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第21話「BIRTH−誕生−」

 光りは流星の様に眩い一筋の閃光となってはやて達のもとへ急速に落下した。

「危ない!」
「うおっ?!」
「また逃げ遅れたー!?」

 流星が轟音を立てながらノビの胴体に直撃。
 CG合成技術を駆使した衝撃波まで映し出されるような衝撃を感じながら大きく吹っ飛ばされる。
 最後に盛大な爆発を起こして、彼の姿は土煙と共に見えなくなった。

「の、ノビくん!?」
「死んだの? 死んだか!? 死んだなーーーー!?」
「生きてるよ〜」

 黒ずんだ煙が晴れていく中、訛声ながらも健在である返事が返される。
 特に問題ない事が解ってホッとするはやて達。
 そんな温かく浮きが流れるのを感じながら、ノビはふとした疑問を感じていた。


 こんな衝撃くらってよく生きてるなってのはもう気にしないけど―――
 なんだ? お腹が異様に重い気がする……いや、大した重さではないけど取り合えず重い。
 身体中がイタイけど、取り合えず首を曲げて見てみようか。

「ぅぅ〜ん」
「・・・」

 ちょっと考えてみようか。
 気が付いたら可愛い女の子が上に覆い被さってました。
 けど、髪の色が普通と違って青を含んだ銀髪って感じの長髪が僕の鼻をくすぐるのです。
 ええそうです。顔が近いです。未だかつてこんなに異性の人とお近づきなった事なんてありゃしません。
 で、ちょっと首を動かすとちょっと遠くの方で友達が温かい目を向けてます。
 今度は顔を正面に向けて空を眺めると、白い雲が移動していくようすが良く解った。

「ワッツワイホワット?」
「ぅぅ……ん」

 ノビの小さく皺の無い脳味噌が大混乱していると、長髪の少女が目を覚ます。

「はれ?」
「……ども」

 取り合えず挨拶をしておくノビ。
 すると、少女は多くのお友達が見惚れてしまうような微笑で返す。

(僕の心にストライクノワール!! ってなにを考えてるんだ自分)
「ノビさん」
「え?」
「あの、えっと……リインを助けてくれて、ありがとうございます」
「……ゑ?」

 少女の口から出た言葉が理解できず、どう反応すれば解らず困惑するノビ。
 同じ反応をして呆然と立っているはやて達。
 ようやく動けるまでに落ち着いたはやてが、震える手を伸ばし指差しながら一番に口を開く。

「あ、え? リイン、リインフォースなんか?」
「はいですはやてちゃん♪」

 ワナワナと振るえ、俯くはやて。
 その隣ではウズウズと震えるブレイド。
 更にその後ろで待機するレツ。ユーノはこの展開についていけずに、まだ呆然としている。

「ああ〜もう! めっちゃ可愛いわ〜〜〜!!」
『これは是非ともお近づきに!!』
「だからお前は待て」

 本当に障害を持ってるのかと聞きたくなる様な猛ダッシュを見せるはやて。
 腕の力だけで飛びあがり、可愛い少女となったリインフォースに抱きつく。
 リインフォースの力では勢いを受け止めきれずに倒れてしまう。
 当然だが下にはまだノビが入る為に、飛び込みの衝撃と二人分の体重に呻き声を上げた。

(お、重……)

 言葉にしないあたり、それなりの節度を持っているようだ。
 傍から見れば二人の女の子との組ず解れの状態だから、ある意味羨ましい状態でもあるのだが堪能する余裕は微塵も無い。

「でも、どうしてあんな風に変わったんだ?」
「ええやんどうでも。うち等の愛が闇に打ち勝ったっちゅー事にすれば」
「と、取り合えずここから離れよう。幾らなんでも騒ぎすぎちゃったからね」
『じゃあ続きは家に帰ってからディスね』
「何の続きだよ。詳しい話しは聞く必要があると思うけど」

 ようやくテンションの変わり目から立ち直ったユーノの言葉に従い、一旦家へと帰ることにする。
 誰も彼も、自分の心配をしてくれなった事に悲しみを覚えながら、ノビもトボトボ歩きながら彼等の後をついていった。



 そして、八神家に帰ってきた一同は、リインフォースの変化について話し合う。

「可愛いし、害もないなら気にしないで良いやん」
「ぶっちゃけ魔法にも知識ほとんど無いからねぇ」

 それで済ませられたらどれだけ楽か。
 もちろんそんな訳にはいかず、一番この事に対して知識を持ってそうなユーノが会話を持っていく。

「これは推測なんだけど、天使の軌跡は人の願望に反応し形にする力を持つって事は話したかな。
 願いは人によって様々だけど、一般的に穢れや深い欲望が最も反映され易いと言われてるんだ。
 だから、リインフォースが人の姿になったのは、誰かがそうゆうものを望んでいたって事かも」

 口を濁らせて話すユーノの言葉に、口元に一指し指を立てて考える仕草をする。

「ちゅー事は、一番欲望の強かった人の願いが叶えられたって事になるんよね?」
『ついでに言うと、そうゆう強い思いは引き寄せられる物ディス』
「待って、なんか嫌な答えになりそうなんだけど」
『嫌なもなにも、キミの欲望の集大成こそ目の前の美少女ディスよ』
「いやぁああああ!! マジちょっとまって弁解させて。あの時はそんな事普通に思ってないよ!? イヤマジデ」
「魂の奥底にある叫びを適度に受信したんやろ。安心しいや。それくらいでうちは見捨てたりせえへん。
 でも今度から寝るところは一階のソファで寝てな?」
「怪しんでるじゃん!? 俺、変体!? 何かのトラップに釣られちゃったのかなぁもう!!!」
「落ち着けって、本気で言ってる訳じゃないのは解るだろ」

 レツの言う通り冗談だとは思うが、それでも微妙な不安を感じてしまうのは仕方が無いだろう。

「さてと、じゃぁ今日は新しく家族が加わったパーティーや!」
『ウェーイ! また血湧き肉踊る鍋パーティーディス〜!!』
「今夜はすき焼きや!」
「ちょっと待って、家族って?」
「そんなんリインとユーノくんに決まってるやん」
「で、でも」

 ユーノとしてはこれ以上迷惑を掛けるのは忍びない気持ちで一杯だった。
 断ろうと話し出そうとしたとき、急に目の前がぼやける。

「あれ?」
「ふぁ〜、なんやろ? あかん、なんや知らんけどごっつ眠いわ」
『スピー』
「こっちもだ。なんだ? なんか異様に眠くなってきた」
「どうした?」
「みなさんどうしたんですか?」

 ノビとリイン以外の面子が強烈な眠気に襲われる。

「そっか、魔力を使いすぎて」
「思い出した。魔力切れになると身体が急速に睡眠を欲しがるんだった」
「そ、それは早く思い出して欲しかったわ。あかん、瞼開けられへん」
「ごめん。ぼくももう……」
「ちょ、ちょっとまって。夕飯はどうすんの?」

 切実な問題だった。
 これまでノビは料理をした事がない。
 更に言うなら、出前もこの辺りには無いようでチラシも見ていない。

「さ、サイフは……台所の……とだ……な……や。がくり」
「微妙な遺言っぽく言いながら寝ないでよ!?」
「ぐー」
「すー」
「もう寝てるし」
「気持ち良さそうですねー」

 マジかよと悲観にくれながら、そのままにしておく訳にもいかず。
 一先ずリビングに一人ひとり連れて行ってシーツをかける。
 リインもノビを手伝い、全員に掛け終えるとノビは軽く溜息を吐く。

「仕方ない、兎に角サイフを捜そう」
「リインもお手伝いします」

 変にくすぐったいような、妙な気持ちを感じつつ行動を始める二人。
 結局、この日はみんな寝たまま夜が過ぎ、そのまま流れでユーノも八神家で世話になる事が決まった。
 一応彼は断ろうとしていたが、もうどっぷりと彼等と係わってしまったので、問答無用の処置を施されたのは別の話し。






おもちゃ箱 The 簡易説明書
『是迄』

は「なんやこのタイトルは?」
ノ「いや、おもちゃにも一応注意書きはあったと思うけど」
レ「何か知らんけど、各キャラの説明みたいなものやるみたいだぞ?」
ブ『曰く今まで1〜21話までに出てきたキャラの紹介だそうディス』
リ「ふえ〜、大変そうです」
は「出来るんかいな?」
ブ『根性ディス!』
は/ノ/レ「マジかい」
リ「それでは始まりますよ〜♪」


主要キャラ紹介

一応主役になるはずの我等がお母さん
八神はやて 愛用武器―シュベルトクロイツ。

 原作より正確がハッちゃけてる感が拭えない、己の身体の限界を超えてもギャグに命を懸ける。
 何て言うか結婚してぇ可愛さと儚さと面白さとパワフルさとか色んなものを併せ持つ万能少女。
 化学万能の社会の裏側を知る一族、月村コーポレーションの娘さんと親密な関係。
 その所為か、彼女の腕力や車イスなど、微妙に謎だと思える気になる現象がチラホラ窺える。
 両親は一流のお笑い芸人をしていたが、限界を超えたお笑いをして体を酷使し続けて他界。
 余りにも早すぎる死……寿命だった。
 残されたのは両親から買ってもらった青い鳥と思い出の詰まった家。現在は伯父からの援助にて生活を続けている。
 突然来襲してきた局員ズ+謎の物体(0w0)にもそれ程騒がず、むしろ養うなど心の広さと遣り繰りする知恵も凄まじい。
 シュベルトクロイツに認められ、全力全開魔砲をぶっ放す予感マックスで将来楽しみ。
 一人称は変質して、この世界では「ウチ」になったらしい。

は「って言うか、うちの両親は寿命で死んだんかい!?」
レ「早すぎじゃない!?」


元局員その1
野火埜鐚 (仮名) アダ名:ノビ 外見年齢小学5年くらい。

 特に何の特技も無かった雑用一般局員その1。
 時空を超える時、原因を作った珍妙な集団を生態スキャンしてしまったらしく、体がトランスフォームしてしまったらしい。
 ある少年の特性を受け継ぎ、劇場版の頭の冴えと人外のキャラに好かれるという特殊能力を持つ、が本人は気付いてない。
 身体能力は一般的で不器用且つ頭も悪いがノリは良い。この話しのある意味良心的存在。
 これといった特技が無いが、戦闘では特撮の知識がある為に、ブレイドのアイテム+カードコンボのネタを提供するのが仕事。
 ほぼギャグのノリのダメージなら数秒で直る面白い少年となってしまった。


元局員その2
紀帝鋭一 (仮名) アダ名:レツ 外見年齢小学5年くらい。 愛用武器―(0w0)+カード等。

 雑用一般局員その2。
 ノビの神友であり、同じ原因で存在変質した男で、ノビを2次元という未知へ誘った漢。
 それなりに知識もあり、身体能力も高いがやはり雑用局員だった。
 銃器集めやサバイバルゲーム、G-3が学生時代大好き。戦闘でもそれなりに臨機応変な対応が出来る。
 G-3好きだった所為かブレイドとの融合が出来たが、特撮の知識がクウガ・アギトな為にカードコンボの知識は無い。
 真面目なんだかギャグ担当なんだか良く解らない、応変過ぎる少年。

リ「スキャンって何の事ですか?」
ノ「あれだよ、ビーストウォース見てとしか」
は「ノビくん達はトランスフォーマーやったんかい」


謎のОパーツ生命体、存在自体が未知なるアンノウンロストロギア(0w0)
AA・ブレイド(オンドゥル19世)

 局員ズが倉庫内のガラクタをお遊びで作った元巨大ロボ。(決してデュラ×シュベの偉大な方ではない)
 彼等と同じ様に赤いカブトと青い狸とダンボールロボをスキャン変質して誕生した意思を持った二頭身勇者ロボ。
 その装甲は神の金属オリハルコンで出来ていて再生可能。大気圏突入の摩擦熱と落下衝撃にも簡単に耐えるスーパーボディ。
 ギャグではプニプニ、でも強度はイージスに迫れそうな頑強ボディで己の欲望に忠実なオトボケキャラ。
 出し入れ可能なブレイバックルは異次元に繋がっていて、無限の収納スペースと数多くの謎アイテムが収まっている。
 戦闘ではカードを首筋のリーダーに通して使ったり、未知のアイテムを取り出して物語を混沌とさせるだろう。
 レツと融合してブレイドデバイスへ化身する(残念ながらヘシンではない)。
 ちなみにカードはフルコンプ。バックル内には友情競演の土産に戦隊ヒーローやウルトラ系の道具も入ってるという噂がある。
 内包されたライダーアーツ(道具)はブレイド用に変質、改良されて自分専用に使用が出来るようにされてるらしい。
 食べ物を動力に使用しているっぽいが、摂取方法は不明。指もないのに物を掴んだりリモコン操作が出来るビバ未来の能力。
 口癖は『オディ、ウェイ、ディス』やっぱり滑舌が悪い。
 現在のAP数値は5000。

『伸びるホーンに勇気を込めて、廻せ正義のスロットル!!』
ノ「特急かよ」
は「そうか! 今のライダーは勇者系のノリを取り入れたんやな!!」
ノ「確かに、気弱な少年が来訪者と心を通わせて、(鎧)合体とかロボ出してるし」
ユ「それは無いんじゃないかなぁ?」


チーム内の苦労人であり唯一の真面目キャラ
ユーノ・スクライア 主要武器(魔法)―精霊を模した術式・媒介魔法。

 とある遺跡から超危険指定物品である”天使の軌跡”なるものを発掘してしまったのが彼の数奇な運命の始まり。
 その暴走体との戦闘で負傷した所をはやて達に助けられたついでにコスプレさせられた可哀そうな子。
 魔法は何かを媒介にして自分の魔力を通し、増幅させたり特殊効果を持たせて操るもの。
 例えば炎に魔力を通して増幅、それを圧縮して炎の弾丸にして打ち出したり、水に魔力を通して簡易的な傷薬に変質させるなど。
 補助に特化してる為に、この世界では慣れない攻撃系の魔法で無茶をすると吐血するという設定のある別の意味で恐いキャラ。
 その性分の所為ではやてや局員ズのノリに頭を痛める事間違いなし。
 多分、彼がいなければ大抵の事は路線が外れたままになりそう。

ユ「えっ僕血を吐くの!?」
は「あかん、病弱キャラはウチの専売特許や!!」
ノ(普通に病弱じゃないよねー)


この話における可愛い系、幸せの青い鳥
八神リインフォース 主要武器―反則的な魔力。

 ウッカリ危険物を飲み込み、取り込まれそうになった元は普通の青い鳥だった娘。
 漢達の夢と希望と愛と言う名の熱い欲望の想念によって産まれ変わった二世。
 アニメのリインUと同じ外見だが、鳥に化身したりノビに懐くなど色々違う設定になった少女。
 天使の軌跡が体内で融合してしまい、そりゃないでしょう的な魔力を宿した。だけど、使い方が解らない。
 従って、気をつけないと核爆発並みのギャグ爆発を起こす爆弾娘。ある意味この世界の白い悪魔(笑)。
 魔力を宿す前の記憶もしっかり持っていて、今でははやてを実質的に手伝えると身体を持った事を喜んでる良い子。
 はやてを楽しませてくれる局員ズ+@やユーノが大好きな甘えたい盛りの様子。

は「そうか〜。そんな風に思ってくれてたんやね」
リ「これからはリインがはやてちゃんをたすけますね!」
は「リイン〜!!」
リ「はやてちゃ〜ん!!」
ノ「良い子、この子良い子だよマジで!!」
レ「これは悶えるしかないじゃないか!!」
ユ「う〜ん。回収したいけど融合しちゃってるし……ま、いっか」


はやての相杖
シュベルトクロイツ。

 何処で作られたかは責任者が不在の為にノーコメントなデバイス。
 複数の人格を統合して作られたような管制人格が助言、サポートを行なう。
 待機状態は小さく成れればどんな形でも構わないというある意味大物。
 魔力があれば、願うだけで魔法を行使することが出来る。ただし、見合う量の魔力が無ければ威力も減少する。
 原作のげの字も無くなり、今後の出番が不安なアイテム。

ノ「多分戦闘以外では出なさそうな気がする」
は「そこん所どうなんや?」
シュ「……待機状態のウルトラマンと思ってください」
ユ「それで良いの?」






脇キャラ紹介 ()内は初登場時。

 『こっからは途中で登場しては散っていった脇キャラ達を紹介するウェイ』
は「つまり一発キャラって事やね」
ユ「はっきり言うね」


その1 局員ズのいた船の方々(プロローグ)

 ノリの良い方々で、明るい仕事場を念頭においてる方々。
 局員ズが行方不明になった今回の事故をどう報告しようか悩んでいる。


その2 赤いカブト(プロローグ)

 どこかの世界から、時空を間違えて局員ズの乗る船の進路に出現した天の道を行く人。
 危ない虫の入った巨大隕石を持ってきて衝突させ、ブレイドの素体1となった可能性大。

その3 青い狸とその他数名(プロローグ)

 何処かの世界の引き出しからやってきた少年団。
 危険回避しようとしたが、整理整頓と冷静な対処が出来なかった為に事故る。
 ここにいた少年の一人が局員ズ1の素体、青い狸がブレイドの素体2となった。

その4 ダンボールロボとその他(プロローグ)

 登場時、声だけで存在は認められなかった格安ロボと一味。
 何も出来ずに衝突した後の事は不明。ここにいた少年が局員2の素体、ダンボールロボがブレイドの素体3となる。

その5 石田先生(第一話)

 はやての主治医であり、Air最終話ごっこにつき合わされたのが運の尽き。
 流星となり、海面を走ってきた局員ズとブレイドの生中線への三段攻撃を喰らい重症。
 瀕死の状態のまま現場に置いてかれた今回の話で一番可哀そうかもしれない人。現在病院で生死の境を彷徨っている。
 噂では事前に残しておいた自分の細胞とアンデットの細胞から作り出した自分のクローン、人工生命体を作り出し復讐の機会を窺ってるとか。

その6 黒い塊=暴走体(第9話)

 ユーノが探していた物が魔力の塊である身体を形成したもの。
 一度はユーノを退け、ジェットスライガーーのミサイル攻撃を耐え切る頑強さを持つ。
 しかし、それで弱っていたのか、聖闘士と黄金の魂の技でボコボコニされた所をはやての膨大な魔力で消滅させられた。
 そこに辿り着くまでにかなりの話数を使ったにも拘らず、ほとんど暴れる事無く終わった。
 思考はない筈だが、はやての作戦タイムを認めた謎な敵キャラ。

その7 ダンディなおじさまと儚き少年とサイヤ人親子(第19話)

 熱い魂を宿し、リングにかけた方々。
 そしてご存知の方々は場違いなので帰ってもらった。

その8 幻聴の声byネクサス(第20話)

 感動の最終話、とどめで流れた思い出シーンの名言。
 あの作品は今も作者の心を熱くさせてくれている。
 何故朝方の放送だったのかが疑問。






第22話「膝を抱えて部屋の片隅、いつも不安で震えてた」

 うち、八神はやてです。
 ある日、ひょんな事から異世界から来た少年達を養ってたら、魔法少女になってしまいました。
 さらに飼ってた鳥のリインも可愛い妹みたいになってもうて、居候も増えて家計も大変。
 でも、とっても楽しい毎日を送っています。
 今日はうち等の一日を振り返ってみよか?


 八神家の朝は早い。
 まずウチが起きて、みんなの分の朝ごはんを作らなあかん。
 まあ、リインは人の姿から鳥の姿に自由に戻れるから、食費は掛からないんやけど。
 大抵朝はうちが一番に起きて、台所に行って料理をするんが始まりや。

「おはよーございます」
「あ、おはよーノビくん」

 暫く朝ごはんを作ってると、ノビくんが起きてくる。
 最初の頃は起き掛けに、うぉおおお〜、とかぐぅぉおぉぉぉ〜〜!!
 とか起きるだけで戦いみたいな声出してた面白い子や。
 なんでも、起きようとする意思に反して身体が鉛の様に重くてだって。

「もうすぐ出来るから、みんなを起こしてくれへん?」
「うぃーす」

 頭を掻きながら眠そうに返事して部屋へ向う。
 っとと、料理に集中せな。危なかったわ〜。焦げる所やった。
 朝食が出来る頃にはみんなが起きてくる。
 予想と違ってたのは、ユーノくんが見た目と違ってお寝坊さんみたいってことや。
 いつも最後の方でブレイドと一緒に起きてくる。食べっぷりも負けず劣らずでなんか微笑ましく思う。

「で、レツくん達は今日は仕事なん?」

 わたしは最初、見た目子供やから働くのは無理やって思ってた。
 だけど、レツくん達は魔法の力を使って青年の姿に変わって生活費を稼いでくれてる。
 ブレイドのカードの効果だそうやけど、魔法って本当に便利なんやね。
 レツくんはボケキャラかと思ってたら、真面目な所はちゃんとしてて少し驚いた。
 別に気にせんでええって言ったんやけど、現実的にちょっと苦しかったから止められへんかった。

「ああ、でも今日も夕方には普通に帰れるから」
「下手しなければね」
「そっか、頑張ってきてな」
「「は〜い」」


 朝ごはんを食べて二人とブレイドがバイトに向った後、うち等は魔法の訓練に出かける。
 なんでブレイドも行く必要があるのか聞いたら、カードの効果が切れた時の為だそうだ。
 一応彼も人の姿には成れるらしいけど、ウチはまだ見た事がない。
 どんな姿なんやろか。気になるわ。

 誰もいない丘で、リインと一緒にユーノくんから魔法の使い方の講義を受ける。
 シュベルツの補助を受けながら実際に魔法を使うと、色んな事が出来そうでなんや楽しくなってきた。
 途中でリインが色々爆発させて、マンガみたいに吹き飛ばされたりしたけど、それはそれで楽しかった。
 こう学校の授業とは違う感覚で、今まででは感じられなかった楽しさやった。

「二人とも、覚えが早くて教え甲斐があるよ」

 ユーノくんにこう言われた時は、なんだかムズ痒いような変な気持ちになった。
 ただ、リインに向けてた時の笑顔がちょっと引き攣ってたのは見逃さへんかったで。
 気持ちは解るけどな。毎回アフロや高木ブーになるのはウチも勘弁したい。

 熱中すると時間の経過も気にならなくて、気が付いたころには日が落ちていた。
 家に帰ると、ノビくんとレツくんが先に帰ってて二人でゲームしとった。
 ノビくんがハメ技喰らって唸ってたのがちょっと笑えたわ。


 夕食を食べた後は、みんなに手伝ってもらってお風呂に入る。
 ここでやっぱりユーノくんが最初の頃、顔を赤くして慌てて講義したなぁ。
 でもちょっと正論っぽい事言ったら承諾しちゃったんやもん。甘いわユーノくん。
 リインはシャワーが苦手みたいやけど、手伝って貰う為の理由が出来て丁度良かったかも。
 あー、でもあの時のユーノくんの慌てよう面白かったなー。
 今でもあんまり変わらへんけど。思わず笑いが零れ出てまうわ。
 そりゃ、ウチも年頃の女の子やから恥ずかしくない筈が無い。
 けど、反応が面白いからついやってまうんよね。

 そう言えば最初、夜中みんなで寝る場所決める時も面白かったのを憶えてる。

「それじゃ、みんな寝るでー」
「おやすみー」
「って、そこで寝るの!?」

 真っ先に押入れに向うレツくんとノビくんにツッコむユーノくん。
 そない驚く事でもないと思うんやけどな。

「だって全員分のベットは無いし、それにお泊りっていったら押入れで寝ないと」
「なんで!?」
「修学旅行の旅館で押入れがあるなら、押入れで寝るしかないじゃないか!!」
「あー何となく解るわ」
「だからなんで!?」

 ま、そこは別の部屋で座布団しいたりするって言う事で収まったんやけどな。
 リインは人の姿になれるようになってから、夜寝るときはうちと一緒の布団で寝てる。
 もちろんブレイドが押入れ組みや。部屋は男の子達のいる部屋の押入れで、少し文句言ってたけど。
 しぶしぶ入った時の姿、あれはもう感動したわ〜。
 夢をくれる猫型ロボットが思い浮かんだからな〜。


 そんなこんなで日々を過ごすうち等。
 特に何事も無く、ずっとこんな日が続けばええなぁって思ってた。
 だけど、ユーノくんにしてみれば探し物を見つけないといけない訳で。
 社会人(局員)だって言う二人もいつかは元の世界に戻らなあかん。
 この生活は本当に楽しいけど、いつまでも甘えてたらダメや。
 たとえまた一人ぼっちになるんだとしても。


「はやてちゃん。どうかしたんですか?」
「え?」
「なんだか元気がないようでした」
「大丈夫や。ありがとなリイン」

 そうやうちは一人やない。この子がいる。
 彼らがいつかいなくなってしまう日が来ても、きっと笑って送り出せる。
 だから、今はの幸せな日々のをしっかり憶えていよう。

 ユーノくんが探し物のありそうな場所の眼星をつけたのは、ウチがそんな決意をした数分後だった。





第23話「この世には、目には見えない闇の住人達がいる」

「探し物の場所が分かった?」

 その言葉にユーノは頷く。
 夕食が終わった後、はやて達が集まった所でユーノが天使の軌跡の眼星について話をしていた。

「ついさっき、この番組で扱ってた話しの事なんだけど……」

 そう言いながらユーノがテレビを指差す。
 画面には【怪奇!? 墓地に出る怨霊の噂!!】という胡散臭さ爆発なタイトルの番組が放送されている。
 先程局員ズも一緒に見ていた為に内容は知ってて、この町の一角にある墓地を取材した番組らしい。
 映像では墓地の木々に人の顔の様な模様が現れてたり、地面が抉られていたりB級ホラー映画内の破壊された場所のようだった。
 番組内では何だかんだと恐ろしく見立てようと変に語っているが、ユーノはこの植物や周りの破壊後は例のブツによる影響と判断した。
 聞いてからのはやての行動は早かった。
 なら時間的に誰もいなくて丁度良さそうだから、今から現場に行ってみようという事になったのだ。

「と、言うわけでうち等は今問題の墓地に来た訳や」
「早かったなぁ〜」
「善は急げ言うやろ?」
「わ〜、空に小さいのが一杯です〜♪」
「あれは星って言うんだよ」

 ノビの言葉に、はやては指を立てながら可愛らしい笑顔で言う。
 リインも夜の散歩と言うものは初めてなので、気分が昂揚していて目一杯はしゃぐ。
 傍から見ると、ただの肝試しにきた小学生の仲良しグループにしか見えない。
 ただ、ブレイドの両眼が光ってるので、弱冠不気味に見える。

「で、どの辺にあるの?」
「うん、と……感じる分にはこの辺一体にアレの魔力が浸透してるみたい。だから本体の近くまでいかないと、検索魔法でも見つけ辛いかも」
「つまり、歩いて地道に探すしかない言うことやね?」

 はやての言葉に頷くユーノ。
 その答えに少し嫌そうな顔をする局員ズ。

「マジで……」
「ここ、結構広そうだぞ」

 彼らがやってきた墓地はかなり大きい面積を持っているようだ。
 人数がいるといってもこんな薄暗く、一応明かりがあるが小さく数も少ない。
 そんな場所で一つの探し物を見つけるにはかなり時間が掛かりそうだ。

「二手に分かれて探してみようか」
「えー、こんなくらい中人数少なくなるのは恐いぞー」
「ノビくん。お化けとか苦手なん?」
「お化けどころか恐いもの全般だめだね♪」

 ユーノの提案に全然恐そうでなく、むしろ楽しみにしてる感じで語るノビ。
 だけど、内心は夜の真っ暗闇が結構恐いなぁと思ってたりする。

「まあ、前回のもあるから人数は分けない方が良いんじゃないか?」
「そうやね。うちらも魔法が使える言うても、まだ初心者やからなぁ」
「みんなで回りましょうよぅ」

 レツの言葉にはやても同意するとリインが恐々と頼み込む。
 どうやら墓地の薄暗い雰囲気が恐く思えてしまったらしい。
 その小動物のような(実際動物だが)姿に、保護&母性本能を刺激され抱きしめたい衝動に駆られる局員ズ+@。
 はやてはもうお構いなしに抱きしめる。

「ああもう可愛ぇな〜リイン〜♪」
「むぅ〜!?」
『大丈夫ディス! 可愛い子に襲い掛かるお化けははオディの熱いハートで燃やしてやるウェイ!!』
「ある意味お前の方が恐いぞ」
「無意味に目が光ってるからね。でも何で口まで光ってるの?」
『内包するフレアの御蔭ディス』

 訳の分からない事を語るブレイド。
 夜の道端で普通の人が突然ぼんやり光るこんなの→0w0 を見かけたら困惑するだけだろう。
 出発する時、みんなで爆笑したのは言うまでもない。

「取り合えずどう周ろうか?」
「うーん。取り合えず中……中心まで入ってみようか」
「分かった」

 レツは頷くとライトを前方に向けて歩き出す。
 その横にノビが並び、後ろにはやてとリインが手を繋ぎながら歩き、ブレイドとユーノは周囲を見渡しながら後を着いていく。

(だ……れ……)
「ん……リイン、なにか言った?」
「?」

 はやてが尋ねるとリインは首をキョトンと傾げる。
 他の面子の様子を見てみるが、それぞれが話をしてたり周りを見てるだけで話しかけてきた素振りは見られない。

(気の所為だったんかな?)

 はて、と疑問に思いながら歩くはやて。
 そんな彼女達の数メートル後ろに、一定量の白い砂の様なものが地面を這いずりはやて達の後を着いていく。
 背後の妙な現象に、はやて達は誰も気付かない。






第24話「愛さえ知らずに育ったモンスター?」


 墓場の中を歩き続けるはやて達。
 夜という事もあり、その独特の雰囲気に少し前から段々と口数が少なくなっていた。
 嫌な空気が肩に伸し掛かるような気がして、ノビは誰にとも無く話しかける

「あのさぁ」
「なんだ?」
「今気付いたんだけど、ここって洋式の墓場なんだね」
「あ、それはやね。ここは凄い昔に外国のお偉いさんが住んでた場所らしいで?」
『あそこの屋敷らしきものがそうディスか?』

 ブレイドが指す場所には、墓場には不釣合いとも言える豪邸が佇んでいた。
 明かりは一切ついていなく損傷などは見当たらないものの、まるでホラーハウスのような雰囲気だ。
 局員ズが明らかにソレっぽいな、と思っているとはやては人差し指で頭をトントンと叩きながら唸り、こう話した。

「あんな所に屋敷なんて無かったはずなんやけどな」

 はやての言葉に押し黙る一同。
 ユーノは何かを考え込み、ノビは「うわぁ」みたいな表情をし、レツは軽く溜息を吐く。

「キレイなお家ですねー」

 純粋だが、場違いな感想を持つリインフォースは置いといて。

「なんでお前は面倒なの見つけるんだよ」
『オディのシグナルは高性能ビーコンディスからね。オディの騒動発見率に適うヤツはおらんディスよ』

 何か吹っ切れたように語る。

「……兎に角行ってみようか?」
「まー……そうするしかないよね」
「ほな、行ってみよか」

 はーい、と返事をして歩き出す。

(……て……なさ……ぃ)
「何か行ったか?」
「なにが?」

 誰かに話しかけられた気がしてレツが尋ねるが誰もが首を傾げるだけ。
 気の所為かと思い、気にしないで歩き出す。

(出て行きなさい)

 小さく、空気に溶け込んでしまいそうな声。
 今度は全員にはっきりと聞こえ、揃って足をピタリと止める。

「今のは?」
「なんやウチさっきも聞いたような気が」
「なんつかさぁ……」
「ねぇ……」

 言いたいけど言えない。
 そんな気分になりながら局員ズはユーノに振り返り告げる。

「いるでしょ何か?」
「そうだね」

 ユーノはすでに戦闘態勢に移れるように、手にライターを持ちながら何時でも印を結べるように構えている。
 変わり始めた空気に、はやてと局員ズのギャグキャラ特有の直感が告げていた。
 これはヤバイ予感がする!!―――と。

 で、大抵そういう場合はお約束がある。
 さあ準備は良いかお前等。
 俺は初っ端から最後までクライマックスだぜ!!

『JUNWAAAAAAAAAAAAAA!!!!』
「うおぅ!?」
「な、なにアレ!?」

 地中の岩盤をブチ破って彼等の前に現れる黒と青のラインを持った銀の巨人。
 両手を挙げて飛び出し、轟音を立てて着地するその姿に驚くはやて達。
 だが、はやてとノビは驚きの最中、それ以上に言いたい事があった。

「アグル! なんでウルトラマンアグルやねーん!!?」
「ここは海じゃない! 貴方のいる世界に還りなさいな!!」

 指を指しながら叫ぶ二人。
 その後ろの地面にいる白い砂の集まりみたいなものも、謎の巨人の出現に困惑していた。

(ま、間違えた……って言うかアレは何よ。取り合えず作り直してっと)

 白い砂の集まりが改めて念じると、巨人の姿が光の粒となって一度霧散する。
 一瞬のうちに再び集まり分離、別の姿形を作り出しそれ等は現れた。

『gisyaaxaaaaaaaaaa!!!!』
『kirururuuuuuuuuu!!!!』
『bigisyaxaaaaaaaaaaaaaaa!!!』

 それはまさに三体の怪獣と言える巨獣。
 大きさは分離した分小さくなっているが、はやて達を踏み潰すには十分な大きさだ。
 15行くらい前から一気に123.1度くらい変わった空気に、はやて達は盛大に叫ぶ。

「なんでや(じゃ)『ディスか』ぁあああああああああああああああああああああああ!!!!???!?!?!??!!」






第25話「夜は墓場で運動会」


 前回のあらすじ。
 アグルがグレて細胞分裂して怪獣トリオを結成した。
 現れた怪獣にはやてちゃん達大混乱。

「なんやねんアレわ!?」
「おっきいですー」
「何で墓場に怪獣なんだよ!!」
「怨念怪獣とか!?」
『なら髑髏怪獣レッドキングは兎も角、ゴモラとアギラが出てくるのは可笑しいディスよ!!』
「兎に角逃げよう!!」
「「異議無し!!」」

 答えると同時にレツははやての車イスを押し、それを見たノビはリインフォースに目を向けると既にブレイドが負ぶっていた。
 何となく微妙な気分になってたら背中に巨大な岩が落下して恐くなったので、体裁を気にする事無く全力ダッシュで逃げる。
 ユーノは両手で印を結び、魔力でライターの火を強化した火炎を怪獣達に向けて放つ。

『kisyaaaaaaaaaaaao!!!!』
「効かないか!」

 効果がない事を悔しく思いながら、振り下ろされた怪獣の尻尾を後ろへ飛び退く事で避けて逃げに転ずる。
 先に逃げていたはやて達は突然の事にテンパッていて、ダントツトップを走るノビが一番錯乱しているようだ。

「マジヤベーマジヤベーって!!」
『見たことあるのが一杯ディスーー!!』
「っていうか逃げ足早いなノビくん!!」
「障害物とか段差とあっても、ぜんぜん遅くなりませんねー」
(走れハシレはしれハシレ走れメロス!!)

 むしろ目が血走りかけている。
 そんな彼等を追いかける怪獣達の後方の地面に白い砂の塊の様なものが突いて廻る。

(出て行きなさい!!)

 強く念じると、怪獣達がそれに答えて歩く早さを増した。
 追いつかれまいとはやて達も必死に走って逃げる。
 そして、夜中の大逃走劇が始まった。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……!!!

「うおぉおおおおおおおお!!」
「あたたたたたたあた! イスが揺れてイタイ痛いわレッくん! もうちょい安全運転!!」
「無理!!」
『ウェェエエエエエエエエエイ!!』
「ブレイドさん早いですー♪」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……!!!

『gisyaaxaaaaaaaaaa!!!!』
「怖ぇえーーーーなオイ!!」

『kirururuuuuuuuuu!!!!』
「そろそろ腕がきつくなってきたぞーーーーーーーーーー!!」
「がんばってー!! ここで止まったらウチも巻き込まれる!!」

『bigisyaxaaaaaaaaaaaaaaa!!!』
『オディのボルトは3百万ーーーーーーーーーー!!!』
「なんの話し!?」
「くー」

 彼等は走った。
 墓場の中を走って走って走り回った。
 体力が尽きそうでも、止まったらヤバイので走り続けた。

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!


 ず〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと走り続けて時間が過ぎる。
 右へ左へ、アッチへコッチへ、さり気なく外に出るよりむしろ中心部の屋敷へドンドン近づいてるような気がする。
 それを追う側である怪獣は疲れた様子は無いが、謎の白い物体がでっかい青筋を浮かべていた。
 やがて業を煮やして先頭を走るノビの前に回りこみ、白い砂は盛り上がる様に人の形を形成する。

『ちょっとあんたたぶグジャブッ!!?

「ノビくん、何か今踏んづけなかったかー?」
「ハッハッッハッハッッハッ――ハッハッ!!!」
「知らんとさ!!」
『お線香のカスじゃないディスか?』

 頭を出した途端、人生での新記録を更新中のノビ達に気付かれる事なく踏み潰された。
 粉微塵に散った存在は、大して時間も掛からずに人の形をした姿を作る。
 それははやて達と同い年くらいの長髪の女の子の姿で、俯きつつ額に青筋を浮かべながら身体を震わせている。

『あ、あんたらねぇ……逃げるか戦うかどっちかにしなさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!』
『なんか知らんディスがお怒りになってるウェーーーーーイ!?』
「ばか見んな走れ!!」

(……たのしそう)

 たまたま近くにいた人魂が彼等の様子を羨ましそうに見ていた。
 それは彼等には知りようがなく、特に物語りに係わる事でもないので気にしない。

 数分後。

「ハァッハァ……ハァ」
「ヒィーッ! フゥーッ!!」
「へェ」
「「「……ほー」」」

 ユーノ、レツが荒い息を抑え、はやてがボケて最後に全員揃って一息つく。
 怪獣達を其処彼処の物陰に隠れながらやり過ごし、彼ら3人は全員が入りきる岩陰を背に少し休憩する。

「それにしても、羽根ってどこだよ?」
「やっぱあの怪獣達がそうなんかな?」
「いや、アレだけ近づけば僕やシュベルトクロイツが反応する筈だよ。だけど、あの3体からは羽根の気配は感じられなかった」
「なら、あれは何なんだ?」
「羽根は人の想いに反応して力を発揮するから、この墓場の残留思念みたいなものが形作ったものかも……」
「またややこしい事になってるんやなぁ」

 億劫な気分になりながら、はやてが呟く。
 二人も同じ気持ちなので、何も言えずにただ岩に背を預けて休む。

「うん?」
「どうしたのはやて?」
「あ、いやー」

 ユーノ達の方を見て、違和感を感じたはやては動きを止めて考える。
 そして、自分を基点に指をさしながら人数を数えてみた。
 いち、にー、さん、し……ピタッ。

「なあユーノくん、レツくん…………リイン達は?」

 はやてが指を止めて顔を青褪めて呟き、彼女の言葉ににユーノ達もハッと気付く。
 四方八方に顔を向けて、岩から顔を出して周囲を見渡してみるがそれらしい人影すらない。
 三人は顔を見合わせ、全員がサァーっと血の気が引く音が聞こえた。

 その頃、迷子の三人はと言うと……

「ここは何処なんじゃぁあああああああああああ!?!!?!」
『ウェーイ! 一体何が起こっダンディウェーイ?!!』
「スピー」

 どこかの地下通路らしき場所を彷徨っていた。





第26話 『未知(道)は目の前にある』

 何故こうなったのかは知らない。
 走っていたら突然、足元がパカッと開いて落下したのだ。
 所謂落とし穴と言うものに嵌ったらしい。
 見渡してみると、そこはどこかの地下通路の様な場所だった。

「ここは一体どこやねん」
『そうですねー。真っ暗で遠くの方は全然見えませんから』
「誰だお前!?」
『はっ!? 思わずラジオのノリで喋ってしまったディス!』
「時期ネタ使うなよ! ってかラジオって何の話!?」
『このサイトのリリカルラジオに決まってるディス』

 ちなみにこれを書いてるのは、テレ玉でのストライカーズ放送直後。
 でも見過ごしちまったんだよぉー。夜勤明けで眠くて、新聞見間違えて”新”って書いてるのチェックすれば大丈夫。
 そう思ってたら騙されたんだこん畜生。

「だから時期ネタとか個人の実情とか言うのやめようよ作者」
『ま、他人のネタをパクリまくる人種ディスからね。すぐにネタに走ろうとするのは仕方ないディス』

 言うなら開き直りである。

『まあ、出産は良かったディスよ……出産シーン……ハァハァ』
「そこでアイコン画に変わるなよ。キモイっつーの」
『ウェーイ』

 文章では解からない。
 何だか訳の分からない会話になり、これ以上言い続けたら限が無い。
 そう判断した二人は取り合えず力を抜いて、ブレイドは元のアンニュイキャラへと戻る。

「……とにかく、先に進もうか」
『ウェイ』

 そう言ってブレイドの頭を軽く押す。
 カチッという音が鳴ると、丸い瞳の光りが車のライト並みに明るくなり前方を照らす。
 出掛けがてらのやり取りで、ツッコミを入れたら偶然知ったブレイドに内蔵された機能らしい。

「ぶっ!? ……べ、便利だね」
『何ディスかこりわ!?』

 本人も知らなかったらしく、調べればまだあるんじゃないかと思った。
 他の仲間達と逸れて、肝の小さい彼はもう半分ヤケ、半分開き直って壁沿いに進む。
 後ろから何かの音がするのに気付かずに、そのまま歩いていくと曲がり道に差し掛かる。

(ちょっとあんた達!!)
「どわーーーーーーーーー!?」

 突如目の前に現れた存在に思わず後ずさる。
 その際ブレイドを突き飛ばしてしまう。

『ウェ!?』
(え?)

ボグシャァ!!!

 カタパルト発射されたように飛んだブレイドが目の前の存在に直撃。
 ぶつかった方は砂が弾け飛ぶように身体が崩れる。
 支えも何も無くなり、ブレイドは強かに床を顔面スライディングで滑っていく。
 土煙を上げながら、さり気なく火花も出ている状態であるにも拘らず、その背中でリインフォースはお寝んねしてる。

「なんだったんだ今の?」
『ウェーイ……何するディスか〜?』

 ノッソリろ起き上がり、色濃く焦げて煙を上げた顔面をノビに向けるブレイド。
 見る側としても笑えば良いのか、恐がれば良いのか微妙な気分だ。
 取り合えず意図的でなかったとは言え、悪い事をしたのは事実なので謝る。

「いや、ゴメン。今のはマジごめん」
(あ、ん、た、ら、ねぇえ〜〜)

 マッタリと会話していた二人の背後から、海面から現れるように砂を滴らせて少女が現れる。
 ギクリとして、反射的に肩があがるノビとブレイド。その肩に手を置かれた……気がした。

「オンドゥルドレギッダ?」(本当に誰ですか?)
『落ち着くディスよ。半端なオンドゥル語発言はやめるディス』
(あんた達……ほんとうに余裕かましてるわね)

 あはは、と乾いた笑いを浮かべる二人。
 もう現実逃避させてくださいって感じで、二人とも色々と諦めていた。

「ねぇ」
『何ディスか?』
「……寝ようか?」
『おー。イウェーィ』
あっフォーゥ!!

 何か間違えた発声をしながら、白い姿をした彼女の拳が二人に突き出された。 けど、逆に彼女の両拳が粉々に砕け散る。
 イラついた彼女は頭に無数の青筋を浮かべて、ついに地団駄を踏んで暴れまくった。

(なんなのよアンタ達はぁああああ!!!!)
「そんな事言われてもねぇ?」
『ウェーイ』
「すぴー」






第27話「哀と誘起だけが強敵(トモダチ)さ」

 一方、三人がいない事に気付いたはやて達は。

「ど、ど、ど、どないしよー!?」
「お、落ち着いてはやて」
「だってユーノくん! リインはまだ小さいんよ。こんな所で迷子なんて可哀そうや!!」
「一応ブレイドやノビもついてるんだから大丈夫だろ。あいつも結構やる時はやるし、だからも少し落ち着こう」
「……う、うん」

 二人に言われてはやては弱冠落ち着きを取り戻す。
 ある意味、付き添いがあの二人だからこそ不安が倍増してる気がしなくもないが、そこは黙っている。
 彼女が落ち着いたところで、レツがユーノに話しかける。

「さて、一応聞くけどお前さんの魔法で検索出来んのか?」
「うーん……リインの魔力は羽根の影響を受けてて見つけるのは難しいけど、ノビやブレイドなら何とか見つけられると思う」
「ホンマか?」
「なら頼む」

 二人に言われてユーノは頷き、近場の草に手を置いて魔力を流す。
 草の根が地面を伸びて行き、それを介してこの墓場の大まかな情報が彼に伝わっていく。

「……これは」
「なにか解かったんか?」
「地下に、大きな空間がある……構造からすると、迷路みたいなものがここら一体に作られてる」
「なんでそんなものがあるんだ?」

 聞かれてもユーノに分かる筈も無く、はやてもそれほど詳しい訳ではないので首を捻るばかりだ。
 不意に検索を続けるユーノが何かを感じ取り表情を変える。

「あっ」
「どうした?」
「ブレイドとノビくん、それと多分リインを見つけたよ……でも、一つだけなにか別の反応もある」
「危険なんか!?」
「いや、大丈夫。彼女達の方は……ね」

 ユーノの言葉に違和感を感じたレツは、はやてから逸れた彼の目線の先に顔を向ける。
 すると、地面の中から、何処かのホラーゲーム宜しく、骨だけの腕や、ガイコツ、ゾンビが這い出てきていた。
 半端に残った筋肉についた泥や、這い出たと同時に腕がもげる様子が偽りではない不気味さを醸し出す。

「まあ、夜の墓場と言えばそうだよなぁ」
「確かにセオリー通りやけど、これは幾らなんでもいきなりで出過ぎとちゃうか?」
「それより、どうして突然こんな大量のゾンビが出たんだろう?」

 冷静に状況を把握しようとするユーノを見て、二人は(あ、場慣れしてる)と思うと同時に感心した。
 ガシャッと音がしたので顔を向けてみると、ゾンビ達はどこから取り出したのか、剣や槍などで武装し始めた。

「どっからだしたんだよオイ」
「錬金術とか出来るんかな?」
「解からない。けど、今解かるのは僕らに友好的じゃないって事だね。はやて」

 ユーノは両手で印を組みつつ、はやてに声を掛ける。
 彼の言わんとしてる事を理解したはやては、首に下げたクリスタル(に変化した)シュベルトクロイツに手を掛ける。

「シュベルツ!」
(……ハッ?! 了解しました主!!)

 シュベルトクロイツを夜空に掲げて、彼女専用の杖へと変貌させる。
 弱冠間があったような気がしたが、はやては彼女専用の戦闘服へと姿を変えた。

「シュベルツ……今、寝てへんかった?」
(…………しばらく振りに起動すると、ロードに弱冠時間が掛かるのです)

 三人は(ホンマかいな)と思ったが口には出さないであげた。
 で、ここでレツは重要な事に気が付いた。

(俺、何も出来ねぇ!?)

 ハッキリ言って彼個人の戦闘力は魔導師としては皆無。
 ブレイドが一緒にいて初めて魔導師として戦えるのだ。
 でなければ、RPGの同じ言葉を繰り返すお城の兵士の様なもの。
 イベントが起これば、結構な確率で死にそうなキャラでもあった。

「ん? どうないしたんやレツくん?」
「いや、その〜」
「「……あ」」

 言い辛そうにしている彼の言いたい事に二人は同時に気付く。

「……じゃぁ、はやては僕のサポートを、レツくんははやての後ろにいて」
「うっわー、すごい情けない状況」
「まあ、仕方ないやんか」
「でもさぁ、何か居心地悪いよこれ」
「でも、戦えなかったらしゃぁないやろ?」

 はやての言うことも最もだ。
 それでも男としては、護られるだけと言うのは何とも嫌なものがあるのだ。

「あ、そや。そう言えばちょい前にブレイドから貰た面白いもんがあるんや」
「え、なんかあんの?」

 ブレイドからと言う事実に、思いっきりイヤな予感がするレツとユーノ。
 はやてはゴソゴソとスカートのポケット(あったのか?)をまさぐり、妙に質量のあるそれを取り出した。

「じゃーん! リアルア○パ○マンスーツや〜〜!」
おいぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!????!?!?!?






第28話「秘密めいたエナジーさえも風の中で震えているよ」


「…………」

 なんかノリの良い音が鳴り響くように、ニコ×2マークとマントに黄色い手袋の付いた赤い服を出すはやて。
 ユーノはポカーンと口をあけてそのブツを眺め、レツはどうしようか迷いながら、一応突っ込んでおくことにした。

「なんかもう、どうツッコんで良いのか解からないけど、一言いわせて貰うならその訳の分からない物体は何?
 正直訳が判らない。アイツ→(0w0)が何を考えてるのかって言うか、アレ自体訳解らんぞ」

 連続で意味不明の旨を伝えるレツ。
 確かに、それくらい訳の解らない……と言うかブッチギリで怪しさ爆発。
 著作権とか版権に触れたり夢を壊しかねない(今更何を言うか)って感じのアイテムだったのだ。
 これはもう訳が解らないと言うしかない。

「これはやな。ブレイドから貰ったパワードスーツで、これさえ着ればどんな人も相手を遠くまでブッ飛ばせるという優れものなんやって」
「ってか明らかにライダーに出てない道具なのに出して平気なのか?」
「あー、そこら辺は戦隊物のスーツの没案らしいで?」

特撮業界に一体何が?

「ブレイドが言うにはな。古来G−3ユニットの遺志を引き継いだG−5ユニットは大多数のワームに成す術もなく敗退。
 けど、その時最後まで戦った隊長さんがこう明言したんや。
 ―どんな不恰好になっても、ヘタレと言われても、存在感薄くても、女性に騙されても、最後には自分の意思を貫ける人が
 大切なものを護る事が出来る。だからどれだけ格好悪いと言われても思われても、自分で思っても諦めるな。
 彼のその言葉を受けて、開発局は外観は阻害視して機能を追及した強化服を開発。それがこのパワードスーツ、R−Dユニット。
 ”リアルア○パ○マン―デスよユニット”である。これは市外内、密林、空中、深海、宇宙空間、どんな場所でも活動可能なスーツ。
 この一見ただのアニメ宣伝用スーツは、戦場では敵の戦意を削ぐ効果も伴うという、平和的――」
「長い」
「って言うか、それを開発した人って一体……」

 レツが止めてユーノが微妙だなぁという言葉の変わりにデカイ汗マークを流す。
 はやてはやっと止めてくれたと言わんばかりに盛大に息を吐いた。
 結構疲れたらしい。

「それならジーサンないの!?」
「G−3はトレーラーが無いと装着できへんから」

 ガックリと肩を落とし、物凄く落ち込むレツ。
 そんなに着たかったのか、G−3システム。

「二人とも、遊んでるヒマは無いみたいだよ」
「よっしゃ。十分ボケたし、気合入れていこか!」
(主、戦いでは私が全力でサポートします)
「うん、お願いな」

 戦闘準備に入った二人は、まずユーノが先に動いた。
 ライターの火を魔力で増幅して打ち出し、ゾンビの群れの中心で爆発して焼き尽くす。
 まだ数体残っている間の地面から、新たに数体のゾンビやガイコツが這い出る。

「シュベルツ!」
(応!!)

 ステッキと化したシュベルトクロイツを一気に振るい、強力な魔力光弾が放たれゾンビの群れを消し去って行く。
 威力が強すぎたのか、適当な墓石をも破壊しながら飛んでいく魔力球は50m以上進んだ所で爆発した。
 その様子を、先端から煙が噴き出しているシュベルトクロイツを振った姿勢のまま見つめるはやて。

「はやて……もう少し加減しないと」
「あはは」

 後ろ頭を掻きながら、笑って誤魔化すはやて。
 その後ろではレツが本気でスーツを着るべきか、それとも別の妙案が浮かぶまで逃げ回るか考えていた。


 そして、ブレイド達はというと……
「いざゆ〜ぅ〜き〜を、だっし〜」
『みじん〜ぎ〜り〜だ〜、ほーちょー♪』
『「たまちゃーん♪ 切り刻んで〜も♪ なみ〜だ(ディ)堪え(ウェ)て〜」』
(どんな歌よ!?)
「ふにゃ?」

 奇天烈のテーマソングを怪しく改良しながら、楽しく謎の少女と歩いていた。
 一騒動してる間に、と言うか少女のツッコミによってリインフォースも目が覚めたようだ。
 寝ぼけ眼で辺りを見回し、ツッコミを入れた少女に気付く。

「はれ? お姉ちゃんはいったいどういう人なんですか? 真っ白けですけど?」

 少女に首を傾げながら聞いてみるリインフォース。
 彼女の純粋な瞳を見て、気が削がれたのか少女は怒るのをやめて溜息を吐く。
 今頃か。そんな言葉が態度からだだ洩れしているのがよく見て取れる。
 そんな彼女の反応にノビは何となしに、無難な質問を聞いてみることにした。

「んじゃキミは一体何者で、ここはいったい何なんでしょうか?」
(……なんか取ってつけた様な聞き方だけど、いいわ。教えてあげる。
 ここは昔、ある魔法使いの一族が住んでいた由緒正しき場所なのよ。
 あたしはその魔法使い、炎を司る家系バニシングス家の長女アリサ。
 アリサ・B・ローウェルよ)






第29話「あぁ今日が変わるMagic」

 前回までの粗筋。
 ブレイドたちをつけましてたイマジ――砂のお方はアリサと名乗る燃えるツンデレ少女だった。
 色々と混ざってるのは、やはり砂っぽいのが原因だろう。気にしだすと止まらない。だからそこで区切ろう。

『自分で由緒正しいとか言ってる時点で怪しいディスね』

 ブレイドの的を得た発言にチョップを放つアリサ。
 だけど、やっぱり逆に自分の手の方が砂の様に霧散してしまう。

(ッキーーーーーーーー!!!! 身体が無いのが恨めしいーー!!)
「炎で焼くとか、魔法で何とかしないんですか?」
『なんて事言うディスか!?』

 敵に塩を送る発言をしたノビにブレイドが乗り良くツッコミをいれる。
 アリサは頬に指を当てながら困ったように話す。

(それが、霊体になってから幻覚魔法以外ロクに使えないのよ)
「あ〜、そうなんですか」
「もしかして、さっきの恐竜さん達はアリサお姉ちゃんがやったんですか?」

 リインフォースの言葉にアリサは歯切れ悪くも認めた。
 ノビとブレイドはさっきのは幻だったのか、と理解した反面どうしても聞きたい事ができた。

『最初のアグルはいったい何の意味があっタンディスか?』
(それは聞かないで……あたしも。何であんなのが出たのか良く解らないから)
「あ、はい。解りました」
「アリサお姉ちゃんはどうしてこんなくらい場所にいるんですか?」

 墓場に来たとき、恐がっていたのは何だったんだと思うくらい幽霊と思われるアリサに質問するリイン。
 まあ、目の前の少女アリサはボケに律儀にツッコミを入れてくれるので、そうそう恐ろしい類の霊では無さそうだ。
 多分、律儀にボケにツッコミを入れてくれる人は比較的良い人だと感じ取れると思う。
 そんな事を思いながら、リインに続いてノビは無難な質問を聞いてみることにした。

「もしかして、何か心残りで成仏できないって話ですか?」
『なんで市街地の外れにある廃ビルに棲み着いてないんディスか?』
(二つの意味で違うわ。そりゃ確かにこの土地に宿ってる身だけど、もう心残りは無くなってたのよ……けど)

 そう言うとアリサは俯き、怒りを納めるように片腕を抑える。
 その様子にノビとリインフォース、ブレイドは顔を合わせて首を傾げる。

(突然あいつ等が現れたのよ)

 アリサが苦々しく語りだしたのを見てノビは、(あ、これ巻き込まれるな)と思った。
 大抵こういうイベントは強制参加がセオリーだ。まあ、墓場に来た時から何かあるなとは予想していたので、軽い溜息一つ吐く位だ。

(……聞く気ある?)
「あ、はい! どうぞどうぞ」
(あれは、空から白くて雪みたいに輝く羽根が降ってきた日の事よ)

 ゑ?
 っと思いながら驚いた三人は、アリサから語られる事情に苦笑いを返した。
 彼女の話によると、羽根が持つ巨大な魔力に惹かれて何処か別時空の魔物がこの墓地に集まってしまったらしい。
 その邪気にあてられて、この墓地で眠りについていた筈のアリサは現世に引き戻されてしまったとの事だ。

「そんな出し入れ簡単なものなんすか?」
(そんな訳ないでしょ。多分このの地下に隠した魔道具とかも色々反応しちゃった所為だと思うわ。しかもこれを狙う下級悪魔もいるみたいだし)
『マジディスか?』
「ちょっと恐いかもです」
「それよりも、魔道具とか色々設定出しても使う機会あるのかな?」

 ノビが何だか別方向の心配をし始めると、アリサは胸を張って堂々と答えた。

魔法少女大原則ひとつ! いちいち細かい事は気にしない!! はい、復唱する!!)
『男らしいウェイ』
「って言うか、この人嘘予告の方の人だぁあーーーーーー!!!!?」
「なんの話しですか?」
『小さな星の話しディス』
(細かい事は気にしない!! つべこべ言わずに復唱する!!)

 これ、もう色々手遅れなんだろうなぁ。
 そんな今更なことを考えながらノビは適当に相槌を打つ。
 リインフォースとブレイドは何だか楽しくなったのか、アリサの言葉にノリノリで答えていた。
 だからどうしたと言われてもどうしようもない。ただ、ノリが良くなっただけと追記しておこう。
 ノビはもう、驚きつかれて結構面倒臭くなっていた。






第30話「誰かが何かを狙ってる、二次元の扉が開く」


 アリサという幽霊少女が熱く魔法少女大原則を語る中。
 ノビはかなり、唐突に且つ途轍もない窮地に立たされていた。

(トイレ行きてぇ!!!!)

「はれ? ノビさんどうしたですか?」
『トイレでも行きたいディスか?』

 ブレイドの言葉に頷くと、アリサが自分の額に手を当てて呆れる。

(あんたねぇ……それくらい、先にちゃんとしておきなさいよ)
「やってもダメな時はあるよう」
(ハァ……仕方ないわね。そこの通路ちょっと進んで右に曲がった所に用足す場所があるから)
「どうもすんません」
 
 ヘコヘコと頭を下げながら走る姿は営業サラリーマンを髣髴させるものがあった。
 アリサは腕を組みながら溜息を吐き、リインとブレイドは内緒で持ってきていたお菓子を食べ始めた。

(あれ? そう言えば何かを忘れてるような……)

「ンNoォオオおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーー!!?!?!?!???

 アリサが頭の中で何かが引っ掛かっていると、奥のほうからノビの悲鳴が聞こえた。
 その雄叫びとも言える叫びに、ブレイドは思わず口に含んでたポテトチップを噴き出してしまう。

『何ディスかいったい!?』
「ノビさん、どうしたですかー!?」
(あ、そう言えばそこら辺にまだ生きてる罠があるの忘れてた)
「アリサお姉ちゃんもウッカリさんですか?」
『もー、ダメディスねぇ』

 テヘッと舌を出しながら、自分の頭を叩くアリサにブレイドとリインフォースが言う。
 ほのぼのと和み、3秒後くらいでそんな場合じゃないと思いなおして走り出す。


 アリサ達がほのぼのとコントを行なってる間、ノビは滑り台を体験していた。
 彼が掛かったのは落とし穴だったようだ。

「ォぉぉぉおおおおおおおおおおおおーー、なんかスピード乗って恐くなってきたー!!
 てか摩擦熱で擦れて熱い痛い恐いヤバイ!! なんでじゃぁああーーーーーー!?」

 叫んでいると滑り台も終り、思い切り背中を退けそらせながら10mくらい地面を滑走するノビ。
 徐々にスピードも収まり、完全に止まると伸ばしていた手を降ろして大の字になる。
 用足し終わった後で良かったと思いながら、ノビは痛む身体をさすりながら立ち上がる。

「ん? なんだあれ?」

 正面を見てみると、なにやら紋章や文章の刻まれた大きな石碑が建っていた。
 黒光りするそれは先祖代々続く墓の様なものにも見える。

「これってもしかし『ウェエエエ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜イ!!(です)!!!でぼぁうぉ!!?

 近づこうとしたノビだったが、後を追ってきたブレイドとリインフォースに吹っ飛ばされる。

「なに? なんなのこの仕打ち?」
(だ、大丈夫?)
『ゴメンウェイ』
「ノビさん、ごめんなさいです」

 本気で泣きたくなっているノビに頭を下げて謝るアリサたち。
 心配してきてくれた事は素直に嬉しいので、取り合えずノビはこの事に関しては不問にしておく事にした。

「で、ここは何なんすか?」
(ここは……代々続く一族のお墓よ)
「この宝石キレイですー」
『ウェーイ、なんかロトの紋章っぽいのがあるウェイ』
(こらー!! 人の家を勝手にあさるなー!!)
「家なんだ!?」

 物珍しげに墓に触るちっこいの二人組みを引き離したいアリサ。
 だけど、触れることが出来ないので周りで手をパタパタ振るしか出来ないようだ。

「ほら、ダメだよ悪戯しちゃぁ」
「はーい」

 悲しいような微笑ましいような光景に苦笑しつつ、ノビはまずリインフォースを引き離し、次にブレイドを墓から剥がそうとする。
 ブレイドは不満なのか、紋章を必死に掴んで離さない。だが、やがて疲れてしぶしぶ手を放す。

『ウェーイ、こんなに引っ張っても取れないディスか〜?』
(それは家に伝わる紋章なの。だから盗難防止用の魔法が掛かって取れないようにしてあるのよ)
「ふーん。便利なんだ?」

 コンコン……ポロッ

「え?」
「あ」
『ウェ?』
(へ?)

 カッコロコーン……コロコロコロ――カラララララン。


 取れた。
 幾ら引っ張っても取れなかった物が、ちょっと叩いてみただけでいとも簡単に。
 微妙な空気が流れ、リインは嬉しそうに走りよってそれを拾い、ノビとブレイドはアリサに視線を向ける。
 等の彼女は、ギコチなく口をピクピクと引き攣らせながら、紋章を指差していた。

「えっと……あの」
『東南の魔法が何ディスと?』
(うるさいうるさいうるさーい!!!)

 アリサが恥ずかしさに腕を振るって二人を叩こうとするが、空しく砕け散ってしまう。
 それがまた面白くて、つい笑ってしまう。と、その時ブレイドのアンテナホーンがピーンと音を立てて(当社比)0.2倍伸びたような気がした

『ウェ!?』
「どうしたの?」

 ノビがブレイドに尋ねると、返事をするかのごとく地面が揺れた。
 それも、遠くからなにかが近づくように、段々と揺れが激しくなっていく。

「きゃぅ!?」
「うお?!」
(な、なによ?!)
『嫌な予感がするディスー!!』
(落ち着きなさい! 魔法少女大原則その1! 地震の時は押さない駆けない喋らない戻らない!!)
『おかしもディスね?』
「学校じゃん」
「何の話ですか?」

 もしかして、一番混乱してるのは彼女なんじゃないかなぁと思うノビ。
 そして、彼とブレイドは嫌な予感がしながらも一途の望みにかけるように祈った。

(【どうかボスキャラじゃありませんよーに!!】)

 次の瞬間、墓場の元から巨大なムカデの様な怪物が現れた。
 世界ってヤツは、そうそう都合よくはいかないものなのだ。

アギャァアーーーーーーーース!!!!

『「ダメだっ(ディス)たーーーーーーー!?!?!?」』
「(きゃぁあああああ!??!?)」






第31話「哀の戦士達、立ち上がれ一つになれ」


 時間は少し撒き戻って、ゾンビ達と戦うユーノ達の場面へ移る。
 ユーノは小枝に魔力を通して鞭の様に操り、ゾンビ達を打ち牽制し、行動できないように縛り上げていく。
 はやては自慢の車イスを押しながら、中に搭載されている銃火器を一斉発射してゾンビの群れを蹴散らしていった。

「ほれほれ、早う逃げへんとこの子連れ狼印の車イスが火を吹くで!!」
「それ、もう車イスじゃないよはやて」
<そんなことされたら、私の出番が無いのですが……>

 マシンガン張りに車イスのあちこちにある仕掛けから銃弾を打ち出す彼女に力なくツッコむユーノ。
 さながらセーラー服を着ながらマシンガンを乱射するような感覚に、はやては打ち終えると同時に快・感というのも忘れない。
 それにしても飛行形態になったり隠し武器を搭載してたりと、この車イスを作った人は何を考えているのだろうと疑問に思う。
 ところでレツはどうしているのか。

「チェストー!!!!」

ボグシャァ!!!!

 リアルア○パ○マ○スーツを着た状態でゾンビに拳を突き出す。
 その拳圧によって、直線状にいた他のゾンビのドテッ腹に大きな風穴が作られていった。
 諦めてスーツを着てみたら本当にとんでもなく強かった事に驚く三人。
 その性能にレツはなんだか面白くなり、ゾンビ共を引き千切っては投げもぎ取っては投げてと大暴れした。
 やはり、身の安全や人格より出番を優先したようだ。

「なんだかどっちが悪役か分からんなー」
「それ以前の問題だと思うよはやて」
唸れ! 喰らえ! そして死ねぇ!! 破滅のグランバニッシュゥうアアア!!!!

 倒れこんだゾンビ目掛けて、明らかに異常発達した二の腕を叩き込む。
 地面に打ち込まれた拳が特撮でも有り得ない轟音と地響きを周囲に轟かせる。
 地面が大きく揺れ、思わずよろけてしまうはやて。それに気付いたユーノは咄嗟に彼女を支える。

「あ、ありがとな。ユーノくん」
「どういたしまして。でも、あれは本当になんなの?」
「ウチもまさか、あないなるとは思わんかったわ」
「フハハハハハははは!! 貴様のアームズはその程度かぁ!?」

 アームズって何だと思いながら二人は彼の暴れ様を見ている。
 何と言うか、彼の眼はイッチャッてた。


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!! ん?」

 突如感じた違和感に、拳乱打の応酬をしていた手を止めるレツ。
 見ると、グチャグチャのバラバラに砕け散っていたゾンビ達のパーツが蠢き出し、一気に一つ所へ集まっていく。

ズゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾゾーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!

「キモッ!?」
「うわっこれは本気で退くわ……なんや吐きそうや」
「どうするつもりなんだ?」

 虫の大群が一斉に動くように、集まっていく死骸のパーツ達。
 それはやがて一塊の山の様になり、中から一つの光りの羽根が飛び出し中空に浮かび上がる。

「あれは!?」
「げっ」
「なんや予想はしてたけど、本当に傍迷惑な代物やなぁ」

 それぞれが羽根に対して思っていると、ゾンビの山の頂上に一体のゾンビが手を伸ばした。
 腕を伸ばしてその羽根を掴むと、身体が引き上げるように浮かび上がりその上半身を現す。
 そして、手の中で羽根が光り輝き、掴んでいるゾンビの姿を大きく変えていく。

ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!


「なんや? ゾンビの親玉か?」
「あ、れ、は……ギルス、アナザー……何だ?」
「知ってるの?」
「微妙」

 頂点に立つゾンビの姿は、深緑の身体に鋭い牙を持つ赤く大きな複眼。
 姿が変わると同時に、その下半身にあるパーツの山が吸収されていくように蠢いていく。
 質量が増大し、腕や瞳、所々が大きく膨張して更にグロテスクな形式へと変わる。
 指先はすべて鋭い鉤爪となり、胸の部分からは赤い目玉が内側から現れてギョロギョロと視線を動かす。
 背中からは二つの触手が飛び出し、触手は先端部分が割れて繋ぎの部分からは鋭い鉤爪が現れてムカデの様な姿となる。

『シャァアアアアア!!!』
『ギチギチギチギチギチ!!!!』

 それらは意思を持つかのごとく動き、はやて達を威嚇するように牙を向けるような仕草を行なう。
 カショ-ンカショーン!!

「ちょ、そんなんありなんか?」
「これは……僕らだけじゃマズイよ」
「大丈夫、このリアルア○パ○マ○スーツは……無敵だ!!」

ビリビリビリビリビリィ!!!

 高らかと叫びながらレツが力瘤を作ると、スーツは腕の部分が思い切り音を立てて破れた。
 それと同時に少し前まで身体中に漲っていた力が、風船の空気が抜けていくように無くなっていく。

「あれぇ!?」
「なにやっとんねーん!?」
<主!!>
「来るよ、二人とも!」
『シャギャァアアアアアアアア!!!!』

 ユーノとシュベルトクロイツの言葉に咄嗟に走り出す。
 今しがた彼らがいた場所に、ムカデ型の触手が突っ込み地面を抉りながら地中を進んでいく。

「あ、危なかった」
「あんなんモロにくろたら、一発でお終いやで!?」
「っく!!」

 発端当初の予想をぶち抜いて、さり気なくシリアスになりそうな存在の唐突な出現に驚くはやて達。
 異様な存在であるゾンビ達は一つとなり、異形の怪物と化して容赦なく彼女達へと牙を向く。






第32話「今日のおもちゃ箱は美味しい韓国料理、チャンネルはそのままディ(違うでしょ!!)」


 あまりにも唐突に現れたゾンビの集合体である巨体の怪物。
 その背中から音を立てながら這い出る2つのムカデの様な巨大な触手がはやて達に襲い掛かる。
 一方は地面を抉り、もう片方は醜悪な口を開いてはやてへと向う。

「うちが狙いかーい!?」
「はやて! 風の精シルフ。疾風の恩恵を翼と化して、この身に纏い駆け抜けろ!!」

 ユーノが印を組みながら詠唱すると、足元に風が激しい気流を巻き起こして彼の身体を持ち上げ加速させた。
 弾丸の様に空中を駆けてムカデの牙が届く前にはやてを抱き抱えてその場から大きく離れる。

「大丈夫はやて?」
「あ、うん。なんか助けてもらってばかりやな」
「気にしないで。それにしても、どうして突然あんなのが現れたんだろう?」
「前と同じ様に、特に意味はないんとちゃう?」

 はやての言葉が異様に納得できてしまう実情に、ユーノは顔に影を落とす。
 そんな彼の方を優しく叩くはやて。二人はムカデがレツへと標的を変えた事に気付かずって言うか完全にレツの存在を忘れていた。

うぉおおおおおお!!? こんなアホらしい格好で死ぬのはイヤだぁあああ!!!

 背後から迫るムカデから必死に逃げているレツ。
 突如、彼の目の前の地面から爆発するようにもう一つのムカデが現れた。
 何故かブレイドを口にガッチリと銜えながら。

『ウェーイ!?』
「ブレイドぉ!?」
『ウェ? みなさんお揃いディスかー』
「なにやってたんだお前?」
『ウェー。話せば長くなる事ながら』
「……なんや、噛まれとるのにエライ余裕やなぁ」

 ムカデが身体をクネクネ動かしてるのがまた緊張感を削ぐ。
 苦笑しながらはやてが言うと、その足元の地面が盛り上がり中から人の手が突き出てきた。
 驚き、反射的にユーノにしがみ付くはやて。そして、腕は地面に手をつけると一気に力を入れて全身を土の中から飛び出させる。

ぶはぁーーーーーーーーー!!
「ぷっはぁ〜! 苦しかったですぅ」
「リイン!」
「良かった、みんな無事だったんだ」
「本っ気できつかったけどね」

 土まみれの服を叩きながらノビは荒い息を整えて答える。
 どうやらムカデが大暴れして地下にはいられなくなったらしい。
 もしかしたら崩れて、気合と根性で地上まで上ってきたのかも。

「でも、みんな何してたんや?」
「アリサお姉ちゃんと友達になってたんですよ」
「アリサお姉ちゃんって誰や?」
(あたしよ)
「「うわぁ!?」」

 後ろから声を掛けられて驚くはやてとユーノ。
 振り返って見ると、両腰に手を当てながらアリサが彼等の前に姿を現す。

「この娘は?」
「えっと、まあその〜色々あったんだよ」
「色々あったんです」
(まあ、色々あったわね)
「ふ〜ん」
『ウェーイ、そろそろ助けて欲しいディスよー』
「俺もなー!!? ってか存在忘れてるだろ!?

 遠くの方から聞こえてくる叫びに、アッとしながら顔を見合わせる。
 その表情は「あっやべ。忘れてた」という事がアリアリと解った。

「さて、リイン達も無事やと解ったし。思い切っていこーか!」
「はやて、油断は禁物だよ」
(あの食べられてるのは無事って言えるの?)
「まー頑丈だから、多分大丈夫だと思いますよ?」
「ブレイドさんはちょー合金ですから硬いんですよ!」
『どーディも良いから、早く降ろして欲しいディスー』

 緊張感の欠片もない様子に、アリサとユーノは脱力するしかなかった。
 太目が合うと、互いに同じような事を感じているとなんとなく解り、少し親しくなれそうな気がした。

「取り敢えず、まずはブレイドを助け出そう。じゃないとレツくんが戦えないからね」
「そやな。ムカデだけじゃなくて本体さんも倒さなあかん。さっきからお空に向って咆えてばっかやけどな」
「よし、じゃあこっちは安全な所で隠れてるよ」
(情けないわね。隣のリインって娘の方が勇気あるんじゃない?)
「だって仕方ないじゃないすか。実際なにも出来ないし」
「リインも気持ちは嬉しいけど、ノビくんと一緒に隠れててな?」
「……はい」

 はやての言葉に残念そうに俯くリイン。
 小さい罪悪感を感じるが、そこは彼女の安全の為に我慢する。

「リイン、うちはここで水を撒く事しかできへん。でもリインにはリインにしか出来へん事があるはずや。自分が今、なにをしたいのか」
「……解りました。じゃあ、帰って寝るです!」

 元気良く胸の前で両手で握り拳を作りながら答えるリインフォース。
 だが、その内容にアリサは(だぁぁ)と言って横倒れになってズッコケた。

「グッジョブや!!」
(なんでよ!?)
「なんか、日課らしいですよ」

 ノビははやてからリインが人型になれる前から、時々暇潰し程度にコントを仕込んでいるという話を聞いた事があった。
 笑いを愛する彼女はリインが人の姿を保てるようになった後からはその頻度は上がり、ほぼ毎日ネタに対するボケを仕込んでいるらしい。
 説明を聞いたアリサは、現代社会は病んでいると深く思ってしまった。

どーでも良いから早く助けてくれぇええーーーー!!!
『ウェーィ……そろそろオディは目くらいしか見えてないディスよー』(ガジガジ)






第33話「魂込めた怒りの刃叩きつけて」


「さて、意気込んでみたのはええけど」
「実際どうするか、だよね」

 目の前で蠢くムカデを見上げつつ、はやてとユーノはどうするか考える。

「んー。取り敢えずばすたー」
『ウェエエーーーーイ!!?』
『ギャァアーーーーーーース!!』
「ちょっはやて!?」

 軽い口調から放たれた殺人光破がムカデの頭部を吹き飛ばす。
 当然加えられていたブレイドもダメージを受けるが、頭が粉々になったお蔭で解放され地面に落っこちた。

『ひ、酷いディス』
「大丈夫かーい」
「よし、さっさと来い。っていうか行こう!! じゃないと俺がヤバイから!!」

 ノビがあまり心配してないような感じで声を掛けると、横から全力疾走していたレツがブレイドを掻っ攫う。
 更にその後ろからもう一匹(?)のムカデが追いかける。

「ブレイド、戦闘モードだ!!」
『心配は無しディスか。容赦ないディスね』
「今はそんな事より出番の獲得だろ」

 情け容赦ない個人的事情だが、ブレイドも同じ立場なら出番を取るので同意。
 レツはやはりブレイドの首筋を引っ掴み武器にする。今回は剣のままの形を維持しつつそれを構える。

「で、なにか良い技コンボあるか!?」
「うぇ!?」

 突然話しを振られて困惑するノビ。
 出番が無いだろうとタカを括っていたので、物陰で休憩をしようと座り込もうとしていた分なお驚いた。

「行き成り振るなよ!?」
「すまん。けど、俺知らないからさぁ」
「えーっと、じゃあスラッシュ、マッハ、タックルで!」
「よし!! 『SLASH・MACH・TACKLE!!』」

 三枚のカードをスラッシュリーダーへ滑り込ませ、走るのをやめてブレイドを逆手に持ちムカデに向き直る。
 立体映像の様に出現したカードの青い光りの幕がブレイドに宿り、その効力によってレツの周りがジェット気流の様なもので揺らぐ。

「はぁぁぁ……」

 ムカデが口を開き、レツに喰らい掛からんとした次の瞬間レツの姿が消えた。

「『ソニックブレイド!!』」
『ギギギィイイイイイイイ!?』

 高速の突進による斬激がムカデの頭部を捕らえ、ブレイドが食い込みその胴体を切り裂いていく。
 腕に掛かる負担は半端ではないが、真面目なシーンなので我慢してブレイドを離さない様に努力しているレツ。
 やがて、数十メートルほど真っ二つに切り裂かれたムカデは力なく地面に倒れ付した。

「おおー凄いやないかレツくん。惚れないレベルで格好良いで!!」
「ゼェ……ゼェッはは。らくしょーらくしょー」
『腕が震えまくってるディスよ』

 武器モードのブレイドが言う通り、彼の手はバイブ機能真っ青なくらい高速振動していた。

「後はあのデカイのだけか」
(……まだみたいよ)
「え?」

 物陰で傍観を決め込んでいたノビにアリサが戦いの場から目を離さずに言う。
 言われて視線を戻すと、ムカデ達は破壊された部分から新たな頭部を生やした。

『ギシャァアアアアアアアアア!!』
「再生、いや分裂した!?」
「そんなんアリかーい!?」

 四つに増殖した頭部はそれぞれはやて、ユーノに一体ずつ、レツに二体掛かりで襲い掛かっていく。

「俺キツくない!?」

(丁度一対一ずつね)
「ブレイドも含めて良いのかな〜?」
「それより、はやてちゃん達がピンチですよ!?」
(ああいうのは炎で傷口を焼かないと、すぐに再生するわ)
「そうなんですか。はやてちゃーん、ムカデには炎が有効ですよー!」

「そうなんか? なら、ユーノくん!」
「うん。わか――っ!?」

 返事をしようとした所で、急に膝を地面に付いて手で口元を覆うユーノ。
 無数のゾンビ相手に慣れない攻撃魔法を使いすぎた事による反動が今になって現れたのだ。

「ユーノくん!!」

 はやてが駆け寄り、ユーノに肩を貸して起こそうとする。

「はやてちゃん危ないです!!」
「え?」

 リインフォースの言葉に振り返ると、二体のムカデが左右から醜悪な牙を向けてはやてに襲い掛かってきていた。






第34話「純情なMy感情が騒ぎ出す?」


 魔法を使いすぎた反動で膝を突くユーノ。
 彼に駆け寄り抱き起こそうとするはやてに二体のムカデが襲い掛かる。

『ギシャァアアアアアアアア!!!』
「はやてちゃん!!」
「え、ちょっとま―――!?」
「リイン!?」

 ノビが止めるより早く、リインフォースは飛び出しはやて達の前に立つ。
 そして、迫り来るムカデを恐く思いながらも、ここ数日ユーノに教えてもらった魔力を行使しようと集中する。
 彼女の体から淡い光りが溢れ髪が靡き、魔力の高まりを感じたリインフォースはそれを一気に開放した。

「ぇえーーーーーーーーーーーーーーい!!」

 ズモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモ!!!!!
 ゴォオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンン!!!
 ゴゴゴゴゴゴゴ…………



 凄まじき光りの放流がリインフォースから発せられ、半径ん十メートルを吹っ飛ばす。
 漫画的爆発が薄気味悪い墓場を一気に戦場跡地の様な地形へと変えていく。
 ようやく収まると、細かい瓦礫のみとなった地面からボコッと手が飛び出し、再び地面からノビが姿を現した。

「ぅぅぉぉ〜〜おぉぅぅ……し、死ぬかと思った」
(何なのよあの娘のトンでも魔力は!? 危うく存在が消滅しかけたじゃない!!)

 自分の影に隠れて難を逃れていたアリサに、こっちに振られても困ると思いつつノビははやて達の姿を探す。
 取り敢えず爆心地を見てみると、目をナルトにしてるユーノと顔を引き攣らせながら倒れてるはやて。
 その近くではリインフォースがスヤスヤと眠っていた。

(あんた達にゾンビが近づけなかった理由が解ったわ。あの子の魔力が凄すぎて、弱い魔物の力じゃ近づく事もできなかったのね)
「あー、もしかして突然ゾンビが現れたことに対する後付け?」
(違うわよ!!)
「……おーい、俺らの事も忘れないでくれー」
『ウェーイ』

 呼ばれて見てみるとセオリー通り爆発に吹っ飛ばされていたのか、レツは頭から地面に突き刺さっていた。
 ブレイドは武器モードで被害が少なかったのか、特に何の被害も無くレツを引き抜こうとしている。

「あーっと……今ので倒せたんかなぁ?」
(……そんな終わり方って……良いの?)

 アレだけ色々とピンチとかあって急展開的な感じに出来そうだったのに、終りがこんなでは理解も納得も出来ない。
 アリサの思いは尤もだが、ノビにしてはもうこれでおひらきにしたい所だ。
 だが、世の中はいやな事ばかりが器用な事が起こるもので、望む事はそうそう上手く起こらない。
 地面が少し揺れたかと思うと、地面の中からゾンビの集合体が姿を現す。
 全くダメージが無いのか、その姿はリインフォースが色々と吹っ飛ばす前と変わりない。

「あれを受けて平気って……どんだけだよ!?」
『多分……シリアス2、ボケ8くらいの割合だったから大して威力はなかったんディスよ』
(どんな形式よ)
「実際問題どうしますよ?」
「『(う〜ん)』」

「いやな……誰か一人くらいうち等を心配してくれてもええんとちゃうか〜?」

 ズリズリと這うはやてに言われて、ノビ達は取り敢えずユーノ達の所へ駆け寄る。
 リインフォースは熟睡しており、ユーノは疲労によって戦闘続行は無理だろう。
 不利な戦況に唸りつつ、ノビはブレイドに何か良いものは無いかと聞いてみる。

「あのさ、なんか良い道具無いの?」
『そんなドラえもんじゃあるまいし』
「ここでは似たような役割だろお前」
『ウェーイ……そこまで言うなら仕方なウェイ』

 言われて渋々とブレイドはバックルを回転させて、中に手を突っ込む。
 そして取り出したものは、もういい加減にしろやと言いたい代物だった。

『デンオウベルトー♪』
「マジかい」
「何で今電王やねーん!?

 乗り良く取り出したブレイドに、はやてが合いの手としてツッコミを入れる。
 ツッコミ以外にも何か凄く物申したい衝動に駆られるが、言い出すと限が無いので一言。

「何で最新式のライダーアイテム持ってるの?」
『オディも色々とアップデートしてるのディスよ。次々進化するのはもうお約束ウェイ』
「もうキミについて細かい事は言わないけど、これって確か何かと契約しないと特にこれといった能力は無いんじゃ」
「それ以前にこの世界にイマジンはおらへんよ」
『それについては大丈夫ディス。オディのアイテムは使いやすさを重視して細かい設定は改変してあるウェイ。
 だから、魔力を持った幽霊に協力してもらえれば十分戦闘能力を持つことが出来るディスよ』 
(ちょっと待ちなさいよ。それって……)

 ブレイドの言葉にアリサは嫌な予感を感じて聞くと、はやて達は一斉に視線をアリサに向ける。

「アリサちゃん諦めてや。これは明らかに最初からネタとして使われる為に出演させられたとしか思えへんアリサちゃんにしか頼めへん事なんや」
『ぶっちゃけ元ネタははまんま電お―――』
(もういいから畳み掛けるんじゃないわよ)

 思い切り楽屋ネタになっているが、今は少しでも戦力が必要だ。
 取り敢えずブレイドは戦闘能力皆無のノビにベルトを渡すと、今度はバックルから一つのパスを取り出す。
 そしてソレをアリサにポンッと触れさせる。

『んじゃ、この中に入って欲しいウェイ』
(へ?)

 気づいた時にはアリサ姿はパスの中に吸い込まれていった。
 どうやらこのパス、先に言った通り原作とは異なる機能を持ってるようだ。

(な、何なのよコレー!?)

 アリサはなにが何だかわからないながらも、パスの中から抗議の声を挙げる。
 勢いが強いのか仕様なのか、パス自体も大きく動き彼女の活発性を現していた。

『よし、これで後はベルトにパスを通すだけディヘシン完了ディス!!』
「良いの? 良いのかこれ?」
「細かい事考えたらあかんよ。どうせ今更やんか、気にしないもん勝ちやでノビくん?」
(あたしの意見は無視!?)

 騒ぎ立てるアリサ入りのパスをノビに渡そうとするブレイド。

グルアァアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーー!!!
「「『うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!???』」」
「(きゃぁあああああああ!!!?)」

 普通に存在を忘れていた巨大ゾンビの登場に驚くはやて達。
 大きな雄叫びを上げながら、巨大ゾンビはその腕を振り下ろす。
 レツとブレイドは横に飛び退いて、はやてはユーノに肩を貸し、ノビはリインフォースを抱き抱えて豪腕から逃れる。

『ノビ!!』
(投げるなー!!)

 激しく地面が揺れる中、転がりながらパスを投げるブレイド。
 ノビはアリサの叫びにパスの場所を確認して、飛んでくるパスを受け取ろうと上に手を伸ばした。






第35話「胸の奥で震えてる思いが目覚めるその瞬間」


『さぁ、契約の戦士よ!! 今こそその真の姿を解き放つディスよ!!』
「っよ!!」

 ブレイドが何か言ってるが、効いてる余裕などノビにある筈も無く投げられたパスに手を伸ばす。
 クルクルと周り落ちてくるパス。それが手元に落ちてくるまでの数秒がとても長く感じられる。
 第3者としては中のアリサがどうなっているかが気になるが、ノビとブレイドはそんな事を気にする余裕はない。
 あと少しで手が届く。月明かりに照らされて移るパスの中心はとても美しく、綺麗に赤く輝いて見えた。

『グルァア!!』

 パシッ!

「あっ」
「へ?」
「おい?!」
『ウェー?』

 今起こったことを簡単に説明しよう。
 巨大ゾンビが振るった腕がアリサ入りパスを叩き飛ばした。

ちょっとーーーーーーーーーーーーーー!?

 叫びながらあらぬ方向へ飛んでいくアリサ入りパス。
 ノビは少しの間行き場を失った腕を伸ばして呆然としていた。
 それはそうだろう。見せ場が来たと思ってスタンバイしていたのに、行き成り横槍入れられて邪魔されたのだから。
 ちょっと気まずそうにしながら、取り敢えずリインフォースを担ぎなおしてその場を離れる事にした。
 それを見計らったかのように巨大ゾンビは暴れだす。

「なにやっとんねーん!!」
「それはどっちに言ってるセリフ?」
『あそこで邪魔するなんて、王道の解らないヤツディス』

 むしろこの方が普通だと思うが、そこはノリが一番な彼等では普通としてカウントされない。
 しかもこのゾンビ、前回の暴走体と違って問答無用で彼等に襲ってくる。
 ちょっと休憩と言っても認められなさそうな勢いだ。

「って何でうち等に狙いをつけるんやー!?」
『やっぱりリインフォースちゃんがいないからディスかねー?』
「どういう事だよ!?」

 どうやらノビとアリサの会話はブレイドにのみ聞こえていたらしい。
 元の話では5キロ先の針が落ちる音も聞き分けられる程の地獄耳だから不思議ではないが。
 レツとはやてはそんな事知ったこっちゃ無いので、疑問の視線を投げるだけだ。

「なんだか良く解らないけどノビはあれを取りに行ってくれ! こっちがアイツの注意をひきつけるから!」
「マジで!?」
「じゃあ後はよろしく頼むわレツくん」
「ええ?」

 そう言ってそそくさと退散しようとするはやてに疑問の眼差しを向けるレツ。

「仕方ないやん。ユーノくん気絶してもうたし、安全なところに運ばんと」
「いや、でも一人はキツイ」
「が、ん、ば……や!」

 グッと親指を立てて、気持ち良いくらい眩しい笑顔でサムズアップする。
 その笑顔に何も言えずにいると、はやてはほなさいならーと物陰へと去っていく。

『……爽やかディスね』
「爽やかだな」

 彼等を慰めるように一陣の寒い風が吹く。
 呆然としてても何にもならないので、彼らは気を取り直してゾンビに向き直る。
 ゾンビは彼等に近づこうと巨大な足を振り上げた。

(ちょっとちょっとちょっとーーーーーーーーーーー!?)
『あ、丁度ゾンビの次の踏み締める地点に幽霊少女入りのパスが』
「本当だ。って冷静に言ってる場合かぁ!?」
「どどどど、どうしようどうしよ!?」

 ノビは慌てて彼方此方に顔を向けるが、リインフォースを放っておく訳にも逝かないのでどうしようもない。
 と言うより、彼等の立ち位置からでは走っても間に合う筈も無い。
 そこで咄嗟にレツはまだ武器形態になっていないブレイドを思い切りぶん投げた。
 何故か地面スレスレのスライダー形式の投法、某野球漫画ではスワローだか燕だか名付けられたような投げ方で。

(きゃぁああああーーーー!?)
『ウェェェェエエエエエ〜〜〜〜〜〜〜〜イ!!?』

 ブレイドがパスに触れた辺りでゾンビの足が地面と接触した。
 ブレイド……死んだか? と三人が思っていると、カラカラという乾いた音が響いた。
 その音源を探してみると、ゾンビの足元から少し離れた位置辺りでアリサ入りパスが転がっていた。
 ちなみにブレイドの姿は無い。

『ウェェェェェィ……』

 いや、あった。
 ゾンビの親指の少し下方向の位置あたり。
 足の端っこの方で、陥没した地面とゾンビの足に挟まってるのがさり気なく見える。

「ブレイド、お前の死は無駄にしないぞ」

 レツの言葉にノビはまだ生きてそうだぞと呟いたが、すでに走り出していたレツには届いていなかった。
 彼の視線はアリサ入りのパスに向けられ、全速力で走り抜けそれに手を伸ばす。
 が、手よりも先に伸びていた足がパスを蹴っ飛ばしてしまう。

「あっやべ」
こら〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!

 またも上空高く舞い上がるパス。
 なんだか中から聞こえてくる悲鳴が涙ぐんでるようにも思えるのは気の所為だろうか。
 ノビは”なんだこのコントは”と思いつつ走る。
 ゾンビは彼の動きに気付いたのか、その腕をピッチャーが投球するように振るう。
 すると腕がナ○ック星人のように勢い良く伸びてノビに迫っていく。

「ごめんムリ!?」

 誰にとも無く謝りつつ横に避けるノビ。
 無理な避け方をした所為で持っていたベルトを手離してしまう。
 放物線を描いて飛んでいったベルトは上手い具合にはやての腹部に収まった。
 直後、空中に吹っ飛んでいたアリサパスが落下。

「へ?」
(い〜〜〜〜〜〜〜〜や〜〜〜〜〜〜〜〜〜!??!)

 見事にベルトの中央部分を通り、その機能を開放させる。
 通過した際、デジタルのモンスターが進化するような、妙にノリの良いメロディーが鳴り響いた。

<Vanishing Form>

 機械の合成音声が発せられ、はやての服装に変化が現れ始めた。
 元の状態の服装が部分的に伸縮し、胸・背中・肩に魔力で構成されたジャケットが新たに形成されていく。
 真っ赤な宝石の付いた小さな手甲にグローブ、頑丈そうなブーツに黒のオーバーニーソックス。
 スカートはチャイナドレスの様にスリットが開き健全な男子には目の毒だ。
 何故か上のジャケットの袖が無くなり、変わりに肩には小さな肩当が装着される。
 服装全体の色も大きく変わり、炎の様なイメージを持たせる紅色へと染まっていった。

 身体の中から力が湧き上がり駆け巡っていく。
 そして“彼女”は今までの鬱憤を晴らすようにオーバーアクションでポーズを取った。

「あたし、ようやく参上!!」






第36話「零れ落ちるネタのように誰もボケ止められない」

 前回のあらすじ。
 はやてが新しいフォームを貰った。


 登場したのは炎を纏った少女。
 そこにいるのは足の不自由な関西弁少女ではない。
 古くより伝わる雄々しき炎を扱う魔導師、燃える闘志の魔法少女の魂が宿っているのだ。
 その勇士を目にしたノビは思った。

(これで出番が無くなったなぁ……)

 凄く悲しかったらしい。
 黄昏てるとはやて、いや今はアリサが前面に出てるからアリサと言った方が良いか。
 彼女が持っていた杖を一振りすると、一瞬閃光が弾けてその姿が所々に装飾の施された一振りの大太刀へと変化した。

「さぁ、キリキリ行くわよ!!」
(なんや変な感じやな。ウチが裏方かい)
「魔法少女大原則一つ! 戦いの場で過ぎた事は振り返らない!!」

 アリサが言い放ちゾンビに向って飛び掛かっていく。
 その様子を見ながらレツはブレイドの頭を押すと、カチッと言う音の後にメロディーが鳴り響く。

『零こぼれおちーる砂ーのーようにー、誰も時ー止ーめらーれーなーいー♪』
(やっぱりかーい!?)
「やっぱりそれかよ!?」
「あたしはいつでも燃えてるのよ!!」

 その言葉を体現するかのように、彼女の体から炎の様なオーラが噴き出す。
 炎を纏ったまま大太刀を大上段に振り上げて一気に振り下ろす。
 単純な動作だが、力の乗った渾身の一撃。
 それは巨大な炎の斬激と変わり、両腕をクロスして防御しようとしたゾンビの腕を焼き黒い斬り傷を作る。

『グルァアアアアアアーーーーー!!!』
「甘い!!」
「二段ジャンプ!?」

 中空にいるアリサにゾンビが腕の変わりにムカデの触手で反撃するが、彼女は空中を移動する事でアッサリとそれを交わす。
 そして空中を跳ねる様に飛んで擦れ違い様ムカデ触手に大太刀を叩き込み切り飛ばす。
 その様子にもはやモブキャラと化したノビが驚きの声を挙げる。

「魔法を少しでも扱えれば、こんなの朝飯前よ」
「結構難しいって聞いたけどな」
『オディの力があれば簡単ディスよ』
「ならお前も行けよ」
『いやぁ、だってあんな巨体、普通に戦ってたら勝てる訳ないディしょう?』

 ブレイドの言葉にゾンビを見上げる二人。
 今まで気にしないようにしてきたがあのゾンビ、全長20メートルくらいありそうだ。
 普通に考えて人間が戦うような相手ではない。
 アリサも必死に戦っているが、あまりにも与えるダメージは少ない。

「って、あんた達も戦いなさいよー!!」
「いや、だってねえ。恐いし」
「もうこっちも攻撃する為のポイント殆ど無いだろうし」
『ウェーイ』

 実は武器化解除したときに、数値は回復してるのだが言ったら戦闘に参加させられそうなので黙ってるブレイド。
 さり気なく後ろ足で下がりつつその場から離脱する。

「こんなんゲキレン呼ぶしかないんじゃないか」
「そうゆう関係で何か持ってないのかブレイド」

「あれ?」
「ブレイド?」

 話しを振っても返事の無いブレイドに疑問を感じ振り返る二人。
 そこにブレイドの姿は無く、かわりに等身大ブレイドコケシ風人形と書置きが残されていた。

『任せたディス』
「「剣崎ぃいいーーーーーーーーー!!!」」
「ちょっと! 援護くらいないの!?」
(なんや面白いことになってるみたいやなぁ)

 絶叫する二人にアリサは文句を、はやてはヒマな現状に羨ましそうに呟く。

「今更だけどどうにもならんと思う」
「本当に今更だな」
「シャレになってないわよ!!」
(飛び出しておいてそれはないんとちゃうかな!?)
「魔法少女大原則、一つ! 魔法少女はどんな事も恐れてはならない!!」

 明らかに魔法少女関係ないとはやて達は心の中でツッコミを入れる。
 アホらしいコントに対してか、ゾンビは無感情に腕を地面に叩き付けた。

「揺れるゆれる!」
「これ、なにかとんでもないもの出さないと無理だぞ!?」
「こうなったら、全魔力を開放してあいつに叩きつけてやるわ!」
(それで大丈夫なんか?)

「それでダメなら……真っ先にあたしが消えるだけよ」
(どういう事や?)
「今のあたしは精神のみの存在。魔力は精神力も消費するから、全力を出したら多分あたしの意識も」
(却下や。そんなん許さへん)

 アリサが言い終わらないうちにはやてが言う。

「でも、他に方法はないじゃない!」
(そんなん最後までやってみな解らへん! とにかく消えるなんて絶対ダメや!!)
「どうして、あたしとあなたは出会ったばかりで、何も知らない赤の他人じゃない」
(赤の他人でも、仲良くなった人が消えるなんて嫌や!!)

 はやての必死の叫びにアリサは何も言えなくなってしまう。
 ちなみに、水を差すようで悪いが二人の会話は外の二人には聞こえてない。
 一応アリサが何か呟いてるのは見えるが、はやては彼女の内面で叫んでいる為に聞こえないのだ。
 さらに、彼女達の真剣な空気をぶち壊す要因が、遠くの方からテッテコ走ってやってきた。

『ウェーイみんなー。お待たせディスよー!!』
「ブレイド?」
「逃げたんじゃないのか?」
「何しにきたのよ」
『ちょいとバージョンアップしに』

 だから何処だよと言う全員からのツッコミを普通に聞き流し、ブレイドは疲れた様子を隠しもせずにノビ達の元に行く。

『ふー、久々の音速ダッシュは疲れるディス』
「だから何やってるんだっつのお前は」
『ふふふ、これを見るディス!!』

 そう言って後ろを振り向いたブレイドは自分の首筋を見るように促す。
 屈んで見ると、丁度首の付け根真ん中辺りのカードリーダーにコイン投入口っぽい穴が追加されていた。

『さあここに一人百円入れるディス』
「金取るの!?」
「っていうかなんだよこれは」
『細かい説明は後ディス!! 兎に角入れるディスよ』

 ブレイドに言われて、疑惑の眼差しを向けながら渋々財布を取り出し、その怪しい投入口に百円を入れる二人。
 すると、ブレイドが中身をシェイクするように自分の体をアチコチに動かし始めた。

『ウェイウェイマッカモッコホンジャマッカポーンウェイ』(0w0 )=( 0w0)

 ポンッという音を立ててバックルからガシャポンの丸いケースが二つ続けて飛び出してきた。
 それを手に取りノビとレツは更に深い疑惑の眼差しを向ける。

「なにこれ?」
『ふふふそれは超設定改変されたゼクターを呼ぶ為のキーなのディスよ。
 兎に角それを放り投げれば、キミ達はアレと真っ向から戦う力を手に入れられるウェイ』
「胡散臭いな」

 取りあえず、このままいても何も出来ないのでブレイドの言う通り投げてみる事にする。

 ブレイドの説明と同時にケースを空高く放り投げる。
 上る所まで飛び、ケースが引力に従って落ちるより前にケースが弾けて電光と眩い光りが迸る。
 タキオン粒子を纏うことで建造物内等の四方が固体物質に覆われた空間以外ならば、どこへでもほぼ瞬間的に移動する事ができるジョウント効果。
 それによって異空間から呼び寄せられた物体が、雲を引き裂き、大地を割ってこの場に現れる。

『あれぞ新たな搭乗用ゼクター。太陽の甲機ヘラクレスベーダー!! 戦の刃機マックスタッガー!!』

 ブレイドが高らかに宣言する中現れるカブト虫とクワガタ虫をモチーフにしたような機体。
 二つの存在を見たアリサ達は驚きと困惑と呆れと色々な思いが沸き起こり、二つの存在を凝視しながら固まる。
 なぜなら、時空を飛び出して現れた二つの機体……そう機体は明らかに人が乗るような戦闘機級の大きさだったのだから。





第37話「時代に飛び込む勇気の大馬鹿(ダイバー)」


『どうディス? この雄々しき勇士は?』

 豪そうにのたまうブレイドの言葉を聞き流しながら、ノビ達は出現した虫型戦闘機に目を向ける。
 そしてガシガシと自分の頭を乱暴に掻くと、無言でブレイドに近づきノビとレツは同時にブレイドを叩いた。

『なにするディスか!?』
「こっちのセリフだ。なんだこれは、お前明らかにふざけてるだろ。ってか嘗めてるだろ版権とか著作権とか主に世界観ってものをよ」
『ウェ〜。良いじゃないディスか。今のライダーはテレビでも普通に巨大化ものに対抗するシステムを盛り込んであるんディスから』

 レツが明らかに不機嫌さを現しながら早口でまくし立て、ブレイドは言われた言葉を聞いてるのかと聞きたくなる返答で返した。
 そんな珍劇をしていると気絶していたユーノと寝ていたリインフォースが目を覚ます。

「ふぁ〜……」
「う……ん?」
「あ、起きた?」
「レツくん。ここは……そうだ、ゾンビはどうなったの?」
「安心しろ。ゾンビより厄介な問題が発生したから」

 レツの言葉にユーノが首を傾げると、ノビは腕を伸ばして二つの機体を指差す。
 視界に入るどこぞの平気だと聞きたくなる物体にリインフォースは純粋に格好良いとはしゃぐ。
 反面ユーノは三点リーダー三つを答えに返すと―――

ぐふっ!!?

 口元を押さえて盛大に、噴き出すように口から血を吐いた。
 どうやら有り余る突っ込むべき事柄の応酬に、精神が限界を迎えたらしい。

(ユーノくーーーーーーん!?)
「気持ちは良く解るわ」

 空に浮かびながら彼等の様子を見てアリサは溜息混じりに呟く。

『こんな所で時間くってないでさっさと乗り込むディスよ』
「あー、もう解ったよ」
「ロボットに乗り込みですー!!」

 元気良く拳を振り上げるリインフォース。眠気はどうやらロボを見たことで晴れたようだ。純粋な子供心とは良いものだ。

『よし、じゃああの二機に向かってダッシュディス!』
「え? 自動で乗らせてくれるんじゃないの?」
『何言ってるんディスか。そんななんでも都合よくいく訳ないじゃないディスか』
「……つまりあそこまで走って行けと?」

 彼らが二機を召喚したのは、今の立ち位置で言うとゾンビの向こう側。
 適当な場所に放り投げた為に、どうしてもゾンビを掻い潜らないと辿り着けそうにない場所に出現してしまったのである。
 このまま走ったとしても、ゾンビが見過ごしてくれるかは微妙だ。

「でもさ、ゼクターってやつは呼べばちゃんと所有者の所に向ってきてくれる筈でしょ?」
『突貫工事で作ったから、自己判断AIとか機能とか色々と半端なんディスよ。
 ちなみに動力とかも改変してあって、魔力を供給してかないと動かす事が出来ないディスよ』
「戦闘機規模の大きさ動かすって……結構な量の魔力がいるんじゃね?」

 もう顔を引き攣らせるしかないレツ達は、ある意味無駄と諦めて質問した。

『そこはチーム分けディス。はやてちゃんとリインフォースちゃんが魔力を機体に供給させる係。
 ユーノとアリサちゃんが機体への魔力の循環とコントロール担当ディ、余ったノビとレツが操縦担当するディスよ』
「つーことは、どうやってゾンビの攻撃を避けつつあの二体に大体三人に分かれて一緒に乗り込むかだね」
「難しいです」

 良い案はないかと腕を組んで考えるリインフォース達。
 この間、アリサが必死にゾンビと戦っているのだがもう頭の隅から弾き出されている。

「このままあたしが引き付けて乗り込むってのはダメなの?」
(うーん。問題はこの変身……というより融合かな? それを解く時どうするかやね)

 手詰まりといった調子で唸り、ゾンビと戦うアリサ。
 全員で唸っている中、ノビの頭で安い豆電球が光り、とあるアイデアが浮かび声を出す。

「あ、そうだ。ブレイドに聞きたいんだけど、そのアンニュイキャラでもカードの効果は出せるんだよね?」
『補助的なものはほぼ威力変わらずに出せるウェイ』
「ならさ、ムカデ使ってくれない? ムカデ」

 リインフォースやレツは「ムカデって何だ?」と疑問に思う中、ノビがブレイドに耳打ちして何かを話す。

『なるほど、これは確かに改変されたオディならディわの作戦ディスね』
「んじゃ。宜しく頼むよ」
「なにを話してたんだ?」
「ちょっとしたショートカットの話し。ちょっとキミに頑張ってもらう事になるけど、良いかな?」
「ほぇ?」

 自分を指差しながら首を傾げるリインフォースにノビは頷くと、二人に聞こえるように考え付いたアイディアを話す。
 彼等が話しをしてる間、アリサはずっと一人での不利な戦いを強いられる。

「ぉおりゃぁああああああああ!!!」
『グォオオオオオオーーーーー!!!』

 炎を宿した刀身が死体の寄せ集まった身体を刻んでいく。
 しかし、一撃でも貰えば先に戦闘不能にされてしまう為常に避け続けなければならず体力の消耗も激しい。
 長くなれば落とされるという状況がアリサに焦りを募らせていく。けれど、不安に飲まれまいとアリサは精一杯に叫び攻撃を加えていく。

(アリサちゃん、アリサちゃん)
「なによ?」
(おりゃー! とかならええけど、女の子がそない漢らしい声張り上げたらあかんよー?)
「今言う必要ないでしょ!!」

 危うい状況だというのに律儀にはやてのボケにツッコミを入れるアリサ。
 呆れてまたも溜息混じりに呆れたようにするが、気を取り直してゾンビに鋭く戦う意思を持った瞳を向けて刀を構える。
 ゾンビは両腕を振り上げ、アリサは前に出て両腕を潜り抜けて懐に潜り込み、刀の一撃を喰らわせようとゾンビの顔目掛けて飛ぶ。
 そこで、今まで静観していたシュベルトクロイツが声を挙げて警告する。

<主、やつの口内に魔力エネルギーが集束確認。このまま近づくのは危険です!!>
(なんやて? アリサちゃん!!)
「うそ!?」

 気づいた時には既に遅く、もう目の前までアリサは来ていた。
 だが、刀を振るうより早くゾンビが口を開き、中から魔力によって作られた灼熱のフレアが垣間見え今正に打ち出されんとする。

「ちょっと待ったー!!」

 次の瞬間、驚きの表情のままの彼女の頬を突風が襲いかかり、大きな土煙と轟音がその場に鳴り響く。

「……え?」
(どうなったんや?)

 アリサとはやては目の前で起こった事が解らず、ただ困惑してその場にいる。
 今のゾンビの不意打ちは防御も間に合わず、避けられるような状況ではなかった。
 けれど、彼女の身体には攻撃は届かなかった。

 その理由は、今彼女の眼に映し出されている二本の角を持つ一体の巨大な人型ロボットの背中と思える姿。
 ゾンビの口から怪光線が打ち出されたと同時に、鋼鉄の機体が上空から目の前に降り立ち攻撃を受け止めたのだ。
 立ち込める煙が晴れていく中、鋼鉄の機体は赤い瞳を光らせネイティヴアメリカンを彷彿させる口調で名乗りを上げた。

『Change Maxstager!! Now Fighter Mode!!』





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