スバルはその日朝から妙な気配を感じていた。それが気になって訓練にも身が入らなくヴィータに叱られたりした。昼の訓練を終え、部屋で着替えていた時、ソレは現れた。
 エリオとティアナは談笑しながら、廊下を歩いていた。ティアナの部屋が近づいて来て、エリオが「それじゃあ、また」と言おうとした時、スバルが悲鳴と共に部屋から出て来て近くにいたティアナに抱き着いた。
「ティア――ッ!」
「ちょっと、スバル! あんた、なんて格好してるのよ!」
 ティアナの言う通り、スバルはとんでもない格好をしていた。つまり下着姿だった。
「あ……」
 スバルは自分の格好とエリオがいるのにが気づいた。次の瞬間、エリオはトマトみたいに真っ赤なってブッ倒れた。
 
 
「それで、何があったのかな?」
 スバルの自室でベッドに座ったスバルに聞いた。他にもフェイトとティアナがいる。ちなみにエリオは医務室で寝込んでいる。スバルば青ざめた顔で言った。
「実は、アレが……」
「アレ?」
「はい……」
 なのはとフェイトはそのスバルの怯え様を見て、全て悟った。
「な、なのは。いきなり、バスターしちゃダメだよ?」
「フェフェ、フェイトちゃんもザンバーしないでね?」
「一体、何の話ですか?」
ティアナは動揺仕切った隊長達を見て怪訝そうにしていた。その時、ティアナの顔に何かが張り付いた。
 大して動揺もせずに引っぺがすと、ソレは黒い楕円形の油ぎった虫だった。
「いやぁぁぁぁ――――――――――――ッ!!」
 ティアナの絶叫が終わった時、はやてが慌てて部屋に入って来た。
「何や、何事や?」
「はやてちゃん、来ちゃタダメー!」
 しかし、時既に遅く。はやては部屋に入り、扉は閉まった。
「何やこれ?」
 中は凄惨だった。ティアナは白目を剥いて倒れているし、スバルはベッドで膝を抱えて震えていた。
「何があったんや?」
「アレが出たの……」
「あの『台所の黒い悪魔』が!」
 フェイトの大声にはやては頬を引くつかせた。なのはとフェイトはそれを当然の反応と思ってた。しかし実際にそれは少し違っていた。
(みんなの怯え様を見る限り、10年前まで寂しさを紛らわすために台所のどこかにいただろうアレに語りかけてた私は、やっぱり痛い子なんかな?)
 と思っていたが、ふとある事に気づいた。
(動いてない……)
 ティアナが倒れたというのに、誰も動いていなかった。否、動けなかった。アレに気づいてしまった以上、アレの無言のプレッシャーによって。
 動けないとはいえ、ないもしない訳にもいかない。スバルを除いた三人は行動を開始していた。が、
「シグナムさんは!」
「今は聖王教会で会議中や」
「じゃあ、ヴァイス君は!?」
「ヴァイスはアルトのヘリC級ライセンス試験の付き添いに行ってる……」
「じゃあ、エリオ君は!」
「医務室だよ。なのは……」
「ヴィータちゃん!」
「ゲンヤさんの所に教導に行っとる」
 動けない以上、アレをアレが平気な誰かに撃退してもらうしかないわけだが、みんな用事があって今すぐという訳には行かなかった。
「さっきの悲鳴はなんですか?」
 なのは、フェイト、はやて、スバルは声のした方を向く。キャロが部屋に入って来る所だった。
「キャロ、入ってはダメ! アレが出るよ!」
「アレ……ですか?」
 フェイトは言うが、キャロはいまいち理解していないようだ。そしてその時、キャロの足元にソレは現れた。
「キャロ! 逃げて!」 
 フェイトは叫ぶ。キャロもようやくソレに気づくが、それはあまりにも遅く。誰もが手遅れと諦めた。だが、
「どうしたの君?」
 キャロはしゃがみ、ソレに向かって話かけた。フェイト達は呆然としたが、唐突に気づいた。キャロが動物と心を通わせる召喚魔導師だということを。
「部屋から出れなくなっちゃったんだ……今度は外で暮らした方がいいよ?」
 2・3ソレと話すと、キャロは扉を開けてソレを廊下に出してやった。
「それで――」
 振り向いて「さっきの悲鳴は?」と言いかけたキャロにスバルは抱き着いた。
「ありがと、キャロー!」
 頭を撫でられ、目を白黒させながら、キャロはやっと気づいたように言った。
「え、今の子がアレなんですか?」
 フェイト達はホッとした顔で頷いた。
「あの子なら、隊舎に5000匹はいますげど?」
 空気が凍った。




――――――――――
ども、服が実です。いえ、福神です。
今回は若干ホラー(?)です。
ゴキブリなんてのは、実際のところ慣れてしまえばただの虫と変わりませんし、まぁアリみたいなもん? と思えば、どうってことないです。
なんで、ゴキブリを弁解してんだろ?
お楽しみいただけたら幸いです。
さて、次回は私がもっとも好きなあの漢の登場です!





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