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”リリカルなのは an Extra EP0”
”最初に勢いだけでやると後で絶対苦労する”



 ある星の衛星軌道上にある一隻の船。
 船体の下にある星が反射する光が聖銀の機体の全貌を栄えさせる。
 間近にある星を愛でる様に浮かぶその船の名はサンダルフォン。
 目前に見える星で巨大機動要塞、ステーションコロニー等での大規模戦闘を終えたばかりの船だ。
 戦闘も終了し、大方の報告もし終えた艦内の局員は大半が気を楽にして帰還への思いを馳せていた。

艦長「え〜、みんなよく聞いて欲しい。今回の巨大機動要塞戦およびコロニー戦では武装も含め、
   局員数十名が入院となったが死亡者がいなかった事を俺は大変嬉しく思う」

 場所は艦内ブリッジ。
 そこでサンダルフォン艦長エイト・ウィズ・ゴンドウルが局員達に今回の戦闘について賞賛の言葉を伝えていた。
 隣ではサンダルフォン執務官代理、スヴェル・ディセンテウスが目を閉じて溜息を付きつつ腕組みしながら立っている。
 身だしなみなど気にしていないのか、金色の髪は戦火の風に煽られたように要所にクセッ毛が立っている。
 局員達は規律正しく整列しながらも、学校の朝礼に集まった生徒達のように世間話に夢中になってるようだ。

エイト「それとよく聞いて驚けコノヤロー。みんな知ってると思うが、
    今回戦列に加わってくれたアースラチームの可愛い娘達がなんとこの船に挨拶に来てくれたぞ」
局員s『ワイワイガヤガヤ×2』
エイト「驚くどころか誰一人として聞いちゃいねーなオイ…スヴェル」
スヴェ「ウィッス」
ZHO「ブレイズカノン」

ドゴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!

 八つのコアのサポートにより、通常より遥かに間を置く事無く術式が開放され轟音と煙がブリッジを埋め尽くす。





クロノ「い、行き成り高火力魔法を使うヤツがあるか!?」
スヴェ「お、いたのかクロノン」
クロノ「妙なあだ名はやめてくれ」
はやて「え〜? ええやんクロノンでも、なぁヴィータ?」
ヴィータ「そうそう、気にすんなよクロノン」
クロノ「キミ達」
フェイト「船は大丈夫なんですか?」
スヴェ「ああ平気平気。ほら」

 指差した先では煙が晴れ、中から防御魔法を構築して難を逃れた局員達の姿。
 何名かは間に合わなかったのか、足が天井を向いていてピクピクと痙攣を起こしているものもいるが誰も気にしていない。

シグナム「あの一瞬の間に防御魔法を展開したのか…中々の速度だな」
ヴィータ「打ち合わせでもしてたんじゃねーの?」
スヴェル「いや、俺はいつもフッ飛ばしたいときにブチかましてるからな。何回も繰り返してくうちにこうなってたね」
はやて 「いつも…なんですか?」
クロノ 「それがこの船の局員が防御魔法に特化している理由か」


エイト「え〜、みんなよく聞いて欲しい。今回の巨大機動要塞戦およびコロニー戦では武装も含め以下略。
    それとよく聞いて驚けコノヤロー。みんな知ってると思うが、今回戦列に加わってくれた
    アースラチームの可愛い娘達がなんとこの船に挨拶に来てくれたぞ」
局員 「んま、マァジッすかぁ!?」
エイト「なんだその在り来たりリアクションは!? 駄目、やり直し!!!」
スヴェ「艦長、話が進まないんで止めときましょうよ」
エイト「うむ、そうだな。まぁ堅苦しい挨拶は抜きにして、セクハラにならない程度にはっちゃけて親しくなれ! 以上!!」
はやて「もう終りなん!?」
ヴィータ「はや!?」
スヴェ「気をつけといた方が良いぞ」
クロノ「フェイトは後ろに下がってるんだ」
フェイト「え?」
アルフ「どういう事だい?」
エイト「それではこれより、サンダルフォン恒例。
    他艦との魔導師と親しくなって艦同士の交流を深めちゃおうよ自己紹介合戦開始ぃいいいい!!!」
局員 「ブォォオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーー! ボォオ・ブォオオーーーーーーーーーー!!!
はやて「なんで合戦風なん?」
局員s「うぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 はやての突っ込みと同時に整列していた局員達が一斉に駆け出し、はやて達のまわりを覆いつくす。
 別に勝負を挑もうとしているわけではない。ただ、メルアド交換を求めたり、住所氏名年齢とう質問したり、好みのタイプ出身など質問攻めしているだけだ。
 内気な子なら間違いなく拷問的な空気を形成しているが、そこは彼等は気にしない。
 いや、本当に嫌がっていたら流石にやめるが。

局員1「どんな人が好み?」
局員2「きゃー可愛いー♪」
局員3「趣味は!?」
局員4「得意な戦法は!?」
局員5「スリーサイズは!?」
局員6「射してください!!
局員7「抱いてください!!」
局員8「好きな人とかいるの!?」
局員9「以下省略!!」

はやて「なになになにーーーーーーーーーーーー!?!??!
シグナム「提督! なんなのですかこの局員達は!?」
ヴィータ「だーうっせえうっせえ! 纏わりつくんじゃねぇうっとおしー!!」
局員A「ロリっ娘か…なんかこうクルよな!」
局員B「ふーん、髪サラサラね。結構いいの使ってるんだ」
ザフィ「……」
アルフ「ああもう!何なんだいこれは!!」
局員C「わー尻尾ふわふわ〜、触り心地サイコー!!」
局員D「耳っ娘! マジな耳っこだぞオイ!!」
局員E「叫ぶなっつのハズイ」

クロノ「やはりこうなったか」
フェイト「クロノ、やはりって?」
クロノ「僕も以前初めてこの艦と共同の任務に当たった時に同じことをされたよ」
フェイト「そ、そうなんだ」
スヴェル「懐かしいな。あん時はお前ボロボロになってたよな、別の意味で」
クロノ「ああ、あの時は本当に世話になったね」
スヴェル「でも逃がしたのがその娘だけってのは、後でやばい事になると思うぞ」
クロノ「妹を守るのは兄として当然の義務だ」
スヴェル「兄貴ねぇ。それで…ええっと」
フェイト「は、始めまして。フェイト・T・ハラオウンです」
スヴェル「ああ、自己紹介まだだったな。スヴェル・ディセンテウスだ。この艦で執務官代理を勤めてる。
     ディスでもスヴェルでも適当に呼んでいいよ」
フェイト「代理…ですか?」
クロノ「ミニッツはどうしたんだ?」
スヴェル「今は入院中。その間俺が代理で穴を埋めてるって訳」
クロノ「そうだったのか。知らなかった」
スヴェル「まぁ、こうしてゆっくり会うのは4年ぶりくらいだからな」
フェイト「クロノとは何時からの付き合いなんですか?」
スヴェル「そうだな。あれは確かコイツが俺たちの世界に来た時だから…ま、ある意味幼馴染ってとこ」
フェイト「スヴェルの世界?」
クロノ「彼は元々管理局は愚か、魔法とはほとんど関わりの無い世界の住人だったんだ」
スヴェル「ちょっとした事件が起こって、管理局にも目が付くくらい危険性なことがあった。その過程で一悶着あって今に至るかな」
クロノ「噂でキミが執務官を目指していると聞いたときはマジかと思ったが…」
スヴェル「頑張ってんだよ! お子様思考でも色々あって変わろうと思ったんだよ!! なにその有り得ねえって溜息!?」
フェイト「仲が良いんだね」
クロノ「どこがだ」
スヴェル「いや、全然」
フェイト「やっぱり仲が良いね」
スヴェル「それより、キミも行ってみたらどう?」
クロノ「フェイトをあんな死地につっ込ませる気か?」
スヴェル「本気で嫌がってたら皆やめるよ。比較的うちの局員みんな良い人の集まりだぜ?」
クロノ「変人の集まりとも言えるが」
スヴェル「この野郎、なこと言うと初のサンダルフォンお目見え時の恥ずかしい写真コピッて売りに出すぞチクショー」
クロノ「断固阻止させてもらおう」

はやて「クロノく〜ん助けて〜!」
シグナム「ええい、纏わり付くなうっとおしい!!」
ヴィータ「だー! 抱っこなんかすんじゃねー!!」

局員s「神輿じゃ神輿じゃー!
局員s『わっしょいわっしょい!』

フェイト「みんな楽しそうだね」
スヴェル「いまだ、蹴りくらわせにイッたれ」
フェイト「ええ?」
クロノ「フェイト、本気にしなくて良い」
スヴェル「とにかく行ってみな、友達の和を広げる良いチャンスだぜ〜」
クロノ「棒読みじゃないか」
フェイト「うん、それじゃ行ってくるねクロノ」
クロノ「ああ」

エイト「うむ、皆若くて結構結構!」
クロノ「提督」
エイト「チガーう!! 提督ではなく艦長と呼べぃ!」
クロノ「は、はぁ(忘れてた…この人も少しずれてる人だった)」
スヴェ「大変失礼な事考えてねーかこのヤロウ」
クロノ「そんな事はないぞ?」
エイト「もういいスヴェル。ボケっぱなしでは話が進まん」
スヴェ「最初に言ったのはアンタだろうがよ」
エイト「冒頭にも行ったとおり積もる話しは後にしてクロノ。行き成りだがキミにも相談しておきたい事がある」
クロノ「なんでしょう?」

エイト「今回殲滅した組織達についてだ」
クロノ「なにかあったのですか?」
スヴェ「殲滅した魔道人形といった機械兵器の中に、管理局内で使われている一般には出回るはずの無い部品が見つかった」
クロノ「管理局の!?」
エイト「しかも見つかった品は、どれも管理局でも特別部隊に支給されるような価値の高いものばかりのようだ」
クロノ「…それはここの局員たちはもう知っているのですか?」
スヴェ「いや、まだだ」
エイト「コイツは俺達が常連になっているジャンク屋がくれた情報でな。この艦でも知ってるのは俺とスヴェル。後はクロノ、お前だけだ」
クロノ「確かに、下手に情報を流せば無用な混乱を招きかねませんからね」
エイト「厄介なのはあれだけの大型、それに物量に回すだけの情報を垂れ流してるにも関わらず、それを管理局が感知していなかったという事だ」
クロノ「管理局に精通する技術者も、技術の漏洩には細心の注意を払っている…それにも関わらず高位の機密事項が漏れていると言う事は」
エイト「局内に裏切り者がいるかもしれん。それも高位の者か、集団でな」
クロノ「もし、それが事実なら」
スヴェ「面倒な事になるな」
エイト「恐らく事実だ」
クロノ「なぜそう言えるのですか?」
エイト「この戦闘が終わってすぐに局へ連絡を入れたんだが、後始末に遣わされた局員の到着が早かった。いや、速過ぎなんだ」
スヴェ「そういや、連絡入れて速攻できてたような」
エイト「ほとんど俺の勘でしかないが、その時のやつ等の雰囲気が妙な感じだった。ほとんど感情を感じさせない何かがやつ等にはあった」
クロノ「それは…考えすぎでは?」
エイト「かもしれん。だが、上も一枚絡んでいると示すようにこの事件について釘を刺されたよ。ここは自分達に任せて兎に角帰れってな」
スヴェ「わざわざ自分から知らせに来たんですか?」
クロノ「上も絡んでるとなれば平の局員はもとより、地位のあるものも迂闊に動く事はできないからね。その時に話していた人物は?」
エイト「アクバヴェルト・クーン。元老卿の一指だ」
クロノ「元老院が相手となると、下手に動くことは出来ないか」
スヴェ「特に今回の件に関わった俺たちやアースラ組み、それとヴォルケンズもな」
エイト「だがこれを聞いた以上、黙っているつもりは無いだろう?」
クロノ「はい」
エイト「ならば元老院の眼を引きつけるのは俺が引き受けよう。すまないが君達には大本を潰して欲しい」
クロノ「そんな簡単にいく相手でもないでしょう?」
エイト「そうだな。引き受けるといったが、さすがにアースラの面々が動いていたら感づかれるだろう。だからあいつ等にも頼む」
クロノ「あいつ等?」
スヴェ「お前も知ってるし、今回一緒に任務に就いてたぞ。後で連れてくけどよ」
エイト「管理局の仲間内には迂闊に頼めない。恐らく近くの次元航行しているアースラにも釘は刺されるだろう」
クロノ「ならば局とは関係の無い者達に動いてもらうと?」
エイト「そうだ。ヴォルケンズはレティ提督のお抱えだからな。今しがた連絡を入れたから多少は釘刺しにも時間稼ぎが出来るだろう」
クロノ「出来る限り彼女達に動いてもらう事になるか」
スヴェ「はぁーあ。こっちもまた休みがオジャンかな」
クロノ「若いうちの苦労は買ってでもしろと言う事じゃないか?」
スヴェ「お前…何時の間にブラックジョークなんて覚えたんだよ?」
クロノ「さあね」
スヴェ「まあいい。こっちも出来る限り協力はするけど、あまり期待はするなよ?」
クロノ「ああ、猫の手程度のものと考えておこう」
スヴェ「すまん。否定したいが本当にそうなりそうな気がする」
エイト「駄目な親父ですまん」
クロノ「い、いや。冗談です。二人ともそんなに落ち込まなくても」
エイト「兎も角だ。一連の報告等の残務整理は我々が一手に引き受けるから、そっちは任せたぞ」
スヴェ「マジかよ!? 俺が書類書くの苦手と言う事を知っていてやんのかチクショー!!?」
エイト「知るかぁあああーーーーーーーーー!! オジサンだってお偉いさん方に報告とか部下の後始末とか
    不始末に対する苦情一手に引き受けてんのに更に面倒ごと拾っちまったんだぞコラァ!!! もうすぐ
    胃に穴が開くんじゃないかと心配する毎日なんだよオッサン(妻子持ち)はぁああ!!!」
ス&エ『あーだこーだうんたらかんたらなんたらピーチクパーチクギャァギャァギャァ!!』


クロノ「何をやってるんだ貴方達は」

はやて「クロノくーん! たーすーけーてー!!」
シグナム「でぇええい、いい加減にしろぉおおおおおお!!」
ヴィータ「は、はきそう…」
アルフ 「モグモグ…これ美味しいよ! どこの肉?」
ザフィー「アルフ…もう慣れたのか」
フェイト「え、えと、あの…(どうしよう)」
局員s「アフロ! ボンバイエ! アフロ! ボンバイエィ!


この事件。
駄目かもしれない。


 額を押さえながらクロノは強く思った。








これから始まるのは、幾つかの異名を生んだ戦いの続き。
ある人達の、大切で、もう二度と戻れない追憶の日々。







リリカルなのは an Extra


 The Next Episode0→01



今日の一押しショットショット

エイト「ちなみにこれが彼が始めてここに来たときの写真」
はやて「うわ〜クロノ君…いろんな人に脱がされて……美味しそうな表情しとるやないの
フェイト「はぅ…くろの」
クロノ「何を見せてるんだぁああ!?」
スヴェ「諦めようや」

 そこには大量の手に鷲掴みにされ、衣服が乱れに乱れイイ感じに脱げ掛かっているクロノの写真が披露されていた。




―――――――――――――――

どうでも良いリリカルなのは an Extra追記。

スピニングブレイド―

拍手で出ていたようにロックマン]が元ネタ。
ただし実体刃ではなくエネルギー状で八つ裂き光輪と言った方が分かるだろうか。
作中ではスティンガースナイプとほとんど同じ様な扱い。


ZHO―製作者:ケティ

大破したデバイス08小隊を一つに纏めたデバイス。
八つの核である宝玉が仕込まれた杖は野太く、白いラインの装飾をしていて、形状的には杖方ジェットスライガーと言うべき姿。
強固で従来のものより遥かに高性能だが、幾つものデバイスを一つに纏めた為重く、接近戦には若干不向きな傾向がある。
付加効果として攻撃魔法に高速回転をつける事が出来る。本体も先端がドリルの様に回転するため突撃戦も可能。
インテリジェントデバイスほどではないが人工知能を有している。
何故か高町なのはを恐怖するような言葉もちらほら。(恐らく前世の記憶が染み込んでいるのだろう)

本来高町なのはの高出力魔力に自壊しないようにすると言うコンセプトの元に開発していた。
しかし、どうせ無駄だろうと思ったのと、どうせなら出力を抑えるより向上を視野に入れて魔力量で劣るスヴェルへ渡す。

――――――――――――――――






 四年前。
 管理局でも噂になる三人の少年魔導師がいた。
 正式には管理局所属という訳ではないが、三人の少年達は様々な次元犯罪による幾つもの被害を食い止めた凄腕と称されていた。
 そう、四年前までは…


リリカルなのは an Extra EP1
 ”物事は最後までちゃんと確かめた方が良い”


はやて「っと言う訳で、我々は未開のジャングルを検索するのでありました」
クロノ「どういう訳だ」
はやて「まぁまぁ、そんな細かい所は突っ込まんのがお約束やで?」
クロノ「はぁ」
ヴィータ「それにしても、どうしてこんなジャングルみてーな所に来なくちゃいけねーんだよ?」
クロノ「今回の事件は管理局に知らせる訳にも知られる訳にもいかない…それは話したな?」
シグナム「ああ、だが局内に内通者がいるとは嘆かわしい事だ」
クロノ「それについては弁明しようもない。それは兎も角、内通者がいる以上僕等の同行は後にかなり制限されるだろう。
    そうなる前に動ける内に情報収集したいが、限られた時間内で僕等だけで操作するには限界がある」
はやて「そうやね。お偉いさん方も関わってたら一筋縄では行かんかもな」
クロノ「局内でも協力は頼めない、なら局とは関係ない者達に動いてもらうのが良いと言うのがエイト提督の言葉だ」
ザフィ「その者達がこの奥地にいると?」
クロノ「ああ、そうらしい」
はやて「らしいって…曖昧やなぁ」
ヴィータ「信用できんのかよそいつ?」
シグナム「こんな場所でなくとも他にはいなかったのか?」
クロノ「僕も最初はそう思ったが、問題は無いだろう」
ザフィ「何故だ?」
クロノ「ここにいるのは元管理局で働いていた魔導師だ。局内にいた時は凄腕魔導師と噂されていたほどらしい」
はやて「また曖昧な発言やねぇ」
クロノ「少なくとも僕が知っている彼等は、そんな噂が立つ前だったからね」
ヴィータ「会ったことがあんのか?」
クロノ「ああ、そうだな。どことなく、はやてやフェイト達が一緒にいる雰囲気と似ているような気がする」
はやて「それなら友達になれそうやね」
クロノ「どうかな? 最後に会ってから大分立つから変わってるかもしれないぞ?」
はやて「大丈夫やて。クロノ君の数少ない男友達なら間違った事はせえへんやろ」
クロノ「まってくれ。数少ないとはどういう事だ?」
はやて「自分の胸に聞いてみれば?」
ヴィータ「そういや、クロノの男友達ってザフィーラとユーノ以外見た事ねーぞ?」
シグナム「私も存じません」
ザフィ(コクッ)
クロノ「きみ達…」


 騒がしく話しながらも熱帯雨林の様な森の中を進んでいくクロノ一行。
 途中で大蛇や大型肉食動物や恐竜、食人植物などに猛威を振るわれたり、
 ベトコン仕込のスパイクボール、落とし穴、棒で支えられているザルカゴトラップなど様々な罠が彼等を襲ったりした。
 ちなみにはやてと止めに入ったヴィータはザルカゴトラップに見事に填まった

クロノ「ここはどこぞの戦場だ?」
はやて「クロノ君…ほんまにここであっとんの?」
クロノ「聞いた場所はもうすぐの筈だ」
ヴィータ「これでいませんなんていったらギガント喰らわすかんな」
クロノ「それは勘弁だな」

 本当にウンザリしているのか、ヴィータはやたら機嫌が悪い。
 早く目的地にたどり着かないと怒りの矛先は確実にクロノへ向かうだろう。
 自分の身の危険を感じながら、クロノは道を覆う草木を掻き分けていく。

クロノ「ん?」
はやて「どないしたん?」
クロノ「あれは…いや、まさか」
ヴィータ「どうしたんだよ?」
シグナム「なにかあったのですか?」
クロノ「いや、あるにはあったんだが…」

 言いよどむクロノの脇を通り抜け、はやて達は彼の視線の先を追う。
 そこにはとっても大きな看板が立ってこう書かれていた。

 ”何でも屋FFFはこの先50m”

 その看板には目的地までの安全な道筋が休憩所含めて丁寧にイラストまで描かれていた。
 注意書きには『道から外れると危険なモノが沢山あります気をつけて』と描かれてる。

クロノ「今までの苦労はなんだったんだ?」
ヴィータ「クロノてめぇ−! ワザワザ遠回りしてきたのかよ!?」
クロノ「僕に文句を言わないでくれ! 道順を教えたのはエイト提督なんだ!!」
はやて「もー、こんなとこで言い争ってもなんにもならへんよ?」
シグナム「そうだぞ、ヴィータ。少しは落ち着け」
ヴィータ「だってよぉ!」
ザフィ「文句なら事件が終わってからにしておけ」
ヴィータ「……分かったよ」
はやて「うんうん、ヴィータは良い子やね。ほなこの看板の通りに行きましょか」
クロノ「ああ」

 看板の通りに進んだ彼等はそれまでの苦労が嘘の様にアッサリと目的地に到達できた。
 その目的地は長年放置され、植物が所々に巻き付いた遺跡のような建物だった。

クロノ「ここがそうか」
はやて「入り口はどこなんやろか?」
ヴィータ「あ、あそこって扉っぽくねーか?」
クロノ「そうだな…他にそれらしい所も見当たらないし、行ってみよう」

はやて「あれ? クロノ君、なにか落としたで」
シグナム「どうしたのですか?」
はやて「あ、コレにな”扉を叩く時は長い棒を使うことを進める”って書いてあるんやけど…どういう意味やろ?」
シグナム「トラップでもあるのでしょうか?」
はやて「あはは、そんな訳…有り得るなぁ」

ドギャオオオオオオオオオオオオオン!!!

はやて「わひゃぁ!?」
シグナム「な、なんだ!?」
ザフィ「二人とも、どうした!? 無事なのか?」

 三人が驚きながら二人が向かった扉らしき場所を見ると、そこは黒い煙で覆われていた。
 すぐに煙は消えていき、中から黒焦げになったクロノとヴィータの姿が現れる。

クロノ「ゴホッ」
ヴィータ「ゲホッ」
はやて「クロノ君、ヴィータ! 二人とも無事やったんやね?」
クロノ「これを無事と言えるのかは疑問だが…怪我はない」
シグナム「あまり心配をさせるな」
ヴィータ「うっせーよ! 大体なんでいきなり扉が爆発すんだよ、訳分かんねーよ!!」
???「ゲホッゲホッ……あっはっは、いやー失敗失敗っと、あれ? お客さん?」

 はやてがクロノ達へ駆け寄ってから間を置き、黒い煙の出ている入り口らしき部分から一人の少年が現れる。
 頭には鍔入りキャップに四角い眼鏡を掛け、服装は煤だらけだが元は白いものだった出あろう白衣。
 埃を取ろうと片手で白衣をバサバサと叩き、もう片方の手でずれた眼鏡を掛け直す。

ヴィータ「てめーか!? いきなり入り口爆発させやがったのは!?」
???「ああ、ごめんごめん。新しいデバイス開発してたら失敗しちゃって…ってキミ達は」
クロノ「久しぶりだねケティ」
ケティ「ああ、クロノ久しぶり。他の人達は昨日の仕事で一緒にいたヴォルケンリッターの人達だね」
はやて「え? 昨日って…ああ! あの時のジャンク屋さん!?」
シグナム「ジャンク屋? 私は元魔術師に今回の依頼を頼むと聞いたのだが?」
クロノ「話していなかったか? 彼等はジャンク屋兼傭兵部隊も行う…所謂何でも屋を営んでいる変わり者だ」
ケティ「自己紹介が必要かな? 僕はケティ・H・レッサイ。趣味・特技はデバイスとかの設計と開発。それに情報管理、よろしく」
はやて「あ、うちは八神はやて言います。この子達はうちの子で、みんな自己紹介してまずはヴィータからや」
ヴィータ「…赤の鉄姫ヴィータ」
シグナム「ヴォルケンリッターが将、シグナムだ」
ザフィ「盾の守護獣ザフィーラ」
はやて「あと一人、シャマルっちゅー娘がおるんやけど、今はおらへんのや」
ケティ「そっか、立ち話もなんだし、上がりなよ」
ヴィータ「って言うか、爆発についてあやまりなしかよ」
ケティ「あはは、本当にごめんよ。中にお風呂があるから、今入ってるのが出たら使って煤落としなよ」
はやて「それじゃ、おじゃまします」
クロノ「…中は機械…それも結構良い素材を使っているようだな」
ケティ「石造りとでも思ったかい?」
はやて「ちょっと思ってました」
ヴィータ「それ以前に入り口近くに研究室作ってんじゃねーよ」
ケティ「いや、ここは本来二階に当たる部分なんだけどね。地形の都合上一回部分が埋まっちゃってさ」
クロノ「大丈夫なのか?」
ケティ「問題ないよ。それよりタオル。せめて顔だけでも拭いときな」
クロノ「すまない」
ヴィータ「あ…サンキュな」
ケティ「で、どんな依頼だい? 事件解決直後にただ挨拶しに来たって訳じゃないだろ?」
クロノ「ああ、少し厄介な他の見事なんだが…今はキミ一人か?」
ケティ「他の皆は清掃とか喫茶とか別の仕事、僕らみたいなえり好みする傭兵じゃ食べていけないからね。後はお風呂かな」
???「お客さんニャリか〜?」

 ポテポテポテと妙な足音を立てながら奥の扉から丸っこい何かが現れる。

はやて「なんやのこれ?」
ヴィータ「か…可愛い」

 丸い体に丸い手足。首は無く胴体と一体化しているにも関わらずつぶらな瞳が愛らしい。
 形にするならこんな感じである。
o○o
゜゜
 決してピンク色の何でも吸い込む星の方ではない。

???「お、昨日のヴォルケンリッターの方たちニャリか?」
はやて「へ?」
ヴィータ「おまえも一緒に居たのか?」
ケティ「あ、そっか。この姿じゃ分からないよね? カスク」

 ケティの言葉に反応するように、丸い姿をした彼の身体が分解されるようにバラバラになる。
 光速分解しつつ内部情報に基づき、新たな身体を再構築して明らかに元の体積より巨大になり、やがて人型を象っていく。
 次の瞬間には薄黄色と朱色を基本色とした魔道人形へと変形を完了する。

K-SK「拙者deGozaruyo−」
はやて「ちょ、ちょぉ待って!」
ヴィータ「そんな変形ありか!?」

 あまりの変わりようにはやて達は一瞬呆け、講義の声を上げる。
 クロノ達もその変わりようを見て、口をポカンと開けたままだ。
 目の前の魔道人形K―SK、通称カスクは小学上学年生くらい。
 そんな身体が重層的な分厚い鎧に覆われている為、小学生に無理やり重装甲鎧を着せたような感じもある。
 なんと言えば良いのか、SDとリアルの中間と言うのだろうか?

ケティ「何言ってるんだよ? デバイスなんてタロットとかが杖になってるんだから驚くことでもないだろ?」
クロノ「そうは言ってもな」
はやて「これは反則やわ」
ヴィータ「詐欺だ」
K-SK「酷i言ware様DeGozaruna」
はやて「なんで変形すると、そんな機械的な喋り方になるんや?」
ケティ「まだ変形時の接続が上手く言ってないのかな? ま、もう少しで調整できそうだけど」
クロノ「まさか彼はキミが作ったのか?」
ケティ「そうだよ」
クロノ「凄いな」
ザフィ「話しが大分逸れてないか?」
クロノ「あ」
ケティ「そう言えばそうだったね。で、何の用?」
クロノ「単刀直入に言わせてもらう。三輝の閃光と呼ばれたキミ達の力を貸してほしい」
はやて「三輝の閃光?」
シグナム「聞いた事があります。四年前まで管理局で短期間に幾つもの高ランク事件を解決してきた
     三人の少年魔導師の異名、彼等を総称して語られたのが三輝の閃光」
ヴィータ「そんな凄いやつなのかよ?」
ケティ「カビの付いた只の噂だよ。今の僕たちは精々いっても全員で最高B〜Aクラスが限度さ」
シグナム「大丈夫なのか?」
ケティ「信用するかどうかはそっちに任せる。こっちが何か言うより自分で決めた方が信用できるでしょ?」
クロノ「彼等の強さは保障する。特に彼の卑屈な戦い方は見ていて参考になる」
ケティ「褒め言葉として受け取っておくよ」

 軽口を言い合うが、シグナムの疑問は解決しない。
 このままでは実力を知る為の試合を挑みかねない雰囲気だ。
 そんな空気を動かすように今度は部屋の奥にある、先程とは別の扉が開き中から少年が出てきた。
 腰にタオル一枚巻くという姿で。

???「ふー、良いお湯だったと…お客さんかい?」
はやて「あわわわ、すみません! 八神はやて言います!!」
ヴィータ「な、なんだよおめー!?」
シグナム「服くらい着ろ! 馬鹿者!!」

 何だかんだ言いながらも、彼の身体を盗み見ている女性陣。
 説得力が無いのはご愛嬌。

???「フィルドくん、どうしたのー?」
はやて「え?」
クロノ「はっ」
ヴィータ「ん?」
シグナム「な!?」
ザフィ「む!?」

 タオル一枚の少年の登場に驚いている一同を更に衝撃が襲う。
 その人物は肩下まで伸び水を弾く潤いある黒髪、細くしなやかな細腕、水気を含みながらも水滴が美しく輝く太腿。
 その身体の上をこれまたタオル一枚で身体を隠し。湯上りで赤く火照った顔に潤み、綺麗に済んだ瞳を一同に向ける。
 彼が出てきた扉の奥から、可愛らしい容姿の子が現れたのだ。
 それはつまり、男と女が一つの部屋からほとんど裸同然の姿で出てきた。


 一瞬、室内が静寂に包まれる。
 ケティは慣れっこなのか、近くにおいてあったマグカップを手に取り、中身の水分を飲み始める。

クロノ「野暮な事を聞く気は無いが…そう言うのは自重した方が良いと思う」
はやて「えっと〜、お二人はその」
ヴィータ「知ってるぞ、こうゆう事をしてるのを変態って言うんだよな!?」
シグナム「その…なんだ、昼間からそういう事をするものではないと思うのだが」
ザフィ「この者達は本当に信用できるのか?」
ケティ「フィル、いつも注意してくれって話してるじゃないか」
フィル「別に問題ないだろ?」
クロノ「あるだろ」
ケティ「一応言っておくけど、フィルの後から出てきたのはだからね」
クロノ&はやて、ヴォルケン
『は?』

フィル「疑問に思われてるけど、事実だよ」
???「そんなに何度も言わないでよ。恥ずかしいなぁ」

 モジモジと身を捩る後から現れた、どう見ても少女にしか見えない人物。
 良く見ると胸のところには全く厚みがなく、しかも否定しない所を見ると事実のようだ。
 一同がそれを理解するのに数瞬の間を要した。





ク&は、ヴォ
ええええええええええええええええええええ!?




リリカルなのは an Extra


The Next Episode01→02








今日の一押しショット・ショット。

ヴィータ「はやて、お願いだからやめて…!」
シグナム「主!後生ですからそれはお止めください!!」
はやて「あかん!あかんのや!私もそれは分かってる……けど!!」

 密着している彼女達の目の前には、それは大きなザルとそれを支えるつっかえ棒。
 ザルの中にはテーブル。その上にはお皿に乗ったバナナと一枚の注意書きのされた白い紙。
 紙には”ギャグが分からない人、お笑いの血がない人お断り”と妙に達筆な筆書きで描かれている。

はやて「うちは騎士である前に、一人の芸人なんよ!!」
ヴィータ「はやてぇえええ!?」
シグナム「主お気を確かにぃいいい!!!」
はやて「今時珍しいコテコテのギャグは引っ掛からなアカンて……わたしの、ウチの芸人魂の奥底から叫んどるんやー!!」

ダッシュ!

ヴィータ「うわぁあぁぁぁああ!?」
はやて「ゲッチュや♪」

パタン!

シグナム「あ、あるじ……」

 色々と耐えられなくなったシグナムは思わずガクリと崩れ落ち四つん這いの姿勢になる。
 彼女達が面白い事になってる間、ザフィーラはというと…

食人樹「キシャァアーー!!!」
ザフィ「食われん!盾の守護中を舐めるなぁー!!!」

 熱帯雨林の中、ひたすら熱く、只一人真剣なマジバトルをしていた。







―――――――――――――――

どうでも良いリリカルなのは an Extra追記。

 K−SK(カスク)―製作者ケティ

ケティが自分の持てる知識と各次元世界の技術を応用して作り上げたフォームチェンジ可能の魔道人形。
自立思考を有しており、ある意味自立行動可能なデバイスとも言える。
魔力供給によって動いているため、魔力が切れれば機能が停止してしまう。(供給し続ければこの限りではない)
魔力が切れたとき、装甲は伝達魔力が無くなり暗い灰色へと変色する。
他にも追加武装があり、装着するものによって接近戦、遠距離戦など様々な戦況に対応できるよう調節できる。
普段は待機モードであるまん丸の愛らしい姿をして魔力を節約している。






 前回までのおさらい

管理局内に犯罪組織に加担するお偉いさん方の企みを阻止すべく協力者を頼る事にする。
クロノとはやて、ヴォルケンリッターの面々は、協力の目処のある人物達がいる次元世界へ向う。
熱帯雨林のような次元世界で色々toラブるが続出しつつも、目的の人物がいる場所へと辿り着く。
そんな彼等の前に現れたのは、タオル一枚の男女?
錯乱するヴォルケンズに彼等は驚きの事実を言い放つ。
ケティ「後から出てきたのは男だからね?」
一同『えええええええええええええええええ!?』




リリカルなのは an Extra EP2
 ”忙しい事は唐突に起こるもの”



「落ち着いたかい?」
「ああ、取り乱したりしてすまない」
「良いよ、なれてるから」
「…慣れてるのか?」
「……成れたよ
「そうか」

 どこか遠くを見るケティの肩をポンと叩く。
 遅れて部屋の扉の一つが開き、中から二人の男女…間違い少年が現れる。

「なんだか騒がしかったけど、なにかあったの?」

 原因の一貫である事を本当に理解していないように言うのはフィルドレーショ・エクスペンド。
 黒いショートカットの髪に丸い眼鏡を掛けた年よりも幾分か落ち着いた雰囲気のある少年だ。
 服装は先程のタオル一丁から、下は黒い継ぎを接いだような皮の長ズボン、上はシャツ一枚という妙にラフな格好だ。
 少年にはあまり合わない服装な気がするが、服装とかには無関心なのかもしれない。

「毎度の事だから自嘲してとだけ言わせてもらうよ」
「了解」
「本当に分かってるのか」
「それにしても驚いたわー」
「ん、なにが?」
「あの娘、えっと」
「シーダの事?」
「なぁに?フィルドくん♪」
『Blaze Canon』


 フィルは背後から飛びつこうとした、少女のような外見をした人物に空かさず自身のデバイスの銃口を向ける。
 コンマ単位の速さで術式を開放、純粋な魔力衝撃が背後の彼に直撃し派手な音を立てていった。

「みぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
「!?」
「えええ!?」
「隙を見て抱きつこうとしないように」
「酷!?」

 言いながら青い銃身に銀の剣十字の装飾のある銃型デバイスを、二つの小さな十字架付きのネックレスという待機状態へと戻す。

「だ、大丈夫なん?」
「大丈夫。非殺傷設定だから」
「そういう問題!?」
「ううう、酷いよフィルドくん」
「ってもう復活しとるし!?」
「ゾンビみてーだ」
「アレkurai日常茶飯事nariyoー」
「いつもなのか」

 手持ちぶたさなヴィータはカスクを人形のように持ち上げたりして遊んでいる。
 ザフィーラはその下で獣形態を取り、床に座している。


 さて、後から飛び出した可愛い女の子っぽく見える少年シーダ・ディフトス。
 肩下まで伸びるきれいな黒髪にリボンを付け、ピンクの長袖に蒼のスカートが良く似合う。
 セルフ内での主な仕事は留守番と食事担当。あと事務系等を少々こなす。
 勉強、家事全般をそつなくこなせる、正真正銘のである。



「可愛い顔しとるね」
「色んな世界でも声かけられるよ」
「スカートもよう似合っとる」
「気持ち悪いくらいにね」

 冷めた口調で話すフィル。
 シーダの姿を見て色々悪戯心も湧き始めるはやて。
 そんな彼等の様子に頭痛を抑えるように、人差し指を額に当てて前に出るクロノ。


「話しを戻したいんだが…良いか?」
「こっちは何も言ってない。君たちが良ければ僕等は動くよ」
「依頼?」
「ああ、管理局がらみ。局の武装の流出の件」
「何故それを?」
「まだ、うちらは話してへんよ?」

 話してもいない依頼内容…それも事の発端となった事柄を知っている事に多少の驚きを見せる。
 彼等の反応に少し以外だといった感じでケティは言葉を繋ぐ。

「提督から聞いてない?巨大機動要塞戦で敵側から出回るはずの無い局の部品が出てるって連絡したんだけど」
「提督が話していたジャンク屋はキミだったのか」
「そうだよ。多分、今回関わった提督と協力した面々は動けなくなるだろうからって、前もって連絡したんだ」
「それは自分達の売り込みか?」
「いや、ただ気になっただけ。僕等が信用できないなら他を頼っても構わない。僕等には直接関係ない事だしね」


 挑発するような物言いにシグナムは鋭い眼つきでケティを睨むように見て、ケティは柳に風とばかりに動じていない。
 しばしの間、互いに無言になり重苦しい空気が流れる。
 この雰囲気にそこにいる者は迂闊に言葉を発せない状況に陥った。


『ケティ、そんなんじゃ警戒心引き出すだけで、無駄な時間過ごすだけだよ?』
「誰だ?」

 クロノが尋ねると、部屋の壁と思われていた一部分からモニターが映し出され、そこに人の姿が映し出される。
 その内部には金髪のショートカットの髪の後ろにリボンを付け、見た目より弱冠幼さを感じさせる少女の姿。
 白を基調とした服装はシンプルな半袖にミニスカートという出で立ち。それが誰かの趣味なのかは誰にも分からない。

「紹介するよ。ここに映ってるのは僕が企画してるデバイスプログラムの擬似人格コンピュータの3」
『サンですよ!発音に気をつけてよねケティ?』
「ははは、ゴメンゴメン」
「が、画面から出てきた?」

 先程の空気から一転してノホホンとした空気が作られ、ようやく話が出来そうな雰囲気になった。
 その反面、はやて達は画面の中から飛び出すように出てきた3に驚いて目を大きく見開く。
 画面から飛び出た彼女の身体は半透明で、どことなくコンピューターの中から喋ってますと言い表しているようだ。
 思わず仕事の内容も忘れ、ケティに彼女について尋ねたくなった。


「彼女はプログラムなのか?」
「あー、細かい話しは省くけど、いま僕はユニゾンデバイスについて研究しててさ」
「一人でやってはるんですか!?」
「流石に一人は無理だから、たまに別次元の友達にも協力してもらってるよ。それでも出来たのは擬似人格まで…実体化からが難しいんだよね」
「それでも、この子を作ったんは貴方なんですよね?」
「うん。昔取った杵柄ってやつでさ。彼女にはここのデータの整理から操縦とか色々やってもらってる」
「すごいな」

 見た所それほど大きな設備は無い様に見えるこの施設。
 その中でほとんど独学で擬似人格を作り、デバイスへと昇華させようというのは驚くべきものがある。

「それだけの技術を持ってるのに、どうして管理局を辞めたんですか?」
「色々聞くね」
「あ、気分を悪くしたんならあやまります」
「いや、そうじゃないよ。ただ―――」
「そう言えばサンは用事があるんじゃないの?」
『あ、そうだった』

 フィルに言われて何かを思い出したのか、ウッカリしてたという風になる3。
 ついでにクロノ達も話が逸れていた事にバツが悪そうな顔をする。

『丁度今、フーから連絡があったの』
「フーって誰ですか?」
「フィルの使い魔…使い魔って言うのは彼は嫌うから、次からは友達って言ってもらって良いかな?」

 はやてに答えたケティは苦笑しながら話し、それをはやても承諾する。
 クロノは「いつ使い魔を?」と聞くと、ケティは「数年前に」とだけ答えた。
 フィルは3に顔を向けながら話を促す。

「なんて?」
『えっと…泣きながら〜』
「分かった。準備する」
「え?」

 全てを言い終わる前にフィルは近くに立てかけてあるコートを掴み、ケティは壁際のコンピュータの元へと動き出す。
 突然の二人の反応にはやて達は少し困惑する。
 状況を把握しようとシグナムが、掛けてあった上着を着ようとしたフィルに声を掛ける

「どうした?何があったというのだ」
「ちょっと厄介事」
「厄介事?」
「何て言ったら良いのかな」

『言い換えれば、フーがお客さんを連れてきたのよ』
「多分武装してくるだろうけど」
「どんなお客さん!?」

 フィルの呟いた言葉に裏拳ぎみに突っ込みを入れるはやて。
 後ろではカスクが何かわめいているが、ヴィータに遊ばれていて逃げられないようだ。

『あ、そろそろ肉眼で見えてくるよ?』
「通信開いて」
『はーい……フーちゃん、聞こえる?』
フィ〜ルドぉ〜〜〜!!』(泣)
「ぐぁ!?」
「なんやぁ!?」
「くっ!?」
「なぁ!?」
「ぐは!?」
『naryi!?』

 超音波でも発生したのかと思えるような大声が室内に響く。
 あまりの音量という予想外の奇襲に驚く一同、大きく体が仰け反りながらも何とか耐える。
 なぜかザフィーラが一番ダメージが大きいように、ピクピクと全身が震えていた。
 フィルとケティの二人はちゃっかり自身の指で耳を塞いで、シーダは何もしてないのに無事だった。
 彼等の反応の後も矢次早に語りかけてくるフーという、声質からして少女の声がなおも響く。

わたしね!頑張ったんだよ?だけどね!それなのにね!酷いんだよ!?わたし話し合いに行ったんだよ!?でもね、向こうの人がね!!
「分かったわかった。早く帰っておいで、フー」
「3。数はいくつ?」
『レーダーには、フーちゃんの後方に人間が4人。大きさ分けなくて機械系が8体で巨大生物が3匹だから全部で15ね』
「やる気まんまんじゃねーか」

 3の報告にヴィータが呟く。
 先程の武装発言、どうやら冗談ではなさそうだ。
 どこの世界に巨大生物を数匹連れて依頼に来るお客がいるだろうか?
 余程の者でない限り有り得ないだろう。

「いつもの事だけど…今回は少し多いか」
「こんなのもいつもの事か?」
「こうゆう仕事してると妙な恨みとか好奇心持った人達の訪問が多くてね」

 あからさまに面倒だという感じの溜息を吐くケティ。
 確かに傭兵家業ともなれば、これといって後ろ盾の無い者達ならば頻繁に報復に来る者達が多いのかもしれない。

「今回はケティの技術に目をつけた会社だよ」
「なるほど…確かにキミの機械に精通した技術はどこも欲しがるだろうな」
「依頼受けたときから予想してけど…話し合いの余地は無し……か」
「大丈夫なんですか?」
「主、我等が出ます」
「いや、お客さんにそんな事はさせられないよ」
「だがな」

 出ようとするシグナムを止めるケティ。
 シグナムは足を止めるも、未だにケティ達の事を信用できていない為に自らが出ようとする姿勢を変えない。
 そんな彼女にコンピュータのディスプレイから身体の向きを外してケティは不適に笑う。

「丁度良いや、仕事を頼むかどうか…この戦闘を見て決めてみたらどうかな?」
「なに?」
「仕方ないなぁ、じゃあぼくが行くよ」
「いや、シーダはここで」

 意気揚々と出て行こうとするシーダの首根っこを鷲掴みして止めるフィル。
 その事に何故か喜びを感じているシーダが何かムカついたので思い切り地面に叩きつけるように組み伏せておく。
 その行為にはやてのツッコミが炸裂したのは言うまでも無い。

「今回は…新しい武装が完成したからカスク。キミに任せて良いかな?」
『承知ィ!!』

 悪魔でも何事も無かったように話を進めるケティ。
 話しを振られたカスクはこれ幸いとばかりに返事をしてヴィータの腕から抜けようとする。
 対するヴィータはオモチャを取り上げられると思っているのか少し不満そうだ。

「フィル、試作と違って試運転はまだだからサポート頼めるかい?」
「うん、分かった」

 そう言うとカスクはヴィータの手から飛び降りて部屋の奥へと駆けて行く。
 フィルも首に下げた金銀二つの十字架を下げたネックレスを手に掴み、カスクの後を追うように部屋を出る。
 それを見届けようともせずケティは近くの端末のキーボードに向かい、物凄い勢いで何かを打ち込み入力していった。

「本当に大丈夫なのか?」
「ま、見てなよ。日頃のご愛顧も兼ねて傭兵セルフの闘い方、無料閲覧ご提供って事で」
『外の様子、映しますよー?』
「いいよ、出して」

 ケティの声の後に彼等の横側の壁に大きく外の映像が映し出される。
 映し出された映像には、4名の魔導師らしき男性達を取り巻くように大型、人型混じった鎧の機械兵が待機している。
 その後方では一匹で彼等を覆い隠せるほどの巨体を持った翼竜が翼を広げて滞空している。
 一人の魔導師が持っている杖を振りかざすと、彼等の周囲に色違いの魔力のスフィアが4色数十個形成されていく。
 魔導師と機械兵の内2名ずつ、バズーカにも見えるようなデバイスを遺跡に向け、翼竜の一匹が口からフレアを溜め開放するときを待っていた。

『敵、魔力スフィア形成。敵魔導師、機械兵、砲撃魔法展開している模様!』
「ふーん。丁度良いから防御はいいや。撃たせて」
「ちょっと待て!?」

 敵の実力は分からないが、障壁すら張らずに魔力が直撃すればこんな遺跡は簡単に破壊されてしまうだろう。
 そうなれば中にいる自分達もただでは済まない。
 彼等の心配を他所にケティ達は落ち着いた様子で何かの作業を続けていく。

『了解です』
「コントやなくて!?」
「マジかよ!?」
「どういうつもりだ!!」
「撃ってくるぞ!」


 彼等が叫んだ直後。
 上空に待機していた十数体の魔道人形と魔導師達の周りに生成されているスフィアが一斉に動いた。
 遺跡のような建物に幾つもの魔力弾と太い閃光が突き刺さり大爆発を起こした。




リリカルなのは an Extra


The Next Episode02→03






今日の一押しショットショット

ヴィータ「……」
もにもにもに。
カスク「むむ〜…何WoSiteruDeGozaruka?」
ヴィータ「やわらけ〜なお前。本当に機械か?」
もにもにもに。
カスク「mu〜」
ヴィータ「…」
もにもにもに…。
シーダ「可愛い」

 大きな犬の上に座り、小さくて丸っこいカスクと戯れるヴィータ。
 その絵は(見た目の)年相応の愛らしさがあったという。







―――――――――――――――

どうでも良いリリカルなのは an Extra追記。

 EPD−3 (サン)―製作者ケティ
 Experimental Pseudocharacter Device 3(実験的擬似人格デバイス3号機)の略。

カスク同様ケティが自分の持てる知識と各次元世界の技術を応用して作り上げた管理人格。
今はユニゾンの資料不足により難航してるが、根性で規制人格は作り出すことが出来た。
実体化まではあと少しだがまだ漕ぎ着けず、普段は彼等が住処にしている船の管理を任せている。

ユニゾンデバイスにもフォームチェンジ機能を有せたらという思考の元開発に着手。
フォームチェンジ可能の魔道人形開発はこれを実現する為の過程で開発されたともいえる。
順番的にはカスクが先に作られたが、彼の武装チェンジは3が作られた後に試験的なものとして発明した。

ちなみに2号機はカスク。0号機もあるが、それは1号機同様フィルの持つ銃型デバイスの自立思考の事。






リリカルなのは an Extra EP3
 ”無理無茶できるは若さ故”





 黒煙が大地を被い尽くし、土煙が空へと立ち上る。
 遺跡のような建造物があった場所は煙によって目視できない状況にある。

「何の抵抗も無かったな」
「今ので死んだ訳じゃないよな?」
「まさか、その証拠に使い魔が生きている」

 上空で待機している魔導師達が互いと爆発地を見やりながら話す。
 自分達が相手をしようとしているのは、各世界で名を馳せている傭兵達。
 この程度で終わるような相手ではない筈だ。


 「どどど、どうしようぅぅぅぅ〜みんなぁ〜」

 そんな彼等から逃げ続け、上空で待機していた少女が涙目になりながら慌てている。
 彼女の名はフィルの使い魔であるフー。
 緑色の腰下まである白みを帯びた黄緑色の長髪に小さな一本角。
 青い瞳に大人びた顔をして女性とも言える容姿だが、その仕草や表情から見た目より幼い少女を連想させる。

 彼女が着ている白いドレスのような素材の服はスリットが開き、下地のミニスカートと太腿を露出するという。
 どこかのRPGの僧侶が着る様な服に似ているような妙な服だった。
 背中には小さいが羽があり、パタパタと動いている。


 数秒間、爆心地を油断無く見据える一同。

 と、突然ン煙の中から小さな何かが高速で飛び出す。
 敵かと思い身構える彼等、だが飛び出したソレの姿を見て打ち落とすのを躊躇う。
 爆心地から現れたのは燕のような形をしたなにかだった。

 爆発から逃げ遅れた野生の鳥かと思ったが、すぐにその考えを彼等は捨てた。
 逃げ遅れてなくとも普通の鳥が出せる速度よりソレは明らかに速く飛び、自分達を抜き去った。

(打ち落としておくか?)

 四人の間導師の内二人、機械兵、巨獣は反射的に何かが飛び去ったほうを振り向く。
 瞬間、煙の中から真紅の強大な閃光が暴風を巻き起こし彼等に向かって突き伸びた。
 太い閃光が巨獣の腹部に直撃、その巨体を後方へと大きく吹き飛ばす。

ギィヤァアアーーーーーーーーーーーーーーーーオオオオーーーー!!!!?
「なに!?」
「散開!!」

 落下していく巨獣の姿に驚きながら、リーダー格らしき男が腕を振って指示する。
 言いながら自分もその場から急いで離れると、それまで自分がいた場所にも太い閃光が走る。

「視覚の効かない中でこれほど正確に撃って来るとは!」
「魔力反応も無かったが…どういう事だ?」

 強い風が吹き、地面から立ち上っていた煙が少し押しやられる。
 そのお蔭で煙の中から突き進む船の姿が寄り早く現れる事となった。

 上から見た全体的な形は正しくH型、中心部分がブリッジらしき作りと見て取れる。
 全体が白い装甲に覆われた船は、幾らかの砲撃魔法を直撃したにも拘らず傷一つついてはいなかった。
 その船の外側両先端にフィルと、巨大なランチャーを腰貯めに担ぎ、全体的に黒い装甲をしたカスクの姿が見て取れた。

「みんなー!!♪」

 彼等の無事な姿を見たフーは歓喜の声を挙げて喜んだ。




艦内。


『アルトロン船体ダメージ無し。射出した簡易衛星と共に感度良好だよ♪』
「分かった3、いつも通り艦のコントロールは任せたよ」
『了解』
「さてと、こっちはデータ収集といきますか」


「おい」
「ん?」

 後ろから低い声が発せられ、振り向くと恨みがましい眼を向けてくる、クロノはやて含めたヴォルケンリッター達の姿があった。

「フィールドも展開しないなんてバカかテメー!!」
「対策があるなら一言いってくれ」
「ああ、ゴメン。岩も防壁代わりになってたし、奇襲も蔓とかの除去も一編に出来て丁度良いと思ってさ?」

 悪戯っぽい笑顔を向けながら話すケティに一同呆れ交じりの溜息を出す。
 艦の装甲に絶対の自信があるようだが、せめて先に言っておいて欲しいものだと思う。

「ねえねえケティ、ぼくはどうすれば良いのかな?」
「シーダは食事作ってて、僕等まだご飯食べてなくて」
「うん。わかった」

 緊張感のない会話にシグナムが怒鳴りかけたが、はやてが収めそこは耐える。
 シーダは本当に言われたとおりにするつもりなのか、鼻歌交じりに部屋から出て行く。
 少し伸びをした後、ケティはモニターに向かい、フィル達に指示を出す。

「それじゃあ二人とも、今月はちょっとお金危なくなるかもしれないから省エネでやってくれよ」

『承知』
『りょーかい』

「省エネって…何の事です?」
「ああ、僕らみたいな家業は収入がまちまちでね。やりくりしないとすぐに一ヶ月一万円生活を心がけてもピンチになるんだ
「そ、それは大変ですね」
「まあね」
「艦の維持も一苦労って所か」

 苦笑して話しながらもコンピュータの打ち込みを開始するケティ。
 確かにこれだけの船を維持しつづけつのもかなりの資金が必要だろう。
 それも複数人の生活費も合わさり、自腹で工面するとなると真っ当な仕事をしてても辛い筈だ。


「でも、楽しそうな職場やね。サンちゃん、でええかな? あなたは普段なにをしとるん?」
『みあおたぴちておおじぇおじゃぎおじゃおけじゃちえはだいそげあ』
ケティさーん!なんかサンちゃんが復活の呪文唱えとるでー!?
「艦のほぼ全部の機能を任せてるからね〜。今は会話まで集中できないから、話しかけないほうが良いよ」
「そうゆう事は早く言ってください!!」
「へ〜、おもしれえな。なあ次は何ていうんだ?」
『じゃへあじおえうあちえうおぱおぺわれおあじょえかじぇおあじろえじゃしおておじゃそえいあんあ』
「やっぱ一人で艦内のこと操縦から電圧、細かいの含めて全部まかせるのは辛いか」
「鬼かキミは」


 無表情で淡々と言葉を発する3。
 その様子がツボにはまったのか、笑いを噛み殺す事に必死なヴィータ。
 シグナムがその行為を叱りつつも、はやてが親指をグッと立ててサムズアプしてる姿に心で泣いた。

 艦内がお笑いモードになっている中、外ではフィル達が敵との接触を開始していた。
 その様子を見ていたのはケティと、狼形態で床に伏せてモニターを見ているザフィーラの二人だけだった。






 左の甲板にはカスク、右側には黒色装甲のフィルがそれぞれ立って上空の部隊を見上げる。

「さてと、カスク。準備は良い?」
『何時demo』
「よし、行くよ!!」
『応!!』

 そう言うや否や、カスクは腰溜めに抱えていたランチャーを放り捨てて、ランチャー専用である背中のバックパックも切り離す。
 カスクの装甲は通常の魔道人形の物とは違い、魔力の質量によってその強度を元来のとは比べ物にならないほど上げている。
 魔力供給様追加装備のバックパックを外した事で、装甲に行き渡る魔力の質量が変化し装甲の強度もそれに合わせて変化。
 カスクの全身の色が変わっていき、見る間に色が元の薄黄色と朱が基本の装甲へと変わる
 遅れて足を固定していた甲板のフックがパチンコを打ち出すように一気に前方へとスライド移動。
 打ち出されるようにカスクは甲板から飛び出し、背中のブースターから魔力のフレアを放出して飛び上がる。

『3!ワイバーンW射出!!』
『OK』

『あ、戻った?』
『もあもわもえみおらんふぁぼふぃんびおなげいおわごえ』
あははははははははははは!!
『ヴィータ!人様で遊んだらあかんよ!!』
『なら、なぜ親指を立てるのですか主

 妙な会話が念話ごしに聞こえた気がするが、強制的に無視するフィルとカスク。
 艦内でケティが3にコンソール操作で指示を出すと船体、カスクが立っていた丁度真下のコンテナの様な部分が競り上がる様に開いていく。
 どうやら何かの射出口のようで幾つかの光点が灯り、中から青いストライプの全体的に丸みを帯びたシャープなデザインの飛行メカが飛び立つ。
 それは空中を飛ぶカスクに一直線に向い、カスクも自身のレーダーで距離を感知しコンタクトを取る。

 ぶつかる!?

 その様子を見ていた者達がそう考えた瞬間。
 二機は互いの身体を分解、再結合時に合体して新しい姿をした青いストライプの白い一機の飛行メカとなる。

 両者の合体を見計らったようにフィルがその機体に着地し、ボートに乗るように立ってデバイスを起動させて自身のバリアジャケットを生成する。
 そのジャケットは空の様に澄んだ蒼色、白いストライプの付いた服装はどこか優しい印象を与える。
 だが、ジャケット下に隠れる腰に巻いたガンベルトがその印象を弱冠崩す。

 手にしたデバイスは鎖で繋がれた、それぞれ金と銀の剣十字を施した十字架型二丁拳銃。
 両腕を広げて構えるそれは雄々しく、力強い。それはガンマンと言うより短剣を構えた騎士に見えた。


「なんだあれは!?」
「構わん、落とせ!!」

 思わず驚きの声を漏らしつつも、フィル達に向けて射撃魔法を行使する。
 彼等がスフィアを形成し始めた瞬間、飛行メカとなったカスクのブースター魔力のフレアが一際激しく噴射され、機体を一気に加速させた。

「早い!?」

 魔導師が射撃を行なった次の瞬間にはフィル達は相手の背後を取り、カスクは人型へと変形して急停止を掛け船首であった鉤爪付きのシールドを。
 フィルはカスクの変形が終わる前に飛びつつ砲撃魔法を構築し終え、金の剣十字銃を機械兵へと向ける。

「弾けろバーストショット!!」
『Burst shot』
『戟!!』



 握り拳大の水色の光弾が機械兵へと向かい、着弾と同時に辺り一面を覆うような爆発を起こす。

 周囲が爆炎で包まれ視界が利き辛くなる中、魔導師達と機械兵はその場から散り、状況を確認するためリーダー格の男が念話で連絡を取る。


「一体やられたか!?」
「ああ、防御が間に合わなかった! 小隊編成はお前等頼む!!」
「待ってください! こちらも人型一機反応ロストしてます!」
「なんだと……!? 各自止まるな! 散開しつつ第一班は砲撃魔術を構築しつつZ−1周囲を警戒!
 2班はその護衛、他は周囲の警戒怠るな!!」
「え?」

 叫びながら自身のデバイスをZ−1と呼んだ人型機械兵の前方の煙部分へと向けるリーダー格の男。
 彼の瞳は機械兵の足に巻きつけられた銀の剣十字銃付きの鎖を捉え、その鎖の先の根元へ向けて射撃魔法を行使する。
 同時に煙の中からフィルが鎖を引きつける様にしながら姿を現し、迫り来る射撃魔法を身を捩る最小限の動きでかわす。

 目の前に迫ったフィルに機械兵がその槍のような鋭さを持つ貫手を放つ。
 それを銃に繋がった鎖で斜め上後方へと受け流し、流れる動きで脇溜めに金の剣十字銃を構えて引き金を引く。

ガガガガガガガガン!!

 マシンガンから出たような銃声が鳴り響く。
 次の瞬間、機械兵の頭が火を噴き爆発して動かなくなり、力をなくした身体は地上へと落ちていく。

「三つ」

 フィルは銃のマガジンを取り出しつつ残骸となった機械兵の足に巻きついてた鎖を解き、先に繋がる金の剣十字銃を腰のベルトに挿して飛ぶ。
 これ以上はさせまいと人型と2機の大型機械兵は接近戦を試み、それを操る魔導師達は安全圏を確保しつつ射撃魔法を構築する。
 迫り来る中小3体の機械兵を見つつフィルは器用に片手で弾薬を取り出し、軽く放り投げるとマガジンを一振りして装填を完了させた。
 続けて両手の銃を相手を見据えて構え、魔法ではない実体弾を高速連射で打ち出す。

 打ち出された銃弾は2体の中型機械兵の装甲に跳ね返され、ダメージを与える事ができなかった。
 しかし……

「う!」

「なんだ!? どうした!!」

 後方の安全圏で待機していた筈の魔導師達の目の前で突然何かが破裂。
 すると、彼等が持つデバイスのダクトから魔力が煙となって排出され、各稼動部分から火花が散る。
 どういう訳か彼等の周囲の魔力場が乱され、デバイスは使用者の意思に反しまともに動く事も難しい状態にされていた。

「マジックジャマーを内包した弾頭を、君達の手前で撃ち潰しただけだよ」

 フィルが言うには弾かれた弾頭には、魔法効果を邪魔する特殊な膜が内蔵されていた。
 それを機械兵の身体に反射させて敵魔導師の手前で破裂させたというのだ。
 言葉にすると簡単だが、相手も止まってはいない。
 更に高速で飛び交う弾頭に対し、同じ大きさに同じスピードで動く弾頭を当てるなど達人の域を超えて神業と言えよう。


 不適に笑いながら語るフィルに、人型機械兵が貫手を回転させてドリルの様にして突き出す。
 その突進を少し身体をずらして避けつつ、前方から迫る二体の大型機械兵へと視線を向ける。

 二機は背中に二つ、合わせて自身の胴体ほどある巨砲をフィルに向けようと動かしていた。
 銃弾が4発響き、乾いた音が空に響く。大型機械兵にダメージは無い。だが、異変は起こった。
 背中の巨砲がギギギと妙な音を立てて、錆びた様に動きが鈍くなったのだ。
 そう、フィルは最初に破壊した機械兵含め、稼動間接部分をピンポイントで狙い破壊、または動きを阻害したのだ。

「せぁああああ!!」

 一気に大型機械兵へと接近するフィル。
 中型も黙ってみている訳も無く、その人一人簡単に潰せる強腕を振るって迎撃に来る。
 よく見ると敵機の周りには薄い光の膜が現れている。恐らく魔力防壁が張られているのだろう。
 魔術のバリヤーは実弾だろうと弾く事が出来る。これでは幾ら撃っても敵に当てることすら出来ない。

 ただ、それは普通の銃で闘った場合の話しであり、別の方法を取れば至極簡単に防壁が崩れたりする事もある。


 巨大な拳を避けたフィルは更に距離を詰めつつ両手を左右腰下に構える。
 それは二丁拳銃で早撃ちを行なう様な構え、そこから一気に腕を×字に交差するよう振り上げる。


「クロス・ガースト!!」
『Flame Gust』
『Freeze Burst』


 銃身が交差した瞬間、二つのデバイスの銃口から二種類の魔術が全く同じ打点へと打ち出された。
 強力な火力と冷気の気温差、それを同時に同ヶ所へ放ったことによって水蒸気爆発にも似た強大な衝撃が発生。

 更に同一箇所に二重の衝撃を全く誤差なしで叩き込む事で新たに魔力的相乗効果が発生。
 位置的誤差、時間的誤差、銃の双頭から放たれる魔力の性質、質量誤差、全ての誤差はゼロ。
 魔力自体の威力が向上し合い、接触面に絶対的な破壊をもたらす。

 その効果は防壁を粉々に砕き、衝撃は中型機械兵を砂が飛び散るように粉微塵に吹き飛ばした。


「超絶銃技……ブランクオーバー」




 パラパラと風に乗って流されてしまいそうなほど、粉々に破壊された機械兵を見て魔導師達は恐怖する。
 決して侮っていたわけではない。 自分達とて軍として戦いを経験した事のある戦士だ。
 同行させた機械兵も、最低でもAAランクの攻撃に耐えられる強度を持っていた。
 それがこれほどアッサリ倒されるとは。



「これで四つ……そこの二人のデバイスは使い物にならないけど…まだ続けるの?」

 普段は優しげなフィルの眼差しが魔導師達を射抜く。
 それは優しさの中に鋭い刃を持った瞳。
 彼の力を主張するように、二つの剣十字銃は太陽の光を反射して小さく輝きを放った。






リリカルなのは an Extra


 The Next Episode03→04




今日の一押しショットショット


「弾けろバーストショット!!」
『Burst shot』
『戟!!』

 握り拳大の水色の光弾が機械兵へと向かい、着弾と同時に辺り一面を覆うような爆発を起こす。
 その爆発と同時にカスクは一体の人型機械兵へ接近し、右腕のシールドと一体化した鉤爪で相手の装甲を貫く。

「わー凄いねカスク!」
『Huhun。只敵wo貫kuDakedeha無izo!!』

 装甲を貫いた鉤爪の間接部分が開き、敵内部の機器コンピュータに自身のシステムを繋げる。
 この武器は相手が機械系であれば、貫いた場所から内部の情報をハッキングする事が出来る機能を持つ。
 機械版の蒐集とも言える能力とでもいう武装だ。
 実際データをハックした敵機体を過負によって機能を停止させることも出来る。

「へ〜。凄いんだね」
『応智yo!!』
「でもカスク」
『ム?』
「もう出番無さそうだよ?」
ニャニィ!?

 この方法はそれなりに時間がかかってしまう。
 一対一の時には必殺の攻撃に成り得るが、今回の様に多数の相手をする時には得策ではない。
 そう、彼が敵機から情報を収集してる間に半分近くの敵はフィルによって既に倒されていたのだ。

『se、拙者no出番…』
「まあまあ、一緒に遊びながら待ってようよ。ね?」
『ショボーン』


 一人が目立つと他は無視される。
 明らかに作者の技量不足によって引き起こされた問題だった。

orz

 なんてこったい。







―――――――――――――――

どうでも良いリリカルなのは an Extra追記。

ワイバーンW―製作者:ケティ
Wivern wing(飛竜の翼)の略。

カスクの追加装備として開発されたフォームチェンジ用追加武装デバイス。
独立した飛行形態を持ち、合体しなくてもカスク(または船かケティの私用するコンピュータ)からの信号で動く。
機首が鉤爪付きシールド、胴体部分上部がバックパックとメインスラスター。下部にもう一つのシールドの翼に射撃用のレールガン。
これらがカスクと共に分解、再構築される事で合体が完了する。


カスクWJ(カスク・ワイバーンジャケット)―製作者:ケティ
 k-sk Wivern Jacket

カスクがワイバーンWと合体した姿。
供給される魔力が装備によって異なる為、装備によって色が変わる。
(ワイバーンジャケットの場合、全体が白地に変わり、青い線が入る)

飛行形態と
人型、そして巨大な鉤爪上のガントレットといった3つの変形機能を持っている。
人型のときの武装は右手に鉤爪、左手にレールガン付きの一体型シールド。
(レールガンの方のシールドが変形時の翼の役割を担っている)
レールガンはどちらかと言うと牽制用、本領はシールド一体型の鉤爪での敵機からの情報収集。
蒐集した情報はカスクの電子頭脳かアルトロン、またはケティのデータベースへと送られる。
本来は高速飛行接近戦を想定した武装というコンセプトで開発していた。


砲撃用デバイス・アペフチカムイ―製作者:ケティ
カスクA

カスクが腰に抱えていたランチャーも追加用デバイスである。
巨大な魔力バックパックがあり、それと連動して強力な火力を発揮する。
機体全体に魔力が満ちる様で、全身が真っ黒に染まる。

砲内に簡易的な環状魔法陣にも似た仕掛けが施してあり、威力の増大、加速を処理し絶大な火力を引き出す。
砲身が焼き切れないように外側にアンチマギリングコ−ティングを施してある。
あくまでもコーティングは外側のみ、故に連続発射はランチャー自体の崩壊に繋がる為連続使用は出来ない。
魔力エネルギーの消費が激しすぎるという欠点もあり、まさに一撃必殺、諸刃の剣という言葉の似合う装備である。






 前回のあらすじ。
 二○の極みを極めていたフィルは結構強かった。


リリカルなのは an Extra EP4
”何か色々出来てきた?”


アルトロン艦内。


「へ〜、ちょっとはやるじゃん」
「そう言ってもらえて嬉しいよ」

 モニターから様子を見ていたヴィータが素直に感想を話す。
 少しとは言え、彼女が所見の相手を褒める事はあまり無い。
 どうやらフィルは少しお眼鏡に適ったという事らしい。
 その合間に入るように、はやてが小さく手を挙げて質問する。

「あの〜、ちょっとお尋ねしてもええかな?」
「なにかな?」
「今のフィル君が使った魔法…明らかにAランク以上の威力があったと思うんですけど?」
「あるよ」

 さも当然とばかりにアッサリと答えるケティ。

「始め会った時、全員で精々いってAランクが限度とか言ってませんでした?」
「言ったよ?」
「どこがですか」

「力があっても何も守れなければ意味が無いだろ?」

「え?」
「僕等は守る事には向いてなかった……それだけさ」


 苦笑しながら語るケティにはやては違和感を感じた。
 確かに過ぎた力は、使い方を誤まれば周りを傷つける諸刃の剣となる。
 けれど、彼が話しているのはそういう事ではない様な気がする。


「…一つ訪ねても良いか?」
「シグナム?」

 彼女の問い掛けに首を向けることで肯定の意思を伝えるケティ。

「彼は砲撃魔導師ではないのか?」
「そうだけど?」
「なぜ積極的に砲撃魔法を使わない? それに自ら敵に近づくとは、余裕を見せ付けて我等の気を引くつもりか?」
「シグナムちょっと怒っとる?」
「あいつ初対面の印象が悪いと結構引きずるんだよ」

「別にそんなつもりは無いよ。アレが彼の戦い方なんだ」
「あれが?」

 ケティの言葉に一同疑問の声を挙げる。
 本来砲撃魔術を得意とするものは距離を取っての戦闘がセオリーだ。
 単独戦闘可能な砲撃魔導師は身近にいるが、少なくとも進んで接近戦を挑むような事はしない。
 そういった疑問にケティは付け加えるように一言。


「彼は接近戦主体の砲撃魔導師なんだ」


「ほ、砲撃魔導師なのに接近戦が主体なんですか?」
「砲撃が得意でも接近戦やっちゃいけない理由にはならないだろ?」
「そういう問題じゃないと思うんだが」

 ケティの言葉にクロノが顔を顰めながら言う。
 彼とて企画外れの魔導師達を(主に身内で)見てきているが、これもまた妙に企画外れの魔導師だと思う。

「随分と戦い方を変えたものだな」
「君と会わなくなってから何年か立つからね……そんな事よりちょっとこっちに来てくれないか」
「戦闘は見なくて良いのか?」
「大体倒しちゃったからね」

 振り向きもせずに答えた彼の後姿は何故か哀愁が漂っていた。
 ついでに盛大に溜息も吐いているらしい。
 一方現在外の状況がどうなっているかと言うと。

「せっせっせーの♪」
『ヨイヨイヨイ』
「…なにやってんの?」

 あまりにも暇だったのか、カスクとフーは懐かしい遊びをして時間を潰していた。
 妙にゴツイロボと、少女が遊んでる様は何とも妙な風景だと思う。
 その映像に苦笑しながら、クロノははやて達に向き直る。


「はやて達はどうする?」
「うーん。私もついていこうかな?」
「はやてが行くならあたしも」
「私はもう少し外の様子を見ています」
「同じく」

 先程の戦いぶりを見ていても、余程事が無い限りは彼らに任せて大丈夫だろう。
 それにシグナムとザフィーラが見ているなら心配は無いと判断し、三人はケティに別の一室に案内されていった。
 そこには廃材品置き場と行って差し支えない程機材が乱暴に詰まれた山が幾つか出来ている所だった。
 その一角に足を運び、何かを探しながらケティは話を始める。

「前回の機動要塞戦の時に、管理局も残骸を回収していったろう?」
「ああ、残骸でも事件解決の十分な資料になることもあるからな。サンダルフォンに本局へ運んでもらって、そろそろ調べ始めてる頃だと思う」
「そっか。こっちでも少しは改修して調べてみたんだけどさ」
「それって火事場ドロボーって言うんじゃ」

 はやての言葉を聞き流し、ケティは探していた物を取り出す。
 彼の手には何処の部位、いや何に使われていたかすら判別のつかなくなった機械の残骸。
 それを軽く放って地面に落とすと思い切り踏み砕く。

「まぁ見てて」

 ケティの行動に驚き、疑問に思うはやて達に先駆けて言う。
 そして、彼は指を指しながら砕け散って跳ねる残骸の一部に視線を向ける。
 やがて勢いを無くしながら、機材の山に残骸の一部が当たり乾いた音を出して止まり、ほんの少し静けさが室内を覆う。

「なぁ、一体なんだってんだよ」
「構えておいた方がいいよ」
「へ?」

 ケティが注意を促すと、合わせる様に細かくなった残骸から小さなコードが飛び出し近くの機材に突き刺さる。
 職種の様に動くコードは機材を次々引き寄せ、繋ぎ合わせながら吸収するように圧縮して一つの形を作ろうとしていく。
 歪な凹凸が収縮していき、 5センチも無かった残骸がものの数秒で人の形に近づいていく。

バキッ バキバキッキキキ キキッ―――!!

「なっ!?」

 突然の事に驚くクロノ達。
 咄嗟に身構える中、ケティは駆け出しつつ懐から太目のスティック状の何かを抜き取る。

「MTS!!」
『Of course』

自分のデバイスに呼びかけ、この場に適してそうな装備を選択。
 簡単な装飾作りのスティックから仕込みナイフの様にドライバーのような物が形成され、そのまま人の形を形成しようとする残骸に突き立てる。
 機器の間で流れる情報の波を読み取り、解読、こちらから微弱な魔力を流し込み流れを阻害。
 電子機関を乱れさせ構築を邪魔し、乱れた流れに新たに自壊する為のプログラムを構築。
 相手の流れに乗るように組まれたプログラムは、残骸のプログラムを元にして次々とウイルスを作り出し自壊させる。
 プログラムを完全に破壊しつくされた残骸は支えを失ったかのようにバラバラに砕け、また新しい残骸となって沈黙した。

「今のは?」
「これは、元から破壊されるのを念頭において開発された、ある種の時限式のトラップみたいなものかな?」
「トラップ?」

 クロノの問い掛けに答えながら、ケティは残骸に近づいてその一部を拾い上げる。

「多分、機材の中の一部の部品に記憶媒体があって、適当な時間をかけて魔力を溜めて、丁度良く機材がある場所で本来の姿に戻るようにプログラムされてたんだろうね」
「そんなものが……」
「本当に一部の部品だけどね」
「なんで態々そんな物があるん?」

 その疑問にケティは溜息とも、苦笑とも取れる息を吐きながら呟く。

「時限式のトラップって、安心した所を突いて来るものなんだよね」



 クロノ達がフィル達と出会っている頃。

 時空管理局のとある倉庫に巨大機動兵器、要塞殲滅戦にて破壊された残骸が局員達によって詰め込まれていく。

「にしても、今回は凄いな」
「ああ。中古のデバイス含めてこんなもの見せられたら」
「管理局の破壊者達の名前は伊達じゃない……か」

 顔を引き攣らせながら、彼等は残骸の中から幾つか研究班の元へと持ってくものを選んで台車に積む。

「んで、噂の方々は何してるんだ?」
「んー、クロノ執務官はヴォルケンリッターと一緒に別行動で、高町さんとテスタロッサさんはこっちに戻ってきてたらしいが」
「が?」
「高町氏は猛ダッシュして無限書庫へ、途中数名の局員を刎ね飛ばして司書長と乳繰り合ってるそうだ」
「地球じゃないのか?」
「ンな事知らん」

 雑談しながら必要と思われる部品を台車に積み込み終え。
 荷物で山積みになった台車を押して倉庫から出て行く。
 静かに自動でドアが締まり、倉庫の中は光が途切れて暗闇に包まれる。
 数秒後、視界の利かない暗闇の中で何かが動く音がした。



カチャッ
カチャカチャ――
キチッチキチキチキ――――


―――魔力収集、規定値到達―――

―――データ復帰、構成物品算出、索敵開始―――

―――周囲生体反応無。身体構成時必要物品確認―――

―――強制結合開始。以後戦闘形態移行―――


 暗闇の中動く無数の触手の様なもの。
 それらは資材の山へ向い、まるで貪り食う様に蠢く。
 もし影だけでも中が見えていたら、その光景は山を喰らい尽くす蛇を連想させただろう。
 やがてそれらは山を飲み乾し、己の身体を作り出す。


―――身体構築終了―――

―――魔力浸透。動作確認――――

―――自立行動問題無――――

―――作戦目的確認。作戦行動始動――――

―――作戦行動時、任務障害強制排除―――


 数体の合成音から言葉が発せられる中。

 一つの足音が暗闇の倉庫に響く。
 音に反応するように合成音の会話もピタリと止まる。
 それは人なのか、別の何かが発した音なのかは解らない。
 だが、重いものではなく。靴音らしい事からも恐らく人のものである事が窺える。
 数歩歩いて動きを止めたのか、その音が止まり静寂が闇を支配する。

「ふん。管理局も相変わらず脆い一枚岩か。手引きがあるとは言え、これだけ簡単に入れるとはな」

―――マイマスター。ご命令を―――

「ふん。一々確かめるまでもない。渡したデータの通り動けば良い」

―――では、好きにさせてもらいましょうか―――――
―――好きにする――――

「ふん。勝手にしろ」

―――それでは―――

 暗闇の中での会話が終りを告げ彼等は行動に移っていく。
 彼等が動き出したのを感知しながら、頭角を現している者が小さく笑う。

「さぁて、数年振りの生き甲斐だ。十分堪能させてもらおうか」

 呟き、小さな光球が生み出され彼の顔が僅かに映し出される。
 暗闇に隠れる表情は歪んだ笑みを作り、暗み掛かった中僅かに明かりに照らし出された瞳は鋭く怒りに乱れている。

「まずは返してもらおうか。我が同胞達を……な」

 小さく呟きながらゴミを捨てるように軽く、手の平の上に浮かぶ小さな光球を放る。

 直後、巨大な爆発音。
 同時に激しい衝撃が管理局に響き渡った。





リリカルなのは an Extra


 The Next Episode04→05




今日の一押しショットショット


アルトロン外上空。



「カスク」
『ここでは熱血系のノリで行きたいのでござるが』
「普通にやってくれ」
『了解、では……魔道変幻戦篭手!!!』

 カスクが叫び身体を分解させ、内部に記憶された情報から新たな形を創造する。
 そこへフィルが分解された場所へと右手を伸ばし、その腕に分解されたパーツが次々集まっていく。
 カスクに付属されていた全ての装備が変わり、フィルの右肩から腕全体を覆う巨大なアームへ変化する。
 腕に収まりきらない分は左肩のショルダーアーマーとして装着された。

「これは試作と同じように、思い切り殴りつけるタイプで良いんだね?」
『良』
「じゃ、遠慮なく」

 フィルがアームを高く掲げ、魔力を通し神経を繋げて指を一つ一つ曲げていく。
 一人と一機の魔力が絡み合い、一つとなって相乗効果を発揮し高まる。
 向上した魔力によって自壊しない様にダクトから余剰魔力が煙となって排出された。

『魔力擬似神経結合完了……戦籠手龍爪!!』
「さあて、と」

 一旦手を開いて閉じ、感覚を確かめると体を前傾姿勢に落とし、右腕は思い切り振りかぶる。

必・殺!! ガントレットマグナァアアアアム!!
『飛拳翔銃弾ンんんん!! ついでに精神コマンド必中熱血幸運ひらめきその他諸々ぉおおおお!!!

 掛け声と共に突き出し、巨大な魔力のフレアを尾に引いて打ち出される巨大な拳。
 魔力による衝撃波、そしてエネルギーによってアームが巨大化しているように見え、その大きさに合う拳圧が魔導師達を襲う。

「嘘だろ!?」

 咄嗟に防御魔法を展開。
 防ごうとするが、その豪速と魔力量と圧力にアッサリと押し負け、硬い感触を身体全体に受ける。
 全く減速する事無く、魔導師を巻き込みつつ残りの魔道人形と翼竜をも吹き飛ばす。
 拳はそのまま大地へと激突し、土煙も含めて盛大なキノコ雲を作り出した。


 その様子を船内で見ていたシグナムは呆れ顔で呟いた。

「……なんだアレは?」
「ロケットパンチだ」
「ろけっとぱんち?」

 シグナムの疑問に答えたザフィーラの口調は、心成しか喜んでいるような節があった。
 心に響くロボット魂。それが熱血大好き男の子。



―――――――――――――――

どうでも良いリリカルなのは an Extra追記。

ディムス―製作者ケティ*使用者フィル
Dust Memory Cycle(ダストメモリーサイクル)の略

 グリップの底が鎖で繋がれた二丁拳銃の片割れ、マガジン式カートリッジシステム搭載の機体。
 自立思考型で、男性の声でやや訛声のような響きのある変わった声質。
 銀の剣十字装飾が施された銃で、砲身の真下部位の剣十字が少し(ナイフくらい)伸びて実体剣となり接近戦も行なえる。
 この実体剣は材質自体がAMFの効果を持ち、敵の防御を貫いたり攻撃を防ぐのに役立つが、自分の魔力効果も受け付けない。
 それ故本体の魔力のつながりを阻害しない様にパーツによってくっ付く、追加武装的位置づけになる。

 コレの真価は高ランク魔法もほぼ一瞬で構築、開放できる程特出した超高速演算処理能力。
 それは圧縮魔導方陣と呼ばれるものが組まれ、AAAランクの術式も記憶さえしていれば分類別に分けて、それ専用のトリガーヴォイスで発動できるというもの。
 仕組みとしては、文字を書く時ひらがなを漢字へ変える事によって字数を短縮、『まほう』も『魔法』へと変換するように、限りなく発射までの時間を短くできる。
 上記の分類別とは、『魔法』の言葉で炎を出す構築とするなら『魔術』という言葉で水を打ち出す公式に変換してくれると言う事。
 魔法構造さえ知っていれば、他人が作った魔法にも対応できる。
 ただ、この圧縮魔導は大量に魔力を消費する上に、その魔法が持つ付属効果は再現されないという面も持つ。
 例えるならなのはのスターライトブレイカーも即座に打つことが出来るが、結界破壊能力は無くなってしまう。
 消費量の関係で、現在はカートリッジを使う事で消耗を最小限に抑えている。


セヴンス―製作者ケティ:使用者フィル
Self Venus(セルフウェヌス)の略

 ディムスと対を成す金色の剣十字銃。
 女の子らしい声質で、兄妹機である為か別の何かか解らないがディムスやフィルをお兄ちゃんと呼ぶ。
 実弾と魔力弾を使い分ける事が出来、実弾はグリップ部位のマガジンに、銃の上部にリボルバー式カートリッジシステムを搭載。
 砲身の真下の金の剣十字が伸びて長刀が飛び出る。こちらは魔力を弾く効果は無いので、付属効果を持たせて扱う事が多い。
 こちらは高速処理は無く、魔力変換特化型。
 どちらの銃も一機能を特化し、強度を念頭において開発された為に変形機能は無い。(剣十字の剣は付属的なもの本体はあくまで銃)
 その為、必要時にはケティから追加武装を受け取り、そのパーツを直結させる事で様々な戦況に対応。
 現在は機動要塞戦で使われた一対の砲撃用追加パーツデバイス”オルトロス”が確認されている。





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