それはどこか暗い空間でのこと。
3人の男性と2人の女性が映像装置を見ていた。映像装置に表示されているのはディメンションリンク、そしてユウだった。正確に言えば5人はユウ自身ではなくユウの魔力を見ていた。男性の1人が口を開いた。

「待ちに待った時が来た」
「ようやく彼が来たんだね」
「少し遅すぎたがな」
「でも私達の計画に支障はない」
「これでようやく……」

黒いフードをしていたが声から老人、少年、青年、女性、少女だと分かった。老人は他の4人に振り返り、淡々とした口調で計画の実行を宣言した。

「これで全ての準備が整った。これより作戦を実行する」

老人の言葉に他の4人は頷き、四方へ散った。その場には老人が残り、再び映像装置を見た。ユウの魔力を見て老人はニヤリと笑った。

「やっと我が目的が達成される。やっと……」

老人は映像装置を消し暗闇の中に姿を消した。1つの言葉を残して……

「早く我が元に、混沌の王よ……」





魔法少女リリカルなのはLOC
第6話「ゼロ」





ゼロの事はマリーに任せてユウはクロノ、フェイト、エイミィと共にハラオウン家に来ていた。既にリンディとは挨拶をすませ、後はアルフの帰宅を待つばかりだ。
アルフの帰宅を待つ間ユウはフェイト達の世界のこと、時空管理局のこと、そしてこちらの魔法のことについての話を聞いていた。それから十数分後、アルフが疲れた表情で帰って来た。

「ただいま〜」
「あっ、アルフ。お帰り」
「アルフ、ご苦労様」
「随分大変だったそうだな」
「ちょっとアルフ、大丈夫?」
「んあ〜何とか〜……ん?こちらは誰だい?」

アルフが疲れた表情を隠しながらクロノ達に聞いた。クロノ達が答える前にユウが自分で答えた。

「僕は城島ユウ。色々あってこちらにお邪魔させていただいています。あなたがアルフさん?」
「ん?そうだよ。あたしはフェイトの使い魔なんだ。だから今日のようにフェイトと離れることは滅多にないのさ」
「そうなんですか、よろしくお願いします。アルフさん」
「よしてくれよ、敬語使われるの慣れてないんだから。あたしのことはアルフでいいよ。それと敬語も使わないでくれよ」
「分かった。それじゃよろしくね、アルフ」
「ああ、こちらこそ」

2人は微笑みながら握手を交わした。そこへリンディがニコニコと笑顔を浮かべながらサラダの入った食器を持ってきていた。

「さぁ、みんな挨拶もすんだようですし、晩ご飯にしましょう」




カチャカチャと音を食器の音を立てながら皆で食事の最中、遺跡やアースラ内でのことを聞いたアルフが肉を頬張りながらふとユウに訊ねた。

「ユウ、これからどうするつもりなんだい?」
「ん〜、とりあえずディメンションリンクの解析結果を待つしかないかな、他にすることもないし…」
「その間はどうやって過ごすんだ?」
「とりあえず、どこかで寝たりエクス達の整備に回るかな?」
「?どこかってどこだ?」
「そりゃあ、この辺りの丘や森とかででしょ」

その言葉を聞いた瞬間、クロノ達は何を言っているんだこいつはという顔になった。そんなに変なことを言っただろうか……

「何故丘や森でやるんだ?」
「何故って……」
「この家でやればいいじゃないか」
「………へ!?」

間抜けな声を出して間抜けな表情をしたユウをクロノ達は不思議そうな顔で見ていた。

「えっと、ここに来るの一時的だったよね?」
「そうだが、他に行くあてがあるのか?」
「いや無いけど……」
「なら問題ない」
「でも……」
「なんだい、不満があるのかい?」

アルフが顔を顰めながら聞いた。ユウは手を振り慌てて答えた。

「い、いやそういうことじゃなくて迷惑じゃないかと思って…」
「なんで迷惑なの?」
「いきなり人が増えると困るんじゃ……」
「家族が増えるのはいいことですよ」
「家の中が狭くなったり…」
「この家は広いから問題ないよ」
「………………」

ユウが訊いたことに間髪入れずにフェイト、リンディ、エイミィが答えた。ユウはこれ以上何を言っても無駄だと思い、ため息を軽くつく。

「それじゃ、これからよろしくお願いします」
「最初からそう言えばいいんだよ」
「改めてよろしくね、ユウ」

アルフとフェイトが笑顔を浮かべて答え、他の皆も微笑みながらこちらを見ていた。こうしてユウはハラオウン家に居候させてもらうことになった。




与えられた部屋で一泊し、早朝。

ユウは誰かが家を出る音を聞いた。まだ時間は午前の5時前だ。

(早いな〜……誰だろう?)

興味をもったのでついていくことにしたユウ。靴を履きそっと後をつけた。行き着いた先は屋上。そこでユウは誰なのか確かめるため覗いてみた。

「フェイト?」
「あっ、ユウ」

見ればフェイトが物干し竿を持っていた。その隣には見たことがない子犬がいる。

「何しているの?」
「早朝訓練。毎朝やっているんだよ」
「は〜、大変だね〜」
「そうでもないよ、もう慣れたし」
「ふ〜ん、それでこの犬どうしたの?」
「え?あ、そういえばユウは知らなかったね」
「何を?」
「私だよ」

子犬がアルフの声を発したかと思うとその姿が光に包まれ、光が収まったと思えば昨日会ったアルフの姿になっていた。

「あぁ、アルフだったんだ」
「うん」
「あんまり驚かないんだねぇ」
「動物に変身できる奴は知り合いにいるからね」
「へぇ〜、そうなのかい?」
「それじゃ、ユーノみたいな人かな?」
「ユーノも変身できるの?」
「うん、フェレットになるんだよ」
「へ〜(フェレットか、マリアに見せたら大変なことになりそうだな)」

ユウの微妙な表情にアルフとフェイトは不思議そうな表情で見た。ユウがフェイトの物干し竿を見て訊く。

「ところで早朝訓練でなにやっているの?」
「う〜んと、素振りと魔力のコントロールぐらいかな?」
「どれくらい?」
「大体30分〜1時間ぐらいだよ」
「そうなんだ、もし良かったらこの間話した早く動く方法教えようか?」
「えっ?いいの?」
「出来れば今日はフェイトの訓練の様子を見たいから、明日辺りでいいかな」
「うん!ありがとう、ユウ」

満面の笑顔を浮かべてお礼を言うフェイトにユウは微笑を浮かべた。

「それじゃ、毎朝やっていることをやって」
「うん」




早朝訓練を終えて、家に戻ってきたユウ達は既に作られていた朝食をとりながら楽しい朝を満喫した。しかし楽しい朝を満喫していたユウに悲劇が訪れた!!

「皆、もし良かったら飲み物に抹茶はどう?」

抹茶

その言葉を聞いた瞬間ユウとリンディ以外はガタっと音を立てて椅子から立ち上がった。心なしかその表情は青ざめていた。リンディは不思議な表情をしながら皆を見た。

「どうしたの?」
「す、すみません。今日は大事な会議あるので!」
「ご、ごめんね。私もなのは達と待ち合わせをしているから!」
「わ、私も、ちょっとマリーに話があって!」
「あ、私も昨日の事後処理があってねぇ!」

皆が急いで準備を始めた。ちなみにまだ朝食は残っている。ユウはそんな様子を不思議そうに見ながらリンディに言った。

「それじゃ、僕は頂きます」
「あらそう、それじゃ準備しますね」
「お願いします」

キッチンに戻ったリンディを見た後クロノ達を見ると皆悲しそうな目でこちらを見ていた。クロノとアルフは短い付き合いだったなと表情で語っており、エイミィはごめんね、ユウ君という表情で、フェイトにいたっては目に涙を浮かべ半泣きの状態でユウを見ていた。
えっ何?僕間違ったことした?ちなみにこの間にキッチンからポチャンと何か入れる音がずっと続いていた。

「ユウさん、出来ましたよ〜」

キッチンからリンディの声が響いた瞬間クロノ達は一目散に玄関へと駆け出した。

「「「「い、行って来ます!」」」」
「はい、いってらっしゃい」
「気をつけてね〜」

フェイトが家を出る前に最後に見たのはユウが笑顔でリンディから抹茶モドキを貰っていた瞬間だった。





なのは達がフェイトを待っているとフェイトが走りながらきた。アリサとすずかが疑問に思いながらフェイトに訊いた。

「ねぇフェイト、どうしてそんなに急いできたのよ?」
「まだ集合時間には余裕があるよ」

フェイトは息を切らせながら答えた。

「リンディ母さんが……抹茶を……出すって言ってきたから……」
「あはは、だからなんだ」
「フェイトちゃんも大変やな〜」

なのはとはやてが苦笑いを浮かべた。アリサとすずかはなんのことだかさっぱりという感じだった。フェイトの様子が落ち着いてくるとなのはがフェイトに話し掛けた。

「フェイトちゃん、例の物クロノ君大丈夫かな?」
「あ、うん。クロノは大丈夫だって言っていたよ。完成までには間に合うって」
「そっか良かったなぁ」

はやても加わり3人で楽しそうに笑った。そこでアリサの額からぷっつんという音がした。

「だぁぁぁぁぁぁ、もう!3人だけで楽しんでいないで私達にも話してよー!!」





時は過ぎて午後3時ごろ。フェイトはマリーからゼロの完成が間近ということを聞いたのでユウを呼びに行っていた。

「ただいま〜」

返ってくる言葉はない。フェイトはリビングに誰かいないかと思い、リビングに入った。リビングにはソファーにぐったりと横たわっているユウだけがいた。

「え〜と……ユウ、ただいま」
「…………」

返事がない。ただの屍のようだ。フェイトは返事のないユウが心配になり体をゆすって起こすことにした。

「ユウ、気分が悪いところ悪いけど起きて」
「う、う〜ん……」

ユウが具合悪そうに目を開けた。目を開いたユウを見てフェイトはほっとした。ほっとしたフェイトを見た直後ユウが恨めしそうにフェイトに言葉を発した。

「知ってたでしょ」
「えっ?」
「あの人の抹茶がどういうのか、知っていたでしょ」
「ええと……」

気まずそうに顔を逸らすフェイトにユウがジト目で追い討ちをかける。

「あれのせいで一瞬花畑が見えたからね」
「ごめんなさい………」

フェイトが素直に謝ったのを見てようやくユウは笑顔を作った。

「別にいいよ。ところでどうしたの?僕を起こすところから何かあったんでしょ」
「あ、うん。ゼロが完成するから本局に来てくれって」
「分かった。それじゃあ行こうか」
「大丈夫?」
「随分休んだから大丈夫だよ」

よっとユウは立ち上がり、直ぐに準備をした。そして5分も経たずに本局へ向かった。






時空管理局本局製作室。ユウとフェイトが着いた時には他のアースラメンバーが揃っていた。部屋の真ん中には大きな機械で包まれた箱がありその手前にレバーがあった。

「遅くなってすみません」
「構わない。マリー、全員揃った。出来るか?」
「はい、リオ提督」

マリーがリオの言葉を受け、レバーを引いた。バチバチと電撃を出しながら起動した機械。皆がわくわくしながら見る中その箱の頂点が二つに割れ、箱が開いた。その中には二機のユニゾンデバイスが仰向けに寝ていた。片方はリインフォースU、そしてもう片方はゼロだ。箱が開ききった後、ゼロとリインが目を覚まし立ち上がった。そして二機はそれぞれのマスターの前に向かい、挨拶をした。

「初めまして、マイスターはやて。私はリインフォースU。これからマイスターはやてを手助けできるように頑張ります…?どうしましたマイスターはやて?」

はやては目に少し涙を浮かばせていた。しかしリインに指摘された後、慌てて涙を拭いて笑顔でリインに向き直った。

「ううん、なんでもないんやよ。よろしくな、リイン」
「はいです」
「初めまして、マスターユウ。僕はゼロ。作っていただきありがとうございます。これからよろしくお願いします」
「うん、こちらこそよろしく」

ユウはゼロに笑顔で答えた。ゼロはショートカットでレモン色の髪をしており、バリアジャケットもリインのバリアジャケットがベースで色は白と黒を混ぜたような感じだった。目は蒼色で外見年齢はリインと同じくらいだった。

「ほらゼロ、みんなにも挨拶な」
「リインもやよ」
「「はい(です)」」

リインとゼロは皆に向くと、ぺこりと頭を下げて挨拶をした。

「皆さん、始めまして。リインフォースUです。これから皆さんから色々学ぶことはあると思うのでその際はよろしくお願いします」
「同じくゼロです。まだ生まれたばかりなので分からないことだらけですが、これからよろしくお願いします」
「礼儀正しいね〜」
「2人ってどこか似ている感じがあるよね」
「同時に生まれたことにもなるし、2人は姉弟ってことになるのかな?」
「姉弟か……ゼロ、弟として恥じないようにな」
「はい。しっかりマスターをサポートしつつリインも助けます」
「リイン、ゼロ君をしっかり見なきゃあかんよ。お姉さんなんやから」
「はいです。ゼロのことはしっかり姉として接します」

そんな光景に皆ほのぼのした空気を漂わせながら見ていた。一部のアースラクルーからは「和むね〜」という声も上がっていた。
その中、マリーがユウにゼロのことについて話した。

「ユウ君、ゼロの詳細なんだけど……」
「あ、はい。お願いします」




----後書き----

カークス:「皆さん読んでいただきありがとうございます」

ソウル&エクス:『『………………』』

カークス:「えっと、何でそんなにじーっと見てくるの?」

エクス :『出番……』

カークス:「えっ?」

エクス :『出番今回無かったじゃーーーん!!』

ソウル :『ゼロが出てくるのに俺らを出すのを忘れるとはな……』

カークス:「い、いやぁ……何だか絡ませる場所がなくて……」

エクス :『そんなの関係ないよ!』

カークス:「わーー、待て!!落ち着け!次の回ではちゃんと出番があるから!」

エクス :『………本当に?』

カークス:「おう!新機能付でな!」

エクス :『本当!?それじゃあ許す!』

ソウル :『(………単純な奴…)』

エクス :『それにしてもやっとゼロ登場だね』

カークス:「ゼロの立ち位置については文明さんの意見を元にリインと姉弟みたいな関係ということにしておきました」

ソウル :『最初の方では幼馴染ということでゼロ×リインを書くつもりだったらしいな』

カークス:「でも、姉弟の方が後でネタとかに困らなさそうだったから変えました」

エクス :『それもだがようやくタイトルの「LOC」の意味が出てきたな』

カークス:「LOCは【Lord Of Chaos】の略です。訳は混沌の王ですね。正直このタイトルに気づいたのはほとんどいないと思います」

ソウル :『分かるか、そんなもの』

カークス:「すいません、でもストーリー上必要かなと思って……」

ソウル :『これから明らかになっていくんだな』

カークス:「そーだね、でもいつ頃になるやら少しの間は日常的なものを書こうかなって思っているし」

ソウル :『まぁ、書けるのならいいんじゃないか?』

カークス:「それじゃ、そういうことで」

エクス :『それで次はどんな話なの?』

カークス:「またいきなりだな……次回はゼロの能力の説明とエクスとソウルの新機能、後書けたら何だか日常的なものを書こうかなと思っている」

ソウル :『新機能というのは本当だったのか、まぁいい。とりあえず今日はこの辺りまでか』

カークス:「これからも頑張っていくので、なにとぞよろしくお願いします」

カ&ソ&エ:《それでは失礼します》





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