その日、ヴァイスは同期に呼ばれて本局を訪れた。
 そしてそこで、彼は信じられない物を目にした。
(こ、こいつは一体どういうこった?)
 彼の視線の先、男子トイレの洗面所に麗しい女性がいた。ハチミツ色の長い髪に二重で大きな碧眼が印象的で、全体的の整った顔立ちをしている。体型はダボダボのジャケットにジーパンと着ているせいかわかりにくかった。
(別に女子トイレが混んでるわけじゃないよな?)
 と反対側のトイレを見るが、混んでいるという訳ではなく、むしろ人気はない。
 ではなぜ、とヴァイスが思う前に女性はこちらに振り向こうとした。咄嗟の判断でトイレに駆け込み、彼女が通り過ぎるのを待つ。
 首だけ外に出して彼女が廊下の向こうに消えたのを確認する。
 そして、ホッとしたのも束の間、
「何してるんですか?」
 後ろから、よく知る声が聞こえた。ヴァイスは冷や汗を流しながら、壊れたカラクリ人形のように振り返る。
 そこには、隠そうともせず青筋を立てているアルトがいた。彼女はヴァイスの同期が元ヘリパイロットと言う事を聞いてついてきたのだが、その事をヴァイスは後悔した。
 彼は正体不明の女性が出てくるのを察知して、トイレに駆け込んだ――そう女子トイレに。
「ま、待てアルト! 話せばわかる!」
「堂々と女子トイレに入る変態の気持ちなんかわかりたくありません!」
 言い放つと共にアルトはいつのまにか持っていたスパナでヴァイスに叩きつけ、昏倒させた後、六課に戻りこの事を隊長達に報告した。
 スバルたちは夜間の訓練が終わった後も、訓練所が使われている事を不信に思ったがあまり気に留めなかった。
 だが、その後一週間は彼女達がヴァイスを見かける事はないだろう。
 訓練場の中では、一人の生贄を中心に三人の魔王がせせら笑っていた。

 *

それと同時刻、彼は仕事を終えると部屋を目指して歩きはじめた。
 途中、後ろ髪を結っていた髪留めを解き、ふとトイレを見かけて帰る前に寄ることにした。
用を足して手を洗い。ついでに顔を洗おうとした時である。一人の男性局員がトイレに入ってきて、彼を見た瞬間、
「し、失礼しましたっ!?」
 すぐさま踵を返してしまった。
「……」
 思わず無言になる彼は、黙って鏡に映る――顔を洗うために丸メガネを外した――自分の顔を見つめる。
「やっぱり、僕は女顔なのかな?」
 ユーノは一人ため息をつく。
鏡には、ハチミツ色の長髪に碧眼という美女がいた。





――――――――――
ども、福神です。
今回はちょっぴりベタでしたかね?
これからも精進しなければ……。
ちなみに、三人の魔王とはなのは・フェイト・はやてッス。
てことで次回は、サブキャラシリーズと題してグリフィスの小ネタをお届けします!





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