〜新暦71年、魂の終着地と呼ばれる世界〜



「お久しぶりですね、“太陽神”。今日は一体何の御用でここへ?」

雲が厚く覆っている空の下で、一組の男女が白い丸テーブルを挟んですわって向き合っている。テーブルの上には紅茶が入っているティーカップがそれぞれ男性、女性の前に置いてあり、中央には紅茶が入っているポットが置いてある。赤い髪の女性は紅茶を一口飲んだ後、こう話を切り出したのである。

「ああ、貴行も健在のようで。今日ここに来たのは依頼の為」

男性は女性に対して同じように紅茶を一口飲んでから返答した

「依頼っ、ですか…。“太陽神”直々の依頼とは骨を折りそうなものなんでしょうね」
「否定はしない。実は…」

男性が話しているときに曇り空で雷が激しくなった。しかし男性も女性も特に驚くこともなく会話を続けている。ここでは当たり前の光景だからなのだろうか?

「…不穏な動きが目立ち始めたと?」
「ああ、ぜひ貴行に協力を依頼したい」
「はぁ。まあ“太陽神”直々のお願いとなればお断りするわけにもいかないでしょう。ただあなた方と私たちだけでこの事態に対処は無理なのでは?」

空になったティーカップに紅茶を補充しながら会話を続ける両者。

「そこでさらに協力者を募る必要があると考えている」
「…その言い方からしますと当てがあるようですね」
「ああ。“時空管理局”だ」

“時空管理局”という言葉を聞いた途端、ティーカップを持つ女性の手が震え、カチャカチャと音が鳴り始めた。

「あらあら、”太陽神”ともあろう御方が耄碌(もうろく)なさったのですか?私、いや私たちがあの組織に対してどういう感情を持っているか、ご存じないとは言わせませんよ?」

女性は表情こそにこやかだが、言葉に毒を含ませて怒りを表していた。

「もちろん知っている。貴行達がどれほどあの組織に対する憎悪を持っているのか…。しかしこの事態に対処できる力を持っている組織などほぼ無いのが現状」
「ええ、その点は間違っていないでしょう。しかし感情論で言わせてもらいますと、私の部下達も納得しませんし、“我が君”も同じように納得しませんよ」
「だが貴行自身は管理局全体が憎悪のものではないことはわかっているだろう?“あの事件”に関わった貴行なら」
「……」

男性の言葉に女性は押し黙って紅茶を飲んでいる。長い付き合いの男性は女性が迷いを見せているとわかっていた。故に彼女が口を開くまで待っているのである。 紅茶を飲み干した後、女性は重い口を開いた。

「…いいでしょう。ただ私なりのやり方で”品定め”をやらせてもらいます」
「いいだろう。その方が貴行たちも納得するか否かを決めやすくなるからな」
「それともう1つ、“彼ら”の監視はあなた方が全部やってください。こっちはそちらに人員をまわせなくなりますし、元の責任はあなた方にありますから」
「…痛いところを。だが事実だからな」
「じゃあ準備をしますか。久方ぶりの大仕事になりそうですし」

女性はティーカップやポットを持ってテーブルから離れるために立ち上がった。どうやら気持ちの切り替えはかなり早いようだ。

「ああ、心配は無用だと思いますが、一応帰り道は気をつけてくださいね。“黄泉”に落ちたらあなたといえどもただではすみませんから」
「心配無用だ。では頼んだぞ、“ケルベロス”」

その時大きな雷がぴかっと眩いほど光った。その光が収まった後、先ほどまで会話が行なわれた場所には何もなくなっていた。初めからそこに誰もいなかったように…。

星の数ほど次元世界が存在し、それを上回る数の人類が各世界に住んでいます。
それらの次元世界を監視、管理している組織「時空管理局」。次元世界における司法機関の役割を果たし、特に次元世界の崩壊を招く事態を防ぐことを目的としています。
新暦65年に経て続きに起きました2つの事件、「プレシア・テスタロッサ事件」と「闇の書事件」は最重要クラスのロスト・ロギアが関係した大事件だったため、管理局に大きな衝撃を与えました。
でもこの時、この2つの事件などさざ波程度と思わせるほどはるかに上回る大きな闇たちがすでに水面下で暗躍していたこと、そして新暦75年、その水面下で動いていた大きな闇たちが表舞台で動き始めることを、まだ誰も知るよしがありませんでした…。
「リリカルなのはStrikers With Saga」始まります。

To be continue…


あとがき
下手な文章ですいません。ブロンズと申します。
初めての小説でいきなり長編に踏み出すという無謀者ですが、温かく見守っていただけるとありがたいです。 感想や指摘があれば是非よろしくお願いします。







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