運命とは変えられるもの、変えられないものは宿命だと聞いたことがある。だとしたら、彼と彼女達の出会いはどちらなのであろうか………これから起こることはどうなのだろうか………それは誰にも分からない。もし、それは分かるものがいるとしたらそれはきっとひとではなく、神と呼ばれる存在なのかもしれない。 どちらにしても彼たちは出会い、そしてこれから起こる多くの出来事に巻き込まれていく。もしもこの出会いが宿命だとしたら、この先のこともおそらく宿命なのだろう。 リリカルなのはA’sアナザーストーリーヤミノセイネンとヒカリノショウネン始まります。 少年、明良昌は冷静に(といっても彼はいかなるときも慌てた態度を見せたことがないが)現状を見ていた。ピンクの髪をして、甲冑を着込んだ女剣士と確か最近何かのマスコットとして有名な妙な顔したウサギをつけた帽子をかぶり、赤を基調にしたスカート(名前は知らない)を着たハンマーを持った少女がこちらを睨んでいる。 元々自分でもトラブルには巻き込まれやすいとは思っていたが、少なくとも女性に恨まれるようなことはしていない。しかもあの格好は何なんだろうか………コスプレか、あるいは何かの撮影か。だとしたらなぜ彼女達はさっきを自分に向けているのか。さっき襲われたとき、「お前のリンカーコアをいただく」とか言っていたがそれは一体何なのだろうか。少なくとも自分はそんなものを買ったことはおろか、名前すら聞いたことがない。 おそらく、知らない、持っていないと言ってもあちらは聞かないだろうなと思いつつ、今に至るまでを思い出してみる。 あの公園を去ったあと、彼は今日の寝床はどうしようかと考えていた。まず自分の姿を見てホテルに泊まることは切り捨てた。誰か保護者になるような人物でもいれば別だが、今は自分以外誰もいない。一応仲間には自分の状況は話しておいたが、自分の仕事で手一杯でとても自分にかまう暇などないだろう。故に自分はここに一人で来た。自分ひとりで泊まったら怪しまれてしまうだろう。 次にマンションなどを借りるという手だが………これも却下だ。奴がいつまでここに留まるか不明なうえに、この姿だ、借りれるはずもない。あらかじめここに来ることが分かっていたなら手配してもらえただろうが………そもそも仲間には自分の状況説明だけでどこにいるだとかは告げていない。 かといってこんな姿の自分がこの時間帯にうろうろしていたらいろいろ面倒だ。雨風凌げなくても誰にもばれない場所であればどこでもかまわないのだが、早々見つかるはずもない。いっそ先ほどの公園の木の上で寝ようかと思っていたそのとき、気の乱れを感じた。場所はそう離れていない。急げば間に合うはずだ。もしも奴ならまずい事になる。現場に向かおうとしたその時、いきなり場の雰囲気が変わった。周りにあったはずの人々の気配がいっせいに消えた。いや、感じなくなったの方が正しいのかもしれない。そして前を見れば、妙な格好をした二人組がいる。 「お前に恨みはない。だがお前のリンカ………」 「………ガキかよ。」 「………同じく子供の姿したお前には言われたくないな。」 さっきまでの荒々しい空気はどこへやら、それぞれがそれぞれにやる気を削がれたらしい。 しばらく場のときが止まってしまったが、戸惑いを打ち捨て剣士のほうが改めて言い放つ。 「………少年とはいえ、なかなか優秀なリンカーコアを持っているようだな。お前には恨みはない。だが我等には叶えるべき願いがある。大人しくしてもらおう。」 「何を言っているのかさっぱりだな、その上あんたらなんだ、その格好は。コスプレパーティーか何かは知らないが、巻き込まないで欲しいな。」 魔法使いの概念を知らない彼からすればまったく持ってそのとおりなのだが、彼女達は(というかハンマー少女が)気に食わなかったようだ。 「てめえ、おちょくってるのか?」 「何の話だ。というかどうやら話がかみ合って………」 彼が言い終わる前に、ハンマー少女の方が痺れを切らしたのか襲ってきた。 「うるせー!黙っておとなしくして居やがれ!!」 彼女は手荷物ハンマーを振るって彼に襲い掛かってきた。しかし、昼間や公園のときのように彼は姿が消えていた。 二人は驚いて辺りを見回す。そして少女のほうが叫ぶ。 「シグナム、後ろだ!!」 「!!」 彼女は振り向き様に彼にその剣を振り下ろす………が彼は難なくよけ、呆れたようにいう。 「俺はあんたらと戦う理由もなければ、襲われるようなこともした覚えはないのだがな。」 「言ったはずだ、我々には叶える願いがあると。」 言いながら再び剣を振るう彼女、しかしまた攻撃は当たることはなかった。 そして彼がバックステップで彼女の剣撃をよけたら、今度は少女がいつの間にか後ろに移動していて、今度は彼女の一撃が彼を襲う。 しかし彼はそれに気付いていたようで、ハンマーごと彼女を背負い、一本背負いの要領で投げたのである。これに彼女達が自分の攻撃があたらない、いや当てられないこの相手を警戒し、出方を窺う。彼は彼でこちらから攻撃するつもりは内容で、膠着状態が続く。そして始めの場面に戻る。 この時間が永遠に続くとも思えたが、彼女達が行動に出た。 「………見た目に騙されてしまったな。まさか少年であるお前がここまでやるとはな。しかも素手でとはまったく持って驚いた。」 「もう手加減はしねーぞ、このチビ。」 ………まずいな、この姿ではあまり長い時間戦えない。しかもあっちはやる気になってしまったようだ。逃げるにしても周りは何か妙なもので覆われている。戦わずに相手を引かせる方法か………ないことはない。しかしあまりやりたい戦法ではない。さらに相手が応じるかも分からない。 だが方法はひとつ………やるしかないという思考を合わせて1秒程度で行った。 周りの空気が張り詰めていく。どちらもいっこうに動く気配はない。昌の体から汗が地面に落ちたその瞬間、両方が同時に動いた。 が、一瞬にして勝負が決まった。昌が少女の後ろに回り魔力ではない力を使い、自分の爪をコーティングしてナイフのように鋭くした。 「動くな、動けば彼女が一瞬にして血に染まる事になる。そうそう、声を出しても同様だ。………人質とって脅しなんて真似はしたくなかったが、あいにく俺にはこの方法しかなさそうなんでね。(ついでにこの力もまだ使いたくなかったんだかな………)」 「「………」」 「ここから引かせてくれれば何もしない。お前たちがしようとしていることもとめようとは思わない。というよりは今の俺では止めようがないからな。」 「「………」」 「条件を飲むなら、武器を捨ててくれ。そして周りの結界のようなものもといて欲しい。」 「言いたいことはそれだけかよ、糞野郎。」 彼女達には余裕があった。なぜなら彼女達は騎士甲冑があった。あんな小さなもので自分達が傷つけられない、自分達は優位だと思っていた。 だが、その慢心が仇となったのか、それとも昌の死に物狂いの決意が功を奏したのか………どちらとも見当はつかないが彼女達の目論見は外れ、少女の甲冑は首元が切り裂かれた。 「「!!」」 「ヴィータ!!」 昌は体を覆うシールドのようなものが現れた事に驚き、彼女達は甲冑がわずかとはいえ切り裂かれた事に驚いた。 しかし昌は要求を呑まなかった彼女に対して、情けをかけずにのど元を狙った瞬間、 「待て、分かった。先ほどはこちらが悪かった。要求を呑む、だからヴィータを開放して欲しい。」 「おい、シグナム!!」 「仕方なかろう。お前に何かあれば主が悲しむ。」 「………」 「………話が終わったところで、早く武器と結界をどうにかしてくれ。要求を呑んでくれるのだろう?」 彼は何事もなかったかのように普通に話してくる。しかし先ほどまで発していた殺気はすでになくなっている。 「分かった、だが先にヴィータを開放して欲しい。」 「………念のために言っておくが、彼女を解放した瞬間に攻撃してくるって言うのは無しだぞ。」 「我が剣に誓おう、そんなことはしない。」 昌はそれを信じたらしく、おとなしくヴィータを解放した。シグナムは昌の要求通り、武器を捨て結界を解除した。 昌はこの場を去ろうと歩みを進め、しかし急に振り向き彼女達に言う。 「………とりあえず聞いておく。お前達の言う主という奴は、この写真の男なのか?」 彼が取り出した写真には、昌をそのまま大人にしたような青年が写っている。 だが彼女達の主はまだ9歳の少女、八神はやてである。写真の男には見覚えすらない。 「いや、違う。それがどうかしたのか?」 「そうか………違うのならいい。それとこの男にあったら気をつけろ。奴は危険だ。」 先刻まで戦っていた相手に対して、なぜそんなことを言うのか二人はよく分からない。一体この少年は何を考えているのだろうか。その心の声に答えるかのように彼は言った。 「襲われて言うのもなんだが、お前達はそれほど悪い人間とは思わない。だから忠告した。ただそれだけだ。」 彼はその一言を残し、夜の闇に消えていった。 翌日、結局昌は寝床を見つけることが出来ず、彼はあの公園の木の上で寝る事にした。しかし厄介なことというのはよく続くものだ。奴のせいでこんな目にあい、昨日は襲われその上ここの所まともな寝床で寝たことがない。そんなことを考え、暇つぶしに適当にぶらぶら歩いていると後ろから 「あ〜!!」 という大声が聞こえた。 一応まだ朝の早い時間帯で、まだ寝ている人もいるのだが………ちょっと注意しようかと声をかけるために振り向くと、そこには昨日の金髪の女性が青い犬(?)を連れているではないか。どうやら散歩中のようだ。 「君、昨日はありがとう。お礼を言う前にいなくなってしまうから驚いたのよ〜。」 自分としては余りあいたくない人だったが、ここで変な態度をするとまた目立つ事になる。ここはひとまず適当に話を合わせよう。 「………どうも。別に気にしなくて良いですよ。自分が勝手にしたことですし。それにあの男が気に入らなかったということもありますから。」 言ってから気づいたのだが、どう考えても口調が見た目とあっていない。視界今更直すことも出来ないのでどうしようかと考えていると、彼女の様子がおかしい。鼻をスンスンとして、どうやら臭いを嗅いでいるようだ。 「ねえ、君なんだか臭うんだけど………よく見ると服装も昨日と同じよね。」 ………そういえば確かにそうだった。しかし自分には泊まるところすらないので仕方ないといえば仕方ない。 「まあ、ここのところまともなところで寝ていないですし、服装に関してはまだ着替えていないだけです。」 「でも汚れているようにも見えるんだけど………」 ………このままだとまずい気がする。自分は一般人ではないのだ。これ以上関わらないようにしようと考え、相手にどう断るか考えていると、彼女は誰かに連絡している。ピッと携帯を切り、彼女は自分を見てこういった。 「私の居候しているお家の家主さんに頼んでみたんだけど、お世話になったから家に連れてきなさいって言われたの。君困っているみたいだし、うちに来ない?」 断わりの返事もしないうちに 「はい、決定。じゃあ、私の家に招待するわね。」 勝手に決められた上にしかもずるずると引きずられていってしまった。手を振りほどくまもなく、強制的に彼女の居候しているうちに連行された。 「ただいま〜」 彼女は機嫌よく帰宅を告げた。そして昌は 「………お邪魔します。」 機嫌悪げに声を出す。 「おお〜帰ってきたんか〜。」 「はやて達助けた奴ってどんな………」 「主、ではなかったはやてが世話に………」 ………やはりよくないことは続いておきるようだった、少なくともこの少年の身のうちでは。 え〜っと諸事情につき今回は挨拶抜きで;すみません。 |