俺の名は……。職業はフリーライターだ。
不本意ながら最近は時空管理局の女の子の尻を追いかける日々だ。

自宅近所のカフェでコーヒーを飲みながら新聞を読んでいると大きな見出しが目に入った。

【第132管理外世界政府−アフトヴァーズ王国−が魔法を認知】
【アフトヴァーズ王国時空管理局に加盟決定】

「ほう、久しぶりに新しい管理世界が増えるのか...」とつぷやく俺。
次元世界には多くの世界があるが文化や科学・技術はパラバラで魔法を持たない世界も
多く存在する。まあ遅れたままの世界もあれば進化しすぎて自滅する世界もある。
時空管理局はそんな...って俺が解説する話じゃないな。

【加盟調印式にアフトヴァーズ王国チェルカースィ王女がクラナガンに来訪】
「王女様ねぇ...一般大衆が喜びそうなネタだねぇ」
その時上着の内ポケットから呼び出し音がした。俺はモニターを投影し電話に出た。

『……か俺だ』
『なんだベントレー』
『また仕事を頼みたい』
『もう高町なのはは勘弁してくれよ。俺も彼女から相当嫌がられている様だ』
『もうそのネタは旬を過ぎたよ。他誌にも出まくりだしな』
『じぁあ何だ』
『新聞は見ただろ。王女様の話だ』
『今読んでいる所だ』
『調印式の前に歓迎晩餐会があるんだ。それの取材を頼む』
『何だそれは。何で俺なんだ』
『女がらみだと、お前さんの方がツキがあると思ってな』
『おいおい世の中半分女なんだぜ』
『まあ、そういうなギャラははずむぜ』
『しぁねぇな』




俺は歓迎晩餐会の会場となる時空管理局迎賓館にいた。

「しかし週間星光なんぞに良く取材許可で出たもんだ」と訝る俺。
列席者は管理局の要人を始め主な管理世界の代表や大使...いわゆるVIPって奴だ。
だから取材陣もメジャーどころばかり多く集まっていた。
「こんな取材を週間星光の記者としてやるのは...激しく場違いで間抜けだな」と自嘲気味に呟く俺。
その時俺に声をかける奴がいた。

「……じゃないか久しぶり妙な場所での再会だな」
「おうオースティンか、まあ浮世の義理って奴よ。そういうお前は何なんだ」
「晩餐会の中継さ。俺もちょっと出世してな今ではテレビディレクター様よ」
「へぇー、そりゃ大出世だ。今度祝いに奢ってくれよ」
「また今度な。お前も取材か?」
「俺はケチな雑誌さ」
「ふーん、そうか。また美味しいネタあったら教えてくれよ」
「そんなのあったら俺が欲しいよ」
「ははは、じゃまたな」

オースティンは以前某所の取材で同行した事のある奴で当時は単なるテレビクルーだったが
何かよほど良いネタをつかんだらしい。羨ましい限りだ。

写真を撮りながら会場を彷徨う俺。

「流石に警備は厳重だな」

迎賓館の周囲には、それらしく綺麗に装飾された塀がありその外側には防御結界が張られていた。
あたりまえだが要所要所に管理局武装隊員が配置され警戒にあたっていた。

「さて後は王女様の登場を待つだけか...」




迎賓館の王女控えの間に王女一行が待機していた。

「それにしても爺は心配性じゃな」
「そうは申されますが本国からの報告では管理局加盟反対勢力が何やら不穏な動きをしているとの事です」
「時空管理局も万全の警戒をしてくれておろうに」
「それはそうなのですが...」

そこへドアをノックする音がして一人の若い女性管理局員が入ってきた。
その娘は女王とその随員たちに敬礼すると
「失礼します。本日晩餐会の間お側で警護に当たらせていただく高町三等空尉です」
「ご苦労近こうよれ」と侍従長
「おお中々可愛らしい護衛じゃな。高町殿、名は何と申す?」と王女
「なのは...高町なのはと申します」
「なのはか良い名じゃな」
「恐れ入ります」

そのやり取りの間侍従長は なのは の顔を怪訝な様子でじっと見つめていた。

「高町殿そなたの様な者が王女様の警護に付くとはな。それにその姿はあまり王女様のお側にはふさわしくないのう」
「はあ、申し訳ありません。武装隊の制服でして公務の時はこの姿で勤務するのが規定です」
「少し考えがある、隣の部屋に入ってくれぬか」
「はいわかりました」

侍従長は侍女の一人に何事かを指示した。
隣室に入ったなのはは、いきなり侍女たちに制服を脱がされ始めた。

「ええっ何するんですか?」
「私たちと同じ姿になっていただきます」
「はあ...」

ちょうど着替えが終わった頃王女が入ってきた。

「おお なのは殿なかなかお似合いじゃな。しかし今ひとつ腑に落ちぬのう...」
「はあ...」

何か思いついた王女は侍女に何事かを指示した。

「ええっ良いのですか王女様」
「良いのじゃ」
「でも侍従長がどう申されますか...」
「爺には私から言っておく」
「はい承知しました」

再び なのはの服を脱がせ始める侍女たち

「ええっ今度は何なんですか?」

その問いには答えず無言で作業する侍女たち。

「ええっ何で、そんなの着るんですか?」
「王女様の仰せです」
「はあ...」

しばらくすると王女と同じドレス姿のなのはがそこに立っていた。

「おお中々美しいではないか少し嫉妬するぞ」
「はあ...」と恐縮するなのは

ドアをノックする音がして侍従長が入って来た。

「何をそんなに時間がかかっておるのか?」となのはを一瞥して眼を見張る。
「王女様も同じ事を考えられるとは...」と侍従長は苦笑いする。
「しかし流石に王女様には失礼かと思いまして侍女姿に止めるつもりでしたが...」
「良いではないか。妾も堅苦しい晩餐会など出たくもないしのう」
「しかし公式行事に身代わりを立てるのはいかがな物かと」
「流石に調印式には身代わりという訳には行かぬじゃろうがな。晩餐会ならまあ良かろう」
「はあ、しかし...」
「妾も一度こういうのをやってみたかったのじゃ。映画の様ではないか」と結構はしゃぎ気味の王女

「あの...私の意見は聞いていただけないのでしょうか?」となのは
「そちの任務は王女様の安全確保であろう。そのために最善をつくす義務があるのではないか?」
「それはそうなのですが...」

侍従長は侍女たちになのはのメイクアップを念入りにする様に指示した。

「これ以上美しくなられては妾の立場がないのう」
「とんでもございません。ご冗談を...」となのは
「ははは戯言じゃ。許せ。しかしそちは美しいのう...」

こうして、なのはは王女の身代わりを務める事となった。





BACK

inserted by FC2 system