ある日、はやてが私用でミットチルダの街に出かけるというので、ザフィーラはその護衛をかって出た。
 はやては最初、服や日常雑貨を買うだけだからと断ったが、ザフィーラは頑としてこれを拒否した。現在のはやては自分よりワンランク低いAクラスであり、しかも何かと問題を孕む存在である。
 どこで何かあるかわからない。そして、自分はそのために管理局に所属していないのだから。
 説得するザフィーラにとうとうはやては折れ、二人(一人と一匹)は街へ出かけた。



 街の中をはやてとザフィーラ並んで歩く。
 はやてはデニム生地のミニスカートに白いフリルのついたキャミソールを着ていて、口には薄いルージュを塗っている。元々素材がいいだけに、少し着飾っただけで部隊の制服を着た時の凛々しさは薄れ、年相応の可愛らしさや美しさを全面に表に出ている。
 しかし、はやてに気づかれないようにしながら、彼女に近づく男達に睨みを効かすザフィーラには堪ったものではなかった。
 はやては始めに言った通り、洋服や日常雑貨などを買っていた。正直、取り寄せればいいだけの話なのだが、彼女は自分の目で見た物しか購入しない。
 その見た目とは裏腹に、一部隊の隊長で一家の主である。
 十九というには大人すぎる彼女に、果たして嫁の貰い手いるのかいささか心配だが、それ以前にヴィータやシグナムが妨害するだろう。
 それを思うと、ザフィーラは静かにため息を吐いた。
 そうして、しばらく買い物を楽しんでいたはやてに緊急の呼び出しが来た。
『こちらシャーリー。はやて部隊長、買い物中失礼します』
「なんや、シャーリーなんかあったん?」
 シュベルトクロイツの中心から展開されるモニターを見ながら、はやてが言った。
『実は……―――』
 シャーリーによると、どうやらミッドチルダ北西部にガジェットが現れたらしくすぐに戻って来て欲しい、との事だった。
 はやてはそのまま走ろうとして、こっちに振り向いた。
(ザフィーラ)
 念話で話し掛けられる。こちらの事を配慮しての事だろう。
(はい)
(しばらく荷物見ててもらえるか?)
 と言って、はやてはザフィーラの前に二つの紙袋を置いた。
(……心得ました)
(すまんな。すぐに帰ってくるから待ってて)
 そして、今度こそはやては走り去った。
 ザフィーラは紙袋を前に座り、主の帰りを待ち続けた。



 一週間後。
 隊舎のロビーでソファーに座ったスバルとヴィータが談笑していた。
 スバルが言う。
「ここの所、暑い日が続きますね?」
「そうだな。こういう日が続くとアイスが食べたくなるな」
「あっ、わかりますわかります!」
 共通の趣味はを見つけた二人は、しばらくアイスの話題で話し合っていた。
 話が一段落した所でスバルは、辺りを見回しながら歩くティアナを見つけた。
「どうしたのー、ティア〜」
 いつもの調子で喋りかけるスバルに、ティアナは周りを見ながら答えた。
「実はザフィーラを探してるんだけど……」
「え、ザフィーラ?」
 そう言われて、ここ最近見ていない事にスバルは気づいた。
 だが、
「ザフィーラ? あいつなら外で散歩してるんじゃねーのか?」
 ヴィータが軽い口調で言った。
「そうなんですか?」
 ティアナは腑に落ちないといった感じで聞き返す。
「ああ、ここ最近出番がないから暇を持て余してるんだろうよ」
「暇、ですか?」
「最近、お前らが成長してきたから、あいつの出番がないって言ってんだよ」
「そ、そんな!」
「き、恐縮です!」
 珍しくヴィータに褒められ、二人は顔を赤くした。それから談笑にティアナも加わり、いつしかザフィーラの事は忘れ去られた。



 次の日、なのはに二回目の休みをもらったスバルとティアナは、脱水症状で倒れ伏せているザフィーラを発見した。八日間放置され、彼は意識を失っていたが、それでも二つの紙袋には傷一つなかったという。





――――――――――
ども、福神です。
お久しぶりです。
原作でもこんぐらいフューチャーされればなぁ……、と。
ため息は置いておいて。
またしばらく投稿してなかったんで、連続投稿します。
他、二作もよろしく!





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