非常階段の踊り場で、手すりに両腕をかけて遠くを見つめる、いつものように。
腕のリングを見下ろして憂鬱な気分が振り返す。
主とここにいることを選んだのは自分の意思だ。確かにそうだが、この枷の分だけ自分が弱くなって、それでも足りずに主自身にも出力制限がかけられて。
インテリジェントデバイスなら「考える」ことで補う・・・と簡単に決めてはみたものの、もとがオーバースペック気味な演算能力をこれ以上増強しても、箇体が処理できるとも限らない。
まこと、武器である自分には屈辱と言っていい処置だと思う。
もし主に今の気分を正直に話したら、きっと困ったような笑顔で謝る気がするので、言わない。
同士ならば価値観も似るのだろうが。
しゃりん。
硬質の音色が連続して、一定のリズムで近づいてくる。
反応をサーチ。
生命反応・・・「その他」にカテゴライズ。魔力波動検索・・・2件ヒット。両条件を満たす対象・1件。
ばたん、じゃりん。
「どうでしたか、バルディッシュ」
ドアを開けるやいなや、まっすぐこちらを見上げる10代半ばほどの少女・・・を模した姿。
「遅かったな、レイジングハート」
「みなさん設定に手間取っていたみたいです。普段より手が鈍いというか」
手を後ろに組んで優しく、優しく笑っている。いつもと変わりないことを強調するように。
「・・・・・・」
大きな頭飾り、首に巻かれた幅の広いチョーカー、身頃にレース飾りを施したパフスリーブのブラウス、腰周りはコルセットで締めてボリュームが多いロングスカートが広がる。紺で統一されたそれは彼女によく似合ってはいたけれども。
「・・・・なんというか、痛々しいな」
「そうですか?服は気に入ってるんですよ」
スカートを軽くつまんで見せる。足首にはめられた革と鉄色の拘束具・・・としか呼び名を知らない物体がはっきりと見えた。突き出たリングには銀色の鎖が伸びて、右から左へと流れている。
「両足が繋がっているのか」
「え、あ、はい・・・長さは自分で調節していいそうです」
隠すようにスカートをつまんだ手を離す。その拍子にしゃりん、とまた鎖の摺れる音。
手の甲までを広く隠す、扇状に広がった袖の間から鎖が下がっている。
「・・・腕にもついているのか?」
「はい、こちらは繋がっていないのでそれほど苦にはならないと思います」
先ほどの後ろ手はリミッターを隠していたのだろう。
「見た目と音だけはちょっと物々しいですが、重さはほとんどありませんし」
しゃりりん。
レイジングハートが右手を軽く上げた。なんとはなしに左手でその手を支えて、右手で鎖の端をつまんでみる。
確かに重量はそれほどでもない。ただ、四六時中鎖に繋がれているなど奴隷か人攫いにでも遭ったようでないか?
仮にパワーセーブが純粋な目的ではなくて、局員の趣味などで彼女にこんな仕打ちをするのなら、一デバイスの身といえど多少の考えはあるというもの。
あえて個「人」的に、鎖で拘束された姿には嫌悪感を強く感じる。丁度10年と100日前の記録にもそれはあった。
齢十に満たない主を鞭打つ鬼と、魔法の師として主を指導した人ならざる者。
母親は、鬼だった。鎖を握る手に力が篭る。
「・・・・・・あ、あの・・・・・」
戸惑った声にふと気づいたら、彼女の右手を支えていた己の左手はだらんと下に、鎖を短く掴んだ右手を胸元まで持ち上げて凝視していた。彼女と自分とは設定身長が30センチ異なるために、レイジングハートは腕を上げた姿勢のまま身動きが取れないでいたらしい。
「!
・・・すまなかった、少し疲れているらしい」
手を離す。鋭い痛みに気づいたのはその時。
「バルディッシュ、手が」
自分より瞬きひとつ分早くそれに気づいたのはあちらのよう。
この擬体のおおよそは魔力で生成しているので血が流れることはない。裂傷ならそこだけが白く光って、修繕は周囲の組織を再構成するほんの一瞬。
しかし、この時はうまく再構成能力が働かず手のひら全体がまだらに光り続けていた。どうやら出力制限を受けた体で他者のリミッターの一部に直接干渉することでこちらの電子配置が不具合を起こしたというところだろう。
調整に戻るかどうかを考えていると、白い両手が傷を包んだ。彼女はその手を引き寄せて、
ちろっ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
傷を舐めた。
「・・・え、あの、マスターの真似をしてみたんですが・・・・
効果ない、ですよね、やっぱり」
待て、そこでなぜ赤くなって下を向く?「体液は水しか使っていないし、雑菌で化膿する心配もないと思って」・・・そんな持論はいい、困った。こちらも困った。
だからなぜ赤い顔のまま伏せ目がちに見上げる?しかも何で若干涙目?そういえばその手は離さないのか?いや、無理に離す必要はないけれども。「まだ痛みますか?」痛む。しかし今ほど痛覚の存在が有難いと感じたことがないのも事実でちょっと何言ってr

結局2機で、午後いっぱい頭を冷やす。








あとがき ここから



Q1.今更デバイス擬人話?ふざけてんの?
A1.あい あるかぎり たたかいます。

Q2.時系列は?
A2.StSは 10わ まで みたよ

Q3.レイジングハートの服装についての説明がよくわからない。
A3.ヘッドドレスはコームつき、細長いハート型でふちに断ち切りチュール。リボンはあごに結ばないで髪の毛と一緒に垂らしてます。チョーカーはフロントが編み上げで皮ひもを通し、隠しスナップで着脱。ブラウスは鎖骨の少し下まで開き、ネック周辺は同一のトーションレースで仕上げ。胸元からハイウエストまでをシャーリング処理。後ろ中央線にそってくるみボタンで。パフスリーブ。二の腕に入る位置で細く、腕輪の部分から広がる(いわゆる姫袖)。ボーン入りコルセットは後ろフック、半分から下は開けてそのままスリットに。スカートはランダムなリボン飾りつき、足首まで。パニエ入れて足元はニーソ。靴はエナメルのラウンドソールに鋲をつける。ドロワーズは不使用。
わからない ひとは「ああ なんか すいぎんt(検閲)に にたような ふく なんだ」
と のうない ほかん してね





BACK

inserted by FC2 system