注意! これは翡翠の守護神を基にした、文明さんの作品とのクロスオーバー作品です! 以下の注意書きに該当する方は、読まない事を推奨します!!

・クロスオーバーものが苦手な方
・ギャグものが駄目な方
・翡翠の守護神、文明さん作品の雰囲気が壊されていることに抵抗を覚える方
・キャラがかなり壊れているのが許せない方

これらに該当しないという方はお読みくださいー。それではどうぞ!













平行世界、という言葉をご存知だろうか。われわれの住む世界と非常に良く似ていながら、しかしどこかが少しだけ違う、そんな世界。
これは、そんな平行世界同士が少しだけ重なり、そこに住む人達に起きた、ちょっとした事件のお話である。



翡翠の守護神番外編1 「未知の『文明』との遭遇」



「ふんふんふーん♪ さーて、今日も先生の授業を頑張るぞー!!」
無限書庫への道を、その少女……スバル・ナカジマは元気良く歩いていた。今日も今日とて先生であるユーノに逢うのが楽しみなようである。
だが、彼女はふと、その軽やかな足取りを止めた。何故なら、彼女の前方に何か妙なモノが転がっていたからだ。
「何だろコレ?」
スバルは屈みこむと、『それ』を抱え上げた。見た感じ、人形のようである。二頭身大であり、真っ赤な大きな目(複眼?)と奇妙な「W」の形をした口を持っている。手に指は無く、まるんとした形をしていた。
「うーん、誰かが落とした人形かなぁ? それにしても、随分と凄いデザインだなぁ……。今の子供達の間じゃこんなのが流行っているのかな?」
スバルは人形を抱えて色々な方向から見た。その人形?は結構な重さであったのだが、彼女には全く問題は無かった。しかしその時。

『こんなのとはヒドイディスねナイスなオパーイをしたお嬢さん。オディはこう見えても地元じゃちょっとしたヒーローなんディスよ?』

その人形が喋った。スバルはその人形をしばらく凝視すると、急にソレを抱えて立ち上がり、マッハキャリバーを起動して無限書庫へと向かった。
『ウェーイ!! お、お嬢さん、俺を連れていきなりどこへ行くディスカー!? いきなり愛の逃避行!!? いやいかんディスお嬢さん! オデにはやらなければならない使命が……ってあー、抱えられてる所為であたる胸の感触がとってもGOODディスのでもうどうでも良いディス……。』
人形はそんなくだらない事を言っていたが、スバルに無言でぶん殴られると大人しく沈黙した。



所変わってこちらは無限書庫司書長室。その中では、ユーノとラクスがスバルの授業のための準備をしていた。
「ではこんなものだな。……それにしてもスバルは遅いな。いつもならば、もう来る頃なのだが……。」
そう呟くラクスに、ユーノが言った。
「まぁそろそろ来るよ。スバルも六課の方が忙しいんだろうしさ。」
のんびりとコーヒーを淹れながら自分のデスクへと向かうユーノ。だが。

「せんせ──────────────ッ!! 大変です──────────────────ッッッ!!」
そう叫びながらマッハキャリバーの最高速で突入してきたスバルに後ろからタックルを食らう形となったユーノは、そのまま壁に激突した。
「げほぉぁっ!!!!!!!!!」
何か断末魔のような叫びをユーノは上げた。ちなみにスバルの体が密着しているために彼女の胸がユーノに押し付けられている形になっているが、当然の事ながら彼にその感触を楽しんでいる余裕は無い。
「ユ、ユーノ!? 大丈夫か、しっかりしろ!!」
慌ててラクスがユーノを救出する。白目をむいて体をビクンビクンと震わせてはいるが、どうやら命に別状は無いようだった。

「せ、先生大丈夫ですか!!? すみません、私またやっちゃいました……。」
ユーノの惨状を見て、涙ぐみながらスバルは謝った。ユーノは内心そろそろ突撃するのは勘弁してくれと思いながらも笑顔で言った。
「だ、大丈夫だよスバル、僕はなんとかね。だけど、そろそろマッハキャリバーで突撃するのは勘弁してもらいたいかな?」
そう言ってユーノはスバルの頭をなでる。目に涙を溜めていたスバルであったが、ユーノに頭を撫でられるとみるみるうちに笑顔になった。

「ありがとうございます先生! えへへ、だから先生って大好き!!」
スバルは笑顔でユーノに抱きつく。ユーノは苦笑しつつもその髪をわしゃわしゃと撫でてやった。それを苦笑しつつも優しく眺めるラクス。
とても穏やかな空気が流れた。だが、その空気を破るかのように声がした。
『あのー……そろそろいいディスかね? ここが十八禁な板ならこの後三人でくんづほぐれつな展開でもいいディスし、オディも正直それを見たいのディスが、今回は違うお話なもので……。』
三人の視線が一点に集まった。そこには、ちょこんと立ち上がってユーノのコーヒーを手にくつろいでいる人形の姿があった。

「な、何だいアレは……?」
ユーノが呆然と呟いた。明らかに何かが違う、と思った。というか、コレはここに、この世界にいてはいけない存在だと、彼の不幸センサーはビンビンと訴えていた。
「あ、そうなんですよ先生!! ここに来る途中で拾ったんですけど、急に喋りだして!! 先生なら何か分かるかもって連れてきたんですが!」
「い、いや、残念ながら僕も知らないよ。というか知りたくもないよ。アレに関わると、何だか良くないことが起きそうな気もするし……。」

そんなユーノとは対照的に、ラクスはずかずかとその人形に近づいて屈みこむと言った。
「私はラクシュミ。ユーノのデバイスだ。皆はラクスと呼ぶがな。それで、お前は何者なのだ?」
『これはご丁寧な自己紹介を有難うディスラクスさん。オディの名はブレイド。アンノウンロストロギアとでも言える存在ディス。』
「ロストロギアねぇ……お前がか?」
そう言うとラクスは胡散臭そうな目でその人形……ブレイドを見た。

『そうディスよ、ラクスさん。ところで……。』
「うん、何だ?」
『白、なんディスね。良くお似合いディスよ?』
ラクスはその言葉に首を傾げた。白が似合っている? だがその時、とある事柄に思い至ったラクスは、瞬時に動いた。
立ち上がると、ブレイドを蹴り飛ばしたのだ。それはもう、ドラゴンタイ○ーかブーストサ○クロン炸裂でゴールネットをブチ破って壁にめり込むくらいの勢いで。

ブレイドは実際にそのまま壁にめり込んだ。止めを刺そうと近寄るラクスを、スバルが後ろから羽交い絞めにした。
「離せスバル!! こいつには私の下着を盗み見たことの罰を受けさせねばならない!! 私の下着を見ていいのはユーノだけだというのに!!」
「落ち着いてラクス! 気持ちは分かるけど駄目だよ!! それにこのまんまだと話が進まないし!!」

そのスバルの説得に、ようやくラクスは怒りを納めた。だが、きっとブレイドを睨むと言った。
「……次に同じ事をしたら、その複眼に油性マジックで『文明』と落書きをするからな。」
『ヒィッ!! そ、それだけは、その字だけはご勘弁をッ!!』
「ラクースッッッ!! その二文字だけは駄目!! 他のにしなさい他のに!!」
ラクスの言葉に、同時に反応するブレイドとユーノ。意味が分からないスバルは、一人首を傾げた。



「……で、君は一体なんなのかな? 聞きたくないけど、でも話を聞かせてくれるかな?」
一通り落ち着いた後、ユーノは心底嫌そうにブレイドに聞いた。
『ウェイ。オディはこことは違う世界からやってきたディス。実はサイモンさんの所に出演した後、自分の世界に帰ろうとしたのディスが、誰かに呼ばれてこの世界に来てしまったのディス。』
まるんとした手で器用にカップを掴んでコーヒーを飲みながらブレイドは言った。

「サイモンさん? 誰それ?」
「聞くなスバル。世の中には聞いてはいけないこともある。」
空気を読まずにそんな事を聞いたスバルをラクスが戒めた。それを見て深い溜息をついた後、ユーノは言った。
「で、誰に呼ばれてきたんだい君は?」
『それが分からないんディス。オディとしても、早く元の世界に戻りたいんディスけどね。皆、きっとオディの帰還を待ち望んでいるでしょうし。』
ブレイドは短い腕で腕組みをしながら言った。ユーノは内心彼がいなくても大して影響は無いんじゃないかと思っていたが、敢えてそれを口にはしなかった。

「しかし困ったね。早く帰って欲しいんだけど……。」
ユーノも腕組みをして考えこんだ。と、そこへ幼女形態のアルフが血相を変えて部屋へ飛び込んできた。
「ユーノ、大変だよ!! 今フェイトから連絡があったんだけど、なのはが……!!」
興奮したアルフから事情を聞いた面々は、すぐに起動六課へと向かった。





「なのは……。」
転送されたユーノ達が見たものは、破壊されて煙を何本も立ち上らせている隊舎。えぐりとられた地面。そして。
「ユーノ君……来てくれたんだ……。」
レイジングハートを手にし、笑みを浮かべるなのはだった。しかし、その笑みはいつもとは違う。どこか、何か禍々しさというか、ドス黒い感情を内包したものだった。

フェイトからアルフにもたらされた情報。それは、なのはの突然の乱心であった。
普段通りに仕事をしていたなのはが、急に「ユーノ君! ユーノ君はどこ!!?」と叫びながら暴れ始めたのだ。リミッターをかけられている筈なのに、なのははそれ以上の力を発揮し、取り押さえに入ったフェイトやヴォルケンリッターの面々をも打ち倒し、暴れ始めたのである。
そして、自分たちだけでは辛いと判断したフェイトがアルフに念話を送り、ユーノ達を呼び出した、という訳である。

「で、でも何でなのはさんがこんな……。」
スバルが蒼褪めた顔で言った。そしてそれに呼応するかのように、ブレイドが叫んだ。
『あ、アレは!!』
「!? し、知っているのかブレイド!?」
『アレは伝説の「黒なのはさん」……! オディの世界のそのまた平行世界における、覇王で魔王ディス。その力は強大で、立ち塞がる者は容赦の無い砲撃であっさりと沈められるウェイ。』

何だかんだ言って見事なコンビネーションを見せるブレイドとラクス。その様子をうんざりした様子で見ながらユーノは言った。
「それはともかく、なのははどうしてあんな風になっちゃったのさ?」
『恐らく、オディがここに来た影響で、オディがいた世界やそれに近しい世界の情報がこの世界に流れ込んだ所為でしょう。』
「!? つまりは君が原因ってこと!!?」
『そうなりますウェイ。』

しれっと言うブレイド。びき、と青筋を浮かべたユーノは、その首を締め上げる。
「帰れ!! 早く自分の世界に帰れ!!」
『いきなり言われてもそんなの無理ディス。せめて次元が歪むくらいのことは起きないと。』
首を締め上げられても平然とするブレイド。まぁ二頭身のために首が無いのでユーノの首絞めは大して効果が無かったようである。

ユーノはやるせない怒りに肩を震わせていたが、ぞくり、と背筋を這う悪寒を感じ、思わず後ろを振り向いた。
そこには、桜色の魔力光とドス黒いオーラを噴出させた黒なのはさん(便宜上こう呼称します)がいた。ディバインバスターの発射態勢に入っている。
「ユーノ君に近づく奴は……みんな吹っ飛べなのぉッッッ!!」
「いけない! みんな離れて! ラクス! セットアップだ!!」
「了解だユーノ!!」
黒なのはさんが砲撃を放つのと、ラクスがユーノの左腕に宿って盾となり、ラウンドシールドを形成したのはほぼ同時であった。

桜色の奔流を、翡翠の盾が受け止める!
「なのおおおおおおおおおおおおおッッッ!!」
「ぐううううううううううううううッッッ!?」
黒なのはさんの砲撃を、何とかしのいだユーノ。そんな彼を愛おしげに見つめながら、黒なのはさんは言った。
「さっすがユーノ君♪ 私の砲撃を受け止めるだなんて♪ やっぱり、私の全てを受け止めることが出来るのはユーノ君だけなの……。」

そう言うと黒なのはさんは顔を赤らめながらもじもじとし始めた。その様子に、ユーノは唖然とする。
「な、なのは!? 一体どうしちゃったの?」
『黒なのはさんの行動原理は単純明快ディス。ユーノさんとイチャイチャしたい、ラヴラヴしたい、チョメチョメしたい、それだけなんディス。』
「はぁ!? 何ソレ意味分かんないよ! 特にチョメチョメ!!」
『またまたー。そんな子供じゃないんディスから分かるでしょう? ですからユーノさんが彼女を満足させれば大団円なんディスよ。』

そう言うとブレイドは胸のポケットをまさぐって一本のドリンクを取り出すと、ユーノにそっと手渡した。
『オディからの気持ちです。どうか使って下さい。』
ユーノはそのドリンクを見た。ラベルには、「スカ印の特製絶倫ドリンク!! これを飲めば、貴方も十二人の娘達や複数の幼馴染や職場の同僚を相手にしても息切れしません! むしろ相手が失神!! 満足すること間違いなし!!」と書かれていた。
ユーノは最後までそれを読むと、無言でドリンクを握りつぶした。

『ああっ! 何をするんディスか!! それ高かったのに!!』
そう喚くブレイドを無視しつつ、ユーノは黒なのはさんに視線を戻した。彼女は依然としてくねくねもじもじとしていたが、流石というか何と言うか、そんな事をしていても隙は微塵も無かった。
(正直、僕とスバルだけで彼女を捕らえるのは難しいな……。もう何人か味方がいれば……。)
ユーノは内心で焦りを感じた。しかしその時、ユーノの元に、天佑とも言うべき声がかかった。

「ユーノ! 大丈夫!?」
「ユーノ君、来てくれたんやな!」
「ユーノさん! 来てくれるって信じてたです♪」
そう言いながら、フェイト・はやて・リインフォースUがユーノの周りに集まった。頼もしい増援の到着に、ユーノも顔を綻ばせる。

「みんな! 無事だったんだね!」
「そらそうや! 私ら何ぼなのはちゃんが相手かて、そう簡単にやられるような雑魚キャラやないで!」
そのはやての物言いに全員が苦笑する。だが。

「…………チッ。」
明らかに悪意の篭った舌打ちが、その場の空気を凍らせた。
全員が舌打ちをした人物……黒なのはさんの方を見た。彼女はさっきまでのくねくねもじもじとした(何とかギリギリな)乙女モードから一転、冥王モードに入っていた。
「なんなのみんな、私とユーノ君の邪魔をして……。もうちょっとでユーノ君に性的な意味で美味しく頂いてもらえるところだったのに……。」
「い、いやそんなことないよなのは!? 全然もうちょっとじゃなかったし、何より僕は君をそんな性的な意味で食べるとかしないから! そんなつもりもないから!!」
「もー、ユーノ君の恥ずかしがりやさん♪ 大丈夫なの、ちゃんと分かってるの。ユーノ君が本心を言わないのは、私と二人きりじゃないからだよね? 今すぐに、邪魔な連中はさっさとお掃除しちゃうから、ちょっと待っててなの♪」
笑顔で言う黒なのはさん。だがその眩しい笑顔とは裏腹に、彼女が纏っているドス黒いオーラは一層強くなっていた。

(くっ……どうする……!?)
黒なのはさんの威容を前に、歯軋りするユーノ。だがそんな彼に、はやてが毅然とした態度で告げた。
「ユーノ君! このままじゃみんななのはちゃんにやられてまう!! せやから──────」

「──────私と『合体』するんやッ!!」

はやてがそう叫んだ後、辺りはしん、と静まり返った。だがそれもほんのひと時。
「ちょっと待って──────────ッッッッ!? はやて、な、何を言ってんのさ君は!?」
「は、はやてちゃん! 私を差し置いてそんなの許さないなの!!」
「ちょっとはやて!!? こ、こんな状況で冗談は良くないよ!?」
「八神部隊長! 自重して下さい!!」
<<いくら師匠といえどもそんな暴挙は許さんぞ!!>>
「はわわ、はやてちゃん大胆過ぎますー!! で、でもユーノさんとそんな事しちゃ駄目ですー!!」
『ウェーイ。これは撮影の準備をしなければならないディスねー。』

一名程全く違う事をいっている奴がいるが、他の面子は皆必死になってはやての暴言を戒めた。しかし当のはやてはと言うと。
「何言ってるんやユーノ君。私らいっつも『合体』してるやないかー。」
と、あっけらかんと言い放った。

「な、何を言っているのはやて!? 全然意味分かんないんだけど!!」
またもや放たれた爆弾発言に、狼狽するユーノ。だが今度は周りの反応がさっきと違っていた。
『……………………………………………………。』
黒なのはさん・スバル・フェイト・リインUが、ジト目でユーノを見つめていた。強力な無言のプレッシャーである。更には装着しているラクスからも同種のプレッシャーが放たれていた。
『流石はユーノさん。こちらの世界でもUTAMAROなんディスねー。』
一人納得したように腕組みをしてうんうんと頷くブレイド。その姿にユーノは本気で殺意を抱きかけたが、現状の打破が最優先だったので、その感情を頭の隅に追いやり思考を再開しようとした。

だがそれよりも、はやての行動の方が早かった。
「何もたもたしてるんユーノ君! ほんなら……いくでぇっ!!」
そう叫んだはやての体には劇的な変化が起きていた。
彼女の体から眩い光が溢れた次の瞬間、はやての体は光と変わり、その中から無数の紙片が現れユーノの体を包み始めた。

『こ、これは!? そうか……そういうことだったんディスね!』
「どうしたのさブレイド!?」
突然何かに気付いたように叫んだブレイドに、スバルが尋ねた。
『オディの世界の影響を受けたのはなのはさんだけでは無かったと言う事ディス。はやてさんもその影響を受けていたのディスね。オディはてっきりおもちゃ箱の方から引っ張ると思っていたのディスが、相手が黒なのはさんならあっちになった方が良いかもしれないウェイ。』
「え、えーと良く分からないんだけど……あれもブレイドの知っている、他の世界の八神部隊長なの?」
『そうディス。守護と為る者……鬼神咆哮デモンヤガミンディス!!』

ブレイドが高らかに叫ぶ。その間にもユーノの体は変化していった。
後ろで縛られていた髪は白く、より長くなり腰まで伸びた。
バリアジャケットの背中部分には扇を畳むように紙片が重なり、ラインのように刻まれた文字を映す装甲翼が現れた。

だがここでまたしても予想外の事が起こる。その変化を見ていたリインUが、突然ユーノに向かって突撃したのだ。
「はやてちゃんばかりにいい格好はさせられません! ユーノさんは……リインにとっても大事な人なんですから!!」
そう叫ぶとリインUは、自身を光に変えるとそのままユーノの中へと消えていった。

「ええ!? ど、どうしてリインがユーノとユニゾン出来るの!?」
驚いたようにフェイトが叫ぶ。それに答えたのはブレイドであった。
『おそらくユーノさんとはやてさんが合体したためディスね。そのお陰でユーノさんとリインさんのユニゾンが性交……もとい成功したんだと思うウェイ。』
すっかり解説役が板についてきたなぁとブレイドを見ながら、スバルが尋ねた。
「で、リイン曹長は他の世界の影響は受けていないの?」
『もちろん受けているディスよ。元々この世界のリインさんもユーノさんに好意は持っていたようディスが、あのラヴっぷりはおそらく祝福の風と翡翠の護り手の影響を受けているウェイ。』
さらりとブレイドは言った。しかし今更だけど、こんなに作品名を使いまくっていいのかなぁ……。でもまぁ文明さんには報告したし。これがアップされたらまた改めて謝ろう、うん。

そんな作者の苦悩をよそに、ユーノの変身は完了していた。
その姿は、美しかった。はやてとリインUが合体した影響で、髪は白に近い銀となっている。
背中には、装甲翼と、はやての背にある黒い翼も生えていた。
圧倒的な魔力を漲らせ、ユーノ・スクライアはそこに悠然と浮かんでいた。

……のだが。彼は動く気配がない。目を閉じたままである。時折苦しそうに眉を寄せるだけで、それ以外の行動をとろうとしない。
黒なのはさんの方も、折角ユーノ君とガチンコ勝負をしようと思って待っていたのに何だか拍子抜けな顔をしていた。

『……これはひょっとして。』
そんな中、ブレイドがぽつり、と呟いた。それを聞いたスバルがブレイドに問う。
「どうしたのブレイド? 何か気付いたの?」
『ウェイ。多分そうだと思うのディス。ちょっとユーノさんの内部を映し出すウェイ。』
そう言うとブレイドの複眼が輝きだし、ぺかーっと中空にスクリーンを映し出した。こいつ本当に便利だなぁと思いながら、スバル達はその映像を見る。その映像では……。

「せやから私がユーノ君とメインで戦う言うてるやろ!! あんたらは黙ってサポートしいや!!」
「いくら師匠と言えどもそれは聞けんな!! 大体この話ではメインは私とスバルのはずだ!」
「はやてちゃんもラクスちゃんも横暴ですー!!」
「あーもう頼むから喧嘩しないでよ僕の中でー!!」

……女性陣三人がもめており、ユーノがそれを必死に宥めている状況であった。
「……ん? あれ? 外と繋がってる……!?」
ブレイドが作ったスクリーンにユーノが気付いた。どうも向こう側からもスクリーンを通じてこちら側が見えるようである。

「せ、先生! ど、どうしたんです?」
「どうもこうもないよ……。みんな自分が僕と組んで闘うと言って聞かないんだ……。」
喧騒を背にしながらユーノはがっくりと項垂れた。その様子を見た黒なのはさんが、笑顔でユーノに言った。

「ほらユーノ君、やっぱりユーノ君のことを分かってあげられるのは私だけなの。はやく私の所へ来て、朝まで一緒にいるの♪」
「いや、君も僕のことを分かっているとは言いがたいんだけど……。」
ぐったりしながら言うユーノ。と、後ろから三人が黒なのはさんに抗議した。

「なのはちゃん! 外からユーノ君を誘惑せんといて!!」
「なのは! そんな黒いお前はユーノに似合わん! 諦めろ!!」
「そうです!! ユーノさんはなのはさんの私物じゃありません!!」
だがそんな三人の抗議を一笑に付すと、黒なのはさんは高らかに言い放った。

「うるさいなの!! 私より胸が小さい貧乳師弟とロリ担当はすっこんでろなの!!」

その瞬間。三人の間に「ビキビキビキィッ!!」「!?」という、週刊少年マ○ジンのヤンキー漫画御用達の表現が満ち満ちた。
「オウ……なのはちゃん……(ビキビキ)ちょっと“ハードラック”と(ビキッ)踊ってみるかー……!?(ビキビキビキッ)」
「(ビキッ)なのは……(ビキビキッ)世の中にはよゥ……(ビキビキビキッ)言って“いいこと”と“悪いこと”があんだぜェ……?(ビキキッ)」
「なのはさん……(ビキッ)誰が……(ビキビキビキ)“貧乳つるぺた要員”ですか……?(ビキキキッ)」

怖い。とにかく怖い。至近距離にいたユーノは既に恐怖のあまりにがたがた震えていた。そのユーノの肩をがっちりと掴み、はやては言った。
「ラクス、リイン! 一時休戦や!! 皆で協力して、あの女をシメるで!!」
その言葉に、ラクスもリインUも頷く。
「それじゃあユーノ君! 私ら三人でサポートするから、メインは頼むで!!」

そう言うと、スクリーンの中の四人の姿は消えた。代わりに、こちらに浮かんでいたユーノの目がゆっくりと開いた。
「やっと準備が整ったようなの。じゃあ早速いくの!!」
黒なのはさんがアクセルシューターを放つ。ただし量が半端ではない。数百個単位のそれがユーノめがけて殺到する。

「せ、先生ッ!?」
「ユーノ!?」
スバルとフェイトが爆炎に包まれた彼の名を呼ぶ。だが、爆炎が晴れた後には、スフィアプロテクションを張って全弾を防いだ無傷のユーノが現れた。

「凄いねユーノ君! 私もヤりがいがあって嬉しいなの!!」
黒なのはさんはカートリッジをガッシュンガッシュンロードしながら本当に嬉しそうに言った。それを苦笑しつつ見ながらユーノは考えた。
(とにかく、なのはの動きを封じないとね……。なら、『アレ』を使うか……。でもちょっと時間がかかるな……。)
そう思いながらユーノは、ちらりとスバルとフェイトに目をやった。酷な事だが、彼女達にも協力してもらわないといけない。そうしないとどの道全滅なんだから。そう考えたユーノは二人に言った。

「スバル、フェイト。何とかなのはを数分間だけ足止めしてもらえないかな?」
黒なのはさん相手に数分間の足止め。それはイコール死とも言えるものであったが、しかし二人は不敵に微笑んだ。
「分かった。やって見せるよユーノ! 私だってユーノをなのはに独占されたくないもん!」
「任せてください先生!! 授業の成果、見せてあげますよ!!」
頷き合うと、スバルとフェイトはなのはの元に向かい、ユーノはその場で魔法を展開し始めた。

黒なのはさんと対峙する二人。と、スバルのバリアジャケットをちょいちょいと引っ張る者がいた。ブレイドである。
「何ブレイド? 私たち、これから命がけの闘いを始めるところなんだけど……。」
『分かってますウェイ。ですからスバルさんのお力になろうかと。』
「私の?」
不思議そうにスバルは首を傾げた。そんな彼女にぐっと親指(丸い手から生えてきた?)を突き出すと、ブレイドは言った。
『そうディス。ではいきますよ! 貴方に、力を……。』

そう某Xのヒロインっぽく言うと、ブレイドの体が輝き始めた。そしてそのままスバルの左腕に己が身を宿らせたのである。
光が収まると、スバルの左腕には光り輝くガントレットが装着されていた。表面に(0w0)の顔がついているのがちょっとアレではあるが。
『これぞブレイドナックルディス!! さあスバルさん、フェイトさんと共に心置きなく闘って下さいディス!!』
だがそう言うブレイドに、スバルは感激した。
「ありがとうブレイド!! それじゃあいくよ!!」
そう言って右手のリボルバーナックルと左手のブレイドナックルを胸の前でガキンと打ち鳴らすと、スバルは戦闘態勢に入った。
『痛い!! オディはデリケートなんディスから、もうちょっと取り扱いには気をつけてほしいウェイ!!』
もっとも、そんなことを言うブレイドに、ちょっとだけ不安が募ったが。

「準備は整ったみたいね。それじゃあいくなの!!」
割と律儀に一連のやり取りが終わるのを待っていてくれた黒なのはさんが、また数百個単位のアクセルシューターを放ってきた。それを背中あわせになりながら、スバルとフェイトは防いでいく。
「なかなかやるなの。でも負けないなの!!」
そう叫ぶ黒なのはさんに、フェイトも負けじと言い返す。
「私だって負けない! 胸だってなのはに勝ってるしね!!」
動揺を誘おうとしたのか、フェイトの本音が出たのかは分からない。だがそのフェイトの叫びに対して、黒なのはさんは冷たく言った。

「何言ってるの。物語の最大の見せ場の最終決戦であんなお尻丸出しで下着を穿いてないバリアジャケットを纏った露出狂の変態さんなフェイトちゃんにそんなこと言われても何とも思わないの。」

「ふぇええええええええええ──────────んっっっっ!!! 好きで着たんじゃないのに─────────ッッッ!!」
『しかも2007年12月号の某雑誌の表紙でもそのお姿を披露してたウェイ。アレはとっても眼福だったディス。』
「いやあああああああああああああ!! 言わないで──────っ!! だって用意されていた衣装がアレしか──────っ!!」

完全に墓穴を掘った(しかも味方からも追い討ちされた)フェイトは、目の幅の涙をぶわーっと流しながら泣き叫んだ。それでも何とかなのはのアクセルシューターを撃墜していたが、もうスバルとのコンビネーションを行なえるような状態ではなかった。
(フェイト隊長が……! こうなったら私が前に出て、先生とフェイト隊長を護らないと!!)
スバルはそう考え、黒なのはさんに突撃した。

「来たねスバル……。やってやるなのおっ!!」
咆哮を上げて黒なのはさんがスバルを迎え撃った。レイジングハートを棍棒よろしく振り回すその顔は、まさしく魔王のものであった。
「ぐうううううううううっ!?」
その攻撃を両手のナックルでスバルは防ぐ。時折『痛い! 痛いディス!!』という声が左手から聞こえるがガン無視を決め込んだ。

「全く……! いっつもせんせーせんせーってユーノ君にじゃれつきやがってこの雌犬がなの!! 私だって本当はユーノ君に甘えたいのに!! ユーノ君に抱きつきたいのに!!」
レイジングハートをぶん回しながら、黒なのはさんが絶叫する。それを聞いたブレイドは、ぽつりと言った。
『なるほどウェイ。』
「何!? 何が成る程なのブレイド!!?」
『オディを呼んだのは、どうやらこの世界のなのはさんだったみたいディス。』
「ええ!?」
そのブレイドの言葉に、スバルは驚愕する。

『おそらく、ここの世界のなのはさんはユーノさんと仲が良いスバルさんを羨ましがって、そして嫉妬もしてたんでしょう。自分もああしたい、と。で、その強い思いがオディを……黒なのはさんと近い世界にいるオディを呼んだウェイ。偶然が重なったとはいえ、凄まじい想いディス。』
それを聞きながら、スバルは考えていた。
なのはがそこまでユーノの事を想っていたとは知らなかった。だが、だからといって自分はユーノから離れることが出来るのか。
少し考えただけで答えが出た。それは否。断じて否であった。ならば……!
「なのはさん……! なのはさんの想い、私が受け止めます! そして私の想いも知ってほしい! 同じ……先生を慕う者として!!」
「上等なの!! ポット出の小娘がいきがるななの!!」
そうして二人は激しくぶつかり合った。お互いの気持ちをぶつけ合うかのように。

一方その頃。ユーノは練っていた魔法を完成させていた。
「これでよし……! 後はなのはの隙を作るだけだね。」
「ほんならそれはフェイトちゃんにやってもらおかー。さっきのリベンジもかねてなー。」
そうユーノの中で言うはやては、明らかに悪い事を考えている顔だった。彼女はフェイトに念話を送ると、にたりとほくそえんだ。
「……は、はやて、何をフェイトに言ったの?」
「それは後でのお楽しみやー。それよりユーノ君、いつでもいけるようにしといてな?」
そう言われたユーノは不安な顔で頷くと、なのはの方に意識を向けた。

激闘を繰り広げる黒なのはさんとスバル。しかし地力の違いか、スバルは既にボロボロであった。
「くうっ! やっぱりまだ私一人じゃなのはさんには……!」
「当たり前なの。本編の模擬戦でちょっといいところまでいったからって勘違いするななの。」
そう言いながら、黒なのはさんはレイジングハートの先端をスバルのお腹にめり込ませた。そのままディバインバスターの発射態勢に入る。

これは流石にまずい、そう思った時、金色の閃光が二人の間に割って入った。フェイトであった。
「フェイト隊長!!」
スバルが叫ぶ。その声にうっすら笑みを浮かべて応えると、フェイトは凛とした顔で黒なのはさんに向き直った。
「おやおや、露出狂の変態さんなフェイトちゃんが今更何の用なの?」
黒なのはさんの揶揄に、耳まで赤くしながらもフェイトはきっと彼女を見据える。そして言い放った。

「変態でも良いよ……! 変態らしいやり方で、なのはを止めてみせるからっ!!」

その言葉に黒なのはさんは違和感を覚え眉を顰める。だがフェイトがザンバーフォームで突撃してきたために、その思考は中断された。
一気に間合いを詰め、二人はぶつかりあう。息がかかるほど近づいた状態で、フェイトは必殺の言葉を吐いた。
「ねえなのは……、なのははどれぐらいユーノの事を知ってるっていうの……?」
「何を言うのフェイトちゃん? なのははユーノ君のことなら何でも知ってるの!!」
「ふうん……分かったよ……。でもね……これだけは聞いておいてほしいんだ……。」

「……ユーノのお○○○○……おっきいよ?」
「なのおおおおおおおおおおおおおおっ!? フェイトちゃん!! それは流石に言っちゃ駄目なの!!」

はやてがフェイトに託した必殺の言葉。それはかつて、別の世界の某所でフェイトが発した言葉。今でも次元を超えて語り継がれる伝説の言葉。
その言葉をまさかここで聞く事になるとは思わず、しかも意外と純情な所がある黒なのはさんは激しく狼狽した。
くすくす笑いながら後退するフェイトを思わず追ってしまう黒なのはさん。

と、急に彼女の動きが止まった。まるで、何か見えない糸に絡めとられたかのように。よく見ると、陽光に何かが反射して煌いた。まるで、翡翠の糸のような……。
「……かかった……。」
いつの間にかスバル達の近くまでやってきたユーノがそう呟いた。黒なのはさんは首を巡らしてユーノに問いかけた。
「ユ、ユーノ君! これは!?」
「僕が作り上げた新しいバインドさ。超極細にしたおかげで、肉眼はおろか、各種センサーでも捕捉は困難。もちろんバインドの太さは任意に変更可能さ。こんな風にね。」
そう言うとユーノはバインドを一気に極太にした。見えない糸に絡めとられたように見えた黒なのはさんは、翡翠色のバインドに簀巻きにされてしまっていた。

「名前は……そうだね、ストリング・バインドとでも名付けようか。それにしても、この世界での僕のオリジナルで切り札たるこの魔法をこんなバカ話で初披露する羽目になるとは思わなかったよ……。」
どこか遠くを見ながらそう呟くユーノ。その姿に一同は同情を禁じえなかったが、その時、地獄の底から響いてくるような笑い声がした。
「な、なのは……?」
それは、黒なのはさんの笑い声であった。最初は小さく、だが次第に押さえきれなくなったかのように大きくなり、遂には絶叫に近いものとなっていた。
「ふふ……はは……あはははっはははははははははっははっはっはははははははははは!! 凄い、凄いよユーノ君!! それでこそ私のお婿さんなの!!」

そう叫ぶと黒なのはさんは全身に力と魔力を漲らせ始めた。ユーノのバインドに、亀裂が走っていく。
「そんな!? 僕だけのものならともかく、はやてとリインの魔力で増強されたバインドでも拘束しきれないなんて!!」
ユーノの顔が驚愕に彩られる。その間にも黒なのはさんは少しずつバインドを外していき……遂に、完全に抜け出した。

「なのおおおおおおっ!! ブラスタービット展開! スターライトブレイカー、チャージ開始!!」
黒なのはさんは抜け出したと同時に、自身最大の魔法を展開した。ブラスタービットとあわせたスターライトブレイカー。カウントダウンが無情に進む。
だが、この時ユーノの頭に閃きが走った。危険な方法ではあるが、状況を打開するにはこれしかない。

「フェイト、はやて、リイン、ラクス! スターライトブレイカーを迎え撃つよ!!」
そのユーノの言葉に、一同は驚愕する。
「そ、そんな無茶やユーノ君!! 一発ならともかく、ブラスタービットのも来るんやで!?」
「無茶は承知の上さ。それに……僕に考えがある。頼むよ、皆の力を貸してくれ!!」
そう言われた一同は、覚悟を決めた。ユーノがここまで言うのだから、きっと大丈夫だと、そう信じて。

「ラクス、ラウンドスラッシャーフルドライブ!!」
<<了解、マスター!!>>
「はやて、リイン!! ラグナロクの発射準備を!!」
「了解や!」
「任せて下さい!!」
「フェイト! プラズマザンバーブレイカーをお願い!」
「分かった、ユーノ!」

それぞれが最大の攻撃魔法の発射準備に入る。だがスバルには何の指示も与えられなかった。
「あの、先生私は? 射程は短いですけど、ディバインバスターなら私も撃てますけど……。」
「いやスバル。君には別の事をお願いしたいんだ。一番重要な事をね。」
「え?」
首を傾げるスバルに、ユーノはこれから起こる事と、スバルの役割を話した。

カウントダウンが終了し、桜色の魔力が暴力的な勢いで膨れ上がる。その魔力を、黒なのはさんは解き放つ!!
「それじゃあいくよ! 全力全壊! スターライトブレイカー!!!」
黒なのはさん自身からはスターライトブレイカーEXが、五機のブラスタービットからはスターライトブレイカーがそれぞれ放たれた。

それとタイミングを同じくして、ユーノ達も魔法を繰り出した。
「エメラルドフロージョン!! いっけーッ!!」
<<ファイア!!>>
「響け終焉の笛!! ラグナロク!!」
「雷光一閃!! プラズマザンバーブレイカー!!」
三人……正確に言うとはやてはユーノの中から彼の体を介して、ということだが……が放った魔法が一つに絡み合い、スターライトブレイカーと激突する。

その威力はどちらも勝るとも劣らない。そのあまりの威力に、小規模ながら次元震が発生する程であった。
そしてそれこそが、ユーノの狙いであった。
「スバル、ブレイド!! 今だ!! あそこからブレイドを送り返すんだ!!」
スターライトブレイカーとユーノ達の魔法が激突している部分に、わずかながら次元の裂け目が出来ていた。

そう、超高威力の魔法同士が激突したことによる次元震の発生。それこそがユーノの狙いであった。
先ほどブレイドは『せめて次元が歪まないと』と言っていたが、それは裏を返せばそういうものが発生すれば自力で帰れることを意味していた。
黒なのはさんがスターライトブレイカーの発射準備に入った時にそれを思い出したユーノは、一か八かの賭けにでたのである。
もっとも、問題は次元震が発生するかではなく、ブレイドが帰るまで自分たちがもつか、ということであったのだが。

「さあブレイド! あそこから帰るんだ!!」
『え……あそこを通るんディスか……?』
そしてこちらはスバル・ブレイド組である。ユーノの指示によってちょうど次元の裂け目が見える位置に陣取っていたスバルは、ユーノの狙い通りに裂け目が発生したことを確認すると、ブレイドに帰るよう促したのである。
だがブレイドは尻込みしていた。まぁその気持ちも分からなくは無い。超絶魔法同士がぶつかっている所に飛び込めと言っているのである。近いのは火の輪くぐりであろうが、あれの数百、数千倍は危険な行為といえた。

「でも君が帰らないと、なのはさんも皆も元に戻らないんだよ!? 君だって、元の世界でやることがあるんでしょ!?」
スバルは恐怖のあまりにいまだにガントレット状態のままでいるブレイドに言った。
『い、いやきっとオディがいなくとも向こうじゃみんなよろしくやっているディスよ。それに、こちらの世界も居心地いいなー、なんて……。』
完全に次元を越えるのを拒否するブレイド。その態度に業を煮やしたスバルは、強硬手段をとることにした。いきなり左腕をぶんぶんと振り回し始めたのである。

『ウェイ!? ス、スバルさん、何をするディスかー!?』
ブレイドの悲鳴も無視してスバルは左腕を回し続ける。やがて勢いが最高となり、左腕に装着しているブレイドが、その勢いのあまり少しずれた。
その機をスバルは見逃さなかった。回転させていた腕を正拳突きを放つように前へと思いっきり突き出したのである。
すると、その勢いのままにブレイドがすぽーんと抜けて飛んでいった。まぁ分かり難い人は、スバルがブロウクンマ○ナム(ブレイドヴァージョン)を放ったと思っていただければ間違いはない。

「じゃあねブレイド! 今度はちゃんと自分の世界に帰るんだよー!!」
笑顔で言うスバル。しかしブレイドにはそれに応える余裕は無い。
『ヒィ────ッ!! こ、これちゃんと軌道は合ってるんディスかー!? 何かスバルさんめっちゃ適当にオディを放った気がするんディスけど!!』
実を言うと、スバルは確かに目見当でブレイドを放っていた。だが幸いにもブレイドの軌道はちゃんと次元の裂け目へとつながるものであった。
『ああ……刻が見える……。』
そんな事をいいながら、ブレイドは次元の裂け目に吸い込まれていった。

ブレイドが消えた途端に、黒なのはさん達に変化が起きた。
黒なのはさんからは魔王オーラが消え、スターライトブレイカーの放射も中断された。
ユーノの体からははやてとリインUが分離した。

「あれ……私……?」
そう呟いたなのはは、体をぐらり、と傾かせると、そのまま気を失ってしまった。そのまま落下していく。
「なのはッ!!」
ユーノはいち早く反応すると、落下途中のなのはを抱きしめ、ゆっくりと地上に着地した。

「あれ……ユーノくん……?」
どこか虚ろな声でなのはは言った。黒なのはさん状態の時に暴れた反動が来たのであろう。普段の彼女からはほど遠い、ぼーっとした様子であった。
「うん。良かった、元に戻ったみたいだね。本当に良かった……!」
そう言って深く安堵の息を漏らすユーノの首に、何か温かく、柔らかいものが巻きついた。
ユーノが驚いて見ると、なのはが笑顔と共にユーノの首に腕をまわしているのが見えた。
「えへへー、ユーノくーん。」
「な、なのは!? 何してるのさ!?」
「んーと、ユーノ君とのすきんしっぷー。だってユーノ君、最近スバルやラクスばっかり構って、私のこと全然構ってくれないんだもん。だからこうやってユーノ君を補充してるの♪」

そう言うとなのはは、嬉しそうにユーノに頬ずりして甘えてきた。ユーノはやめるように言おうとしたが、幸せ一杯ななのはの顔を見ると、苦笑して言うのを諦めた。
そのままなのはの髪を優しくなぜるとユーノは言った。
「仕方ないなぁ……。少しだけだよ?」
「うん。ありがとうユーノ君。にゃはは、ユーノ君大好きー!!」
そう言って首にまわした腕に力を込め、より強くユーノを抱きしめるなのは。ユーノも優しく微笑みながら、彼女の髪を撫で続け、されるがままになっている。

そんな甘々な二人を少し離れた所から、他の面子が苦笑しながら見つめていた。
「はううー、なのはさんいいなーですー。リインも頭なでなでしてほしいですー。」
「そかそか。じゃあ後で私らもやってもらおうなー。」
「私もユーノをぎゅっとしたいなぁ……。」
「おかしいなぁ……これってユースバ作品のはずだよねラクス? 何か私は今回すっごく影が薄かった気がするんだけど。しかもあれ見てるとやっぱりヒロインはなのはさんなの?って思っちゃうんだけど。」
「言うなスバル。それを言ったら私だってそうだ。あの変態ロストロギアと黒なのはさんに完全に食われてしまったからなぁ……。まぁ本編ではこうならないように頑張ろうではないか。」
各人それぞれが様々な思いを抱きつつ、こうして一連の騒動は幕を閉じた。



それから数日後。無限書庫司書長室で、ユーノとラクスはスバルの授業の準備をしていた。
「それにしてもこの間の出来事は災難だったけれど、でも興味深い出来事だったなぁ。他の世界、か。」
コーヒーを淹れながらユーノはそう言った。
「何だユーノ、他の世界に興味があるのか?」
資料を纏めながらラクスが尋ねた。しばらく考えた後、ユーノは苦笑交じりに言った。
「そうだね、興味がないっていったら嘘になるよ。だけど、この間のブレイドみたいなのとは……できればもう二度と関わりたくないなぁって思うよ。」
そのユーノの言葉に、ラクスも頷いた。
「全くだな。もう二度とあんなバカな騒動は御免だな。」
そう言ってごきり、と首を鳴らすラクス。デバイスである彼女もこの間の騒動は大分こたえたようだ。

と、その時、司書長室のドアがノックされると、スバルがひょっこりと首を覗かせた。その様子にユーノとラクスは顔を見合わせる。
「どうしたのさスバル、入っておいでよ。」
「えーと、それがですね先生。あの、また別の世界から来たって人と逢っちゃいまして……。」
そう言ってスバルは後ろに目を向けた。どうやらその人物はすぐそこまで来てしまっているようである。
ユーノとラクスは再び顔を見合わせた後に、二人そろって叫んだ。

『今すぐ帰ってもらえ!!』











どうもー。earlyでございますー。という訳で翡翠の守護神番外編1 「未知の『文明』との遭遇」をお届けしましたー。
これは読んで分かるとおり、文明さんとのクロスオーバー作品でございますー。
何でこんなモノを書いたかといえば、オトコノコ祭りでのチャットでのやりとりに端を発しますー。

文明さん「(ビキッビキッ)オウ、early……!(ビキビキッ)ちょっくら“ブレイド”を使ったSS書いてみろや……!!(ビキキキッ)」
early「“上等”だよ文明……!?(ビキビキビキ)その“挑戦状”……確かに受け取ったぜ!?(ビキビキ)」

……特○の拓はある意味ギャグ漫画だよね。いやまぁちゃんと話しますと、チャットでブレイドが出張出演したサイモンさんの作品の話しになりまして。で、是非ブレイドを使って書いてくれと言われたのですー。
で、そういうのは私も好きでしたので、やってみようということで書き上げたのがこの作品なのですー。まぁ、ブレイドだけじゃなくて他の作品も借用してしまったので「スーパー文明さん&early大戦」になっている気もしますが……。

と、ここでお詫びを。サイモンさん、話の流れとはいえ勝手にお名前を使って申し訳ありませんでした。この場を借りてお詫びします。

とびかくこの作品はまぁ文明さんが喜んでくれればいいと作ったものですので、正直他の方々に喜んでいただけるかは微妙ですねw
というか、他の方々が仮に喜んでも、文明さんがつまらなかったら私の負けなんですよねぇ。どんな感想を頂くか怖いですwww
まぁ機会があれば、またこういうものも書いてみたいですねー。

それとどうでもいい事を一つ。翡翠の守護神番外編としていますが、番外編で起きた事は本編には殆ど反映されませんのであしからず。反映するのはストリングバインドくらいかな?

それでは次の作品でまたお逢いいたしましょう。それではー。





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