〜。

 何かが鳴った。
 アリサにしてみればつい先程聞いたばかりの音。
 ユーノからすれば、かなり気恥ずかしい空腹音。
 緊張の連続、それから来る疲労など諸々の理由で彼の胃袋は栄養を欲していた。

 沈黙。
 僅かな間の後、二人は釣られた様に笑い出す。

「ユーノ、アンタってなんかハラペコキャラみたいね」
「そんなことないよ」

 アリサの言葉に反論するユーノ。
 しかし、彼の言い分とは裏腹に、胃袋はアマダムが電気ショックを欲するように空腹を訴える。

「仕方ないわね」

 アリサは一息吐くと、立ち上がって一旦部屋から出る。
 次に戻ってきたときには、両手で豪勢な料理を載せたお盆を持ってやってきた。
 そして次々に並べられていく料理の数々。
 一流シェフが作ったような品々がユーノの前に並べられていく。

「す、凄……これ、アリサが?」
「成り行きで……ね」

 本当に遠くを見つめながら、いや眺めながらアリサは語る。
 何故か彼女の視線の先に夕日が沈む光景があり、東方は赤く燃えている感じに見えた。
 そこに自分とはまた違う苦労を感じ取ってユーノは涙ぐみつつ、アリサの手料理を堪能させてもらった。

「ちょっと待って〜〜〜〜〜!!!!」
「うわっ!?」
「きゃぁ!?」

 突然の強襲に思わず食べていた物を噴出しそうになるユーノ。
 アリサはアリサで、何とも言えない程に心臓が激しいビートを刻む。
 二人の反応を無視しながら、来訪者なのはは両者の間のちゃぶ台に手を叩きつける。

「どうしてアリサちゃん、そんなにユーノくんと仲が良いの!?」
「な、仲って……別に何でもないわよ」
「それにしては、とっても楽しそうでした」
「り、リインまで!?」
「ふふ、大変だねユーノくん」

 なのはとリインに比べて、物凄く余裕のある態度を取るすずか。
 一体なにを考えているんだろう。

「と、取り合えず落ち着いてなのは」
「そうだよ。お食事のときは静かにしなきゃ?」
「ぅぅ〜〜〜〜」

 そう言いつつさり気なくユーノの隣に座るすずか。
 それに気付いたなのはは一層機嫌を悪くして唸り講義の視線を向ける。

「別に恋人同士って訳じゃないんだし」
「そ、それはそうだけど……でも、その……ぅぅ〜!!」
「すずか……あんたね」
「リインはユーノさんの事、好きですよ?」

 ビシィ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 リインフォースの発言に、彼女達の中空あたりにある次元の狭間で電光が迸った。
 一気に空気が重くなり、張り詰めたような感覚が支配する。
 その居心地の悪さにユーノとアリサは顔が真っ青だ。
 なのはは奮えるほどに握り拳を作り、青筋を浮かべながらミシミシと音を立てている。

「ふ、ふーん。そうなんだ。よかったねぇユーノくん」
「な、なのは?」
「アリサちゃんもユーノくんの事好きだよね?」
「え?」
「ほう?」
「す、すずか!? あんたなに馬鹿な事言ってんのよ!?」

 突然妙な形で話題を振られ、更にギランと光る瞳を向けられて慌てふためくアリサ。
 そんな彼女をすずかは変わらない笑顔を向けている。
 それが何故か色んなことを見透かされてるようで、何か恐い。

「べ別に、あたしは何とも思ってないけど、そう言うすずかはどうなのよ?」
「わたしも好きだよ? ユーノくんの事」

 至極アッサリと言い切った。
 どうしたのだろう今日の彼女は。
 何時の間にか色々からかわれたり恋したりしたのだろうか。
 そんな風に返されると、逆に質問した方が困惑する。

「え、あの……すずか!?」
「なぁにユーノくん?」

 これで一番困るのはユーノだ。
 どう受け止め、どう答えろと言うのだろうか。
 取り合えず、背中になのはからの視線が感じ取れて異様に寒気が感じられる。
 不味い。これは確実に分岐点だ。下手に選べば……死ぬ。

「す、すずか……あんたキャラ違くない?」

 友人の態度に違和感を感じ、ある意味願いも込めて尋ねるアリサ。
 なのはとユーノも、うんうんと首を小さく振って同意する。
 それに対してすずかは人差し指を口元に当てて視線を上に向けて話す。

「そうかな? でも、そろそろ動かないとマンネリしそうだし」
「何の話しをしてるのよ」
「だ、ダメだよ! すずかちゃん。そんな理由なんて―――」
「マンネリは兎も角、好きだっていったのは本気だよ?」

 首を傾げながらも微笑み、はっきり宣言するすずか。
 あまりにも堂々としている様子に、周りの面子は動きを止めさせられてしまう。
 そんな中、いち早く再起動したリインフォースがさり気なく寄り添いユーノの腕に自分の腕を絡ませる。

「り、リイン?」
「……むぅ」
「ねえ、ユーノくん。ユーノくんはどうなのかな?」
「ど、どうって?」
「誰か好きな人……いるの?」

 リインフォースとは反対から腕を絡ませてくるすずか。
 狙っているのかないのか、その膨らみの感触が直に腕に伝わってしまう。
 両側から迫られ豊満な果実を当てられるのと、正面から星の輝きの如き視線を向けるなのは。
 身体中から色んな意味を宿した汗がダラダラと流れ落ちる。

 やばい……これ、確実に死刑台に乗せられた死刑囚の状態じゃん

 ユーノの内情と同時に、なのはの内部でも色々なものが入り乱れていた。
 最近のユノフェの傾向。すずかとの差が開いてるような近況。アリサの緊急参戦。
 ついでに任務で会えなかった寂しさとかが彼への愛しさ余って憎さ百倍と変わったりした。
 沸々と湧き上がる黒い衝動に突き動かされ、そして、管理人のSSの勢いに後押しされ動き出す。
 背後の空間を揺らがせながら、なのははユラリと動く。

「ユーノくん」
「は、はい!?」
「リインちゃんと言い、すずかちゃんと言い……アリサちゃんまで参戦したと思ったら、フェイトちゃんまで手を掛けて」

 待ってください。それは別世界のも混ざってます。
 そんな心の弁解はもちろん届く訳が無く、なのははその華奢な筈の拳を握り、桜色の魔力を圧縮し燃え滾らせた。
 気の所為か、腕が異様に太く、キン肉マンもビックリな感じになってるようなオーラが見える気がする。
 彼女が歩む旅に、何故か身体から北斗神拳継承者のオーラが発されているようだった。

「ユーノくんの……ユーノくんの幾股主義者ぁーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「ええーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!?」

 両側からガッチリ掴まれてて動けないユーノに、肉塊をぶちまける破壊の拳が繰り出される。
 これがまともにぶつかれば、ユーノもただでは済む筈がない。
 でもギャグ使用だから、頭が鼻毛神拳伝承者の様になるくらいだろう。
 心配はしないでも良いか。

「そんな程度で済むかーーーーーーーーーーーーー!!!?」

 コンマ数秒間でのやり取りで、ユーノは叫ぶ。
 あと数センチで、オーラがムンクの叫びっぽくなったなのはの拳板スターライトブレイカーが届く。
 瞬間、リインフォースが拳を振りかぶって二人の間に割って入る。

「え!?」
「リイン!?」
「ユーノさんを……イジメないで!!!!」

 なのはの拳とリインフォースの拳が×の字を作り出す。
 だが、なのはの動きは彼女の出現により、一瞬の隙が出来てしまう。

「え!?」
「クロス―――――!?」

 元祖拳版スターライトブレイカー炸裂!!!!!
 リインフォースの拳が暴走特急ピザ屋の系統である超越戦闘民族高町家末っ子、高町なのはをブッ飛ばす!!!

「かゥンたぁーーーーーーーーーーーーーー!???!!!」

 強烈な一撃を喰らい、叫び身体が豪速回転の錐揉みしながら宙を飛ぶなのは。
 その様子を見て驚きに身を乗り出すアリサ達。

「なのは!?」
「うそ、なのはちゃんが撃ち負けた!?」
「……初めて見た」
(そんな……)

 驚愕し、信じられないと言う表情をしながら旅館の壁をブチ破って外に吹き飛ばされるなのは。
 あ〜れ〜……と、どこか夢見ごちな表情をしながら、地面へと落下していく様子はある意味笑えるものがありそうだ。

「なのはーーーーー!?」

 心配して穴の開いた壁から顔を出し、下を除くユーノ達。
 なのははまだ衝撃から抜け出せていないのか。飛行魔法を行使しないで落下してる最中だった。
 ヒュルルルルルルルルルルルルルルルルル〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……





「……ここ、何階?」
「何階かな?」

 ボカチャーーーーーーーーーーーーーーン!!!!
「はぶ!?」

 すずかが首を傾げると同時に、水に落っこちたような音が響く。
 どうやら下は温泉があったらしく、微妙になのはのダメージは少なかった。
 変わりに床には人型の大きな穴が開いていたが、気にしてはいけない。

「う……ぅぅぅ……」

 どこか泣きそうな様子も見せながら、なのはは先程までいた部屋のほうへ顔を向ける。
 すると丁度穴からリインフォースが出てきて、拳を顔の横に掲げながらなのはへ向けて宣言する。

「想いの……力です」

 おおー、とすずかとアリサが思わず賞賛の拍手を送る。
 それほどまでに彼女の姿は雄々しかったのだ。

「うっ……うう……ぅぅう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

 涙ぐみ、肩を震わせ俯くなのは。
 爆発するか!?
 覇王降臨!?
 どうなる地球?!

 そんな危惧をしながら身構える。
 そして、なのはは顔を空を見上げるように挙げて盛大に。

うわぁあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!
「え?」

 泣き出した。

うわぁーーーーん!! うぇぇええーーー!!! うわぁあああああああああ!!! びぃいいいいいいえええええええええええ!!!
 えっくえぐ……ひっく……うぇ……うわぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!
 もう嫌やぁ〜〜〜お家帰る〜〜〜〜〜〜〜〜〜!! あたい実家にかえるもーーーーーーーーーー!! うぇっっくえぐっっくっ
 お姉ちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!! お兄ちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!! お母さ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!
 ぅやぁああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!! こんなんぃややぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!! うぁ〜〜〜〜〜ん!!
 びぃぇええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!


 それはもう盛大に、普段の彼女からは考えられないくらい。
 年相応なくらい思いっきり泣いた。
 キャラが壊れても泣いた。
 兎に角泣いた。
 つか泣く。
 泣く泣く。
 泣く。
 呼ばれなかったパパンも電波受信して泣く。


「どうしたの?」
「いや、なんか無性に悲しくなって……」
「あらあら?」


わぁああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜…………!!
「なのは?! なのはーーーーーーーーーーーーーーー!!!?」


 そして彼女は泣きながら走っていった。
 手を伸ばすが届くはずも無く……彼女の走力によって巻き起こされた盛大な土煙が大地を覆う。

「と、兎に角追わないと!!」

 その様子に顔が弱冠青褪めつつも、取り合えず決意するユーノ。
 ユーノの言葉にリインは頷き、アリサは二人の様子に溜息を出して頭を抑える。
 すずかは何処までもにこやかにしていた。






 ある部屋の中で私は目が覚めた。
 周囲を見渡すと、そこは最近ようやく見慣れ始めた部屋。
 殺風景ににも見える部屋を見渡す。これが人間なら溜息が出るであろう。
 表情の代わりに、自分が思わず動きを止めてしまっている事に気付く。
 現在時刻を確認すると、彼が仕事に向うには少しだけ余裕がある時刻だ。
 取り合えず、常日頃から注意してもこの状況を改善しない彼を起こしに行こうか。

 ・・・やはりと言うか、予想通り彼は机に突っ伏して眠っていた。
 普段の仕事量を考えれば、もう少し眠って休みを取るべきだと思う。
 けど、このままの姿勢では身体に負担が掛かるし、仕事に遅れればまた負担が増える。
 少し躊躇してしまうが、彼の肩に手を置き軽く揺すってみる。

「起きてください。ユーノ」

 数ある次元の中で、ある一つのifの世界。
 そこでは彼女、リインフォースは消滅せずに世界に残れる事となった。


リリカルなのは 外伝話ほのぼの系?
 My Hert or You Hert

コンさんのパーソナリティ発表に漢を見た編
 〜IF リインフォース〜


「ん、んん……ん?」
「目が覚めましたか?」
「リインフォース?」
「はい」

 リインフォースの言葉に、ユーノは机から体を離して体を伸ばす。
 ゴキゴキゴキッベキゴキッッメキっと全身の骨が砕けるような音が鳴った。
 バラバラに繋がっていた間接が、無理やり接合された様な音が殺風景な部屋に鳴り響く。
 全くもって不健康感丸出しで、聞くものに不安を抱かせる擬音だった。

「いつも話していますが、せめてベットで寝るようにしてください」
「あはは。気をつけてはいるんだけどね」

 実行できなければ意味が無い。
 それは解っているが、どうしても無茶をしてしまう。
 彼自身も周りの者達も知っているし、また同じような事をして多くの人から心配されたりもしている。

「その言葉は、私があなたの元で保護観察を受けるようになってから58回目ですが」
「……数えてたの?」

 リインフォースの言葉に苦笑しながら、ユーノはこれまでの事を思い返す。
 過去に危険な事件を起こしたリインフォース。
 彼女の処分について様々な議論が飛び交い、存在を抹消され掛ける案も出た。
 しかし、主であるはやてやなのは達アースラのメンバーの進言により、守護騎士達と同じ保護観察処分に落ち着いた。
 だが、夜天の書の根源である彼女に対して恨みを持つ者も多く、迂闊に人を選ぶ事が出来ない状況だった。
 そこで、白羽の矢が立ったのがユーノだ。
 その知らせを聞いた時、ユーノ自身は疑問に思ったがアースラのメンバーは納得、安心していた。
 無限書庫での検索処理能力や覇王の砲撃さえ全力でなければ破る事のできない防御力。
 そして優れた状況判断能力など諸々の理由付け噂が流れたが、真偽は定かではない。
 中には覇王や黒い死神がどうしたとか、糖分がヤバイとかメガネがなど変な発言まであったとか。
 もう一度言うが、真偽は定かではない。
 結果が言い渡された次の日から、ユーノとリインフォースの生活が始まったのだが。

「どうでしょう」
「いや、聞き返されても」

 ユーノは最初結構困惑したものだ。
 主にテンポが分からないと言うか、独特の雰囲気の対応とか。
 今では彼女の性格も愛嬌があって好ましくも思っている。

 他愛ない話しをした後、皺だらけになった服を着替えて会議へ向う。
 普段なら保護観察処分を受けているリインフォースも同行するのだが、今回はユーノ一人が議会へ向わなければならないらしい。
 よって、部屋の出入り口までユーノを送り出した後、リインフォースはやる事がなく手持ちぶたさになる。


 さてどうしたものか、と悩み始めるリインフォース。
 特にやる事がないというのも居心地が悪いもので、尚且つ外出も制限されてるとなるとヒマな事この上ない。
 彼女にしてみれば、自身が外にでるという事は魔力が収集によって集まった時のみだった為、こういう時何をすれば良いのか分からない。
 更に部屋には娯楽道具なども無い。あるのは仕事道具や資料本など明らかに子供らしからぬ内装。
 ここで暇潰しができるのは、部屋の主であるユーノか学者、あるいは引き篭もりくらいだろう。
 最後のは別として、兎に角リインフォースは何をしていれば良いのか分からない。

「……そういえば」

 ふと口から零れ出た言葉と共に、少し前にあった出来事を思い出す。
 その日、リインフォースは現状調査と言う事で、整備課での点検を行い一人で外出した。
 検査が終わった後、ユーノの部屋に戻ると、先に仕事を終えた彼が温かいスープを用意して待っていた。

『お帰りリインフォース』
『これは?』
『今はやては任務が出てて、シャマルさん達もこれないみたいだからさ』
『おまえが作ったのか?』
『うん。部族にいた頃ちょっとね。はやてのより美味しくはないかもしれないけど……』
『別に気にせずとも私は平気だ』
『だけど、やっぱりはやてから頼まれたし、大事な家族だから』
『家族?』
『はやてほど家庭的じゃないし、僕じゃ不満かもしれないけどね』
『……そんな事は無い』
『ん、いつまでか分からないけどこれからよろしく。リインフォース』


 その時食べたスープ。
 確かに主の作ったものより劣りはするが、温かくとても美味しく感じられた。

 私にも料理の知識はある。
 ・・・一応、冷蔵庫の中を見てみようか。
 見てみると多少は食材があるようだ。
 ……多少と言うより極少量と言えるが、別に構わないだろう。
 彼の生活習慣と言うものは変えておくべきだと思うが、それは彼が帰ってから進言すれば良い。


「……よし」

 思わず呟き、小さくガッツポーズを取っていた。
 何故こんな事をしたのか自分でも理解できなかったが、気にしないでおこう。
 食材はあった。あとは調理器具か。


 暫く時間が経った後、帰ってきたユーノが扉を開けて動きを止めた。
 鳩が豆鉄砲くらったような顔とでも言うのだろうか。
 目を2〜3度瞬きして、玄関先で正座しているリインフォースを見る。

「あの……ええっと」
「……申し訳ありません」
「え? え?」

 何の事か分からず、疑問の声を挙げるユーノ。
 説明もなしに頭を下げられても、逆に困惑するだけである。

「な、なに? どうしたの?」
「それが……その……こちらに」

 リインフォースに案内され、普段全く使われる事のない台所へ向う。
 近づくにつれて段々壁が黒ずんでたり、奥の方からパチパチと音が鳴ってたり、焦げ臭い匂いと煙が立ち上っている。
 恐る恐る覗いてみると、どこの紛争地帯だと聞きたくなるような惨状がそこにあった。

「えっと……これは?」
「料理を作ろうとしたら……」

 まるで小さな子供が始めての料理に挑戦して、怒られるのを怖がりつつも親に報告するように呟くリインフォース。
 大人な外見と反対に、俯いて申し訳無さそうな表情はどこか微笑ましいと思えてしまった。
 少し困ったように指で頬を掻きながらユーノは苦笑する。
 むしろ一体どんな調理方法を取れば、煙の中蠢く謎の物体や触手。
 巨大な爪のある動物の腕、西洋剣や槍が床や壁に刺さったりしているのだろうかと聞きたい。

「う〜ん。別に良いんだけど、どうして急に料理なんて作ろうと思ったの?」
「……私にも……分かりません」
「もしかして、はやてに?」

 なにやら変な勘違いをし始めたユーノ。
 リインフォースも自分の行動が良く分からなかったのでただ俯くしかなかった。
 ただ、ユーノの言葉を聞いた時、その胸中にもやもやとスッキリしないものを感じ取った。

「今度なのはに教えてもらう?」
「遠慮します」
「え? でも」
「いいんだ」

 頑なに拒否するリインフォースに怪訝な表情をする。
 言ってからリインフォースも何故ここまで拒否するのだろうと疑問に思う。
 何処か哀愁を感じさせる空気が二人の間、主にリインフォースに出来つつあるように感じる。

(恥ずかしいのかな?)
「ユーノ」
「なに、リインフォース?」
「ユーノは、どうやって料理を覚えたんだ?」
「どうやってって言うか、部族にいた頃はキャンプとかして当番制でみんなと一緒に作ったりしたから自然に、かな?」
「そうか」

 ユーノが語る過去の日常に、落ち込むような表情を見せるリインフォース。
 はやてが主になるまで。いや、なってからも彼女の日常生活における記憶、経験はほとんど無かった。
 確かに知識はある。だが、実際に行動するとなると、魔法を操作するのと違って思うように作る事ができない。
 彼女本人は分からないが、それが悔しいという事なのかもしれない。

「じゃあさ、今日は僕と一緒に作ってみようか?」
「え?」

 顔を向けたリインフォースに微笑みながら、ユーノは台所を片付ける。
 ついでにまだ使えそうかどうかも確かめる。

「うん。表面が汚れてるだけで壊れてない。これなら大丈夫か」
「ユーノ、私は」
「今日も仕事が長引きそうだからさ。たまには出来合いの物以外も食べないと倒れちゃうかもしれないから」

 何か言う前に先を越され、押し黙るリインフォース。
 戦うことなら他の追随を許さない彼女だが、日常生活ではその威厳は発揮されないようだ。
 もの言いたげな顔をしながら、両手を前で重ねてユーノに抗議の視線を向ける。
 それを意に介さず、というか気付かず冷蔵庫の中を確かめる。

「材料は……買いに行くしかないか」

 自分自身の不摂生さに、そして記憶の中にある食材だけでどうやってこんな惨事を引き起こせたのだろうと思い苦笑してしまう。

「買出しに行こうか」
「私もですか?」
「一人より二人で見た方が良いと思うから」
「……わかった」
「じゃ、行こうか」

 そして二人は買い物に出掛け、リインフォースはユーノが意外と買い物にも博識な事に驚いた。
 曰くなのは達の世界の本や無限書庫の知識から応用法を学んだのだとか。
 なのは達の世界は兎も角、上手い買い物の仕方まであるのか無限書庫。
 微妙すぎる疑問が頭を過ぎりつつ、買い出しをした二人。
 舞台は再び調理へと移った。

 そしてリインフォースは時代劇で泣き崩れそうな女性の様なポーズで落ち込んだ。
 そこに到るまでの経緯は敢えて書くまい。
 ユーノも頑張った。妙な事にならないように買い物の時から注意してた。
 それでも初っ端から色々と困難があり、尚且つ命の危険が付きまといながらも努力したけどダメだった。

「私は……わたしは……やはりただの兵器でしかないのか」
「それは違うよ、リインフォース」
「ユーノ」

 肩を優しく叩かれ、泣きそうな表情で振り向く。
 落ち込む彼女を安心させるように、違う。自然に微笑みながらユーノは言う。

「誰だって最初から上手く出来たりはしないよ。僕だって最初の頃はみんなに迷惑掛けて、それからずっと頑張ってもようやく食べられるくらいなんだから」
「だが、これは」
「うーん。確かに凄い事になってるけど、シャマルさんも初めは凄かったみたいだし。それに最近は失敗も無くなってきてるってはやても言ってたよ」
「そうなのか?」
「うん。だからリインフォースもすぐに料理が出来るようになるよ。だってはやての家族なんだから」

 そこで思わず俯き、ユーノから視線を逸らしてしまうリインフォース。
 嫌だった訳ではない。ただ、彼の顔を直視できなくなってしまっただけだ。

「主を……喜ばせる程の料理は……私にも作れるだろうか」
「大丈夫だよ。誰かに喜んで食べてもらいたいって気持ちがあれば……それが家族や大切な人ならなお更」
「……そうか。ならユーノを喜ばせられるものを作れるようになろう」
「え?」
「ユーノも、私の大切な家族なのだろう?」
「あ、うん」

 今度はユーノが気恥ずかしさに視線を逸らす。
 それを見ると、何か満足したような暖かな気持ちが沸き起こり、リインフォースは微笑んだ。





〜続くかな?

 うーん。訳解らん。
 コンさんみたくならない。
 もっと良い雰囲気になるはずなんだがなぁ。
 今回のss。コンさんの発表見て個人的に
リインTと結ばれたらリインUが出来るんじゃねーか
 そんな思考から産まれた作品。
 故に続けばTU親子×ユーノみたいに出来るはず!!
 需要は無いだろうがなぁ、多分乗ればやるさ俺は。
 それが欲求に忠実な俺の勇輝!!!





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