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リリカル・クリスマス☆


「ふぅ。一先ずこれで終りか」
「楽しかったですけど、ちょっと疲れました〜」

 とある次元世界でのプレゼント配りを終えた二人は、一息ついて適当な店の中で休憩していた。
 シグナムは他の仲間の目が無く文句を言われる事もないので、普段のバリアジャケットを着ている。

「それにしてもスヴェルのやつめ、一体どこで油を売っているというのだ?」

 シグナムはこの場にはいない、チームリーダー代わりの男に愚痴を溢す。
 各次元世界に到達すると、時々人に任せてその場から居なくなる事があり、リインと二人で仕事をこなさなければならなくなった。
 後で合流する場所は伝えられてあるが、こちらからの通信は全く受け付けられず、その間なにをしているのかは知らされていない。
 サボるような人物ではないと思うが、理由も伝えられずに姿を消されては困惑するなという方が無理がある。

「まったく、なにを考えているのだアイツは」
「どうかしたんですか?」
「いや、何でもない。気にするなリインフォース」

 愚痴を言っている間に険しい表情を作っていたらしい。
 心配そうに尋ねるリインに、頼んだケーキを渡しながらシグナムは窓の外を眺める。
 町外れにある店なので、すぐ横は建物の無い草原が広がっていた。
 かなり遠めに、ビル郡のような影が幾つも並んで立っているのが見える。
 ふと、そのビルの合間に、一瞬だけ小さな光が飛び交うのが見えた。

(気のせいか?)

 目を凝らしてビルの合間を凝視する。
 すると、遠目から見ると小さく、だが確実にビルの一部が爆発を起こすのが見えた。

(戦闘!?あんな場所で?)

 内心驚きながらも、リインの手前それを表に出さないよう抑える。
 同時に、頭の中で様々な可能性を模索し、どうするかを考える。
 何故あんな人目がつきそうな場所で戦闘行為が行なわれているのか。
 実際に近くで見なければ判断できないが、あの光弾は恐らく魔術によるもの。
 もしそうなら魔導師による犯罪か、魔導師同士の戦い。
 どちらかというと後者の可能性が強い。
 ならば管理局に組する者として行動すべきことは何か。
 それは例え仕事日であろうと無かろうと、局の者としての仕事を全うする。
 それが他者の為にもなり、なにより主の為になると思ってシグナムは立つ。

「リインフォース、少しここで待っていてくれるか?」
「どうしたんですか?」
「なに、ちょっとした用事だ。すぐに戻る」
「わかりましたです!」

 笑顔で見送るリインに微笑みながら、シグナムは店を出る。
 そして、人目のない事を確認して飛行。場所を移動しながら時折見える光の後を目指す。



「最後に見えたのはこの辺りか」

 ビルの屋上に降り立ち、周りを見渡すシグナム。
 冷ややかな風が髪を靡かせ、同時に緊迫した空気が形成されているのを肌で感じる。
 レヴァンティンを片手に、自然体のままゆっくりと瞳を閉じて周囲に意識をを張り巡らせる。


「…来る!」

 言葉と同時に目を開き、彼女の背後に巨大な黒い鉤爪を振り上げた黒い影が飛び掛かる。
 黒い爪が頭目掛けて振るわれるが瞬時に身を低くして避け、振り向き様に回し蹴りを影に叩き込む。
 強くしなやかな美しい足から見舞われた蹴りは、鉄仮面に覆われた影の頭を的確に捉え吹き飛ばす。

「なんの確認もせずに襲い掛かってくるとはな……お前達は何者だ?」

 その場からは動かずに視線だけ周囲に動かしながら問い掛ける。
 建物の影には、数人の人影がシグナムを警戒して潜んでいた。
 シグナム本人からは見えないが、その全てが顔全体を覆う鉄仮面を被っている。

「答える気は無い。ということか」

 呟きながらシグナムが抜刀の構えを取る。
 隠れている集団も身を引き締め、応戦の構えを取ると彼等の頭上で火花が散った。

「ぐはっ!?」
「!?」

 全員がそこへ視線を向けると、デバイスを振りぬいたスヴェルと、その正面で大きく仰け反って吹き飛ばされている二人の鉄仮面。
 鉄仮面の二人は近くのビルまで吹き飛び、盛大な音を立てて窓ガラスを突き破り建物の中へと消えていった。
 それに遅れて屋上に着地するスヴェル。
 驚きと疑問が頭に浮かびながらシグナムは彼に声をかける。

「スヴェル?」
「あんた…どうしてここに!?」
「それはこちらのセリフだ!これは一体どういうことだ!?」
「あまり関わらせたくなかったんだけど…そうも言ってられねえか」

 話しをしていると、物陰に隠れていた集団が姿を見せ始めた。
 対話からシグナムがスヴェルの仲間だと判断したからか、それとも何か考えでもあるのか。
 取り合えず今解る事は、彼等はスヴェルを殺す気で掛かっているという事だ。
 二人はデバイスを構えながら動き、背中合わせになって会話する。

「これが終わったら正直に話してもらうぞ」
「報告は苦手なんだけどな」

 互いに良い終えると、それが合図だったように一気に駆け出した。




 謎の集団との戦いは予想以上に簡単に終わった。
 ランクが高いものがほとんど居なかったのが幸いしたと言える。
 それでも、かなりの数が現れ、全てが戦いなれた動きを見せていたので相当するのに時間が掛かってしまった。

「被疑者確保っと」
「仕事なのか?」

 ビルの屋上で一人ひとり拘束していくスヴェルに尋ねる。

「いや、一応こいつ等犯罪者だけど、管理局は関係してない。セルフに頼まれた仕事がこいつ等の掃討だったて事」
「なぜセルフの仕事をお前がやる必要がある?」
「その…まぁあれだ…友……達だから…な」

 言い淀むスヴェルに疑問を感じて首を傾げる。

「本当の事を言え。それも嘘とは思わないが、まだ何か話してない事があるだろう?」

 シグナムに指摘されて、スヴェルはどうしたものかと頭を掻きつつ考える。
 唸っていたが、やがて諦めたように頭からパッと手を離して盛大な溜息を吐いた。

「正直な話、改まって言う事でもないんですけどね」
「兎に角話してみろ。でなければ納得がつかない」
「しゃあないか……あいつ等セルフは毎年クリスマスの時期に、各次元世界で知り合った友達の所へ顔合わせも兼ねて
 プレゼントを配る事を全員で決めたんですよ。結成当初から今まで…これからも続けるつもりだろうけどな」

「それとやつ等と何の関係がある?」
「次元世界の中ではたまに管理局の目を逃れて、魔術を使って一般市民を圧制する輩も出るんですよ。実質管理局も人手不足。
 小さな町のイザコザや野党ぐらいの活動に人材を分けるのも馬鹿らしい。だから、大それた事をしなければ組織には狙われず、
 市民にはちょっと力を見せて圧倒すれば威張り通せる。実際訳有りで管理局を頼れない所も多いもんだし」

 少しずれている様なスヴェルの説明に眉を顰め、首を傾げるシグナム。
 それを見てスヴェルは、自分の説明力の無さに頭を抱えながら話を続けていく。

「俺達が周ってる世界には、そういう事情を持った人や国同士の諍いで管理局が関与し辛い状況も多くてですね。
 永続的に防衛を依頼されてる場所もあるけど、大体はプレゼントを配りがてら見回りしてるって所かな」
「……なぜお前達はそこまでやるんだ?」

 シグナムは素直な疑問をぶつけてみた。
 彼等は傭兵家業を営み、名声が響けばそれが収入に繋がり、何処かに売り込みに行く事もあるかもしれない。
 だが依頼を受けているとは言えここまで迅速に対応し、更に依頼以外に自分にゆかりのある者達の安否を気遣う。
 それを知ると、彼等にとっては名声や報酬は眼中に無いと思える。
 なら何故彼等はこれだけの事を毎年行なっているのだろうか。

「俺達って言うか…フィルとケティ…あの二人が自分自身に決めた約束だからな」
「約束?」
「あいつ等二人は一気に大切なものを無くしちまったから、新しく手に入れたものは守り通したいんだと思う」

 シグナムから顔を逸らし、遠くの空を見上げるスヴェル。
 その瞳は空を見ているようで、昔を思い出してるようにも見える。
 おそらく両方なのだろう。
 そのまま空を眺めながら言葉を続ける。

「大切な人がいなくなった時に、アイツは自分の力で多くの事をやり遂げる事を誓った。
 それでも、その時の事は忘れられないみたいだけど…だからこそ、アイツは知り合いの所を周って楽しませて
 悲しい思いを紛らわせてるようにも思う。皆に笑顔でいてもらいたいっていうのが正解だと思うけど、やっぱり
 どこか無理してる気がするんだよなぁ」
「それは管理局を抜けなければ出来ない事なのか?」
「アイツ等なりのケジメって所です。それに局よりあっちの方が個人プレーはやり易いみたいだし」

 政治の裏の顔も結構集まってくるから、と付け加えて会話が途切れる。
 そよ風が吹く中、二人はその場で佇み空を眺める。

「お前は」

 何となく、シグナムが言葉を発する。
 特に考えたわけではない。だた、何となく聞いてみたくなっただけだ。

「お前は何故協力しているんだ?話しから察するに毎年手伝っているようだが?」
「後ろめたさもあるけど……なによりアイツ等といると楽しいからってのが一番の理由スね」
「…そうか」
「行きましょうか。他にもまだ回るらなきゃなりませんし」
「ああ」

 二人は踵を返して歩き出した。
 地元の警備団に連絡はしておいたから、黒い集団はここに放置していても構わないだろう。
 猿ぐつわや亀甲縛りを施した集団が、なにやら唸って訴えているが無視してその場を後にする。
 そのまま寒い冬の空の中放置された彼等が捕まったのは、それから三十分くらい経った後だった。

「早く終わらせてパーティーやりましょう。ハラオウン提督とレティ提督、それにうちの提督が揃って地球でのパーティー企画してますし」
「そうなのか?」
「みたいですよ?詳しい話しは聞いてませんけど」
「そうか。ならば一刻も早く主に知らせねばなるまいな」

 先程の空気を払うかのように、これからの話をする二人。
 聖なる夜はもう目前まで近づいていた。






リリカル・クリスマス☆


「つ、つかれたぁぁ〜……」
「流石に堪えたわ」
「お疲れ様…」

 色々悶着がありながらもプレゼントを配り終える事ができたドドメ色チーム。
 他のチームもあと少しで周りきれると連絡があったので、彼等は先にアルトロンへ戻り一息つく事にした。
 アリサとシャマルはイスに座ると、いかにも疲れてますって感じにだれていた。
 いや、むしろアリサは口から白いものがモワッと出ていた。
 取り合えず、色々されたんだなぁという事は解る。
 そんな彼女達と、壁に背を預けて立っているザフィーラに缶ジュースを差し出すケティ。

「キミ達のお蔭で例年より早く片付いたよ。ありがとう」
「なによ?急に改まっちゃって」
「これでもお礼くらいはちゃんとするさ。で、彼女はどうだった?」

 渡されたジュースを横に置きながら、アリサは携帯型デバイスを取り出しディスプレイを開く。
 中からトゥーが姿を現し、不安と期待が混じったように上目遣いでアリサを見ている。

 アリサはジッと彼女を見ながらこれまでの事を思い出す。
 思えば散々好き勝手な仮装をさせてくれたものだ、このハチャメチャ娘はと苦笑する。

「時々変なことするけど、嫌な感じではなかったわ」
『アリサちゃん!?』
「なら、これからも彼女の事を頼んで良いかな?」
「良いの?こうゆうのって本当はいけない事なんじゃないの?」
「まあね。けど、犯罪を犯さないなら大した問題にはならないよ」


 その答えに完全に納得した訳ではないが、それ以上は聞かない事にした。
 しつこく言うと嫌ってるように思われるだろうし、何より拒まなかった時のケティの表情はどこか安心しているように見えたからだ。

『これからもよろしくね?ありさちゃん♪』
「あんまり頼る機会もないと思うけど」


 彼女達が話をしていると、艦内に若干の誤差がありながらも転移魔法の陣が現れる。
 それを感知したアリサを除く三人は、転移された部屋のある扉に視線を向ける。

「ただいまーっす」
『終〜了〜』
「あーつかれたー」
「リインもヘトヘトです〜」
「二人とも、行儀が悪いぞ」

 帰ってきたのはスヴェルとカスクのチーム。
 全員が汗だくで疲れているようだったが、その表情には笑顔があった。
 そんな彼等にケティは買い溜めしておいた缶ジュースを一つずつ手渡していく。

「お疲れ様」
「おう」
「すまない」
「ありがとうございます」
「さんきゅーな」
「ありがとうケティ」

 ケティは人目周りを見渡し、人数が集まってきたのを確認すると頷き、身体を伸ばす運動をし始めた。
 程よく身体がほぐれた所で首を鳴らし、部屋から出て行こうとする。
 それに気付いたリインが後ろから声をかける。

「あれ?お出かけですか?」
「ううん。サンダルフォンとの合同クリスマス会用の特別食の準備」
「あ、そっか。それもあったんだよね」
『スッカリ忘レテタデゴザルヨ』

「サンダルフォンではパーティーがあるのですか?」
「いーなー、あたし等んとこはそんな話ねーもんなー」

 ケティ達の会話が羨ましく思えたのか、ヴィータが不満の声を挙げる。
 リインもヴィータと同じ気持ちなのか、羨ましそうにケティ達を見ている

「そうふて腐れるな二人とも」
「だってよー」
「羨ましいです」

 二人の様子にシグナムはスヴェルから聞いた話しを教えようか少し悩む。
 反面各次元世界を回り、あれだけハシャギながらまだ足りないのかと少し呆れてたりもする。
 そんな風に思っていると横からスヴェルが二人に話しかけに行くのが見えた。

「大丈夫だよ。そっちの艦の人達ともウチの艦長は騒ぐ気満々だからな」
「それってもしかして…」
「あたし等んとこもパーティーやるのか!?」
「多分な」

 予定が狂わなければだけど、という呟きは二人の喜びの声にかき消された。
 その様子に苦笑するスヴェルにシャマルが近づく。

「その話し本当なんですか?レティ提督からはなにも聞いてませんけど?」
「ああ、ウチの人達がお祭り好きだからね。それぞれの局員には内緒に合同でのパーティをやってビックリさせようって」
「シグナムは知ってたの?」
「いや、私も途中でスヴェルに聞くまでは全く知らなかった」
「ん?帰ってきたか?」

 話をしてる内に、またも転移魔法の反応を感じ取り、扉に目を向ける一同。
 何故かドスン!という異様に大きい音も聞こえたのが気になる。
 足音が近づき、扉が開かれて中から苦笑交じりの表情をしたフィル達が現れる。

「ただいま〜」
「意外と遅かったな。何かあったか?」
「ちょっとトラブルがね」

 フィルの言葉にスヴェルが何があったか大体予測が付いた。
 バツが悪そうにしている頭を掻くフィルの後ろでは、フーも同じような表情をしながら小さく手を振っている。
 その隣で視線の合ったすずかがお辞儀をしているのが見えた。

「説明は?」
「したよ」
「悪い、こっちもちょいバレた」
「そっか。仕方ないよね」
「ま、それより早くこっちの準備を終わらせようか」

 仕切り直すように、スヴェルはフィル達の出てきた扉の奥を指差す。
 そこにはかなりの関取くらいの大きさをした風呂敷包みが幾つも陳列されていた。
 指差された風呂敷包みを不思議そうに見ながらすずかが尋ねる。

「あの、あれは何なんですか?」
「あれはね。プレゼントを配った世界の内の幾つかから、そこ特有の珍味を少し分けてもらったんだ」
「で、それは地球のクリスマスん時に開くパーティーのメインディッシュになる予定だとさ」

 二人の説明にすずか以外の面子もへーっと感嘆の呟きを洩らす。

「メインディッシュって事は、皆さんで作るんですか?」
「まあね」
「じゃあ、私も手伝って良いですか?」

 すずかの申し出に、キョトンとして目を開閉させる二人。

「これはバイトの範囲外の事だよ?」
「ダメですか?」

 かなりの人数分作る手間も有り、人手が欲しいのは確かだが、これ以上はという思いもある。
 しかし、料理の腕は彼女達が代わりにやった方が、確実に良い物が作れるとパーティーの準備時に確認している。

「いや、ダメって言うかむしろ頼みたいくらいだし……良いの?」
「はい♪」
「すずかがやるんならあたしもやるわ」
「なら、私も手伝っちゃおうかしら♪」
「へ?」
「ならば私も手伝おう」

 すずかの返事に釣られるように様にアリサが立ち。
 そしてシャマルが名乗り出ると嫌な予感を感じたシグナムが空かさず歯止め役にと立ち上がる。
 更に便乗するようにちびっ子達も自ら名乗りを上げていく。

「リインもお手伝いします!」
「り、リインフォースがやるならあたしも!あたしはリインのおねーちゃんだかんな!!料理のお手本をみせてやんなきゃな!」
「むしろ教わるのはヴィータの方ではないのか?」
「あんだよシグナム!そう言うおめーはどうなんだよ?」
「ふっ愚問だな」
「ジョートーだ!どっちが上手いもん作れるか勝負だかんな!」
「受けて立とう」

「貴重な材料なんで勝負はやめて欲しいなぁ」
「多分聞こえてないぞ」

 バックに炎を滾らせる二人に小さな声で訴えるフィル。
 既に半分諦めているスヴェルは部屋に入り、荷物をキッチンへと運んでいく。
 それに続いてシグナム達も荷物を運び出し、全ての荷物と全員がキッチンに集まった。

 だけど、何故か女性の方々は一度、フー達に更衣室へ連れられて着替える事を進められた。
 事の発端は、シグナムの服装が元に戻っている事に気付いたヴィータのズルイ発言。
 最初はまた着替える事に渋っていたシグナムだが、アリサが背景に影を背負ってしまった為に已む無く着替える事にしたのだ。


「さて、全員着替え終わったみたいだね」
「それよりエプロンに着替えるのは良いけど、どうしてこんななのよ!?」

 野郎共は給食センターの職員みたいな格好で待っていた。
 女子達は、アイドルが着る様なフリフリした感じの衣装の上にハートマークの愛エプ着用。
 アイドルお料理対決とかタイトルロゴでも出そうな感じだ。

「僕等に言われても、どうしようもないなぁ」
「シャマル」
「シャマルさん」
「し、シグナムにアリサちゃん。そんな冷めた目でみないでぇぇ〜」

 痛みを伴う視線がチクチク刺さり、腕でガードする自業自得のシャマルさん。

「それじゃ、手伝ってくれる皆に今回のクリスマス用の料理に関しての説明だけど」
「何を作る班とかに分かれた方が良いんじゃないの?」
「それはやってる内に決めていくよ」
「やっていく内って?」

 ケティの言葉に引っ掛かるものを感じた一同。
 嫌な予感がまたしても全員に広がっていく。


「ここに鎮座された新鮮且つ並み居る名産達を倒して食材となる部分をゲット!敵を食しつつガッツを上げて、最後まで料理しきってクリアを目指そう♪途中で発生するクエストをクリアすると更に旨味が増して増して高得点になるから―――」

「待て」
「明らかにおかしい言葉使ってんじゃないわよ!!」
「出来たら普通に料理させてもらいたいんですけど」

 この時のシャマルの言葉にヴォルケンリッター一同は思った。
お前が言うな!!


「じゃ、高得点とより良い料理を目指して、皆で頑張ってね」

 彼女達のツッコミを華麗にスルーしつつ、何時の間にか持っていた箱から凸出た妖しいスイッチを押すケティ。
 封印が破られるかのように、風呂敷包みが千切れ飛び、複数の袋の中から世界の珍味という名の猛獣達が飛び出していった。

「キシャァアアアアアアアアア!!!!」
「これって明らかに食材の発する声じゃないでしょぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!?」
「きゃー♪」

 シェーのポーズで恐れおののくツッコミ役。
 隣ではすずかやシャマルといった、オットリ乙女が笑顔で楽しそうな悲鳴を上げていた。



 厨房が作者のフラストレーションが貯まった所為で電波状態となり始めてる中。
 外側ではスヴェル、ザフィーラ、カスクがコタツの中で仲良く暇を持て余していた。

「暇だな〜」
「手伝わなくて良いのか?」
「食えればそれで良いと、レトルト主食のダメ男に何を手伝えって?」
『駄目ダメデゴザルナ』
「お前は料理をする機能は無いのか?」
「料理ハ女ノ仕事トサン殿ニ止メラレテシマッタナリヨ」
「そうか…」

 厨房から妙に騒がしい音が聞こえる中。
 男三人は部屋でボケーっとしながら暇を持て余す。
 静か過ぎる艦内に居心地の悪さを感じ始めたスヴェルは、近くの棚からゲーム機を取り出す事にした。



なによこの幻の動物たちは〜〜〜〜!!!!?
「スカイフィッシュにドラゴンにリトルグレイ。グドンとか一杯いるね」

 飛び交う珍動物達に涙目全開になりながら困惑するアリサ。
 それらを全て避けつつ、血色の良いものを探しているすずか。

「いやー!噛まないで〜〜〜!!!」
「まともな食材は無いのかレッサイ!?」

 シャマルはかなり真ん丸とした体型の、犬っぽい動物に頭を噛まれながら逃げ回り。
 シグナムは襲い掛かる食材達を切り付けながらケティを見やる。

「あっと、いけない。こんな所に突っ掛かってるのが…」

 言いながら彼は棚の中から、デカイ鮪の上半身を取り出そうとしていた。

煮て良し!焼いて良し!でも叩きと結婚はイヤ
「捨て置けそんなものぉ!!」

「大変だフィルド君!ちょうちんアンコウのナカイくんが過呼吸に陥ってる!!」
「深海魚のクセに無理するからだよ」


「兎に角料理しないと始まらないからね。みんな!気合入れていくよ!!」
「じゃぁ、最近楽しかった事とか、アリサちゃんのこうゆう反応が可愛らしかったって冗談を交えつつ料理すれば良いのかな?」
「何言ってんのよすずか!?」
「ま、そんなとこだね」
「違うだろ!!」

「じゃあ、おへそを出せば良いのかしら?」
「何でだ!!ってヴィータ!なにをしている!?」
「別に良いじゃねーか。お色気担当出番だぞ」
「今こそその胸の使い時よ♪」
「何を言ってるのだ貴様等ぁあああああ!!」




 厨房が更なるカオス電波を受信する中。
 余りにも暇な男三匹は峠を攻めていた。

ブォオオオオオオオオオオオオン!!!
オンオン…キキィイイイイイイイイイイイ!!
ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオウ!!!


守護獣三連ドリフトぉおおおおおおおお!!!
スピンターン!!雨天デモコンピュータ走行ニ敵ハ無シデゴザル!!
くっそ、こいつ等早ぇつの…やるか?アレを!!?

 こっちはこっちで別世界へ突入中。




「なにをやっている貴様等ぁああああああ!!!!!」
「「おおおおおおおおおおおおお!!?」」
『チャブ台ナラヌコタツ返シデゴザルカ!?』

 何の前触れも無くシグナムが盛大な音を立てながらコタツを吹っ飛ばす。
 その所為で画面やらゲーム機がえらい事になったが、シグナムの鬼気迫る迫力に三人は正座して説教に備える準備をしていた。
 何とも負け犬根性的な対応である。

「我等が苦労しているというのにお前達は一体なにをやっている!?」
「人数足りてるから逆にやる事がないんですよ」
「だがなスヴェル。前回真面目な話だったのに、いきなりこれは無いだろう?」
「なんで?」
「なにかの複線だとか、または後に繋がるような何かがあるのではないのか?幾らなんでも変わり過ぎだろう!?」

 よく見るとシグナムの彼方此方にギャグ使用の擦り傷や噛み付き後、それに頭とかになにやら妙な物体がくっ付いている。
 仲間内でも上位のシリアスキャラゆえに、唐突な路線変更には耐えられないようだ。
 荒く息を吐きながら訴える彼女を見やりながら、特に気にした様子も無くスヴェルはのん気に答える。

「楽しければ良いんじゃないすか?」
「…それで良いのか」

 ガックリと肩を落とすシグナム。

「良いんじゃないっすか?だって嫌な気持ちで準備しても、気持ち良いものは出来ないと思うしな」
「それは……そうかもしれないが」

「でもま、確かに何もしないのは気が引けるからな…なんかせにゃならんか」
「ならば、主達にはもう連絡をしても良いのではないか?」
「そうだな。ディセンテウス、もう隠さなくても構わないだろう?」
「あー、そうだな。パーティーやるって事くらいなら、料理は後の楽しみって事で内緒にするのは決定事項」
「分かった」
「いよっと」

 三人組は正座を崩して起き上がり、足の痺れを我慢しながら身体をほぐす。

「あ〜、きっつい」
『丸イ体デ正座ハ無理ガアルデゴザルナ』
「では、私は主にこの事を伝えてこよう」
「料理はどうした?」
「あ、や、その…」

 ザフィーラの言葉にギクッと動きが止まるシグナム。
 焦りながら、言葉につまり明後日の方向を向いて視線を逸らす。

「あー!シグナムさんこんな所に居たー!!」
「う!フー、シーダ!?」
「ダメだよシグナムさん。新鮮な魚介類を美味しく仕上げるにはシグナムさんの剣技が必要なんだよ」

 詰め寄ってくる二人にタジタジになりながら、後ずさっていくシグナム。
 頭から汗がダラダラ出てきて、完全なギャグキャラ使用に変わってしまう。
 どうも、お笑い重視に成りがちなこの空気には慣れない様だ。
 いや、慣れたくないというべきか。

 そんな事をスヴェル達が考えていると、助けを求めるようにシグナムが視線を向ける。
 心なしかちょっと眼が潤んでるように見える気がする。
 そんなにイヤか、ギャグキャラになるの。

「じゃ、サンダルフォンはこっちが連絡するんで」
『アースラニハ拙者ガ』
「なら主には俺が伝えよう」
「ザフィーラ!?裏切ったのか!!?」

「人聞きの悪い事を言うな」
「そうですよ」

 ただ、関わりたくない気持ちと、放っておいた方が面白そうだという気持ちからの行動に過ぎない。
 一番の理由は、この場に居ても文句だけ言われそうだからさっさと離脱したいと言うのが本音かもしれない。

「じゃ、行こうか」
「おう」
『有限実行。即実行』
「待て!この妙な空気の中に私を置いていくなー!!」

 行かないで〜とロゴを出してそうな雰囲気のシグナムを置いて三人は逃げるように走り去る。
 その様子が少し可笑しくてスヴェルは小さく笑う。
 そして、これからもっと馬鹿騒ぎが起こるかと思うと楽しみの笑みが零れてきた。

「やっぱり、あいつ等といると面白ぇ!!」

 ハチャメチャなやつ等の集まりに、滅茶苦茶な方達の集まりが集ったらどうなるのだろう。
 期待と不安が混じったような、それでも楽しみの方が大きい祭り事。

 年の最後の大騒ぎ。
 聖夜の祭典は後僅か。






リリカル・クリスマス☆

 2月24日。
 クリスマス。
 その日、L級艦サンダルフォンにて盛大なパーティーが開かれようとしていた。
 無礼講を告げる為、宴の開始を告げる為の祝砲が今打ち上げられる。

「スターライトブレイカー…逝くよ?
ちょっとタンマァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!???
「なのはちゃん!ストップ!ストップやぁあああ!!?」
「いきなりどうしたんだなのは!?」


「これってさ…リリカルなのはのパロディなんだよね?」
「え?」


「そ、そうだよなのは?」
「なのに…どうして、どうしてなのはの出番が少ないの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!??」

「ぎゃぁーーーーーーーーーーーーーーー!!!?アクセルシューター乱発はやめてマジで!!?」
「白い覇王がお怒りじゃーーーーー!!!」
「退避!!退避ー!!!」


 初っ端から全力全開で異様な盛り上がりを見せていた。


「いや、盛り上がり違うから!?」
「クロノ!誰に向って言ってるの!?」
「知るかそんなもん!!」
「クロノくんがついに壊れちゃったかー!」
「勝手な事を言うなエイミィ!!」


「こうなったら最終兵器ユーノくん登場や!」
「ええ?」
「なのはを止められるのはユーノしかいないから」
「取り合えず、早く止めねーととんでもねー事になるぞ」

 言いながらサンダルフォンと御呼ばれした他艦メンバーを指差すヴィータ。


「あああ!!」
「ジュリー!?このぉ!ドガアアアン!!」
「クッソォお前らぁ!!」
「落ち着け!口先だけで言っても視聴者にはなんのネタか分かり辛いぞ!」
「今に始まった事じゃないだろう!!」
「それもそうだ!!」

 彼等は色んな意味で手遅れだった。

「こ、これは許されるのか?」
「今日くらいは無礼講で良いじゃない」
「無礼講過ぎます」

 絶対楽しんでると思われる笑顔で語るリンディ。
 クロノが視線を彼方此方に彷徨わせると、サンダルフォン艦内は阿鼻叫喚の渦と化していた。
 主になのはの暴走が原因だが、元々政が好きな者達が多いクルーが集まっている所為でただの宴会騒ぎになっている。

「溜息なんて吐いてどうしたんだ?」
「スヴェル…これは幾らなんでも羽目を外しすぎだと思うんだが」
「相変わらず硬いな。もっと柔らかくならないと本気でハゲるぞ」
「それはゴメンこうむりたい」
「良いじゃないか。こうしてバカやれるってのは幸せな事なんだぜ?」

 からかう様な口調だが、その瞳は憂いを含んでいる事にクロノは気付く。
 彼等の境遇は以前協力し合った事件で聞いている。
 彼が今その瞬間を大切にすることの大切さを説いているのは何となく理解できた。

「そうだな」
「まー、あの人の暴走は多分うち等の所為だと思うしな」
「…どういう意味だ?」

 クロノが問い掛けると、スヴェルは円形のテーブルで喋りあってるエイト提督とレティ提督を指差す。
 二人もなのはの暴走加減を見ながら何か呟いているようだった。

「予想以上に暴れてるわね」
「アルコールそんな入ってないんだがなぁ…これメーカー間違えたか?」

 予想外の事に困ったという感じで頭を掻きながら、エイトは空になった一升瓶を持ち上げる。

「貴方の仕業かぁあああ!?」
「よくそれだけ声が出せるな」

 なりふり構わず叫ぶクロノに感想を洩らす。
 一番騒がしい場所に眼を向けると、相変わらずなのはが暴走している。
 彼女の目の前ではユーノが立ち塞がり、防御魔法を駆使して被害を食い止めているようだ。
 冷静に見てみると顔が赤く染まっているのが辛うじて解った。
 立ち上る黒煙の所為で顔が良く見えないのだ。

「ここはどこの戦場だ?」
「さぁ?」


「うぃ〜っひっく!」
「な、なのは?もしかして酔ってる?」
「よ〜ってないよーゆーのくーん♪」
「酔ってるよなのは…ってうわぁ!?」

 苦笑していたユーノに飛びつくように抱きつくなのは。
 倒れないように踏ん張りつつ、ユーノは彼女を抱きとめる。

「なのは、身体熱いよ?熱でもあるんじゃ…」
「へへー♪」
「なのは?」
「ユーノくん、あったかぁい…♪」
「もう、なのはったら」
「ごろにゃ〜♪」

 コタツに入る猫よろしく。
 なのはは身を捩り、頬擦りしながらユーノに蹲っていく。
 その様子を見ていた他のメンバーは、ホッと一息つくと同時に呆れていた。


「散々暴れておいて急に甘えん坊って…見てるこっちが疲れるわ」
「でも、なのはちゃんとっても楽しそうだし、微笑ましくて良いと思うよ?」
「すずかちゃん。この惨状の中でそんなこと言えるんは凄いで」
「良いなぁ…なのは…好きな人に甘えられて……」

 仲良し五人組である彼女達の周りは名も無き局員達の死骸が散乱していた。
 アフロヘアーやレゲエ、モヤシやドレッドなど、ギャグ使用の爆発によって様々な髪型に変化しているのはオプションだ。
 それらを踏まないように、テーブルに並べられている食材を大量に確保していたヴィータ。
 料理を取っていく内にリインフォースと落ち合うと、彼女の様子が何時もと違う事に疑問を感じて声をかける。

「むぅ〜」
「ん?どうかしたのかリイン?」
「ヴィータお姉ちゃん。いえ、何でもないです」
嘘はいかんな嘘は!!
「うわ!?」
「ひゃぁ!!」

 二人の横から急に大声を出して割り込む、ビニール袋ので作った即席覆面を被ったエイト。
 その手にはなのはに進めたと思わしき一升瓶が二本握られている。

「な、なんだよオメーは!?」
「幼き少女の危機に駆けつける翼のラヴ!ハンター……その名も影の薄い茶色の雑草!!」

(ビニール)
(何をしてるんですかエイト提督)
(茶色い雑草って何だ)


「茶色がなんのよーだよ?」
「雑草さんは料理を食べないんですか?」

(二人とも気付かないんかい!?)

「一歩を踏み出す勇気が出せない乙女の悩み。この影の薄い茶色の雑草が解決して見せよう」
「「は?」」
「と、言うわけでターンと飲みなさい」
「なにす―んぶ!?」
「はわっぷ!?」

 一升瓶を幼女二人の口に押し込む中年親父。
 犯罪確実な光景だと思った。

「なにをやっているんですか貴方は!?」
「…了承」
「母さん!!?」

 黒野のツッコミの後に頬に手を当てながら承諾するリンディ。
 提督組みは既に出来上がりかけているようだ。
 レティにいたっては他の局員に一気コールを貰いながら一升瓶を次々消化していってる。

「あぅえぅあ〜?ぐるぐるする〜」
「はにゃぅ〜」

 言葉通り幼女二人は眼が渦巻き模様に変わっており、足元が覚束ない様子。
 それを満足そうに眺める影薄雑草。

「うむ、これで子供達の寝てる間にプレゼント渡し作戦が実行できるな」
「その為だけに飲ませたのですか!?」
「ナイスな作戦やね」

 食って掛かるシグナムに対してはやてはサムズアップしながら影薄を労う。
 シグナムは脱力感に苛まれながらもヴィータ達に声をかける。

「大丈夫か二人とも?」
「おねーちゃん」
「は?」

 その瞬間、シグナムは自分の耳と眼が以上をきたしたのではないかと疑った。
 弱冠頬を赤く染め、潤んだ瞳で上目遣いをして、しおらしくこちらを見上げてくるヴィータ。
 小動物オーラを醸し出し、引っ込み思案な少女をイメージさせる仕草だった。

 そしてシグナムは思った。
 これはヴィータではない!と。

「あのね。あたし…おねーちゃん……だいすき」
ヴィイイイータぁああああ!!!?しっかりしろヴィータァアア!!!!?
「ヴぃ、ヴィータ。もう一回、も一回言ってぇな!!」
「おねえちゃんたちも、おにいちゃんたちも……みんなだいすき」
「きゃぁー☆ヴィータちゃん可愛いわー!!ビデオ!ハンディカム持ってこなくちゃ!!」
「どこから現れたシャマル!?」
「落ち着きい!今の時代はDVDや!!」
「主…そういえばリインフォースはどうなっている?まさか!?」

 ヴィータがキャラを崩壊させているのにはやて達が喜んでいる時。
 リインフォースは彼女達の傍にはいなかった。
 彼女の姿を探していると、またも騒がしさを増す一角が現れそちらに眼を向ける。

「きゃはははははははははは☆いーいー気ー持ちーですー♪」
「り、リイン」

 リインフォースは満面の笑顔でユーノの胴体にしがみ付いていた。
 正面では同じく明るい笑顔でレイジングハートエクセリオンを構えるなのは。

「りいんふぉーすちゃ〜ん♪どいてくれないとなのはこっちゃうよ〜☆」
「やで〜す♪」
「あはは、なのは。せめて非殺傷でお願いできないかな?なんとなく解除されてる気がするんだけど……」
「うん。だって今日は無礼講だもん☆>

ちょっと待って!?じゃぁ今まで俺達が喰らってたのって全部殺傷もん!?
あ、痛い!?急に身体の彼方此方が砕かれるように痛くなってきたぁああああああ!?

 祝福の風は更なる混沌を呼び込んでいた。

「なんか局員さん達が転げ回ってるんだけど?」
「きにしないの♪きょうはぶれいこうなの☆だから、ゆーのくんに全力全開のやつ喰らわしてあげるの♪☆
「じゃーリインが〜、ベットの上で〜ゆーのさんを看病してあげま〜すねー♪」
「だめだよー♪りいんほーすちゃーん☆それは〜なのはのやくめなの〜」
「え〜?」
「あはははははははははははははははは」
「えへへへへへへへへへへへへへへへへ」

 とても楽しそうで幸せそうな笑顔の二人。
 周囲の空気が圧力に耐えられず、二人の周囲を螺旋を描きながら移動する。
 黒い何かがその様子を表し、その肌でしか感じ取れないプレッシャーに誰も近づけない。

「…これはクリスマスパーティーじゃなかったのか?」
「最初から脱線してるからなぁ」
「とは言え、これじゃあ進まないね」
「来てたのかケティ?」

 クロノとスヴェルの後ろから生える様に現れるケティ。
 彼はやれやれと腰に手を当てながら溜息を吐くと、何時の間にか天井からぶら下がっていた綱を掴んだ。

「プレゼントを届けに来たんだけど、これじゃあ進まないからお三方には退場してもらおうか」
「退場ってどういうことだ?」
「容赦ないな」
「このまま続けた方が良いかい?」
「何とかできるのならやってくれ」

 クロノが冗談交じりに話すと、ケティは握っている綱を思い切り引っ張る。

「な、なのは!?レイジングハートを突き出すのは危ないから!!」
「だいじょ〜ぶだよぉ♪ゆーのくん、ひさっしょうにしてあるからー♪」
「いや、エクセリオンモードを叩きつけたら非殺傷関係ないし!!?」
「きゃ〜☆ゆーのさんにおひめさまだっこされてます〜☆うれし〜です〜♪えへへ〜♪」
「あは☆ゆーのくんおもたそうだね?かたこってるでしょ?落としてあげる☆
「落とすってなにを!?コリだよね?なのは!?なのは!!?まって話し合おう!!?なのは、なの―――――」

 なのははレイジングハートを振り上げて、ユーノはリインを抱き抱えながら右手で静止を呼びかけていた。
 両者の距離がほとんど無くなったところで、三人の姿は消えた。

「ここから場所を移せば問題はないだろ?」
「ああ、それなら問題ない」
「司書長のことは良いのかよ」

 一仕事終えた良い汗を拭うような、そんな様子のケティと賛同するクロノに突っ込むスヴェル。
 追いかければ助ける事も出来なくはないが、誰も死地に自ら足を向けたいと思うはずも無く、この話は今日一杯闇に葬られる事になる。
 そんな風に何人かが黄昏ていると、広いステージの壇上に上がったエイトが演説を始めた。

「えー、恐怖の対象がなくなった所で、クリスマス会プレゼント交換際を開催したいと思う!」
「「「おおーーーー!!」」」


「やっとクリスマスらしくなったようだな」
「そーかな?私はこれくらい盛り上がった方がむしろ楽しいと思うけど?」
「エイミィ…毎回なのはが暴走するようなパーティーを開きたいのか?」
「いや、それは簡便かな?」

 苦笑いをして答えるエイミィに溜息を付くクロノ。
 そんなやり取りをしていると、自分達の周囲にはやてやフェイトにアルフ、ヴォルケンリッターといった何時もの面子が集まってくる。
 どうやら、慣れ親しんでいるもの同士でプレゼント交換を行なうらしい。
 遅れてアリサとすずかがフィルやフーのセルフのメンバーと一緒に集まってきた。

「結構ここも広いのね。見つけるのに時間くっちゃったわ」
「あれ、なのはちゃんは?」
「えっと、なのはは…」
「ユーノくんとリインでお楽しみの最中やから、気にせんといてな」

 あの空間をお楽しみと言えるのか甚だ疑問だが、全員不覚は突っ込まない。
 重苦しい空気を感じ取ったアリサ達もそれ以上は何も言えなかった。
 やがてエイトが解説を終えると、全員が班分けの様に幾つかの円陣を組み、用意したプレゼントを取り出していく。
 そして和やかな音楽が流れ始め、一人ひとりがプレゼントを時計回りに回していった。

チャララ〜チャラ♪チャララララ〜♪

「なんだこの局は?」
「チャルメラだな」
「チャルメラ?」
「なのはちゃんの世界にある…たしかラーメン屋に関係する言葉だったような気が〜」
「何でそんな事を知ってるんだエイミィ」

「なんでクリスマスにチャルメラなのよ!?」
「寒いからじゃないかな?」
「すずかちゃん、それ答えになってへんよ」
「それより、ちょっと回し辛いね」

「らーめんたべたい」
「ああん、ヴィータちゃんそんな潤んだ瞳で見つめないでー!!抱きしめたくなるからぁ!!」
「とか良いながら抱きつくなシャマル」

「ザフィーラ、あんたはどんなプレゼントを選んだんだい?」
「そういうお前はどうなのだ?」
「そりゃー秘密に決まってるじゃないか♪」
「ならば、俺も教えることは出来んな」

 そして曲がチャルメラからマジンガー、勇者警察、勇者王、GTO、歴代仮面ライダーと続いた所でようやく終わる。
 ここからが楽しいイベントタイム。
 それぞれが手元にあるプレゼントの中身を取り出し、一喜一憂していく様子が次々現れていく。

 内容は省くが、配られた物の中でもクロノの手元に渡ってきたプレゼントは特出していた。
 キレイに包装された箱の中から現れたのは、シーラカンス。
 それを見て固まるクロノにケティが一言。

「あたりだね」
キミのか
「いーじゃないか、生きた化石っていう珍しい一品だし、食べれない事もないから」
「どうりで生臭いと思ったが…きみは……」

 珍妙なプレゼントが現れたりして歓喜だか恐怖だかの悲鳴が上がる中、フェイトは自分の手元に来たプレゼントのさわり心地を堪能していた。
 彼女に周ってきたプレゼントは、小さな熊のぬいぐるみ。
 つぶらな瞳と、モコモコした毛触りが心地よい。 

(暖かい)

 小さなクマ人形を大事に抱きしまるフェイト。
 その様子に気付いたクロノは小さく微笑んだ。
 ちなみにザフィーラは骨ッコ、アルフは綺麗な装飾を施された首輪(犬用)だったようだ。
 他の人に行き渡ったときはどうするつもりだったのかと思う。
 だがまぁ、他の局員などは砂糖10kgや酒瓶1ダースなど、他にも訳の解らないものが出てるから大してレベル差は無いと言えよう。

 多くの人に遺恨を残しながら、パーティーは夜中まで続いた。








 夜も耽り、何人かの組は既に己の休む場所へと帰宅していっていた。
 はやて達も最後まで残りたかったが、乙女幼女と化したヴィータが寝付いてしまったので、起こすのも悪いと思い帰宅することにした。
 アリサとすずかも予想より帰りが遅くなってしまった為に、クロノとフェイトが送っていく事となった。
 アルフはザフィーラが局員達に腕相撲大会に引き込まれ、妙な負けず嫌いが発動した為にそれを眺めたから帰るとフェイトに伝える。
 リンディ達は終わった後も打ち上げを行うつもりらしく、エイミィも残ってその事を話し合っていたようだ。



 アリサとすずかを送り終えたクロノとフェイト。
 二人は並んでなのはの世界にある自宅マンションへの家路を歩いている。

「楽しかったね。クロノ」
「僕はかなり疲れたんだがな」
「そうなの?」
「ああ」

 クロノの言葉に小さく笑うフェイト。
 二人が歩いていると、空から小さな粒が頬についた。

「どうしたフェイト?」
「クロノ見て、雪だよ」
「ん…本当だ」

 空を見上げると、どんより曇った雲から次々と雪が舞い降りていた。

「キレイだね、クロノ」
「ああ、だが少し急いだ方が良さそうだ」
「どうして?」
「寒くなったら風邪を引いてしまうだろう」
「クロノと一緒なら寒くないよ」
「な?」
「?」

 フェイトの言葉にクロノは驚いて振り返る。
 当の本人は自覚無く、クロノの反応に首を傾げていた。
 その事に額を押さえて溜息を出す。
 この溜息は呆れなのかなんなのか、該当する情報は今の所彼の中では見つからない。

 何時までもその場で突っ立っていると、本当に風邪を引いてしまいかねないので歩き出す。
 フェイトもそれに遅れないようについていき、並んで歩いていく。
 気恥ずかしさを感じながら、クロノはポツポツ話を始める。

「そう言えばフェイト。キミの所にぬいぐるみが周ってきただろう?」
「うん。可愛いクマのぬいぐるみ」

 嬉しそうに微笑み、クマのぬいぐるみを取り出す。
 それを見て小さく微笑みながらクロノは語る。

「それ、実は僕からのプレゼントなんだが」
「え?」

 突然のクロノの言葉に驚き、彼に顔を向けて動きが止まるフェイト。
 そんな彼女に同じく顔を向けながら優しく話を続けるクロノ。

「喜んでもらえたか?」
「う、うん!すごく!かなり!!ううん、すごく嬉しい!!」
「そうか。なら良かった」

 それだけ言うと、クロノはサッサと先に歩き出してしまう。
 少し恥ずかしいのだろう。その顔は少し赤くなり、それが人にばれぬ様に俯きながら歩いていく。
 三歩くらい離れた所でフェイトはようやく我に返り、クロノの後を追って隣を歩く。

「クロノ、顔が赤いよ?」
「気のせいだ」
「寒くない?」
「少し熱いくらいだ」
「そう」

 言いながら彼女はクロノの腕に視線を向ける。
 ある考えを実行しようか迷い、モジモジしながらも彼女は決心する。
 少し間を置いてから、フェイトはクロノの腕に抱きつくように手を回す。

「フェ、フェイト!?」
「ちょっと寒いから、クロノで温まっても良い?」
「僕はカイロじゃないぞ?」
「でも、クロノ温かい」
「仕方ないな」

 クロノは苦笑しながらも嫌がらず、フェイトのしたいようにさせている。
 フェイトも恥ずかしいが、この心地よい温もりを堪能したい気持ちが上回っていた。

「クロノ」
「どうしたフェイト?」
「メーリクリスマス♪クロノ☆」


 混沌とした空気が某所で発せられる中。
 この二人の周囲は雪が祝福するように美しく舞っていた。




間に合わなかったァアアアアアアアアアアアアアアアア!?
全部出し切れずに、クロフェまでしか書けねぇえええええええええええええええぁ!?
畜生、今日に夜仕事ってありかよ。ギリギリまで描いても書き切れやしない。
こうなったら25日に残りのクリスマス書いて、6に後日話を書くしかない。
ああ、やっぱり予定通りにはいかないねぇ。
楽しみにしてる人がいるか知らないが、見てくれてる人。
解り辛いし暴走してるSSでゴメンなさい!!





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