星を離脱したアースラは封印したロストロギアを届けるため、本局へ向かっている。
遺跡から戻ってきたクロノは報告書を作りながら遺跡でのことを整理していた。報告書には所々空欄がある。クロノはペンを置き、未だに疑問に思う点を上げてみた。

遺跡で急に現れた少年 
            B〜Aクラス相当のガーディアンを一撃で撃破できる戦闘能力 
                                        そして少年を遺跡に出現させたロストロギア

気になることは幾つもあるが、とりあえずクロノはユウのいる会議室へ向かうため軽く準備をし執務官室を出た。


魔法少女リリカルなのはLOC
第3話「並行世界」



クロノが会議室の扉を開けるとそこには既にエイミィとアースラ現艦長のリオ提督を加えた遺跡メンバーがユウを質問攻めにしていた。どこから来たの!? どうしてあれから出てきたの!?etc...
みんな(主になのはとはやて)が興味津々な顔で訊いており、対するユウは少し困った感じでどの質問から答えるべきか迷っていた。クロノはその輪の中に入る。

「ほら、そんなにいっぺんに訊いても答えられないだろ。僕が君達の質問をまとめるから」
「あ、クロノ君」
「答えてもらえるんやったらええよ」

はやて達に了承をとったあと、さて、とクロノはユウに向く。

「君にはいろいろと訊きたい事がある。こちらの質問に答えてもらうぞ」

ユウは特に問題ない様子で頷いた。





クロノはペンを持ち、近くの書類を手元に持ってきて質問を始めた。

「まず君の名前は?」
「僕の名前は城島ユウ」

クロノがペンを走らせて書類に書いた。その間にはやてがユウに呼び名を聞いた。

「ほんなら、ユウ君でええか?」
「どう呼んでもらっても構わないよ」

ユウは特に気にした様子もなくはやてに笑顔で答える。

「君はどこから来たんだ?」
「その質問の前に1つ。この世界に地球という星はある?」

いきなりの質問とその内容にクロノは眉を顰める。

「質問しているのはこちらだ。それに、その質問に何の意味がある?」
「君がさっき訊いた質問の答えに関わる」

クロノは周りを見渡してみんなの反応を見た。シグナムとヴィータは少し渋い顔をしていたが、なのは達は別にいいだろうということで頷く。

「確かに地球という星は存在する」
「そうか……やっぱり。どうりで感覚が似ていたわけだ」
「……いいか?」
「ああ、ごめん。いいよ」
「それで君はどこから来たんだ?」
「僕は君達の世界の並行世界から来たんだ」
「並行世界だって?」

クロノ達は耳を疑った。それはそうだろう、幾多の次元世界を行くことができても並行世界というのは今まで行くことはできなかったのだから。
クロノは険しい表情をしながらユウに尋ねる。

「何故僕らの世界の並行世界から来たといえる?」
「それがさっきの質問の意味だよ。さっき僕は地球という星はあるか訊いただろう?」

なのは達が頷く。

「僕達の世界にも地球という星は存在する。1つの宇宙に同じ名前の星があることはほとんどないからね。だから君達の並行世界から来たと言えるんだよ」
「そんなこと信じられるか。管理局の技術を持ってしても並行世界へは行くことはできないんだ。それを君1人で来ることが出来たというのか?」
「正確には僕の力じゃないんだけどね。証拠が欲しいっていうなら僕が知っている限りの地球の国名を全部言ってあげるよ。ここに地球出身の人はいる?」

なのはとはやてが手を上げ、ユウはそれを見ると国名を言い始める。国名を30カ国ほど上げたあとユウはいったん区切りなのは達を見て間違っていたかと訊いた。なのは達は首を横に振る。ユウはクロノに向き直り、まだいる? と訊いた。
クロノは未だに信じられないようで戸惑いながら答えた。

「い、いやいい。だが信じられないな……それなら君は一体どうやって僕達の世界に来たんだ?」
「それは君達が遺跡で封印したディメンションリンクの力だよ」
「あのロストロギアの力で来たの?」
「君達のところじゃそう言うのか。まぁそういうことだね」
「どうしてここに来たんだ?」

それを聞かれたときユウは気まずそうな表情をした。

「あ〜、それはその何と言うか……うん、事故みたいなものだよ」
「元の世界に戻る方法はあるのか?」
「君達が封印しちゃったから無理だね。例え封印が解除されても使う気にはならないけど」

どうして? とユーノが訊くとユウは今度は少し顔をしかめて答えた。

「あれって狙ったところに出られるわけじゃないからさ。下手したらどこかも分からないところに飛ばされちゃうんだよね……どこに飛ぶか分かるなら話は別だけど」
「あれはどういう力があるんだ?」
「ディメンションリンクは名前の通り次元同士を繋げる転送装置みたいなものだよ。次元同士を繋げるだけあって、他の次元世界や並行世界に幾つもあるんだ」
「だが君は狙ったところに出られないと言っていたな。転送装置ならその行先を設定できないと使えないんじゃないか?」
「なにぶん古いからね〜、以前は多分行先を設定できたんだろうけど時が経つに連れてその機能も使えなくなったんじゃないの?」

適当な様子で答えたユウにややむっとした様子で会話を続けるクロノ。

「随分簡単に言うな、それじゃこれからどうするつもりなんだ?」
「そっちはディメンションリンクをこちらに預けるつもりはないんでしょ?」
「ああ、あれはA級指定のロストロギアだ。1人の人間に預けることはできない」
「………調査とかはしないの?」

ちらっとクロノの顔を覗き込むように見たユウにクロノが首を傾げる。

「どうしてだ?」
「僕の世界には時空管理局……だっけ? そういう未確認のものを研究したり調査したりする組織っていうのがないんだよ。だから自分で調べようと思ったんだけど、君達が預かるっていうんなら調査してもらえないかなって思って。幸いにもこっちの世界は僕の世界より技術が進歩しているようだしもしかしたら帰れる方法とかも見つかるかなって思ったんだよ」
「だが調査をしても何も結果がでないかもしれない。それに君が元の世界に帰れる確立もほとんど無いかもしれないんだぞ」
「何もしないよりはましかなと思う」
「クロノ君、調査してあげてもええと思うよ。彼には遺跡の時もお世話になったんやしその恩返しってことでええんやないかな?」

はやてがユウとの会話に割り込んでクロノに笑顔を浮かべて提案した。

「しかし……」
「ええんやないかな?」

はやての後ろにドス黒いオーラが見えた気がした。
浮かべている笑顔には【許可せぇへんとエイミィさんに管理局の女性と食事していたことを多少脚色を加えてばらすよ】とクロノにだけ分かるように書いてあった。
はやての『多少』は『かなり』と置き換えても全くおかしくないぐらいだ。大体ただ誘われて一緒に食事していただけなのに、何故こんなに怒られるような感じなんだ? と疑問符を浮かべながら、

「しかし……僕の一存では決められないんだ。少なくとも艦長の許可が{許可する}はやっ!? いいんですか、そんな簡単に!?」

クロノは突然のリオの許可に驚いた。当の本人は微笑を浮かべながらクロノに向き諭す。

「ハラオウン執務官。遺跡から戻ってきたお前の報告によるとコイツに助けられたようだが?」
「確かにそうです。彼には封印中、ガーディアンの相手をしてもらいました」
「なら、俺達もそいつを手伝ってやっても構わんだろう。特に悪い奴に見えないし」
「しかし、見た目で判断するのは危険です」
「俺は結構人を見る眼があるつもりなんだがな? それにそのロストロギアの調査を進めることで今まで管理局が出来なかった並行世界へ行くことできるかもしれない」

そっちが本音か、とにやにやしている様子のリオに呆れる。

「………分かりました。艦長がそう言うなら」
「よし、決まりやね」
「ありがとう……ええっと」
「八神はやてや。はやてって呼んでな」
「うん、ありがとう。はやて」
「それでユウ君は調査の結果がでるまでどこにおるつもりなんや?」

ユウは少し考えるそぶりを見せたがユウが発言する前にリオが口を開いた。

「こいつはロストロギア……ディメンションリンクのこともあるから俺達の目の届くところにいる方が良いだろう」
「すると?」
「このメンツだと皆地球に住んでいるだろ? だったらそこに居させたほうがいいだろ」
「それではリンディ提督もいるので1度僕達の家に居させてもよろしいですか?」
「あぁ、そこら辺は任せた。お前もそれでいいか?」
「ええ、問題ありません。ところで家というのはどこに……?」
「第97管理外世界”地球”の小さな島国、日本の小さな町海鳴市のとあるマンションだ」
「日本か……。同居人は?」
「あぁ、僕と母さん、エイミィそれからフェイトとアルフだ」

それを告げるとクロノはユウに手を差し出し、ユウはその手を握り返した。

「僕はクロノだ。クロノ=ハラオウン。時空管理局の執務官だ」
「よろしくね、クロノ」
「あぁ、こちらこそ」
「そして私がエイミィだよ、エイミィ・リミエッタ。クロノ君の補佐をしているよ。よろしくね、ユウ君」
「こちらこそ、エイミィさん」

エイミィが差し出した手をユウは笑顔を浮かべて握り返した。それを見たフェイトが立ち上がりユウに手を出す。

「私がフェイトです、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。よろしくね」
「うん。こちらこそよろしく、フェイト」
「うん」
「ところでアルフさんはどこにいるの?」
「あっ、アルフは今別に任務に当たっていて今はいないの」
「そうなんだ、家で会えるかな?」
「うん、いつも残業じゃない限りはみんな家にいるから」
「分かった。その時に挨拶をするかな」

ユウとフェイトの話がひと段落したところでクロノがペンを置き書類を整理する。

「さて、僕が聞きたいのはこれくらいだ。あとは自己紹介とかその他の質問をすればいい」
「それじゃあ自己紹介。高町なのはです。武装局員をやっています。よろしく」
「ユーノ・スクライアです。無限書庫の司書をやっているんだ」
「主はやてに仕える騎士シグナムだ」
「同じくヴィータだ」
「アースラの艦長を務めているリオ=ブレイズフォードだ」

残ったなのは達がユウに自己紹介を終え、すぐに質問タイムとなる。最初にシグナムが質問をした。

「城島、お前は遺跡で剣を使って戦っていたが見せてもらえないか?」
「ん? エクスのこと? ちょっと待って」

ユウは右手首の白のアクセサリーにいいかと訊き、白のアクセサリーは明るい口調でいいよと答えた。ユウは右手を前に出し、

「ソードフォーム!」
『Set up』

白のアクセサリーが白い光を発した後ユウの手には剣が握られていた。ユウはシグナムにエクスと呼ばれた剣をを渡す。両刃であり刀身には読めない文字が刻まれていた。柄の部分は金色に装飾されており、柄と刃の繋ぎ目に金の宝石がはめられている。

「ふむ、良い剣だな」
『お褒めの言葉ありがとー』
「そういえば喋れるんだったね」
『そうだよ。聖剣“エクスカリバー”だよ。よろしく!」
「明るいねぇ。デバイスなの?」
「君達が使っている武器とは少し違うかな?」
「そうなんだ」
「この刀身に刻まれている文字は何だ?」
『これはルーン文字って言うんだよ』
「魔力を高めるために刻んでいるんだ」
「へぇ〜〜」

ユウの説明を聞きながら、皆興味津々でエクスカリバーを眺める。そこになのはがユウの右手首に巻いてある黒のアクセサリーに気づいた。

「ねぇ、そのアクセサリーも武器になるの?」
「うん、そうだよ。見る?」

なのは達が頷く。ユウが黒のアクセサリーに話し掛けた。

「いい、ソウル?」
『構わない』

エクスカリバーと違って低い声がした。今度は左手を前に出し

「ソウルイーター、ソードフォーム」
『Set up』

アクセサリーから黒い光が発せられ光が収まった時、一本の剣がユウの左手に握られていた。
片刃のようで悪魔の羽を思わせるような剣だった。こちらには柄と刃の繋ぎ目に黒い宝石がはめられていた。

「こっちも剣か……二刀流なのか?」
「う〜ん、その場によって1本の時と2本の時とで分けているから二刀流とは言えないかな」
「そうなんだ…この剣はなんていうの?」
『魔剣“ソウルイーター”だ。よろしく頼む』
「ふむ、剣を二本使う……よし城島、これから模擬戦をするぞ!」

シグナムは目を輝かせながらとんでもないことを言った。ユウは目をパチクリさせいきなり誘われたことに動揺する。

「え、ええと……その何で?」
「お前は先の遺跡でもそうだったが、剣術を嗜んでいる。加えて剣を二本使うなど私の知り合いではあまり居ない」
「まあ、普通そうですよね」
「そこで、お前と手合わせしたい。色々なやつと戦ってみたいのだ」
「僕はそうは思いません」
「あ〜ユウ、今のシグナムに何を言ってもムダだ。こいつはバトルマニアだからな、一度模擬戦をするまで気がすまないだろうよ」
「バトルマニアって……」
「さぁ城島、早く訓練室に向かうぞ!」
「そ、そんな〜〜〜」

ユウは生き生きとしたシグナムに引きずられながら会議室を後にした。クロノがこめかみを押さえながらユーノに結界をはるように頼んだ。
他のみんなも面白そうだとシグナム達についていく。会議室にはまだこめかみを押さえているクロノと彼の傍に立っているエイミィだけが残った。

「まったく、彼女にも困ったものだな…」
「まぁ、シグナムのあの性格は今に始まったことじゃないよ」
「そうなんだがな……エイミィ」
「何? クロノ君?」
「シグナムとの模擬戦の時にユウの魔道師ランクを調べてくれ。それと別で古代遺失物捜査課と無限書庫にディメンションリンクの調査の協力を取り付けてくれ」
「仕事が早いねクロノ君。彼の魔道師ランクを調べるのはただの好奇心?」
「頼まれたからな、引き受けたからにはしっかりやるさ。魔道師ランクについては……まあ、そんなところだ」
「分かった。すぐに始めるよ」
「頼む」

エイミィとクロノは会話を終えると会議室を出てクロノは訓練室へ、エイミィは管制室へと向かった。




----後書き----

カークス:「皆さんここまで読んでいただきありがとうございます」

ソウル :『やっと俺が出てきたな』

カークス:「まぁ、今回はオリキャラの解説的な話だったからね。ちなみに本文中の古代遺失物捜査課というのもオリジナルです」

ソウル :『リンディに代わってアースラの艦長を務めているリオも出てきたしな』

カークス:「彼を一言で言うなら頼れる兄貴って感じかな? 仕事は基本クロノに任せているけどね」

ソウル :『それにしても……』

カークス:「分かってる。たくさんの人が出ると大変だね。誰が喋ってるのかわかんないよ」

ソウル :『改めて口調というものの大切さを実感したな』

カークス:「いやほんと、これを難なく書ける他の皆様方は羨ましいです」

ソウル :『今後精進するんだな。さて、次はシグナムとの模擬戦か…大丈夫か?』

カークス:「戦闘描写のことだったら突っ込まないでくれると嬉しいかな。他の皆様の作品を参考にしながら書くつもりだけど……」

ソウル :『ならば敢えて突っ込まないことにしよう』

カークス:「お願いします。それでは今後も頑張っていきますのでよろしくお願いします」

ソ&カ :『「それでは、失礼します」』





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