ここは時空管理局本局無限書庫、いつもなら徹夜3日以上で倒れていたり無限の本の雪崩に飲み込まれている司書達で大変なことになっているはずなのだが・・・。

「あれ?おかしいな誰もいない」

仕事の依頼に無限書庫に来たフェイト・T・ハラオウン執務官は首をかしげた。
いつも人手不足で、てんやわんやしている無限書庫においてこんな事は初めてだった。

「おかしいなぁ、アルフもいないしどうしたんだろう?」

ここで手伝いをしているはずの使い魔のアルフもいない、本当にどうしたのだろうと腕を組みながら
と考えていると

「あれ、フェイト?」

聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。この声は、と思い振り返ると
そこには無限書庫司書長ユーノ・スクライアが不思議そうな顔で立っていた。












〜きっかけ〜












「これはどういうことなの、ユーノ? 誰もいないなんてこんなこと初めてじゃない、何かあったの?」

この状況が理解できないフェイトは何かあったのではと心配していたが。

「あれ、今日はお休みだよ。ちゃんと連絡のメールは送っといたはずだけど届いてなかった?」

「え?」

慌てて携帯をチェックしてみると『無限書庫一日お休みのお知らせ』というあまりにも分かりやすい題名で
届いていた。
そういえば昨日は急な任務が入り帰って来たのは深夜だった。
いつもなら確認するはずのメールのこの時だけは、日ごろの疲れもあってそのまま寝てしまっていた。

(ちゃんとチェックしとくんだった。次からはどんなに疲れててもチェックだけはしよう、うん)

恥ずかしくなって少し顔を伏せ赤らめながらそんなことを軽く心に誓うのだった。

「でも、急にお休みだなんて良くそんな事できたね」

普段の無限書庫の状態を知っている者なら誰もがそう思うだろう。
休暇どころか休憩も無いに等しい、司書が倒れるのも日常茶飯事の職場で有名で、新人達に関して言えば
教官の「無限書庫研修に行かせるぞ!?」は恐怖の代名詞になっているほどなのだ。
そんな無限書庫が休みとなればどんな裏技を使ったのか!と思うのも仕方が無い。

「それは・・・話せば長くなるだろうし。でも、フェイトはいいの?仕事の依頼に来たんじゃ?
重要なことなら調べるよ?」

「いいよ、そんな急ぎの仕事でも無いしお休みなんでしょ?」

いつも真面目な性格をしている彼女だが今回ばかりは好奇心の方が強かったようだ。

「じゃあ、時間も丁度だし食堂でお昼でも食べながら話そうか」

「うん、分かった」

こうして二人は食堂に向かって歩いて行った。















ことは1週間前に遡る













『明々後日までにこのロストロギアの資料を頼む』

「ふざけるな!毎回毎回こんな殺人的な量を注文して、僕達を殺す気かクロノ!」

ある意味いつも通りケンカしている二人で合ってが、この時だけはタイミングが悪かった。
今、無限書庫は司書が圧倒的に少ないのだ。なぜかと言うと元々の司書の人数が少ないこと、それに拍車をかけるように局内で流行っている風邪に殆どの司書がかかってしまい、ユーノを含め今は18人で切り盛りしている状態なのだ。
しかし、仕事は待ってくれない。次から次とくる依頼を片付けていかなければならないというのにだ。、
そのせいで司書達は徹夜5日目、ユーノに関しては7日目という修羅場に立っていた。
なので

「こっちは明らかにオーバーワークなんだぞ!」

と怒鳴りたくなるのも仕方がない。

「スクライア司書長!また一人倒れました。おい、しっかりしろ!傷は浅いぞ?!」

「あぁじっちゃん、ばっちゃん今からそっちに・・・」

「司書長、107部隊より資料の請求が!」

こんな状況下で本当なら倒れることしか許されないこの戦場において奇跡にも等しいありえない言葉が
ありえない人物から聞こえてきた。

『ならこの仕事を二日で終わらせる事が出来たら、僕の権限を使って君ら全員に休みをやろう』

クロノからしてみれば、これはやる気を起こさせる為に言った出任せだったのだが・・・

「・・・・・・ホントだね、その言葉に嘘はないねクロノ」

静かにそれでいて、とても透き通った声でユーノは言った。

『あ、あぁ出来たらの話だがな、まぁ頑張ってくれ』

通信が切られた後も書庫内は妙な空気が流れていた。
しばらくの間、誰も一言も喋ろうとはしなかった。そして

「みんな、今の聞いたよね?」

「はい、モチロンデスヨ」

「録音もばっちりですよ、これで言い逃れは出来ません」

「あの鬼畜提督に一泡吹かしてやりましょう!」

「じゃあみんな無限書庫の底力、見せてやろうじゃないか!」

「「おおおおぉぉぉぉーーーーーーーーーーーー!!!!!」」

この後、無限書庫には鬼神達が降臨したと言う。

















「ふぅ、こんなもんかな」

無限書庫がオーバーワークな事は、当の昔にクロノは気づいていた。
しかし何処の部署も人員を裂くことはできない。
だからせめてやる気だけでもくれてやろう、と激励のつもりであんな事言ったのだ。
いつも喧嘩ばかりしている二人だが親友同士、一応心配はしているのだ。
仕事も、片付いたので一休みしようと、席を立とうとしたその時

「お疲れ〜クロノ君、はいコーヒー」

「ありがとうエイミィ」

相棒のエイミィ・リミエッタが話しかけてきた。

「でもいいのかなぁ?あんな事言っちゃって」

「あんな言葉で、やる気が出るなら安いものさ」

「でも、本当に終わらせちゃったら・・・」

「君には、あの量が二日で終わるとでも?」

「だよね〜」


そんな他愛も無い会話をしている二人だが、預言者でもない二人は後悔する事になるとも知らずに時は過ぎていった・・・









     _____________________________________









  二日後


アースラの点検のため丁度ドックに来ていたクロノと補佐のエイミィの元に一人の局員が向かってきた。

「クロノ・ハラオウン提督、お客様が来ておりますが?」

「僕に客?誰だ」

「無限書庫司書長ユーノ・スクライアさんです。」

それを聞いて二人は固まってしまった。

(クロノくんもしかして、この前の)

(そんな事があるか!きっと別の用件だろう)

「あのどうかしましたか?お時間が無いのでしたらお帰りになってもらいますが・・・」

そんな念話が行われているとは知らない局員は少し困った風に言った。

「いや、なんでもない。すぐに行くから客室で待ってよう伝えてくれ」

「分かりました」

そう言って局員は走っていった。

「じゃあエイミィちょっと行ってくる。こっちは任せたぞ」

「了解。クロノ君も、その、頑張ってね」

「ああ」

客室に向かうクロノを心配そうに見つめるエイミィだった。







「遅いじゃないか!クロノ」

「あぁ、すまない色々と忙しくてな」

クロノが客室に入った瞬間、ユーノが放った第一声がそれだった。

「それでなんの用だ?」

冷静な口調で言ってはいるが内心はどうか自分の考えが外れてますようにと強く願っていた。が

「約束通り二日で全ての仕事を片付けたよ。その報告だよ」

そう云う時に限って見事に考えが当たってしまうものである。

「ほ、本当に終わらしたのか!あの量を全て」

未だに信じられないクロノはユーノの持ってきた資料に目を通した。

(た、確かに全部終わってる)

もう完膚なきまで、完璧に仕上がっていた。

「クロノ、男に二言は無いよね? あ、惚けようとしても無駄だよ、ちゃんと証拠もあるんだから」

そう言うとポケットからカセットテープを取り出した。
それをおもむろに再生させた。そこには

『ならこの仕事を二日で終わらせる事が出来たら、僕の権限を使って君ら全員に休みをやろう』

『・・・・・・ホントだね、その言葉に嘘はないねクロノ』

『あ、あぁ出来たらの話だがな、まぁ頑張ってくれ』

カチッ、とカセットを止めると

「何か言いたい事はあるかな?クロノ」

「・・・・・・何も無い。無限書庫職員全員の休暇の申請はしておく」

「じゃあ頼んだよ」

そう言ってユーノは帰っていった。

世界は、いつだって………「こんなはずじゃないこと」ばっかりだ!!
そう改めて痛感したクロノであった。
















「とまぁこんな事があって今に至るんだよ」

「あぁ、だからあんなに疲れてたんだ義兄さん」

その話を聞いてフェイトは納得した。なぜなら義兄さんは、もう三日間も徹夜で報告書を書いているからだ。
特に大きな事件も無いのにあんな大量の報告書を書いている理由が解からなかったが、今謎が解けた。

「それにしても、こうしてユーノと二人きりで話すのは久しぶりだね」

「……ああ、だね。昔、裁判のときは打ち合わせとかでたまにあったけど」

仕事の話抜きでこうして話すのは初めてではないだろうか?とユーノは思った。

「ところでこの後ユーノはどうするの?折角のお休みなんだし、どっか遊びにでも行くの?」

「そうだね、部屋に戻って溜まってる論文でも書こうかなぁと思ってるけど」

いくら休みだと言っても普段から遊ぶ事のないユーノは、結局仕事をするか一日中寝てるかのどちらかなのだ。
もう少し遊ぶ事を覚えたほうがいいかなぁと考えたりしていた。

「でも、息抜きはしたほうがいいよ、ずっと働きづめだったんでしょ?」

「フェイトとこうして話してるのでも僕にとっては良い息抜きだよ」

「そ、そうなんだ、それならいいかな」

と、頬を紅く染めながら恥ずかしそうに言った。
なにか変な事でも言ったかなぁ?と首を傾げるユーノであった。

「じゃあ、そろそろ僕は戻るかな。フェイトも少しは休みなよ」

そう言って食堂から出ようとした時、何か思い出したようで

「フェイト、これあげるよ。息抜きに付き合ってくれたささやかなお礼だよ」

「これは?」

よく見るとそれは、ミットチルダにある有名な高級レストランの食事券だった。しかも二枚。

「これどうしたの!」

フェイトが驚くのも無理は無い。このレストランは予約しても3、4ヶ月待ちという人気店で
尚且つその食事券ともなればその価値は想像し難い。

「この前、仕事の依頼主から頂いたんだけど、僕は使わそうだからね。
だから今度の休暇の時にでも誰か誘って行って来なよ」

「こんな高価なもの貰えないよ!」

自分はただ、話を聞いていただけに過ぎない、なのでこんな高価な物を貰うわけにはいかなかった。
でもユーノも好意でしている事なので、どう返そうか考えていると

「なら、フェイト、今度の休暇の日に僕と一緒に食事にでも行きませんか?」

そんな事を言われてしまった。

「え!?」

「これなら、最低一枚はフェイトの元にいって無駄にならないと思うんだけどどうかな、受け取ってもらえる?」

「そういう事なら、でも誘ったからにはちゃんと休暇とってよね」

「努力はするよ、それじゃあまた今度ねフェイト」

そう言ってユーノは食堂を出て行った。









(どうして、あそこであんな気持ちになったんだろう)

仕事場に戻ってきたフェイトだったが、さっきの食堂の事ばかり考えていった。
食事に誘われた時、とても嬉しい気持ちになった。
なぜこんな気持ちになったのか、フェイトは分からなかった。
いくら考えても答えは出そうに無かった。

(こんなの調子じゃ駄目だ、もっと気を引き締めないと)

そうは思っているのだが、やはり考えてしまう。
ユーノは真面目だからきっと休暇をとってくれるよね。とか
その日はどんな服を着ていこうかな。とか
そう思うと、とても楽しい気分になってきた。

「私も休暇取れるように頑張んないと」








そう言って、溜まっていた仕事を片付け始めた。

自分の心に生まれた感情に気づかずに・・・






















〜オマケ〜





久しぶりに、なのは、はやてと三人で昼食をとっていた。

「そういえば、フェイトちゃん聞いたで」

はやてが思い出したかのようにそう言った

「何を?」

フェイトにしてみれば何かミスでもしたかなぁと見当違いな事を考えていると

「今度の休暇、ユーノ君と食事に行く約束したんやってな」

「ど、どこでそれを!」

このことは誰にも話してないはずと思っていると

「食堂にいた親切な局員さんが教えてくれてな」

「へ〜、フェイトそんな約束してたんだ」

さっきから一言も喋らなかったなのはがそう言った

その瞬間強烈な寒気が走った

((こ、このままじゃまずい))

そう感じたときにはすでに遅かった

「フェイトちゃん、詳しくお話聞かせてもらうの」

たった今、ここに白い魔王が光臨した―――





時を同じくして、親切な局員の話しを聞いて無限書庫で大暴れした徹夜3日目の某提督と
必死にその某提督の攻撃を防ぐ司書長の姿があった










あとがき



どうも、ハルバートと申します。
初めてSS書きました。
どう書いていいのか分からず内容が滅茶苦茶になってしまいました、その辺は大目に見てやってください。

こんな駄文に時間を割いて読んで頂き、ありがとうございます。


今後ともよろしくお願いします。(今後があるのか!?)





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