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リリカル・クリスマス☆


「わー!雪がキレイですー♪」
「おい、なんかこの結晶でけーぞ!手の平くらいある!!」
「あー、この世界の冬はちょっと特殊だからね」

 ソリに乗り、雪の降る夜空を駆けていくケティ達。
 降り注ぐ雪の結晶にヴィータとリインは手を振ったり、結晶を掴もうとしたり大はしゃぎだ。

「はしゃいでるなぁ」
「それは、こんなに大きな雪の結晶なんて他の世界でも見られませんからね」
「ああ、主にも見せて差し上げたい景色だ」

 雪の結晶の降りてくる空を見上げながらシャマルとシグナム。
 その光景が一つの芸術の様に美しく映り、キレイだと思いながらスヴェルは顔を横に向けて外の景色を眺める。

「キレイだね、アリサちゃん」
「でも、こうゆうのを見てると寒くなりそうだわ。それに半袖だし」
「大丈夫だよ。ちゃんと対冷熱完備はされてるから、ジャケット解除しないかぎり寒さは防げる」

 アリサの言うとおり、傍から見ると一部の服装は寒そうに見える。
 実際寒さを感じている訳ではないが、視覚的な気分で寒くなりそうなのは同意できる。
 それで狼形態で座しているザフィーラを布団というか、寒さ対策にしているのは分かるが少しは嫌がれザフィーラ。
 多分後でシャマルに交渉の材料に扱われるぞ。もう手遅れだろうがな。

 シャマルはすでにその事を頭に考え、ケティにいたってはさり気なくその映像を残していた。

 それ以前にザフィーラ。ここ数日お前の存在スッカリ忘れていたよ。
 だってクリスマス華があるのは女性陣だけだしな。
 

 様々な思惑が交錯している中、何時の間にかヴィータとリインフォースが大人しくなっていた。
 大人しいというより、どっちかというと残念そうな感じに見える。

「やっぱり、はやても一緒に連れてきた方がよかったかもなー」
「そうですね。このキレイな景色…はやてちゃんにも見せてあげたかったです」

「そう言えば、あたし達も学校や習い事があるから長い時間は手伝えないわよ?」
「そうだね。みんな心配しちゃうもんね」

「ああその点なら大丈夫。ちゃんと代わりを用意していったからさ」
「代わり…ですか?」
「ソレってどういう事よ?」

 二人の問いに唸りながらケティが簡単な説明を行なう。

「ええとね。以前管理局の開発局データベースにハック―アクセスした時に”コピー元の人間の殆ど全てを複写する機能”がある魔道人形っていうヤツのデータをもらった事があってね。一応君達の記憶、感情は独断と偏見で色々設定させてもらったけど、特に問題は無いと思うよ」
「独断と偏見ってどんな風に設定したのよあんたはぁ!?」
「でも、これで時間を気にしないですむね」
「そーゆー問題じゃないでしょ!!」

 ケティの発言に抗議するのはやはりアリサ。
 だが、彼女は自身の尊厳が侵害される事の危機に眼が行ってしまい、彼のトンでも発言に突っ込みを入れ忘れていた。
 そんな彼女の代わりに、ヴォルケンリッターが言葉の意味に気付き驚きの声を挙げる。

「管理局にハッキングしたんですかぁ!?」
「とんでもない犯罪だぞ!?」
「よく無事でいられたな」
「それについては大丈夫。あんまり他言するのは良くないんだが、入る時は僕のコード使えるようにしてある所からだから、最初の段階は犯罪にはならないよ」
「最初って……後のは犯罪になるんじゃない」

 ケティの言葉に呆れるアリサ。
 説明を聞かされたヴォルケンリッターは、何と言っていいか分からない感じで止まっていた。
 いくら管理局でも内部情報はそんなアッサリした言葉で片付けられるようなセキュリティはしていない。
 もしそんなセキュリティなら各次元世界を管理する事などできず、犯罪を抑止する事など不可能である。
 とにかく、言葉では言いようの無い厳重な防御壁を張り巡らした管理局内部データを一部とはいえ抽出するこの人物の技量は計り知れない。

「いや〜でもあの時はびっくりしたなぁ〜。途中までは結構楽に進めたんだけど、マッドの巣に入った時は死ぬかと思ったよ」
「マッドの巣って…」
「まさかアヤツのいる場所では無かろうな?」
「アヤツって誰ですか?」
「そうだなー日本語表記で例えるなら思案と書いて」
「もういい畳み掛けるな」

 顔を引き攣らせながら尋ねると、ケティはフッと笑みを浮かべて遠くを眺めた。
 思えば遠くへ来たもんだ、とでも言いそうな雰囲気だ。
 手遅れかもしれないが、それ以上は危険と判断して発言を止めるシグナム。


「何の話をしてるんですか?」
『えっと…じつはこの間……ちょっと』
「アイツが妙なことをやったってのは理解できたわ」
『でもビックリしましたよね〜!ジャンク改修の物とはいえ、コンピューター20台くらい一気に爆発しちゃいましたからねー?あの時は私達管理人格も総動員してようやく振り切れたから良かったですけど、危うく私達消えかけて死ぬところでしたよね』
「20台って馬鹿じゃないの!?」

「実際には23機大破、1機中破、4機一部備品が焼き切れて部品交換。いやー、やっぱりあの人は凄いや」
「よく振り切れましたね」
「でも、こっちはそれほど盗む事ができなかったのに、向こうはこっちのデータをより詳しく解析しつつ改良も加えて量産型デバイスの追加ブースターパック開発とか、それはもう色々やってるから流石Sの人シャアさん(仮名)」
「ライバルと言った所か」
『いいえー、ライバルって言うより仕事場のフレンドリーな上下関係くらいですよぉ。一度メールで確認し合ってる所見たってサンちゃんも言ってましたしぃ、むしろ元マスターの方が教えてもらってるって感じですよねー♪』

「トゥー、元とかつけないでくれるかな」
『えー?確かに期間限定かもしれませんけどぉ、今の私のマスターはアリサちゃんですよぉ?』
「ちゃんってあんたねぇ。それって本当にマスターって思ってるの?」
『そりゃ勿論ですよ!』
「良かったね、アリサちゃん」
「複雑だわ」
「そんなに照れなくても良いじゃない?」
「て、照れてなんて無いわよ!」
『もしかしてコレがツンデレってやつですか!?』
「何の話よ!?」

『なんだか…話がずれてる気がするんですけど?』
「あ、そうだったねフォーちゃん」
「なんでこんな話になってんのよ」
「どこまで話したんだっけ?」
「代わりの魔道人形を用意したという所までだ」

 ずれた話を戻しに掛かると、ザフィーラが律儀に覚えていた。
 むしろ、こういった無駄話が無ければこのまま出番が無くなりそうだと思う。


「一応様子をモニターできるけど、見てみるかい?」
「そうね、変な設定されてたら速攻で帰るわ」
「そんなに心配しなくても平気だよ、アリサちゃん」
「じゃコレで見よう」

 そう言うとケティはポケットからノートパソコンを取り出す。
 明らかにポケットに入りきらない大きさだが、突っ込むのに疲れた為に全員何も言わなかった。
 パソコンの画面を開き、操作していくと何処かの映像が映し出された。

「ここって学校じゃない」
「そりゃ、SSS始まってから時間経ってるからね」
「SSS?」
「シグナム、そこは深く気にしたら負けよ?」
「ちなみに今映し出されてるのは、月村さんの魔道人形の視点での中継だよ」

 全員が食い入るように画面を見に行く。
 弱冠狭いソリの中で比較的小さな画面を見ようとするために、おしくら饅頭宜しくな状態になる。
 位置的に押し付けられる状態にされる男性陣は、女性の柔らい感触を押し付けられたり吐息が掛かるくらい顔が近くになったりする。
 中心にいるケティは一身にその豊満な感触を受ける事になるのだが、全く動じた様子は無い。
 後部座席に座っていたフィルとスヴェルは一時画面の様子が気になったが、見るのを諦めて外の景色を堪能する事にした。
 視聴を断念したのは、前の席に座るミニスカートの方々が身を乗り出して画面を見ている為に、その下の隠すべき物が見えてしまう事が大きな理由でもある。
 指摘しようにも出来ないので、終わるまで二人は外の景色を見るか、現実逃避に決め込むかするしかなかったのだった。

 そんな男の葛藤も知らずに、彼女達は現在の地球での中継を食い入るように見る。

【おはよーアリサちゃん、すずかちゃん】
「だれか来たみたいだね」
「声からするとなのはちゃんかな?」
「あ、振り向く…なんかカメラ目って変な感じがするわね」

【オハ、ヨー。ナノハ、チャン】
「え?」
「なによ、いまの?」
「そこは深く気にしたら負けだよ二人とも」

【えっと…アリサに…すずか?】
【ドウ、シタノヨ、フェイト】
【ハヤテチャン、モ、ナニカ、アッタ、ノ】
【何かって…えっと】

「なんか様子がおかしいわよ」
「ってゆーか何でロボットみてーな喋りかたなんだよ」

【え、えっと。二人とも…昨日なにかあったのかな?】
【ナニカッテ、ナニヨ】
【ナニモ、ナカッタヨ、ネ、アリサ、チャン】

 そこでなのは、フェイト、はやてがフェードアウト。
 代わりにアリサ魔道人形がカットイン。
 現れるは鋼鉄の少女。

なによこれはあーーーーーーーーーーーーーーー!!?

 アリサが絶叫を上げる。
 映し出されたアリサ魔道人形は全体が四角い。
 学園の制服を来ているが、四角い身体に合わせてある所為か全体的に硬そうなイメージだ。
 腕は掃除機の管のようで、手はCの形をした正にロボットアームと言うべき代物。
 足も似たようなもので、頭部は四角く目は丸く口は無く、金髪のカツラを被っている。
 2.5頭身アリサロボここに参上だった。ちなみにすずか魔道人形はメ○沢風のボデイ装甲だ。

「キミをモチーフにした魔道人形」
「あんたねぇ…」(フルフル)
【ハヤク、イカナイト、チコク、スルワヨ】
【そ、そうだね。アリサ?ちゃん】
【フェイト、チャン二、ハヤテチャン、モ、イコウ】
【そやねすずか?ちゃん】
【は、はやくいかなきゃね】

 明らかに疑問を持たれているが、なんか突っ込んで良いのかどうか把握しかねているという様子だ。
 映し出される画面に一同顔が斜線で隠れている。

 アリサは怒りが沸々と湧き上がるのを感じ取り、ハリセンがあったらコイツに思い切り叩き込みたいと思った。
 握り拳を顔近くまで上げてみると、赤い光が集まっているようにさえ見える。
(今ならGにも一矢報いる事ができそうね)
 などと考えながら、腕を大きく振るった。

「こんなんで騙せる訳無いでしょーがバカァーーー!!!」
ゴキィ!!!
「グォフ!?」
「え?」

 予想外の音と衝撃と手に伝わる感触に疑問の声を洩らすアリサ。
 目をパチクリとしながら手元を見てみると、山吹色をしたバット状の光の棒が握られ、その先の部分は見事にケティの後頭部を強打していた。
 強烈な一撃に白目向きかけて、手がパソコンから離れて中空に浮かんでいる所を見ると結構やばいかも知れない。

『なんか武器が欲しそうだったから、生成してみましたよー』
「せ、生成してみたってアンタ!?だ、大丈夫なの!?」

 確かに一撃強烈なものを入れたいと思ったが、なにも凶器まで持ち出したいとは思っていない。
 予想外の事態に慌てふためくアリサ。
 数秒後、ようやく向こうの世界から戻ってきたケティが頭を擦りながらトゥーを睨みつける。

「え、えっと…大丈夫なの?」
「トゥー、幾らなんでも非殺傷設定くらいはやっておいてくれないか?」
『え?』
「これで魔力素質があったら、冗談じゃなく死んでたよ」
「ちょっとあんた!あたしを殺人犯にするつもり!?」
『あ、あはははは。間違いは誰にでもありますよ!大事なのはそこから進歩するかと言う事です!!むしろ突っ込み役はコレくらいが丁度良いんですよ?』
「開き直るってんじゃないわよ!!」
「良いなぁアリサちゃん。もう魔法が使えて」
「こんな形で使えても嬉しくないわよ!!」

「撲殺天使アリサちゃん誕生ね♪」
「新しい獲物を見つけたような目をするなシャマル」
「ってかさ、あたし達もあんなので代わりやられてんのか?」

 ヴィータノ一言で沈黙が生まれ、言葉を紡ぎ出せなくなる空気が形成される。

「深く突っ込む人がいないから問題ないよ」
「大有りでしょ!!」
「何はともあれ、もうすぐ仕事場につくから後戻りは出来ないよ」
「詐欺ぃ−!!詐欺よこれ!!」
「まぁまぁ、次は八神家の様子を写すからそれで気を紛らわしてて」
「紛れないわよ!」
「それよりまともなんだろうな!?」

 ヴォルケンズの問いに急に黙り込むケティ。

答えろぉおおおーーーーーーーーーーーーーーー!!!!


 深々と振る雪の中、絶叫を木霊しながらソリは駆けて行く。


はい、今回アリサの方針役回りは突っ込み担当。
切って殴って弄って、蹴って焦らして吊るします。
いや、冗談ですが、確認の為アリサのデバイスは接近戦用。
すずかの方は砲撃戦用デバイスですからね皆様。
撲殺主体じゃないのは確かですので悪しからず。

次回は八神家の影武者ヴォルケンズバージョンか?
予定は未定。それ以前にわらせえられるかやはり微妙!!
それ以前にザフィーラの出番がヤヴァイ終orz







リリカル・クリスマス☆


メカアリサの容姿に納得できないアリサは斬殺天使と化した。
斬滅天使〜☆滅殺斬殺アリサちゃん♪


「勝手な歌を作るなー!!」
「アリサちゃんどうしたの?」
「電波でも受信したんじゃないの」
「だから勝手な事言わないでよね!」

 相変わらずキャラとして使いやすいノリツッコミを連発するアリサ。
 やはり彼女はツッコミ担当が栄えると思う。



「ところで、どうしてシグナムさん達まで落ち込んでるのよ」
八神家のVTR流したらこうなった

 メカアリサ達の様子を見た後、ヴォルケンズの様子もモニターしたら予想通りの展開で彼女達は思いっきり落ち込んでいた。
 内容はやっぱり全員メカっぽい外見で、彼女達の内心は納得できないけどどうしようもないという無力感に苛まれる。

「なんであたしがメ○進藤なんだよ
「ヴィータお姉ちゃんのドリルが付いてて羨ましいです〜」
「お前なんてまだ良い方だ…私なんて○ジンガーZのパートナーロボみたいな感じだったぞ
「シグナム…アイボよりマシであろう
「それより何で私の身代わりだけ明らかにメカ○ジラ(ミレニアムバージョン)なんですか!!?
 メカはメカでも人型じゃないって、有り得ないでしょ!?」

 一部除いて不満を洩らす一同。
 後半の二人は作るのが面倒くさくなったと言う理由で、廃品回収したものをそのまま使った事は一応伏せておく。
 多分話したら暴動が起きるだろうと簡単に予測できるからだ。
 妙な事はするが、自身を窮地に立たせる事は極力避けるケティ・H・レッサイは中々のやり手であった。


「そんな事より、もうすぐ目的地だよ」
「そんな事ってあんたね」
「どの辺りなのかな?」
『コノママ真ッ直グ前ヲ見タ所デゴザルヨ』

 カスクの言葉に全員が前を向くが何も見当たらない。
 夜の闇の所為でどこからが地面なのかさえ分からない状態だった。

「何も無いじゃない」
「こっちの接近には気付いてるから、そろそろ分かると思うよ」
「あ、アリサちゃん。あれ」
「なによ?」

 すずかに促されて前を見ると、地面に小さな明かりが一つ一つ灯っていき、滑走路の様に長い道が浮かび上がる。
 滑走路の全体が浮かび終わると、次にその両脇にある木々にも明かりが灯り、長い距離に光点が灯って光の川の様に見えた。

「お〜」
「キレイですー☆」
「ステキな滑走路ね。クリスマスって感じで良いと思わないシグナム?」
「随分と手の込んだ招待だな」
「着陸するよ」

 用意された道の真ん中へ着陸できるよう移動し、徐々に高度を下げていく。
 幾らか地面に迫ったところでカスクはバックパックとソリの連結を外し、ソリの上空を迂回しながら人型へと変形する。
 ソリの後ろに回り込むとその車体を掴み、地面の接触に備えて踏ん張るような姿勢を取る。
 やがてソリが地面に着陸し、ソリとカスクの足元が強力な摩擦で火花と煙を撒き散らし滑っていく。
 そのままの状態でカスクは両肩に移動したウイングの役割をする大剣を、地面の方向へ展開して刃を付き立てて更に静止をかける。

「なんか燃えてねーか?」
「だ、大丈夫なの!?熱くないのあんた?」
『ヘーキヘーキー』
「いつも射出口で擦ってるから慣れてるんだよ」
「そうゆう問題なのか?」
「キャンプファイヤーでも出来そうな勢いですけど」

 炎の線を引きながらようやく停止するソリ。
 思ったよりスピードを出していた事にアリサとすずかは少し驚いていた。

「結構スピード出てたのね」
「全然分からなかった」
「高速移動の風圧とかも幾らかバリアジャケットが防いでくれるからね。慣れればそんなでもないよ」

 すずか達に説明するとケティはソリから降りて周囲を見渡す。
 アリサやすずかにヴォルケンリッターは勝手が分からないので、指示が出るまで座ったまま待つことにした。
 少しすると、暗闇の中から小さな明かりを持った人々が滑走路内のソリへ近づいてくる。
 その中から一人の少年が飛び出し、大きく手を振りながら駆け寄ってきた。

「おーい!ケティ!!」
「ロップ!久しぶり。元気だったかい?」
「何時もどおりさ。ミーシャも君達に会いたがってた」

 お互いに握手を交わして再開を分かち合う。
 それを邪魔しないように、他の人々も少し間を取って次々集まってくる。

「いやー、良くきてくれましたセルフの皆さん」
「毎年ほんとうに有り難うございます」

 集まってくる人々は口々にお礼の言葉を言い、誰もがケティ達の到着を心待ちにしていた事が読み取れた。

「随分と気に入られてるのね」
「この人達とはどんな関係なんですか?」
「管理局にいた時の任務で仲良くなった人たち。みんな良い人達だよ」

 すずかの疑問にフィルが微笑みながら返す。
 その表情から彼もここの住民に合うのを楽しみにしていたのだと分かった。
 そして、振り返ってフィルの他のセルフメンバーが乗っていない事に気付く。

「あれ?他の人達はどうしたんですか?」
『あの人達なら…ちょっと準備で』
「なんの準備よ?」
『それは見てからのお楽しみってヤツですよ!アリサちゃん♪』

 明確な答えを貰わないままに、ケティは何時の間にかマイクを片手に司会を始めた

「よーし、今年も楽しくやろうか!」
「「「おー!!」」」
「今年のクリスマス不景気なんて吹っ飛ばせ祭り開催だーー!!」
「「「イエーーーーーーー!!!」」」
「更に皆さんに良いお知らせがあります!何と今年は数人の美少女がアルバイトでこの祭りを手伝ってくれる事になりましたー!!」
「「「「ウィイイイイイエーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーース!!!」」」」」

「どんなノリなのよ」
「私はみんな楽しそうで良いと思うな」
『そう、ですか?』
『うんうん。すずかさんは解ってますねー!こうゆうのは楽しんだもの勝ちなんですよ!!だからアリサちゃんもレッツフィーバー!脱いで踊ってハッちゃけましょーう!!!』
「イヤよそんなの!!っていうか、なんですずかはさん付けなのよ!?」

 祭りと聞くと人は何故人は猛々しくなるのだろうか。
 そんな事を聞いてみたくなるくらい、その場は異様な盛り上がりを見せていた。


「今年もプレゼント貰いたいかー!!」
「「「「おーーー!!」」」」
「女の子から貰いたいかー?」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」
「みんな正直だね」
「「「おー」」」
「じゃぁ今年のプレゼントターイム!」
そう簡単にはいかないぞう!!
「だれだ!?」

「え、なによ行き成り?」
「アリサちゃん、あそこ」

 すずかが指差した先には、巨大ライトを背にライトアップされた何者彼のシルエット。
 その場にいる全員がその影に顔を向ける。

「キミは一体何者だ?」

 マイクを片手に指を影に向って突き出すケティ。
 妙に芝居がかってるのはご愛嬌。

「キミは一体何者だって?」
「そうだ!!」
「誰か後ろにいる?」

 影が振り向く仕草をしながら聞くと、ライトの隅に別の人影が映り手を振って否定しているのが見えた。
 そのバラエティ番組的なやり取りに脱力するのはアリサやシグナムといったツッコミ役。

「お前の事だ!」
「あんたでしょうが!」

 それでも律儀に突っ込みを入れる彼女達。
 影の方は片手を挙げて感謝を表すと、その後ろから二つの人影が前に出る。
 二人が元からいた影の左右に並ぶと、その足元に設置されていたライトが一斉に点火してその姿を映し出す。
 そして現れる巨大なハサミを施した着ぐるみを着たスヴェルと悪役女幹部っぽい服を着たシーダとフー。

「何やってんのよあんた達」
『ソンナアナタニモ仕事デゴザルヨ』

 ジト眼で呟くアリサにカスクが一枚の紙切れを手渡す。

「あたしに?」
『ト、言ウヨリ全員デゴザル』

 彼等が話してる間にも、着ぐるみスヴェル達の前口上が始まる。

「クリスマスプレゼントはこのバルタン男達が頂いていく」
「語尾忘れてるよスヴェル君」
「マジで言うのか?」
「やんないとダメだと思うよスヴェルさん」

 マジかよと頭を抱える(ハサミに邪魔されてあまりそう見えない)スヴェル。
 まだ羞恥心が勝る彼に対して女性二人組みは結構楽しんでそうだった。

「やっぱり今年も現れたのか〜クリスマス怪人」
「今年はバイトの娘が入ったお蔭で、女幹部も連れてこられたバルタン」
「よーし、そっちがその気ならこっちもヒーローを呼ぼうか」

 棒読みで語るケティはソリの方へと目を向ける。
 丁度タイミングよく、アリサ達も紙切れの内容を読破したようだ。

「あ、そろそろ出番みたいだよアリサちゃん」
「な、ちょっと待ちなさいよ!」
「ほ、本当にこんなことをやれと言うのか!?」
「シグナム、こうゆうのは楽しんでやらないと損よ?」
「あたし!あたしレッドな!!」
「ヴィータお姉ちゃんずるいです〜。リインがレッド〜!」

 なにやら騒ぎ出す女性陣を怪訝に思いながら、ザフィーラが目の前にハラリと落ちてきた紙切れの内容を見る。
 それには”戦隊ヒーローショーをやってからプレゼントを渡すので、ヒーロー役をお願いします。ポーズ、前口上各自自由に行なって下さい”
 と箇条書きで描かれていた。
 更に箸の方に細く小さい文字で”Ps:物語は考えてないので、全員アドリブで好き勝手にやって良いから”とも書かれている。

「みなさーん。僕の後に続いてヒーローを呼んでくださいねー」

「えっちょっと待ってよ!」
「アリサちゃん。覚悟を決めよう?」
「し、しかし一体何をどうすれば良いのだ!?」
「仕方ないわねシグナム。私が色々教えてあげるわ♪」
「あたしがレッド!」
「リイン〜!」

「さぁ!それでは地球より来てくれた美少女ヒーロー達!みなさん一緒に!」

「アリサちゃん!」
「シグナム!」
「う〜〜!!解ったわよ!やれば良いんでしょやれば!!」
「っく…これも恩義を返す為だ…仕方あるまい!!」
「あたしがレッド!」
「リインがレッドー!」
「俺は出なくても良いのか?」
『マスコットハ必要ダト思ウナリガ』


「助けてマジレンジ――
「「違うでしょ(だろう)ーが!!!」」

スパーーーーーーーーーーーーーン

 二人の剣士の爽快なツッコミがケティに見舞われる。
 何故剣士と括ったかと言うと、二人の手には鋼鉄製のハリセンが握れられてたからだ。
 決して剣から人型ロボになるズバーンな方ではない。

「ぐふぅ…まだ服装の追加武装の説明をしていないのに……こうも簡単に使いこなすとは…」
「追加武装ってあんたね」
「ただ思い切り振りかぶっただけで発動したぞ」

「「「「うぉおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」

 二人が登場した事で観客のテンションが一気に上がる。
 異様な盛り上がりを見せる人々に驚き後ずさる二人。

「な、なによこの盛り上がりは?」
「なにやら、妙な視線を感じるのだが」
「そりゃあね」

 原因が解っていながらもそれを教えることはしない。
 気付いたらしり込みするだろうし、自分で気付いた方が説明しなくて楽だと考えている鬼畜なケティだった。

「さーみんなの危機にレッドとイエローが来てくれえたよー」
「全員赤いサンタ服でしょ」
「どう括るつもりだ」
髪の色イエローとややピンク色交じりレッド

 サラッとした答えに二人は顔を伏せて黙り込む。
 ツッコミが来るかと思っていたが、予想とは違う反応にケティは首を傾げる。
 そして思った。あ、これ拙いなっと。

「レヴァンティン」
『ja』
「トゥー、あんたの力、ちょっと貸してくれないかしら?」
『あ、乗り気ですねー?じゃ、ちょっと期待に応えて頑張っちゃいますよー!!』

 言い終わると、シグナムはサンタ服の上に普段の騎士甲冑が生成されるが、妙に混じってしまい先程とは違った色気を出していた。
 アリサの方は、サンタ服はそのままに右肩から腕全体にかけて中世の騎士が纏う様な鎧が生成され、胸の部分にもプロテクターが装着される。
 携帯型デバイスが形を変えて杖となり、そのパーツの一部がせり下がって光を発し細身の刀身を形成する。

「これって…もしかしてストライク?」
『追加ブースターギアが装備されてないから、どっちかと言うとファイズですねぇー。本家みたいに四段階で強さ調整できますよー♪』
「ふーん…じゃぁ、どれがお好みかしら?」
「リクエストがあれば受け付けてやるが?」
「ミディアムで頼むよ」

 剣をシグナムは手に提げて、アリアは突きつけてケティを見据える。
 当の本人はそれはもう良い笑顔でリクエストを頼む。
 ツッコミ担当の二人はこれまでの羞恥の怒りも含めて、この場で制裁ついでに発散するつもりのようだ。

「覚悟は出来たという事か…ならば望み通りにしてくれよう」
「トゥー、あたしはどんな攻撃魔法が使えるの?」
『最初の方はあたしに任せて下さいよ!アリサちゃんに合ったものをちゃーんと選んで使いますから!』
「ふーん。ま、良いわ。とにかく今は何でも良いから思いっきり吹き飛ばせるのを頼むわ。ただしちゃんと死なないようにしてよね」
『りょーかーい!!』
「レヴァンティン」
『ja』

 二人がゆらりと武器を上段に構え不適に笑みを作って立っているケティに振り下ろす。
 山吹色の魔力の衝撃波と炎の衝撃波が重なり、地面を削りながら彼目掛けて突き進む。

「じゃあここは任せたよ」

 手を小さく振りながらそう告げると、ケティの姿はその場から掻き消える。
 一瞬送れて衝撃波が彼のいた場所を薙ぎ払う。

「ちっ!」
「逃げたわね」
『さすが元マスター!やる事がえげつないですねぇ!!でもそこがまたあの人の魅力とも言える様な気もするんですけどねぇー』

 二人が逃げられた事に悔しさを感じていると、周りの人だかりが近くの者と話しを始めて更なる活気を見せていた。

「今年は凄いなぁ」
「毎年よく別のパターンを考えてくるものだな」
「今回の魔法平和利用編も面白いね」
「ねーねー、次はどんなのが出るのかなぁ?」


 多くの人達の、中には小さな子供達が羨望の眼差しで二人を見ている。
 そこにはこれからどんな事が始まるのか、魅惑の世界を紹介される楽しみにしている期待が込められていた。
 その眼差しに気圧される様に、アリサとシグナムはこれからどうしようか迷う。
 この期待を無下に切り捨てるのも気が引けるが、今一踏み込むことが戸惑われる。
 そんな彼女達を後押しするかのように、スヴェル達がアドリブオンリーの物語を開始する。

「よくも首領をやってくれたな!」
「あいつ首領だったの!?」
「今度は今週の怪人が相手だ髪の色レッド&イエロー!」
「その言い方はやめろ!!」
「シグナム!レッドの名前あたしによこせよ!!」
「欲しければくれてやるわそんなものぉ!!」
「リインもレッドやりたいですー!」


「スヴェル君、語尾忘れてるよ」
「あ、いけね。毎年裏方ばっかりだったからどうも忘れるな」
「今年はわたしも怪人側でがんばるよ!」


「アリサちゃんも楽しんできたみたいだね」
「楽しんでないわよ…もー!こうなったらヤケよ!!やるだけやってやろーじゃないの!!!」
「お祭り大好きだもんね」


「みなさーん!今日は私の歌を聞きに来てくれてありがとー!!」
「「「おおーーーーーーーーー!!!」」」
「シャマル!?いつの間にステージとマイクを!!?」
「私、一度で良いからアイドルみたいに歌ってみたかったの」
「そうではなくて、何時の間にそんな物を用意したのだ!!」
「ケティさん達と最初の打ち合わせの時に頼んでおいたの」

 手を頬に当てながら、恥ずかしそうに語るシャマル。
 これはクリスマスパーティーというより、ただのバカ騒ぎのお祭り会場と化していた。
 サンタ服の少女達が飛んで舞い、爆発やら火花が飛び散り、歌って踊りライトが走る。
 アイドルコンサート真っ青な歓声が轟き、誰もが笑顔で騒ぎを楽しんでいた。


「ふぅ、やれやれだな」
『寂シソウデゴザルナ』
「カスクか。お前はアレに混ざらないのか?」
『最後ノロボットバトルノオチマデ、出番ハ無シデゴザルヨザフィーラ』
「そうか」
『ザフィーラハ出ナクテ良イナリカ』
「ああいったものは俺には合わん」
『一ツダケ注意シトクデゴザルヨ』
「なんだ?」
『出番ハ取レル時ニトッテオカナイト…存在ガ無クナルト心得ヨ』
「………」
『………』
「…心得た」

 四足歩行コンビは真剣な表情をしながら語り合う。
 ただ、その姿が待機用の子犬フォームと真ん丸獣フォームである事と内容が微妙な話しである事。
 傍から見ると小さな動物がフンフンと一定の距離でじゃれ合っている用にしか見えなかった。




その宴の行なわれている場所から遠く離れた荒野というべき場所。


「今年はどうかな?」

 誰もいない少量の草しか生えない広い荒野に、何時の間にかパーティーを抜け出してフィルは一人で立っていた。
 目を閉じ両手を広げ、夜風を一身に受けて深呼吸を行なう。
 そんな彼の数メートル右隣に転移用魔方陣が出現し、光の中からケティが現れる

「やぁ、どうだい様子は?」
「今はまだ…もう少し後に回しても良かったかな?」
「いや、予定時間はまだ後だからね……多分僕等が早く着すぎただけだよ」

 苦笑しながらポケットから缶を取り出し、フィルに放り投げる。
 それを軽く腕を振って空中でキャッチして蓋を開ける。
 空けると湯気が立ち上り、少し様子を見て痛くなる衝動に駆られながらもゆっくりと口に運ぶ。
 中身は砂糖入りコーヒーのボスだった。
 立ったままというのも落ち着かなくなってきたので、二人とも地面になにも敷かずに座る。
 フィルがふと横を見ると、ケティは良く解らない銘柄の飲み物を飲んでいた。
 パックのもので、ケティの手に邪魔されて一番上の方のどろりと言う文字とゲルの文字しか見れない。


 暫くして二人がそれぞれの飲み物を飲み終えると、遥か遠くの山間が見える方角から飛行してくる無数の影が見えてきた。

「来たみたいだね」
「時間通り…嬉しいような悲しいような」

 呟きながら二人は立ち上がり、手に持った中身の無い缶とパックを放り投げる。
 そして、フィルが小さく呟き魔力のスフィアを発生、打ち出しパックと缶を貫く。
 一度だけでは止めずに、一つの魔力球を連続して二つの物体に当て続ける。
 散りじりになっていく物体のカスが残らなくなるまで魔力球を当て続け、十回足らずで二つの物体を消滅させた。

「遊びは良いかい?」

 フィルは頷くと金銀二つの十字のある架首飾りを外し、デバイスを機動させてバリアジャケットを生成する。
 ケティも自作したデバイス、アリサ達のものと同系の携帯型と、それを特殊なツールギアに収める。

『Standby Ready……Complet』

 デバイスから電子音で合成された男子の声が発せられ、太目の杖型デバイスへと変形。
 バリアジャケットも胴体や肩や間接部に銀色の騎士甲冑が生成され、間接部の甲冑に繋がるように白色のラインが引かれていく。

「さあ、行こうか」
「うん行こう。みんなに楽しんでもらう為にも」

 二人は良い終えると、夜闇に溶け込むように空へと飛翔していった。






リリカル・クリスマス☆


「はーい皆さーん、順番ですよー」
「沢山ありますから押さないで下さいね」

 ショータイムが終り、一段落着いたところで人々にプレゼントを配り始める。
 子供好きの人ならば集まってくる少年少女達を微笑ましく思うだろうが、逆の場合何ともしがたい気分になるだろう。
 嫌いという訳ではないが、アリサとシグナムがそれにあたる。

「ちょーだいちょーだい!」
「おねえちゃんこれいーい?」

「ま、まて。それは〜そっちの女の子のものだろう?ああ!?こら!横から取るな!」
「ほーら!沢山あるんだから取り合うんじゃないの!!」

「ふふふ、シグナムもすっかり馴染んだわね」
「アリサちゃんも楽しそう」

 微笑ましいものを見ているように話しをしてるすずかとシャマルの所も沢山の子供達で囲まれていた。
 ただ、彼女達は性格からして慣れているのか、大して困惑する事態には陥っていなかった。
 スヴェル達は知人達と話しをして距離を置いているようだ。
 そんな喧騒の中、人々の合間からフィルとケティがゆっくりと歩いてくる。

「やぁみんな、お疲れ様」
「あんた達いったいどこに行ってたのよ?」
「野暮用だよ」
「野暮用って…あんた達がいない間も大変だったんだからね!」

「まぁまぁ」
「それはそうと、そろそろ別の次元へ向うよ」

 フィルがいきり立つアリサを宥めながらケティが指示する。
 もうかと思うが、積んでいる荷物の量から一つ一つ時間を取っていては全て届ける事は出来ないだろうとも思う。
 それと同時に、また先程のようなヒーローショーを何回もやらなければならないのかとアリサとシグナムは溜息を吐く。
 シャマルやすずか、ヴィータにリインは次の世界ではどんなことをやろうかと、どこか心待ちにしているような雰囲気が見て取れた。

「さて、じゃぁ僕等はもう行くよロップ」
「ああ、毎年すまない。ほら、お礼代わりに例年通りの品物だ」
「ありがとう」

 ロップが差し出したのは抱き抱える必要がある位の大きさをした箱。
 それを受け取り、ソリへと乗せるケティ。

「なー、あれって何が入ってんだ?」
「んーと……秘密かな?」
「なんだよ、別に教えても良いだろ」
「先に言うと楽しみがなくなっちゃうよ」

 ヴィータに苦笑しながら答えるフィル。
 まだ微妙に納得していないが、今の答えから後で自分達にも関係する類のものだとヴィータは感じ取った。

「妙なものじゃねーよな?」
「うん。みんな喜ぶと思うよ」

 微笑みながら答えるフィルの言葉をヴィータは信用する事にした。
 ケティという男は普段の生活では微妙に信用し難い感があるが、フィルは日常的にも信用の置ける人物だと短い付き合いだがそう思っている。
 まあ、ケティも真面目な時は信用に足る人物なのだが、最近はマッドな傾向が強く出て過ぎている為に信用は下落気味だ。
 そうこう思っているうちに、お別れの会と挨拶らしきものが終り全員がソリに乗り込む。

「よ−し、次の世界へ行くよ?」
「次はどんな世界なんですかぁ?」
「簡単に言えばアニマル王国かな」
「アニマル王国?」

 おかしな言い回しをするケティにアリサが首を傾げながら尋ねる。
 言葉が終わると同時に、カスクがソリを牽引しながら空へと駆けて行く。

「その名の通り獣人の住む世界の事だよ。簡単に言うなら使い魔みたいに何かしら生やしてる人たちの世界」
「何かしらって…なんだか妖しい感じね」
「多分可愛い人達が一杯いると思うよ」
「まぁ、実物を見るのが一番だよ」


 そして彼等は別の次元へ移動し、その世界の生活を見る為に寄り道をしていった。
 この世界は使い魔の様に獣が人型へと進化した生態で、住む人々は魔力は無いが素晴らしい身体能力を有している。
 ついでにこの世界には変わった掟がある。
 アリサ達はそれをプレゼントを配る村に着いた時に知る事になる。

「はいみんな。コレつけて」
「なによコレ?」
「これは…ネコミミですよね?」
「ウサギとかパンダのもあるぞ」
「面白そうですけど、どうしてコレを付けないといけないんですか?」

 シャマルの疑問は女性陣全ての疑問だった。
 疑惑の視線を飄々と受け流しつつ、ケティは平然と言い放つ。

それがこの星の掟だからだよ
「どんな掟だよ」

 今回は珍しくヴィータが突っ込みを入れた。
 だが、掟と言うのは本当なのか、ケティだけでなくセルフのメンバー全員が動物耳をつけている。

『こんな時こそ七変化ですね!!』
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?あたしはまだやるとは言ってないわよ!!」
「フォーちゃん、耳だけ付けるって事は出来るのかな?」
『え?えっと…多分……ジャケット生成の技術を応用すれば…』
「耳だけって言うのも味気ないわね…ここはやっぱり服装も代えるベキよねシグナム!」
「なんだその手に持っている水着のようなものは!?着ない!絶対着ないぞ!!着てたまるものか!!!」

 散々抵抗したシグナムだったが、シャマルとすずかに説得され、同じようなツッコミ担当のアリサが諦めた事でアニマルコスプレをする羽目になった。
 各々の服装紹介として、まずは猫グローブ着用したネコミミメイドサンタすずか
 
「にゃんにゃん♪」

 サンタ帽に袴姿というアンチな組み合わせのキツネミミ巫女アリサ

「な、なんでこんな姿なのよぅ」
『顔を赤くして言っても可愛さが上がるだけですよー♪』

 白く長い耳がピョコンと立って、ウサギの形をしたグローブ両手につけて、モコモコ尻尾のついた白を基調としたサンタ服。
 お子様コンビはお遊戯会宜しくなウサギの格好ではしゃいでいる。

「なんかウサギの耳の方がムズムズする」
「ピョコピョコ動いて面白いです〜♪」

 赤のレオタードに小さな黒耳、首に棘付き首輪を下げて猫グローブを装着した猫シグナム

「いっそ…いっそ殺して」

 そして最後に片手に黒い鞭を撓らせ、黒いボンテージを纏い、その上に漆黒のマントを身につけ、頭には蝙蝠の羽のような髪飾り。 女王様もといブラックシャマルさん誕生だった

「これは流石に恥ずかしいけど…でもっ逆にそれがカ・イ・カ・ン♪になりそう」

 鞭を片手に持ちつつ頬を赤らめてもチョット怖いぞシャマルさん!
 士気を上げたり下げたりしながらも、この世界でもプレゼント配達を行なう一同。
 顔を赤くし、半泣きになりながらも懸命にプレゼントを配るシグナムの姿にシャマルは妙なトキメキを覚えたというのはまた別の話しだ。



 さて、女性陣が盛り上がっている頃。
 ザフィーラはフィルとケティに連れられて、気高く森の茂る山へと連れて来られていた。

「この先に何があるというのだ?」
「クリスマス用に使う極上の七面鳥がこの先にいるんだよ」
「結構凄い珍味なんですよ。一度食べれば次の年を待たずに死んでも良いって評判があるくらい」

 妖しい発言がありながらも、それは合えて突っ込まない。
 だが、ザフィーラはそれとは別に気になる事があった。

「七面鳥くらい一人でも取ってこれるだろう?」
「ここの七面鳥は凄いんだよ」
「あれを倒すには、かなりの猛者じゃないと無理ですよ」
「ほう」

 ザフィーラの頭の中では鳥に逃げられて、慌てふためいているケティ達の姿が思い浮かぶ。
 やはりまだ若いなと思いつつ、案内されるがままケティ達の後を付いていく。
 そして、目的の七面鳥が現れた!


また今年も現れよったか人間共!!今年もこの鳥人☆キング七面鳥を狩れると思うなぁあああああああああ!!!!!

「…レッサイ…エクスペンドよ」

 人型形態になったザフィーラが正面を見上げながら隣の二人に尋ねる。

「なんですか」
「あれはなんだ?」
「七面鳥」
「確かに七つの顔があるが…あれは鳥というより怪獣であろう?」

 見上げる彼等の視線の先には、七つの首を持ち、それぞれの口から猛々しい雄叫びを挙げる異形の鳥。
 その巨体は見上げなければ全貌が見れず、羽を広げれば近くの木々も薙ぎ倒せるのではないかとさえ思えてくる。
 むしろ、八岐大蛇と言い括った方が解りやすいかも知れない。
 顔や身体にある無数の傷は数々の修羅場を乗り越えた証。
 決してヤクザッぽさを表す為のメイクではない。

年の最後を飾る繰須磨守(クリスマス)!!その聖戦をより美しくするための豪華なディナー…それに栄える食材を求めて我に挑みかかってくる猛者は数いれど、我が肉を手に入れられるは真の強者のみ!!さあ!己が肉体の全てを賭けて掛かって来るが良い!!!!
「七面鳥のトシ子・ラマレーヌさん(♀)25歳。七つの首から繰り出される連続突きとドリル嘴はHPを激しく疲労させるから気をつけるんだ。それと巨大な翼からくる空手チョップは岩山をも砕く!!」
「メスだったのか?」
「昨年は必殺のオンドゥルシュレッダーに負けたけど、今年は違うよ!と、言うわけで格闘家、八神ザフィーラさん頼みます」
「まて、お前達でもコイツには勝てなかったのか?」
「これは男と女の身体を賭けた真剣勝負。だから武器や手助けは一切無し。肉体と肉体をぶつけ合うデスマッチなんだよ」

 強化魔法とかはありだけど、と付け加えたケティの説明に言葉が出ないザフィーラ。
 そんな彼に視線を集める七面鳥(?)。

お主中々エエからだしとるやないか
「なに?」
もしお前が負けたら、その体毛の全てを我が嘴で毛繕いさせて貰おうか!!!
「じゃぁこっちは例年通りジュウシイな肉と卵を」
うむ
「まて!俺の断りも無く勝手に話を進めるな!!」
「自信が無いなら別に良いよ。でもさ、見掛けに怯んで逃げる盾は盾とは言わないんじゃないかな?」

 困ったように苦笑しながら辛辣な言葉を投げつけるケティ。
 そこまで言われてはザフィーラも黙ってられなかった。

「盾の守護獣ザフィーラ!!たかが鳥如きに遅れを取る事などありはせん!!」
「よし、ザフィーラ!電光石火だ!!」
「ケティ、それは多分言っちゃあいけないよ?」

 こうして犬と七面鳥という世にも奇妙な動物最強バトルが行なわれる。
 体長差はアフリカゾウとシーズー犬くらいの差が開きながらも、ザフィーラは互角の勝負を見せた。
 独立した志向を持つ七つの首の攻撃を掻い潜り、突く攻撃を受けながらも体術で防ぎ弾き吹き飛ばす。

ぬぅおおおおおおおおお!!!盾の守護獣を舐めるなぁああああああああああああああああ!!!!
ケエエエエエエエエエエ!!!我を只の七面鳥と思うでないぞぉおおおおおおおおおおおおおお!!!
安心しろ!それは絶対にありえん!!!

 激しく繰り広げられるバトルを遠くで胡坐をかきながら観戦するケティとフィル。
 持参したお菓子を摘みながら、ハンディカムビデオ録画しながらマッタリと休憩する。

「頑張ってるねーザフィーラさん」
「ま、勝っても負けても、良い勝負さえすれば卵は貰えるから別に構わないんだけどね」

 容赦ない言葉を洩らしながら、ポップコーンを摘むケティ。
 フィルは必死に戦っているザフィーラに心の中で手を合わせて謝りながら無事を祈った。

喰らえい!!西斗水鳥拳!!!!ホォアタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!!!
燃え滾るハート!震えるほどにヒート!!鋼の波紋疾走ぉおおおおおおおおおおおおおおおああ!!!
UUURIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIIII!!!!!!
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァアアア!!!!!

 迸る汗。
 滾る熱。
 蒸す空気。
 暑苦しい場。
 交差する拳と足。
 ぶつかり合う力と技。






 そこはもう既にクリスマスなんて静かな楽しみなんて無い。

 あるのは漢の熱き心!!魂の叫び!!!奥底から漲る生命の脈動!!!!
 熱き夕日をバックに向え、交わる拳と嘴の衝突する火花が男達の言葉を表している。


 ああ、悲しき男達の冬空よ。
 浮世は恋人達がささやかな一時を過ごす特別なこの時期に、なぜこの場はこんなにも暑苦しいのだろう。
 
 それが悲しき男節。
 この日、彼等がいる山を眺め見た人々は、何故か涙がとめどなく溢れ出て止まらなかったという。




 ザフィーラが暑苦しく見苦しい戦いを繰り広げている地点から、少し先に進んだ地点の森。
 黒い影が木々を飛び交い、それを追う様に光の線が煌めき走る。

 一線。

 光の線が影を捉えると、その影は重力に従い地面へ倒れる。
 そこへ光の線がある場所に、幾つもの閃光が突き刺さり爆発を起こす。


「やったか?」


 夜の闇に紛れて閃光を放った者の一人が呟く。

「いや、まだだな」

 呟いた影の真後ろでデバイスを突きつけ、術式を開放するスヴェル。
 光が大きく弾け、身を引き裂かんばかりの強烈な衝撃が影に見舞われる。
 呻き声を上げながら影は遠くの木にぶつかる事でようやく止まり地面へ崩れ落ちた。
 それを見向きもせずに、スヴェルは周囲に潜み機を伺っている者達に静かに警告する。

「これ以上の進行は管理局として見ても不当なものだ…それでも退くつもりが無いって言うなら容赦なしで全員ブッ飛ばすけど、どうする?」

 挑発とも取れる物言いに影達の一部の者は騒ぎ立つが、上に立つ者であろう人物に抑えられているのが気配で分かった。
 暫くの間膠着状態が続いたが、やがて諦めたのかその場から影達が退いて行きその場から敵意が無くなり、本来の自然豊かな空気が戻る。

「ふぅ、こう立て続けに起こると流石に面倒臭い」

 デバイスを肩に担ぐようにしながら溜息を吐く。
 不意に、翼が羽ばたく音が聞こえて空を見上げると、フーが背中の翼を羽ばたかせて近づいてきていた。

「お疲れさま、スヴェル君」
「フーか、そっちはもう終わったのか?」
「うん。シグナムさん達がいてくれてるお蔭で今年は防衛の方に集中できるね」
「そうだな。あの人達は巻き込まないように最後まで気を抜かずに行こう」

 満面の笑顔で話すフーに、つられて微笑みながらスヴェルも答える。
 そして、飛行魔法で自身の身体をフワリと空中に浮かべさせて夜空へ舞い上がる。
 月夜に映る二人の姿は、天使の手を取る魔法使い。そんな幻想的な作品を作り出していた。






リリカル・クリスマス☆


 空も白み始めた時刻。
 山の頂上で一つの巨体と、一人の人影が立っていた
 互いの身体は傷つきボロボロ満身創痍。
 ゼエゼエと荒い息を吐きながら、両者は互いを睨みつけている。

「ゼェ…ハァ…ハァ」
ふ……若者よ………やるではないか

 七面鳥がニヤリと笑みを作りながら呟くと、ザフィーラも不適に笑って返す。

「…お前は既に…散っている」
な…ら…び……うわらばぁ!!!

 七つの口から大量に吐血しながら七面鳥は大きく仰け反り大の字…というより扇状に倒れこんだ。
 激しく暑苦しい戦いはザフィーラの勝利で終わった。

「かった…勝ったぞ!俺は守護獣の名に恥じぬ戦いを制して見せたぞ!!」

 喜び勇んで振り返るザフィーラ。
 この勝利の瞬間を分かち合ってくれるだろうフィルとケティの姿を探す。
 だが、振り返った彼が見た光景はというと。

「クカー」
「ZZZ…」

 二人はハンモックに揺られながらぐっすり眠っていた。
 夕食は鍋をしていたのか、彼等の下にはすき焼きセットが片付けられもせずに散乱していた。
 それを見た時、少しの間を置いてザフィーラはガクリと地面に突っ伏した。
 数分後、立ち直ったザフィーラが二人を起こすとほぼ同じくらいに七面鳥も目を覚ます。



ふぅ、彼等だけでなく新人の犬にも負けてしまうとは…我も老いたのう
「犬ではなく狼なのだが」
「それはそうと、約束のものを貰うよ」
うむ、良いだろう

 そう言うと七面鳥は六つの首で、自分に生える内の一つの首に思い切り噛み付いた。

「な!?」
ふんんぬぅううううううううううううううううううう!!!!

 血が流れ落ち、目を血走らせながら首を食い千切ろうとする七面鳥。
 トチ狂ったのかと思うような、恐ろしい光景だが彼女はいたって冷静な思考でこれを行なっているのだ。
 ブチブチと嫌な音を立てながら首の一つが千切れていく。

「な、何をやっているのだ!?」
「ああ、大丈夫ほぼ毎年の事だから
毎年!?
「うん。クリスマスに使う七面鳥は彼女から貰ってるんだ」
文字通りにね

ぬぅうううぐううううううううううぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!

ブチブチブチブチ…グブチャァアアアアアアアア!!!

 最後に一際大きく雄叫びの如く気合を込めて首を引きちぎる七面鳥。
 途轍もなく嫌な音と血飛沫が大雨の様に降り注ぎ、辺り一面を真っ赤に染めていく。
 恐らく初めて見た人なら一生のトラウマモンになる事確実な惨状だろうことは間違いない。
 ケティ達はすでに折り畳み傘を開いて血塗れになる事はなかったが、ザフィーラは背が高く放心状態であった為に傘に入れる事が出来なかった。
 全身が血に染まりながら、ザフィーラは拳を交えた好敵手に言葉をかける。

「おまえ」
ふ、気にするでない。若い犬よ
「狼だ」
これが我等の戦い……負ければ己の大切なものを失くす。それが自然の摂理。我等獣の定め…主も大切なものがあるのであろう…それに対する想いが……我の力を超えた。ただそれだけの事だ…
「すまない」
気にするな…我も……お主の様な猛者に出会えて…楽しかっ…た……ぞ………ガクリ
「キング七面鳥!?」

 最後に上げていた首が倒れ、動かなくなる七面鳥トシ子。
 彼女の姿を見ながら、ザフィーラは今までの死闘を忘れぬように深く心の中に刻む事を約束した。

「じゃ、来年も宜しくトシ子さん」
うむ、楽しみに待っておるぞ

 ムクリと首を起こして答えるトシ子。
 あまりにもフランクな会話だった為に、反射が追いつかないザフィーラ。
 約三秒後に脳に神経伝達が施されて驚きの声を挙げる。

「生きてたのか!?」
なんじゃ?何を驚いておる
「彼女達七面鳥一族は首なら幾ら千切れてもすぐに再生するから、それを売って収入を稼ぐっていうパワフルな生活を続けてるんだよ」

 イヤにグロテスクな生活である。

配送はいつも通り、クロネコヤマトで構わんか?
「うん。毎年ゴメンねトシ子さん」
ふ、構う事はない。我と主等の仲であろう
「楽しみに待ってるよ」

 死闘の後とは思えない、あまりにフレンドリーな会話。
 あまりに突飛な事が連続して起こった為に、ザフィーラの口から何か白いモノが洩れ出し始める。
 白いのは放置し時ながら、二人は彼を引きずりながら女性陣の元へと帰っていった。





「ザフィーラはどうしたというのだ?」
「一仕事して疲れたみたい」

 合流した途端の会話がコレだった。
 適当な会話で誤魔化しつつ、ケティは互いの仕事の成果を報告し合うように促す。
 シグナム等女性陣は既に別次元のプレゼント配達もいくつか終わらせてきていたらしい。
 スヴェルも同じ様なもんだと詳しい事は省いて話しをする。

「よーし。じゃぁ調子も良いみたいだし、この辺でチームに分かれようか」
「チームですか?」
「何のチームよ」
「プレゼントを配るチーム分け、これから時間短縮の為に別行動をするよ」

 アリサ達の問い掛けに答えるケティ。
 そして、徐に懐を探ると中から割り箸の入った感を取り出す。

「色が同じ人がペアになって配る。もし早く終わるようなら、連絡を取り合って別のチームの手伝いに行くって事で良いね?」
「確かに、その方が効率的だな」
「でも、ケティさん達セルフのメンバーから外れたら手順がわかり辛いから、その場合もう一度仕切り直しですか?」
「いや、一応僕等はもう色別に取ってあるから大丈夫だよ」

 シャマルの質問に箸を取り出しながら答える。
 他の二人も頷きながら色の付いた箸を取り出す。
 ケティがドドメ色、フィルが水色、スヴェルが赤色の箸をそれぞれ持っていた。
 それを見て、シグナムとアリサはケティのにはあまり当たりたくないなぁと思った。

「チナミニ色ガナイノハ拙者ト同ジチームデゴザルヨ〜」
「さ、早く引いて」
「変な仕掛けとかないでしょうね?」
「欲しいならやるけど?」
「いらないわよ!!」

 一人ひとりクジを引き、それぞれのメンバーが決まった。

 赤チームはスヴェル、シグナム、リイン。
 水色チームはフィル、フー、すずか。
 ドドメ色チームはケティ、シャマル、アリサ、ザフィーラ。
 無色チームはカスク、ヴィータ、シーダという構成になった。

「やり直しを要求したいわ…」
「アリサちゃん、頑張ってね」

「五人とも離れちゃって、少し残念ねシグナム」
「私はこれでお前に妙な事をされずに済むと解ってホッとしているぞ」
「それヒドくない!?」

「ヴィータお姉ちゃん羨ましいですー」
「へへーん。ソリとカスクは、あたしがちゃんと預かってやるから安心して行ってこいよな!」
『ウーム、頭ノ上トイウノモ中々ノ座リ心地』

「フィルド、一緒にがんばろーね?」
「うん宜しく頼むよ」
「シーダちゃんも頑張ってね」
「ううう、フィル君と一緒が良かったよう…えぐえぐ」
「……もし任務をそつ無く一番に終わらせられたらハグしてあげるよ」
「ぼく全力全開で頑張るよ!!!」

「凄い勢いだね」
「正直な話し……終わったら今の話無かった事にしようと思ってる」
「えっと、ま、まぁ良いんじゃないかな?」


「順番的にはこの航路で良いのか?」
「ああそうだね。僕の所は人数はいるけど戦力としては比較的低いから、やっぱり君達に任せても良いかい?」
「仕方ねーだろーな」
「悪いね」

 それぞれが文句やら何やら言いながらも、一応はこのチームで落ち着いた。
 ソリはカスクが牽引するので、荷物の幾つかは手持ちでの移動となる。


「毎年の事ながら、ちょっと面倒だな」
「何なら私が持つが?」
「いいえ。別にそんな重たい訳じゃないから構わないっすよ。ただ面倒なだけだし」
「リインもお手伝いする事はありますか?」
「ん?……ま、楽しんでくれればそれで良いさ」

「ここからは三人だけど、二人ともよろしくね」
「うん。よろしくねフィルくん、フーちゃん」
「よろしくね、すずかちゃん♪」

「さて、僕等は一番荷物が多くて回るところも多いし、疲れると思うから覚悟しておいて」
「それは構わないがレッサイよ。なぜ俺だけが荷物持ちなのだ?」
「あんたも持ってあげなさいよ」
「僕は開発専門だから、バールより重いものを持つとぎっくり腰になるんだよ」
「つまり持つ気は全く無いのね」
「ザフィーラ、頑張ってね」
「まぁ別に構いはしない」

「よーし!張り切って行こーぜカスク!!」
「一気に行くよ!一番楽しませて一番に終わらせるんだ!!それでぼくはハグしてもらうんだ!!」
『元気ナ事ハ良イコトナリ』


「じゃあ皆、終わったらまた合おう!」

 ケティの声を皮切りに、それぞれが別々の世界へと向う。
 多くの世界を巡る中、地球のクリスマスの日はもうすぐ近くまで迫っていた。



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