時期はまだ5月。
 徐々にこの暖かな日差しも暑くなっていくんだろうなと思いながら、私は機動六課の隊舎の外を歩いている。
 ガジェットドローンの事件報告がてら妹が住むところを見学しようとこうしている訳だけど、
「いい場所ね。ウチの部隊もこういう所だったらいいのに……」
 あんまりいい所なんで嫉妬してしまった。
 辺りを見回して、深呼吸をしながら背伸びをする。そんな時、私は草むらの中から蒼い何かを見つけた。
「?」
 気になって覗き込んでみると、そこには蒼い毛並みをした大型犬がいた。
 赤い瞳とガッチリ目が合う。
「……」
 突然の事に固まってしまった私は、しばらく頭の中を整理できずにいた。
(何で、隊舎の敷地内に犬がいるの? 一体誰が飼ってるの? 何の目的で? そういえば、誰かの守護獣がいるって聞いたような? じゃあ、その人の? でも、そんなことより――)
「――イヌだーっ♪」
 私は蒼い犬に飛びかかり、その太い首に抱きついた。一瞬、犬はビクッと強張るが難なく腕に収まる。
「ああ、もうなんてフワフワでモフモフなのっ!!」
 犬の毛を揉みくちゃにしながら、私は悦に入る。犬は私の腕の中で暴れているがソレがまた可愛い。
「私ん家は人いないから飼えないし、部隊で飼うなんてお父さんが許すはずないもんなー。あぁ、サイコ―!」
 私は犬の首元に顔を埋めつつ、その体に手を這わせた。左手で鼻や耳を触れるか触れないか位の強さでいじり、右手は背中からお腹や足の付け根を撫でる。時折、尻尾の根元をいじったり、フサフサとした尻尾の毛に指を通したりする。
「ウフフ、フフフフ♪」
 私の目はやばい事になってるんだろうなぁ、と漠然と思ったが、止めるつもりはもちろんない。
「シ・ア・ワ・セ……」
 もう昇天するんじゃないかって位に感情が登りつめた時、
「ギン姉、一体なにしてるの?」
 聞き覚えのある声が聞こえた。振り返るとそこには妹を始め、見覚えのある顔がズラリと並んでいた。
「あ」
 私は青ざめながら、その一言しか言うことができなかった。それを他所に、犬は体を震わせると静かにそこから遠ざかっていった。
 この数月後、私はザフィーラさんの正体を知るのだが、それはまた別の話。





――――――――――
ども、福神です。
ん〜、ベタ。でも書いてて満足だったのでOK!
次回は犬つながりで、ザフィーラです。
ヴィヴィオも出ます。





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