―数十分前、XV級時空航行艦船二番艦「リタルダント」

巡航業務中であるこの艦のブリッジには少々緩慢な空気が流れていた。
いつもなら緊張、とまではいかないものの、ある程度張り詰めた雰囲気であるのだが、
あと数日で定期巡航業務も一旦終了し、本局付近の座標にあるため、そう大きな事象が発生する可能性も少ないため、
クルー達の胸中にある種の安堵がもたらされている。

本来ならこの空気を正すべき艦長も、執務官に茶を入れさせる等の行為に及んでいるので、致し方ないともいえよう。

「艦長、お茶が入りました。」
「ありがとう。」

フェイト・T・ハラオウン、階級は提督、「リタルダント」の艦長である。
ランクSオーバー魔道師としての能力もあり、高町なのは、八神はやてとともにACE OF ACEと呼ばれている。

ティーカップを受け取り、砂糖を過剰ともいえる量をそこにぶち込んでいる。
彼女の義母であるリンディ・ハラオウンを彷彿とさせるような光景である。
おそらく兄であるクロノが見たら卒倒するであろう。

クロノの実子であり、長兄にあたるツカサ・S・ハラオウンはこの光景に眉間にしわをよせる。
「リタルダント」付きの執務官、母であるはやてより古代ベルカ式魔法を継承しているため、「夜天の後継」の二つ名を持つ。
魔道士ランクは総合AAA+、18歳である。

「どうかしましたか?ハラオウン執務官。」
砂糖を入れる手を停め、渋い顔をしているツカサに問いかける。
「毎度ながら艦長、糖分の取りすぎは控えたほうがよいかと。」
「あら、それなら大丈夫よ。母さんもこのくらい入れてたから。」
「祖母は特別です。」
ハラオウン家の女性の砂糖過剰摂取の元凶ともいえる女性の顔を思い浮かべる。
その反動か父であるクロノは甘いものが苦手である。
ツカサやサクヤはクロノ程ではないがあまり甘いものには食指が動かない方である。
「とにかく、程ほどにしてください。」

そういうとツカサは自分の席に戻り、文庫本を広げる。
艦長のために入れた紅茶の余りをマグカップにつぎ、読みはじめる。
しかし紅茶をのみながら読んでいる本が北方版の三国志だというのはなかなかシュールな姿である。
重度の活字中毒である彼の執務官室には、大量の本があふれかえっており、
たまに生き埋めになっていたりもする。無限書庫勤務のユーノ達とは気が合うらしく、
執務官という立場のわりにかなり高いランクの閲覧権限を有している。



しかし、程なくそんな空気を一掃する出来事がおこる。
艦が大きく揺れたのだ。
すぐさま緊急事態宣言がなされ、クルーは迅速に配備に着く。
次元空間であるので地震が起こるのはありえない。
揺れている要因は次元震とよばれる一種の歪みである。
規模や自然発生、人為発生に関わらずどこかの次元世界になんらかの影響を及ぼす可能性のある次元震は
相当厄介な代物なので、いまや艦内は極限の集中状態にある。


「規模と座標の特定を急いで!」
先ほど極甘の紅茶をうれしそうにすすっていた時とは一変し、フェイトはきびきびと指示を飛ばす。
ツカサはバリアジャケットをまとい、いつでも出動できる態勢を整える。

「出ました!、規模はそんなに大きくありませんが・・・座標が!」
モニターに表示された座標の数値を見たクルー全員の顔に衝撃の色が走る。
「ミッドチルダ、それにクラナガンからそう離れてない位置ですって!?」
流石のフェイトも声に狼狽の声を隠せない。

「・・・・! 艦長!自分が出ます、自然発生にしては位置と数値が異常すぎます!」
ツカサが艦長席を仰ぎ、許可を求める。

「確かに、この数値は作為的な気配がするわね。わかりました、すぐにミッドの地上部隊が向かうと思われますが、先行して状況確認、
及び合流した救援部隊の指揮を命じます。地上部隊の方には私から話をつけて起きます。」
「了解、ツカサ・ハラオウン、出動します。」

敬礼をするとツカサはトランスポーターへと走り出す。
道中ツカサはこの次元震の要因を浅くではあるが考える。
まずミッドチルダはいろいろなベクトルで安定しているので、自然発生は考えられない。
先ほどの観測データからも異常値が弾き出されていたのでまず人為的なものと考えてよい。
ではAAAランクオーバーの魔道師が本気で戦りあっているのだろうか?
艦長であり叔母であるフェイトは弟の師匠であるなのはと幼いころ本気で戦いあい、軽い次元震を起こしたとか。
幼少のみぎりで次元震を引き起こすほどの魔力を持っていたことを考えると身震いがするがそれは置いておいて、
とりあえず魔道師同士の交戦である可能性を念頭に置くことにする。


トランスポーターに着くと胸ポケットからカードを取り出す。
「行くぞ、ケフェウス。」
「OK,Boss.」
瞬時にカードはモノクロのカラーリングの杖へと起動する。
既に転送座標は設定してあり、先ほど結論とあわせ、臨戦態勢を維持して現場へと飛んだ。





魔法少女リリカルなのは-After determination-

act04:邂逅






――――
そして現在に至る。
まだ救助の地上部隊は到着していない。
あちらこちらから火災が起こっている証である煙が上がっている。
ところどころ崩壊している箇所もあり、生存者の安全確保が先決であると判断する。
故に建物に進入しようと思った矢先に、
砲撃魔法が屋根をぶち抜いてきた。やはり魔道師の戦闘が原因かと一瞬思ったが、
今の砲撃の魔力波長が非常に身近な人間のものであったので判断を一旦放棄する。

近づいてみるとやはりそこにはよく知った顔の人間が四つ。

サクヤ・I・ハラオウン
ハルミ・L・ハラオウン
知っているも何も自分の弟と妹である。

高町護
無限書庫勤務。よく世話になっている。

ルナサ・T・ハラオウン
艦長の子供であり、たまに訓練に付き合ったりもする。


なぜこいつらがここにいるのか?
まさかこいつらがこの騒ぎの犯人なのか?
そんな疑問を抱きつつなにやら騒いでいる連中に声をかける。




「しかしまだ揺れてるな、これはなんだ?」
「中規模次元震だ、それも人為的な。」


四人ともこちらに振り返り唖然とした表情をしている。
なんだ?俺は幽霊かなにかか?


「GWは休みをとらないんじゃなかったのか?」
「巡航中にこの次元震を観測してな、一番近くにいたうちの艦から飛んできたんだ。」
「お兄ちゃん・・・・」
「で、だが。この次元震はお前らが起こしたのか?」
「んなわけ無ぇだろ!!」
「私たちは休みで買い物にきたところだったんだよ。」
「そうか、てっきりお前ら四人が全力全開で戦りあっていたのかと。」
「「違いますよ、母さんじゃないんだから。」」
護とルナサが声をそろえる。

「ということは黒幕がほかにいるんだな、艦長、聞こえますか?」
「こちらリタルダント、聞こえてますよ。」
「ご覧の通り現場で四人の魔道師と遭遇しました。彼らが犯人である可能性は極めて低いので、
救助活動及び捜査活動の協力を仰ぎたいのですが。」
「了解、全員局員ですので所属部隊には連絡をしておきます。それとまもなく地上部隊がそちらに到着しますので合流してください。」
「了解。」
「ということなので協力してもらう、ここからは任務だ、いいか?」
表情を執務官としての厳しいもの一変させる。
「「「「はい!」」」」





「高町司書、広域検索魔法で生存者の人数と位置の割り出しは可能か?」
「はい、父に比べれば精度は落ちますがなんとかやってみます。」
護が検索魔法を詠唱し始めたところで通信が入り、ツカサの目の前にモニターが展開される。


「こちら特別救助隊隊長、スバル・ナカジマ!救援部隊としてそちらに向かっています。ハラオウン執務官、応答願います!」
「こちらハラオウン。お久しぶりです、ナカジマさん。」
「久しぶり!、とりあえず挨拶は置いといてこれ見て!」

スバルの声と共にもうひとつモニターが開かれる。
そこには先日サクヤが対峙した大量の無人質量兵器の姿が確認された。
このショッピングモールはレジャー施設も併設されているので、このまま侵攻を許すと民間人に犠牲者を出しかねない。

「いまうちの隊員たちが交戦してるけど、AMFを抜ける子が少ないんだ。」
「了解、自分とAAクラス魔道師二名がそちらの殲滅にあたります、ナカジマさんと救援部隊は救援活動をお願いいたします。」
「わかった!すぐそっちに行くね!」


「今のは?」
「スバル・ナカジマ一等陸尉だ、サクヤ三等空尉、お前の兄弟子、いや、この場合は姉弟子というべきか?になる。」
「師匠の弟子だったのか・・・。」
「お前が幼少のころに一度会っているはずだがな。それではこれより任務の説明をする。」
「「「はい!」」」
「サクヤ三等空尉はここで待機し、救援部隊と合流し救助活動、高町司書もここで陸士部隊と連携とる、
ハルミ執務官候補生およびルナサ陸曹長は自分と一緒に出現した質量兵器を殲滅に向かう。」
「了解。」「了解しました。」「了解です。」サクヤを除く三人は三様に返事をする。
「サクヤ三等空尉、復唱は?」
「お言葉ながら執務官、自分も殲滅に向かったほうがよいと思われるのですが。」

その言葉にツカサは一瞬目を丸くし、次にため息をついて答える。
「まだ修行不足だな、見たところアルケイオンにこれ以上の大出力魔法の使用は無理のようだが?」
「あっ・・・」
瓦礫を吹き飛ばす程度の魔法ならば問題はないが、AMFを抜くほどの火力の魔法は今のアルケイオンには少々厳しい、
自分の整備不足を指摘され、かつそれを見落としていた自分にサクヤは絶句する。

「了解しました、救助活動にあたります。」
サクヤの返事にツカサは厳しい表情を一瞬緩ませ、
「不謹慎な言い方になるが、姉弟子にいろいろ教わってこい。」
そういうとまた厳しい表情に戻り、
「では現時点をもって作戦を開始する!」
「「「「了解!!」」」」







ツカサとハルミ、ルナサはショッピングモールを離れ、併設されている大きな公園へと急行する。
公園に近づくと進路をさえぎるように飛行形の質量兵器が三十機ほど実弾による弾幕を張ってくる。
三人はとっさにシールドを展開し、銃弾の雨をはじく。
しかし敵機の数は十機単位でどんどんと増え続ける。

「・・・・うざったいな、早く合流したいし、よし、ハルミ!ルナサ!こっちに寄れ!」
そう叫ぶとふたりを自分の近くに抱き寄せる。
「えっ?ちょっとお兄ちゃん?」
「でかいの行くから巻き込まれないように近くに寄ってろ!!」

足元に白黒の三角形の魔法陣が展開し、魔力が集積されていく。
「ケフェウス、いけるな?」
「OK,Boss」
アームドデバイスの出力量と、ストレージデバイスの処理速度を兼ねる特注品のデバイスであり、
またの名を「混沌の魔杖」とするケフェウスが問題ないと返事をする。

ルナサはツカサが小声で呪文を詠唱しているのを耳にする、しかし高速詠唱である上にかなり長いので聞き取ることはできない。
しかしその長さから相当なレベルの魔法を繰り出そうとしていることは理解できる。

詠唱を一旦とめ、息を吸いなおし呪文を締めくくる。


「遠き地にて、闇に沈め、デアボリック・エミッション。」

次の瞬間、三人の周りを黒い球体が包み込む。

「消し飛べ。」

その言葉を合図に球体が拡大し、質量兵器はAMFもへったくれもなくその球に触れた瞬間にはじけ飛ぶ。


その様子を見ていた地上の救援部隊の隊員は口々に、
「すげぇ・・・」「化けものかよ・・・」「これが夜天の後継の力か・・・」
と、感嘆の声を漏らす。

かなりの数を落としたところで黒球の拡大はとまり、そして消失する。
「さすがに母さんの術を行使するのは疲れるな・・・」
ケフェウスが放熱の蒸気を吐き出すのを確認すると、ツカサはこちらにかけてきているスバルに向かい声を張り上げる。


「ナカジマさん!」
「ツカサくん、フェイトさんからは聞いてるからこっちの指揮は任せるよ!」
「了解しました、向こうの方には弟と護がいるので使ってやってください。」
「サクヤくん来てるんだ!、わかった、後は頼んだよ!」
そういい残すとスバルは全速前進DA☆と言わんばかりのスピードでショッピングモールの方向へと駆けていく。


「よし、ハルミ候補生とルナサ陸士は地上部隊と協力して殲滅を、自分は空の残党を片付けた後合流する。」
「了解!」「了解しました。」






――――
「よし、生存者の数と座標出たよ!!」
「もう少しで特別救助隊がこっちに来るはずだ、そのデータをデバイスに転送できるか?」
「OK、ちょっと待ってね。」

『Wing Road』
インテリジェントデバイス特有の音声が聞こえたかと思うと、サクヤと護の目の前にスバルが現れる。
「サクヤ三等陸尉と高町司書ですね?」
「はい、・・・貴女がナカジマ隊長ですか?」
「スバルでいいよ、弟子同士だしね。で、積もる話は後にして、状況報告お願いできる?」
「先ほど護の広域検索が終了して生存者の位置がおおよそではありますが割り出せました、ただ中は火災と崩落がかなりひどいです。」
「災害救助は私たちの本分だからね、大抵の障害は問題ないよ。護くん、そのデータをみんなに渡してもらえるかな?」
「大丈夫です、一分でやります。」
「ありがとう。」

渡されたデータを基にスバルは隊員に指示をする。
サクヤはスバルと一緒に入って途中から分岐することになった。

先ほど開けた穴から次々と隊員が救助に向かう。

しんがりでスバルとサクヤが突入する。護は外で救出された人たちの治療にあたることになった。

サクヤは低空飛行を維持し、スバルはマッハキャリバーで駆ける。

「そういえばさっきの穴はどうやって開けたの?」
「普通に砲撃魔法ですよ?」
「うそ、まさかとは思うけどディバイン?」
「はい、エクステンションの方ですよ。」
「うわぁ、なんだかんだで君も弟子だねぇ。」
「スバルさんも近代ベルカ使いなのに気合で撃てるようになったとか聞きましたが。」
「術式が違うから厳密には違うけどねっ、と。」
進路を塞いでいる瓦礫の山をリボルバーナックルで突破しながら進んでいく。
途中で生存者を見つけると護に連絡し、遠隔転送をして救出する。

そうしているうちに分岐ポイントへとたどり着く。
「サクヤ、スバルさん、そこからは崩落がひどくて僕の転送魔法も届かないから気をつけてね。」
「了解、心配するな。」
「なんかあったらすぐに念話つなげてね。」


スバルと分かれたサクヤは、護がくれたデータを基にひとつの反応を目指す。
ところどころ崩壊している上、火災による黒煙がひどく思うように進めない。
飛行状態が維持できないので仕方なく走ることにする。
『次の角を右に』

アルケイオンの指示に従い曲がり角を曲がる。

その瞬間、大きな揺り返しが来た。
「クソっ!」
『主!崩落が再び!!』

揺り返しによってなんとかもっていた天井が崩落を始める。
爆音と瓦礫の音の中から子供の泣き声が混じってくる。

それを聞いたサクヤは不安定な状況をものともせずに駆け出す。
すると30mほどのところに子供がうずくまっているのが見える。
安否を確認するために子供のもとに駆け寄ろうとする、

ガゴォン!!

最悪なことに、その子供の真上で天井が崩れる、直撃したら助からない。

「間に合えぇ!ショートバスター!!」
走っていたら間に合わないと判断したサクヤは今自分が一番速く行使できる砲撃を打ち出す。

打ち出されたショートバスターは崩落してきた天井をギリギリのところで弾く。
しかし今度は炎の激流が通路の向こう側から流れ込んでくる。

「ラウンドシールド、アイシクルシフト!」
ラウンドシールドにサクヤの固有能力である魔力を冷気に変換する属性を付加し炎を受け止める。

「よかった・・・、間に合った。」
かるく見た感じでは子供に大した外傷は無いようだ。
「助けに来たぞ。」
顔を上げた子供の表情にはまだ怯えの色が濃いので、さらに言葉を続ける。
「よくがんばったな、偉いぞ。」
子供は涙ぐみながらもうなずく。
「もう大丈夫だ、安全な場所まで一直線、とはいかないがすぐに外に出れる。」
そう言葉をかけると、子供を背負い来た方向へと駆け出す。

『あと少しで転送可能区域に到達します。』
アルケイオンの言葉を聞き、少しだけ安堵するサクヤ、しかしそんなサクヤの顔一寸先を




白刃が掠めた。




反射でサクヤは後ろに飛び、前方に目をこらす。

「なんだぁ?管理局の連中は木偶どもが足止めしておくんじゃなかったのかぁ?」
軽薄そうな声と共に、暗がりから男が現れる。
年齢は三十前後、手にはデバイスと思われる短刀を携えている。
「しかもガキかよ、殺りがいのない。」
その言葉からサクヤはこいつはヤバイと直感する。

「お前はだれだ?」
明らかに脱出しそこねた客ではないと判断し、言葉をあまり選ばずに問いかける。
「誰だと聞かれて答える馬鹿はいねぇよ、仕事の邪魔だ、死にな。」


刹那、男がサクヤの懐に飛び込み切り上げてくる。
再びバックステップで回避すると、念話のチャンネルを開く。
「護!聞こえるか護!」
「サクヤ!?どうしたのそんなにテンパった声出して。」
「中でこの次元震に関係のありそうな奴と遭遇、絶賛交戦中だ!」
「えぇ!?」
「ここで念話がつながるってことは転送も届くな!?」

「ガキにしちゃいい反応じゃねえか!」
再び切りかかってくる男をあしらいつつ、今度は背中の子供に声をかける。
「これから外にお前をだしてやるから安心しろ。」
いきなり現れた男に対して怯えているようだが、なんとかうなずいたのを気配で感じると再び護に念話をつなげる。

「救出した客をそっちに転送する!」
「了解!」

事態の急さを感じたのか、通常の倍近い速度で転送が完了する。

男の方に向き直り、再び問いかける。
「時空管理局武装局員、サクヤ・I・ハラオウンだ、この次元震はお前の所業か?」
「俺じゃねぇぜ。」
「では誰の所業か知っているか?」
「知ってるけど、教えねぇ。」
鼻で笑うように返答をする男に、通達をする。
「では、傷害未遂、および騒乱幇助の疑いで同行を願おう。」

男は片足を引いて臨戦態勢をとり、返事をする。
「それはできねぇなぁ。」
「しかたがない、力ずくで話を聞かせてもらおう。」
「できるかな?その馬鹿なげぇ槍でよぉ!!」
確かに男のいうとおり、アルケイオンは狭い空間で戦うには長すぎる。
「だったら短くすればいいんだよ、アルケイオン!ジャベリンフォルム!!」
『Javelin form!!』

サクヤの言葉にアルケイオンが呼応し、姿をかえる。
より軽く、より短く、より機動性に長けた姿に。

「こちとら時間もあまり無いんでな!とっとと死んでもらうぜ!!」
そう叫ぶと男はサクヤの胸に向かい突きかかる。
とっさに身体を反らし、アルケイオンの柄で足を払う。

短槍状になったアルケイオンを構えなおし、サクヤはもういちど言い放つ。

「力ずくでも話を聞かせてもらおう!!」









―――
公園ではAMFを抜ける隊員が十人ほど交戦をしているが、かなり押されている。
そんな中一人の隊員が足に被弾し転倒する、そこへ別の質量兵器の凶刃が迫る、しかし他の隊員は自分のことで手一杯のようで援護をする気配がない。
隊員の身体が今まさになます切りにならんとしたその瞬間。





『Sonic Move!!』
紅いバリアジャケットをまとった少女が電光のごとく飛来し、凶刃を刀で受け止める。

「行っくよ!シヴィウス!!」
『All right!!』

少女、否、ハルミ・L・ハラオウンは愛機、「煉獄の魔刀」シヴィウスを振るい質量兵器を真っ二つにする。
「ぜぇぇりゃぁぁぁ!!」
その勢いのままハルミは質量兵器の群れの中へと突撃していく。

間一髪のところを助けられた隊員が腰を抜かしているところに金髪の少女がやってくる。
「大丈夫ですか?」
金髪の少女は両手に赤と白の拳銃形デバイスを携えている。
「こちらのブロックは私とハルミ姉さんに任せてください。」
金髪の少女、ルナサ・T・ハラオウンはそういうと、彼女自身も飛び込んでいく。
「頼むよ、レミリア、フランドール。」
『『OK.』』
「スフィアシュート、チャージ。」
『Bullet charge』
『complete』
「ファイア。」
ルナサを確認し、攻撃してくる質量兵器をオセロットもびっくりな早撃ちで撃墜していく。
ハルミが電光石火のごとく斬り倒し、ルナサがそれを援護しつつゴリゴリと数を削っていく。
サクヤがなのはを師としたように、ハルミは高速移動と剣術をフェイトとシグナムから学んだ。
ルナサの射撃は先天的なセンスによる面が大きいようだが、精密射撃や魔力操作に関しては某ヘリパイロットや執務官に指南を受けている。

その圧倒的な光景に度肝を抜かれていた隊員が後日語ることには、

「カエルの子はカエルってレヴェルじゃねーぞ!!」だとかなんとか言っていたらしいが、それはまた別の話である。





「スティンガーレイ!」
上空ではツカサが残党処理をしている。
しかし一向に数が減る気配が無い。
「ちっ、やはり誰か召喚をしてる奴がどこかにいるな。」
これだけの数を召喚するとなると相当な術者になるが、それらしい反応は近くにない。
感知できない程の遠距離にいるか、隠蔽結界が張られているかのどちらかなのではあろうが。

「リタルダンド、こちらハラオウン。広域検索を頼みたいんだが。」
「既に指示して検索も終わっています。」
「さすが艦長、近くに我々以外の魔力反応は?」
「それが見つからないのよ・・・」
「そうですか・・・」


フェイトは艦長席に沈み込むように座りなおし、思案する。
どこからこの質量兵器は出現しているのか?
考えれば考えるほど行き詰まり、解決の糸口がみつからない。
幸いこの防衛ラインを先ほどから維持しているおかげで民間人に死傷者はでていないが、
いつまでもずるずると交戦しているわけにもいかない。



「北西方向から高エネルギー体が高速で接近中!」
「魔道師と思われます!!」
その言葉を聞いたフェイトは身を乗り出す。
「この魔力数値、この速度、まずい!ハラオウン執務官!!推定Sランク魔道師がそちらに向かっています!!」
「・・・もう来ました。」



ツカサの前に2m近くはあるんじゃなかろうかという大男が飛来する。
見たところデバイスらしきものはないが、その容姿から受ける威圧感とは別のプレッシャーをツカサは感じる。
推定オーバーS、両親やフェイト、なのは以外でこのランクを有する魔道師とはまだ交戦したことがない。
ゆっくりとケフェウスを構えなおし、様子を伺う。

「まったく、この前の士官学校に襲撃の時といい、管理局のエースクラスの魔道師はいないんじゃ無かったのか?」
ツカサのことなど気づいていないように男はひとりごとをはく。
その言葉にツカサは眉をひそめる、今この男は士官学校襲撃と言った、先日弟が関わった襲撃事件のことであろうか?
「デルフの奴もいつまで手間取っているつもりだ?召喚師さまの魔力ももたんぞ?」
やはり召喚師は近くにいるようだ、それに他の仲間もいるらしい。

「ここは危険区域です、速やかに退避してください。」
一応警告の言葉をかけてみる。
そこでやっとツカサの存在に気づいたように男はツカサの方に向き直り、口を開く。
「お前は何者だ?」
「ツカサ・S・ハラオウン執務官、退避なさらないのでしたら公務執行妨害でしょっぴきますが?」
「ハラオウン?まさか、あの小僧の子供か?」
あの小僧?父のことか?
「まぁいい、目的は大方達成した、悪いが見逃してもらおう。」
男はその場から立ち去ろうと背を向ける。
「待て!」
バインドを行使しようとしたその時、男が振り向きいつの間にか手にしていた火球をツカサに叩き込む。

「何っ!?」
あまりの出来事に反応が半拍ほど遅れ、視界が爆炎に支配される。
「ぐあぁっ!!」

爆発の勢いに押され、ツカサは地上へと落下する。
とっさに受身をとったがかなりの衝撃が身体を貫く。

「お兄ちゃん!?」
「ツカサ兄さん!?」
ハルミとルナサが落下してきたツカサに気づき駆け寄ってくる。
「なんなんだあいつは・・・?」

朦朧とした意識の中でツカサはそう思った。












to be continued.....














後書き
どうもー、文章を洗練させる能力が皆無なjamiraです。
ほんと長くなってしまいました。自分で設定した限界バイト数を軽々と超えてます。
しかもまだ終わってませんしね。サクヤくん放置。

とりあえずすこしづつでありますが今回の事件の関係者らしき人も出てきました。
次から本格的にこの事件について動きだして行くと思います。

最初はこのあとに子供たちの細かい設定を載せようと思ったんですが、
あまりに長くなってしまったので次回に廻します。

そして高町ヴィヴィオの出現によりすこし人間関係の設定も変更を加えなきゃいけなくなって
正直テンパっておりますww

そろそろ短編なんかも書きたいな、と思っているのでよろしければそちらもどうぞ。
毎度このような稚拙な文章に感想を書いていただける方、読んでいただけている方には、
多大な感謝をしたいとおもいます。ありがとうございます。
感想、批評、質問等いただければ幸いです。
では、今日はこのへんで。





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