「んーっ!今日も朝からいい天気やな」 朝起きてカーテンを開け、日差しを全身に浴びて背筋を伸ばす。 如何にも健康的な感じが漂う、みんなの愉快な機動六課の部隊長、八神はやての朝はこうして平和に始まった。 だが、平和なのは朝だけだった。 「おはようございます!はやてちゃん!」 「ああ、あはようリイ……ンん?」 「どうしたんですか?不思議そうな顔をして」 「リイン。一つ聞きたい事があるんや」 「はい、なんですか?」 「その仮面……何?」 「ああ、これですか?ギンガに貰ったんです!とてもカッコイイギャラクシー仮面3号ですよ!」 「ああ、そうか……なのはちゃんが言ってたのはこれか」 なのはから、ギンガがギャラクシー仮面1号と名乗って何かやっていると聞いたのが昨晩。まさか翌日の朝に関わる事になるとは、それもリインが3号。 なんて、なんて…… 「なんて面白そうなんや!!!」 この人が突っ走りそうな展開なんだろう。 「よーしリイン!ギンガは今何処や?」 「はい、ここに来る途中で見かけたので朝食を取っている頃かと」 「近いな!リイン、行くで!」 「はいです!」 と、何やら不穏な空気が漂う中。 「うぅ、悪寒が」 ティアナは本能で何かを察知していた。 「風邪でもひいたの?」 「起きた時は何も無かったんだけど……いや、原因なら簡単か」 そう言ってティアナはチラリと自分の真向かいに座って大盛りの朝食を食べているスバルの真横を見た、そこには。 「どうしたのかね?ティアナ君」 1号がいた。 「ギンガさん、その無理にヒーローみたいな喋り方するのやめません?というかその仮面やめて下さい」 「いや、なんか取れなくて」 「呪われてるんじゃないですか?」 「はっはっは、そんな事は無い。朝から少し変よ、ティアナ」 「そうだよ、この人はギャラクシー仮面1号さんだよ。ギン姉じゃないよ」 「すっっっごく言われたくない二人に言われた……どうして未だに気付かないかな」 いきなり全開(全壊?)なナカジマ姉妹。 そこに、さらなる恐怖がやってきた。 キキィィィーーーーー! そんな音で靴底をすり減らす豪快なコーナリングと見事な加速。これなら世界も狙える、そう言われても不思議は無い素晴らしい走り。 「はっけーーーん!!」 それを無駄に使う愉快な部隊長とちっちゃな相棒←仮面付き。 「帰って下さい」 ティアナの先制攻撃。 「顔合わせていきなりそれかい。私の育て方が間違ってたんかなぁ?」 「いいえ、はやてちゃんは悪くないです。悪いのはみんな贅肉です、ウエストがほんの少し太くなって苛立っているだけなんですよ」 しかし、ちっちゃな相棒は受け流し、反撃に転じた。 「な、なんで知ってるんですか!」 「ああ、どうりで朝触ったら少しふっくらしてると思った」 「やわらかかったわね」 「姉妹で何やってんですか!」 ティアナは『やわからいお腹』のステータスを得た。 「で、ものは相談なんやけど」 ズルズル。 「いきなり話を進めないで下さい、私のパスタを食べないで下さい」 「駄目ですかぁ?」 ズルズル。「食べていいですから頭の上にいるのはやめて下さい」 「はーい」 ズルズル。 「パスタを食べるのやめてから動いて下さい!」 グールグール。 「わーい!ティアがパスタにくるまれたー♪」 ティアナはパスタ怪人へと変身した。 「帰れーーー!!全員帰れーーー!!ナレーションも帰れーーー!!」 「仕方ないですねぇ」 「しゃーない、帰ろ帰ろ」 「お腹いっぱい、ごちそうさま」 「じゃあ私は部屋に戻って仮面のお手入れでも」 お疲れでしたーーー(≡ω≡)ノシ 「あ、ごめんなさい。やっぱ待って」 「お願いですから戻って来て下さい」 「もう、ティアは寂しんぼさんだなぁ」 プニプニ。 「やっぱりリインが居ないとなのですよ」 プニプニ。 「私の活躍はこれからやしな」 プニプニ。 「良く考えたらこの仮面外れないんでしたね」 プニプニ。 やっぱここの文が無いと分かりにくいでしょー。 プニプニ。 「って全員して私のお腹を触るなーーー!!!やっぱ帰れーーーー!!」 全員帰りました。 「え、早っ!ちょっ、待ってよそんな」 「あのーー、申し訳ないんですけど戻って来ていただけないでしょうか?」 「駄目ですか?そこをなんとか」 「ギャラクシー仮面4号でもなんでもなりますから帰って来て下さい」 「よっしゃーーー!その言葉を待ってたでーーー!!」 カチャーン。 こうして4号は生まれた。 そしてその日の午後。 午前中は所用で出ていたなのはが帰って来た時、目撃したものとは。 「紫の仮面!技の1号!」 キラーン。 「ピンクの仮面!力の2号!」 キラーン。 「水色の仮面!マスコット3号!」 キラーン。 「お、オレンジの仮面!みんなの4号!」 キラーン。 「全員揃って!」 「「「「見参!ギャラクシー仮面!!」」」」 なんか凄いのだった。 「素晴らしい。これでちびっ子の人気は総取り!私が経営する遊園地の人気もうなぎ登りや!」 「はやてちゃんそんなの経営してないでしょ」 「お、なのはちゃん帰ったんか。これの感想聞かせてや」 はやてが指差す先には戦隊物顔負けのポーズを取った仮面の集団。 正直不気味である。 「ギャラクシー仮面ってさ、ギンガの名前から取ったんだよね。そのまま漢字にすると銀河だし」 「そのとーーりです!」 遠くからギンガが答える。だがポーズは崩さない。 「じゃあさ、ギンガ以外は“ギャラクシー”じゃないよね」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「「しまったーーー!!」」byギンガ&はやて。 「なのはさん、冷静ですね」 「あはは、なんか予想出来ててね」 「流石です」 と、ティアナがなのはに心底感心している間に、事態は悪化した。 「そうか!敵がいないんや!正義の味方が居るなら敵が必要や!」 「なるほど、感激しました!さっすが八神部隊長!」 「いやいやいや。それは名前とは関係無いですから」 「じゃあ敵役はなのはちゃんな」 「え、何で私が?」 「いや、ほら、私は監督やし、他に誰もおらんし」 「でも、それはちょっと」 割と本気で嫌がるなのは。 敵役となればこの仮面の、しかも集団と共に行動する事になる。となれば嫌がるのは当然だ。 「えーーー、ケチーー。ほらぁ、なのはちゃんってなんだかピッタリやん」 「ええ、なんだかピッタリですよ」 「はい、なんだかピッタリなのです」 「私もなのはさんならピッタリだと思います」 「なのはさんならきっと素敵な悪役になれます」 「ノーコメントです」 「ちょっ、そんな盛り上がらなくても……」 なのはの抵抗むなしく。 「ピーッタリ」 「ピーッタリ」 合唱開始。 「ピーッタリ」 「ピーッタリ」 「ピーッタリ」 「あーもー分かった!やります!やらせて頂きます!」 こうして事態は坂を転がり落ちるみたいに収集困難な方向へ。 砂ぼこりをまき散らせてなのはが立つ。手では黒い布地がひらひらと風になびいている。 「私はギャラクシー仮面の宿敵!えーーっと、え……と、うん。ワルイゾ大帝だ!」 「なんつー分かりやすい名前や」 「ていうか名前も考えて無かったのに悪役出す気だったんですか?」 ティアナの攻撃。しかし、無視されてしまった。 「このフェイトちゃんの下着を返して欲しくば大人しく……大人しくなんかしろ!」 そう言われてよくよく見ると、なのはが持っているのは女性物の下着。それがヒラヒラと手の中で踊っている。 「しかも目的も無しですか」 「あの下着にはツッコまんの?」 「それだけの勇気は私にはありません」 「ワルイゾ大帝め、フェイトさんの下着を盗むなんて。私が許しませんよ」 「おお、キャロがやる気だ」 「甘い!これは合意の上で持ち出したの!」 要、確認。 ただし、方法は不明。SLBが怖くない方はどうぞ。 「えっと……じゃあいいです!」 「いいんだ!」 「だって合意の上ならいいじゃないですか」 「そりゃそうなんだけど」 「ところではやてちゃん!私は何すればいいの!」 高町なのはさん、悪役の目的が思い付かず、ギブアップです。 「もう1枚!」 「分かった!」 「分かっちゃうんですか!!」 「と、いう事で!このフェイトちゃんの下着を返して欲しくばもう1枚寄越せなの!2枚目欲しいから!」 「返す気無いじゃないですか!」 なのはとはやての奇行にとことん振り回されるティアナ。 そんなティアナを見て、セコンドのはやてがタオルを投げた。 「よし、リイン!オチや!」 「はい!で、どうすればいいですか?」 「知らん!ぶっちゃけ収集つかんわこれ!」 「じゃあ寝るです!」 「よし!みんな、お昼寝タイムや!」 「それは無いです。どんな形でもいいですからオチを付けてください」 「えー、めんどい」 「自分のした事なんですから、自分で責任取って下さい」 「そういうのは偉い人に任しとき」 「あなたは十分偉い人です。部隊長」 「いや、私ここでは愉快な部隊長やし」 「普段から愉快でしょ!」 「仕方ない、オチつけるか」 「出来るんなら初めからやって下さいよ」 急に誰も居ない方向を向くはやて。 そして息を思いっ切り吸い、そこで動きが止まる。 「あの、部隊長?」 視界の端の方に見覚えのある車が見えた。 ティアナの記憶が正しければ、フェイトの車である。 だんだんとその姿が大きくなって来る。 なんだか物音がした気がしてそちらを見ると、仮面の集団が揃ってなのはの方を指差していた。 「おーーーい!なのはちゃんがフェイトちゃんの下着持ち出しとるでーーー!!」 「他人に頼るんですか!」 ティアナがそう言った時、視界の隅を黄色い何かが駆け抜けて行った。 なのはの方を見ると、なのははもう居らず、黄色い何かがそれを追い掛けて行った。 黄色い何かが通り過ぎる瞬間、『なのはーー』という涙声と、『私のあげるから許してー』という声がティアナの耳には聞こえていた。 全力で聞かなかった事にした。 「いや、オチてませんよ?」 「まぁ待ちい」 そう言ってはやてが手で制す。 すると、ヒラリとティアナの頭に黒い布が落ちて来た。 「はい、フェイトちゃんの下着が落ちた」 「そっかぁー、下着が落ちて来てオチがついた……ってコラーーー!」 ティアナの絶叫が木霊する。 そしてその翌日、ティアナはなんだか普段よりも動き辛そうにしているフェイトと、ご満悦ななのはを見かけた。 見なかった事にしよう。 あとがき? ギャバです。 またやっちまいました。 だから次は前々から思ってたバトルしてる話を書きたいと思います。 それでわぁ〜。 |