魔法少女リリカルなのはLOC
第5話「新たな家族」





「SSS−って……」

なのはが呆然としながら呟いた。無理も無い。なのは達が今まで出会った敵でSSS近くの実力を持つのはリインフォースだけなのだから。そこでシグナムが疑問の声を上げた。

「しかし、SSS−の攻撃を受けたら私は無事では済まないはずなのでは?」
「そ、そうだよ!それなら何でシグナムは無事なんだよ!?」

ヴィータがやっぱり何かの間違いじゃねぇのか?とさらに訊く。その質問にソウルイーターが淡々と答えた。

『無事なのは当たり前だ。ちゃんと制御できているのだからな』
「制御って……」
「斬る寸前に力を抑えたんだよ。そうでなきゃ大変なことになるからね」
「力を抑えたってことはまだ上がるってこと!?」
「う〜ん、上げようと思えば上げられるけどそこまでする必要は滅多に無いからね」

一同は唖然とした。SSSランクを越える魔道師などこの世に存在するかどうか分からないと思っていた。しかし目の前にその魔道師がいる。自分達の並行世界の住人として。
唐突にクロノがユウに質問をした。

「ユウ、君は魔力を抑えながら日常を過ごすことはできるか?」
「…難しいことを言うね。魔力を抑えるのは全力より疲れるから一時的は出来てもそれを持続させるのは無理があるかも…」
「どうして?」

フェイトがクロノに訊ねる。クロノは苦い顔をしながら唸るように言った。

「ここまで魔力が高いと管理局上層部に目を付けられることになるんだ、魔力が高い危険な奴という風にな。おまけにユウは僕達世界の並行世界の住人だ。最悪の場合ユウが本局に預けられるかもしれない」
「そんな!?」

フェイトが抗議の声を上げた。そこへリオがクロノの意見に付け加える形で皆に訊いた。

「上層部にユウの魔力のことを知らせるのは今のところ良くないだろう。何とかユウの魔力を抑える方法はないか?」
「リミッターをユウに付けるとかは?」
「リミッターを付けるとなると手続きが必要になる。そうすると確実に上層部に気づかれるだろうな」

皆が首を捻って考えているところにはやてが何かに閃いたようにポンと手を叩いた。

「ならユウ君の魔力を分けるってのはどや?」
「魔力を分ける?」

ユーノが疑問符を頭に浮かべた。

「せや、ユウ君の魔力を別の物に移すんや。そうすればユウ君の魔力は減って上の人に知られることもないよ」
「だが、どうするんだ?」
「ユニゾンデバイスや」
「ユニゾンデバイス!?」

はやてとユウを除く一同は驚愕の声を上げた。ユウはユニゾンデバイスという単語に首を傾げていた。

「ユニゾンデバイスに魔力を移して、普段のユウ君の魔力を減らして上層部を騙す。必要な時はユニゾンして魔力を元に戻すんや。私も今リインを作っている最中やしちょうどええと思ったんやけど…」
「確かに良い考えだが、融合者には適性が必要でおいそれと誰でも使えるわけではない。最悪の場合、君も体験した融合事故が起きるぞ」
「シグナムとの戦闘ではユウ君は適性あるように見えたけど?ソウルイーターとのコンビネーションも抜群だったし」
「それにこれしか方法はないと思うんや。ここは賭けにでてみよ?」

確かにそれしか方法はない。だが本人の許可無しに決行していいのか?もし事故があったら……。クロノはユウをちらりとユウを見た。彼はまだ首を傾げていた。なにやらぶつぶつ「ユニゾンデバイスって?」と言っている。相当集中しているので今話しかけても聞こえないだろう。クロノはため息をついた。

「まぁ、それしか方法が無いんだったらやるしかないだろうな」
「そやろ?」
「だけど、リインフォースの製作と同時進行させるなら無理があると思うよ」
「ユウのユニゾンデバイスはリインフォースをベースにすればいいだろう」
「確かに現状ではそれが最善か……よし!本局に着いたらすぐにとりかかるとしよう」

はやてとクロノとユーノが話し合いリオがまとめた。なのは達は頷いた、ただ1人を除いて……

「ユニゾンデバイスって何だ……?」






時空管理局本局。
クロノとリオは報告書を提出に行き、他の皆はリインとユウのユニゾンデバイスの作成ために製作室へ向かっている。

「ねぇ、話がさっぱりなんだけど……」
「そら人の話を聞いてないほうが悪いんやで」
「何だかユニゾンデバイスってのを作るってことしか分からないよ」
「それだけ分かれば十分やよ」
「むぅ……それでユニゾンデバイスって何?」

ユウの質問にはやてに代わってフェイトとユーノが答える。

「ユニゾンデバイスというのは融合型のデバイスなんだ」
「融合型?」
「デバイスにはインテリジェント、ストレージ、ブースト、アームド、そしてユニゾンの5つの種類があるの」
「ストレージはあらかじめ魔法を詰め込んでおく記憶媒体のようなもの。インテリジェントはストレージに対して発動の手助けとなる処理装置、状況判断を行える人工知能も有しているだ。アームドは武器としての性能を重視しているデバイスだよ」
「ブーストは対象を強化するブースト系の魔法能力に優れているの。そしてユニゾンは姿と意志を与えられたデバイスが状況に合わせ、術者と「融合」し魔力の管制・補助を行うんだよ」
「ふぅん……」

不意にユウがエクスカリバー達にひそひそ声で話し掛けた。

「ねぇ、そうしたらブーストっていうのはアルのエーテルフローズン、ストレージっていうのはマリアのグラビティアクセルみたいなものかな?」
『だろうな』
『そうしたら私達はインテリジェントってことだね〜』
「ねぇ、行こうよ」
「あ、うん……ところでさ部屋で話してた融合事故ってなに?」
「っ!!………ちゃんと聞いてるやないか」
「たまたま耳に入っただけだよ。それで何?それって」
「あっと……それは………」

皆が口ごもってしまい、重い沈黙が続いた。廊下には一同が歩く音しかしなくなった。その沈黙をはやてが明るい口調で破った。

「う〜ん、実はな私にもよう分からへんのや」
「そうなの?」
〈はやて?〉
〈ええから私に合わせて〉
「そや、クロノ君ったらいきなり分からないこと言い出して焦ったわ。ね、なのはちゃん」
「う、うんそうだよね、クロノ君には困っちゃうよね。ね〜ユーノ君」
「う、うん。本当あいつのあれは何とかして欲しいよね、フェイト」
「えっ!?そ、そうだよね。クロノのあれは迷惑だよね、シグナム」
「あ、ああ。まったく聞いたこと無い言葉を言われても困るな、ヴィータ」
「あ、ああそうだ。本当にあいつは馬鹿だぜ」
「そ、そうなんだ」

いつの間にやらクロノに対しての愚痴っぽいのが混じっていたがユウは聞いてはいけないことなんだろうと判断し納得することにした。その時どこかの執務官が提督に向かってくしゃみをして、提督に怒られている様子が頭に浮かんだ。ユウが納得したのを見ると一同ほっと息をつきはやてに念話を一斉につないだ。

〈はやて、大丈夫か?〉
〈ん、なんも問題あらへんで〉
〈主、何故彼に本当のことを…?〉
〈彼には余計な不安を募らせたくないだけや。これからユニゾンデバイスを作るのにそんなん聞いたら作るのが嫌になるかもしれへんやろ。でも彼が私らと一緒におるためにはこれしか方法は無い〉
〈だからなんだ……〉
〈いずればれると思う、その時は嘘つきって嫌われるかもしれへん。それでも今ユウ君にとってそれは知らなくてもいいことなんや。別に嫌われても構わへんよ〉
〈そんなことないよ、きっとユウははやての気持ち分かってくれるよ〉
〈そんならいいけどなぁ〉

その後はやて達は無言のまま製作室へ歩いていった。静かな廊下にはコツコツと足音だけが響いていた。




製作室には既に連絡をうけたマリーと他数名の研究員がいた。研究員は皆リオによって選ばれた信用のある人だ。

「マリーさんよろしくお願いします」
「うん、今日も頑張ろうね。それで…」

マリーがユウに向いた。

「あなたがユウ君?」
「はい。城島ユウです。初めまして」
「うん、話はクロノ執務官から聞いているよ。私はマリエル・アテンザ。みんなからマリーって呼ばれているわ。よろしくね」
「はい、こちらこそ。マリーさん」
「それで早速始めたいんだけど、2人ともいい?」
「「はい」」
「ユーノ君もよろしくね」
「はい、分かりました」
「あの…私達もお手伝いします」

なのはがちょこんと手を上げて手伝いを申し出た。

「ありがと、でもユーノ君以外にユニゾンデバイスの構造とか分かる?」
「うっ………」

なのは達の動きが止まった。ここにいるメンバーでユーノ以外はデバイスの構造など知らない。精々軽く整備ができる程度だ。ユーノ達が苦笑しながらなのは達を見ていた。

「気持ちだけ受け取っておくよ」
「皆は戻って休んでいてな」
「一段落したら休憩するからその時にまた会おうね」
「うん……分かった」
「ユーノ君あんまり無茶しちゃだめだよ」
「うん、大丈夫だよなのは」
「主、どうか無理はなさらずに」
「はやて、頑張ってね」
「ありがとなシグナム、ヴィータ」
「ユウ、また休憩室でね」
「うん、それまでゆっくり休んでてフェイト」

なのはとフェイト、シグナム、ヴィータは製作室を出た後、とりあえず軽い食事をとろうということで食堂に行った。




なのは達が製作室を出た後、マリーとユウ、はやてとユーノと研究員に分かれて制作を始めた。

「えっと、ここまでやったから今日はここからか…」
「せやな」
「ではこちらにデータを表示します」
「ありがとうございます」

ユーノが研究員の表示したデータに目を通しているとき、はやてはふとユウに目をやった。

「ベースはリインフォースと同じだけど、多少のことは変えられるから」
「そうですか」
「性格はどうする?今のままで良い?」
「えっと、もう少しおとなしい方がいいです」
「ふんふん、なるほどね。ああ、そういえば性別はこのままでいい?」
「男にしてください」
『え〜、女の子だと仲間が増えるのにな〜』
「融合する時に女だとなんだか緊張するんだよ」
『え〜、ユウってば何想像しているのかな〜?』
「べ、別に何も!」
『本当かな〜?なんだか顔が赤いよ〜』
『エクス、そろそろ辞めておけ』
『は〜い』
「ふふっ、仲が良いんだね」
「色々と疲れますけどね」
『あー、ひっどーい。それはソウルのせいだよ』
『他人に罪を擦り付けるな!』
『ふ〜んだ、ソウルもユウと同じでムッツリの癖に』
『誰がむっつりだ誰が!』
「そうだよ!勝手に決め付けないでよね!」

不意に笑ってしまった。くすくす笑っているはやてをユーノは不思議な目で見た。

「どうしたの、はやて?」
「いやなぁ、ユウ君達本当に仲が良いなと思って」
「そうだよね、デバイスとその使い手って感じじゃないよね」
「まるで昔から一緒にいた家族みたいやな」
「そうだね。さて、こっちも君の新しい家族のために頑張ろう」
「そやね。はやくリインに会いたいしな」

はやて達は楽しそうに笑いながら作業に取り掛かった。





それから約2時間後
ユウ達は途中クロノと合流し、一段落ついたところで休憩をとることにした。ユウは疲れの色を見せているはやてとユーノに近づいた。

「大丈夫?」
「うん、何とかね」
「少し疲れてもうただけや」

クロノがコーヒーを持ってきてはやて達に渡した。

「ありがと、クロノ君」
「結構みんな疲れが出ているな、今日はここで終わりにしよう」
「だ、大丈夫や。まだ頑張れるよ」

はやては立ち上がり腕を上げたが、すぐにへなへなと落ちてしまった。クロノがため息をつく。

「今日は遺跡のこともあったんだ。疲れがでて当たり前だ」
「で、でも……」
「はやてちゃん、実はね今日で作業が大分進んだの。多分明日には出来るわ」
「本当ですか!?マリーさん」
「うん、だからね後は私達に任せて」
「え?」
「完成した時に疲れた姿で迎えるのもあれだからね……だから今日はもう休んで、明日元気な姿でご対面しよう」
「……はい、ありがとうございます」

マリーはにっこりと笑って返した。ふと思い出したようにユウに振り向いた。

「そうだユウ君。君に2つ聞き忘れていたの」
「何ですか?」
「ユニゾンデバイスの名前とユニゾンデバイス専用のデバイスの設定だよ」
「なんや、まだつけてへんかったの?」

はやてが意外そうな顔をユウに向けた。実は始まった当初に聞かれていたのだが、あまり良い名が思い浮かず後回しにしていた。

「はやてはもう決まっているの?」
「そや、祝福の風“リインフォースU”や」
「U?Tじゃないの?」

それを聞いた瞬間、はやての顔は曇ってしまった。ユウはどうしたの?と聞くが、反応は少しばかりか薄い。慌ててクロノがフォローに回った。

「そのことなんだがユウ、あまり詳しく詮索しないでやってくれ。彼女もそのことを思い出すのは酷なんだ」
「………分かった。ごめんね変なこと訊いて」
「こっちこそごめんな。空気重くしてもうて」
「気にしないでよ。それでデバイスのデバイス……ややこしいな、とりあえずそれはなんていうの?」
「蒼天の書やよ」
「書ってことは本か……」
「うん、ちなみにユウ君のデバイスの武器も本だから」
「そうだな〜、うーん………」

ユウが目を瞑り考え始めてから約十数分、ユウは顔を上げた。

「設定は名前の後で良いですか?」
「構わないよ」
「先に本の名前の方なんですけど……」
「うん、いいよ」
「月光の書ってどうですか?」
「月光の書か……いいと思うよ」
「ありがとうございます」
「なんでその名前にしようと思ったんや?」
「はやては確か夜天の主だったよね?だからそれをヒントにして夜に浮かぶものと言ったら月光が思いついたから」
「なるほどな〜、それでユニゾンデバイスの方はどうするんや?」
「一応それも決まりました」
「どんなんや?もったいぶらずに教えてな」

ユウは少し間をおいて静かにはっきりと言った。

「ゼロです」





----後書き----

カークス:「皆さん、ここまで読んでいただきありがとうございます」

ソウル :『ちっ、まだ生きてたか……』

カークス:「黒っ!黒いよ、ソウル!いきなりひどくない!?」

ソウル :『そんなことはない』

カークス:「言い切りましたよ、この人(?)!」

エクス :『まぁまぁ、ところでこれってほのぼのなの?』

(ビクッ!!)

カークス:「……………(ガタガタガタガタ)」

ユウ  :「つまり失敗したと?」

カークス:「し、しょうが〈しょうがなくない〉って、先手取らなくていいでしょ!」

ユウ  :「だってうるさくなるから」

カークス:「だってさぁ、まだ色々やることがあるのを忘れていたんだよ……ゼロのこととかさぁ……」

ユウ  :「それもあるけど、融合事故について分からない人もいるんじゃないの?」

カークス:「んじゃ一応知っているとは思うけど解説。融合事故とはデバイスが術者の肉体をのっとり、勝手に自律行動を行ってしまうという事故(nanohawikiより引用)のこと

だね」

ユウ  :「様はA'sの時にリインフォースが暴走した際のことだね」

カークス:「そゆこと。それでゼロの方だね」

ユウ  :「5話でようやくゼロが出てきたね」

カークス:「名前だけだけどね。次の話で本人が出てくるよ」

ユウ :「つまり次の話は出来ているの?」

カークス:「ある程度はね」

ユウ :「その次は?」

カークス:「大雑把だけどなんとか………」

ユウ  :「その次は?」

カークス:「まだ…だけど……」

ユウ  :「エクス!ソードフォーム!」

エクス :『起動!』

カークス:「いやいやいやいや!無理あるでしょ、あんた!つか何でそんなに目をキラキラさせてるの!?」

ユウ  :「大丈夫だから、痛くないから!」

カークス:「そんなん振り上げられて大丈夫もへったくれもあるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ユウ  :「いいからいいか、らっ!」

カークス:「イィィィィィィヤァァァァァァァ!!」

ソウル :『今回は俺か…さて作者によると次の話はゼロとリインの完成と書けたらハラオウン家一同とご対面シーンを書くつもりらしい。今度はちゃんと書けるのか…?まぁなんとかさせてみせるさ』

カ&ユ&ソ&エ《それでは、失礼します》





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