魔法少女リリカルなのはLOC 第8話「目標」 一同は実験室に来た。大きな部屋の中心にゼロがいて、端の部屋でマリー達がモニターで見るという形だ。実験室では既にゼロがターゲットに向かって魔法を放っている。 「ムーンランス!」 ゼロの手に白銀の槍が生まれ、それを放った。ターゲットの端に当たりその部分は焦げ付いた。マリーがデータを見て何かを打ち込むとゼロに呼びかけた。 「うん、お疲れ様ゼロ。とりあえずこれで終わりだよ」 「はい、ありがとうございました」 ゼロがマリー達の元に戻るとユウ達に気づき、飛んで近づいてきた。 「マスターユウ、皆さん。来ていたんですか?」 「うん、君の使う魔法がどんなものか気になってね」 「とは言っても先ほど着いたばかりだがな」 「でも最後の魔法は見れたよ!」 「そうですか、どうでした?」 ゼロが上目遣いでユウを見ながら訊いてきた。 「う〜ん、一回だけだったからなんとも言えないけど、とりあえず命中率を上げた方がいいね」 「あうう、分かりました」 「まぁ、鍛錬すれば直ぐに上がるだろう」 「私達が教えてあげるよ」 「ありがとうございます」 ユウ達がゼロと話していると、データをまとめ終わったマリーがユウ達のところに来た。 「ユウ君、ちょうどいいや。ゼロの魔力の測定結果なんだけど聞く?」 「あっ、はい。聞きます」 「えっとね、ゼロの魔力光は見た通り白銀色なんだけど…さっき部屋で話したように属性が普通と違うんだよね」 「あの、普通のとどう違うんですか?」 なのはが興味があるような顔で聞いてきた。 「ゼロの使う魔法にはどれも共通点があるの。他のどの属性も持っていない点がね」 「共通点?」 「なんだよ、もったいぶらずに教えてくれよ」 シグナムが腕を組み、ヴィータがマリーを急かす。 「月ってさ、太陽の光を反射して光っているのは知っているよね?」 一同が頷く。 「その光にはね、具体的には分からないんだけど特別な成分が混じっているんだよ」 「まさか……」 ユウが何か気づいたような表情になり、マリーはそれに頷いた。 「そう。ゼロの魔法にもその成分が混じっているんだよ」 「しかし何故?」 「それが分からないのよ。その部分を調べてもブラックボックスしか出ないし」 シグナムの問いにマリーは腕を組んで唸る。ユウは特に気にした様子もなくゼロを肩に乗せてマリーに聞いた。 「でも、特に害とかは無いんですよね?」 「それは大丈夫だよ」 「なら気にしなくていいと思いますよ。ね、ゼロ」 「はい、多分問題ないと思います」 2人に言われて腕を組むのをやめ、再びメモを見た。 「それならいいけど…それじゃあゼロの魔力は月特有の成分を持っているから“月”ってことで一応記録しておくよ」 「はい、お願いします」 実験室を出た一同は他にすることも無く、雑談部屋で話していた。そこにマリーから連絡が入った。 『ごめんね、ちょっとユウ君とはやてちゃんに確認して欲しいことがあるから実験室まで来て欲しいんだけど…』 「分かりました。ほなら行くよ、リイン」 「うう〜、まだ皆さんとお話していたいです〜」 「そうなん?」 「はい、リインはまだ生まれたばかりなので色んなことが初めてなんです」 「ゼロも?」 ユウがリインの言葉を聞いた後、ゼロに向くとゼロは少し申し訳なさそうに俯いた。 「すみません……」 「いいよ、じゃあリインとゼロはここで待ってて」 「すぐに帰ってくるからな」 「はい」 「いってらっしゃいです」 ユウとはやてがいなくなったあと間髪いれずになのはとフェイト、ヴィータとシグナムの元にも連絡が来た。なのはには武装隊の上司から、フェイトはリンディから、シグナム達にはレティ提督からだった。どれも少しこちらに来て欲しいというものだったのでなのは達は困り、顔を見合わせた。しかしリインとゼロが大丈夫と言ったので少し申し訳なさそうな顔をしながら雑談部屋を退出した。雑談部屋にはゼロとリインだけが残った。 「ゼロ、少しお話しましょう」 「うん」 リインがゼロの横に飛んできて座り、話を続けた。 「私達はユニゾンデバイス。マイスター達のサポートをしなければなりませんが、まだ生まれて一日もたっていないので何をすればいいか分かりません」 「それはマスター達に相談するのがいいと思うよ」 どうやらゼロはリインに対しては敬語が無くなるらしい。やはり一緒に生まれた姉という存在からだろうか――― 「はい。やることはマイスター達に聞けばいいです。ただ……」 「ただ?」 「ただマイスター達のサポートを機械的にやるというのも良くないと思います。ですから、目標を決めませんか?」 「目標?」 「そうです、目標です。私はマイスターはやてをサポートすると同時にみんなが笑顔で過ごすことができるようにします。それが祝福の風のすべきことだと思うからです」 「祝福の風?」 「実験室へ行く途中に聞きました。私は先代リインフォースの名を受け継いでいる、と」 「そうだったんだ……僕はマスターユウをサポートの他に何か自分に出来ることをしたいな……」 ゼロは自分の目標を言うと上を見上げた。上には管理局の天井が広がっている。リインが首を傾げながら質問する。 「何かって何ですか?」 「それはまだ分からない、でもきっとマスター達と一緒に過ごせばいつか分かると思うんだ」 「そうですか。それじゃあもし目標を見失いかけた時、お互いが目標を思い出させるようにしっかりとお互いの目標を覚えましょう」 「うん」 リインは手をゼロに差出し、ゼロはそれを取った。 「2人でマイスターや他の皆さんをサポートを尽くせるようにがんばりましょう」 「うん!」 2人はユウ達が戻ってくるまでずっとニコニコしながら話を続けた。 ユウ達が戻ったあとはみんなそれぞれの場所に行っていたので解散となった。ユウとゼロは海鳴のハラオウン家に戻ると自室に入った。ちなみにまだ誰も帰ってきておらず、家にはユウ達のみだった。ユウは机に向き直るとエクスとソウルを外し簡単な整備を始めた。整備をしながらユウ達は雑談を始めた。 「僕達が戻るまでリインと楽しそうに話していたけど、何を話していたの?」 「えへへ、秘密です」 『え〜、いいじゃん。教えてよ〜』 「ダメです。僕とリイン、2人だけの秘密です」 『む〜〜〜』 エクスが唸り声を上げる。ゼロはこれ以上突っ込まれないように話題を変えることにした。 「ところで魔法の扱い方を教えてくれませんか?」 「ん?そうだねぇ、一応ディメンションリンクの解析が進むまで暇だから教えてあげるよ」 「ありがとうございます。いつごろ教えてくれますか?」 「んっと、早朝、このマンションの屋上はどうかな?フェイトもそこで毎朝訓練しているらしいし……はい、おしまい」 ユウはエクスを机の端に置くとエクスは人間形態になり、伸びをした。ユウはソウルを取り整備を始める。 「う〜〜、ふぅ…でもユウってフェイトちゃんに高速戦闘について色々と教えるんじゃないの?」 「合間を縫ってゼロに教えることもできると思うけど……」 『無理だろうな、1人で2人に教えるとどちらか片方がおろそかになりかねん』 「あの、もし無理なら無しでも……」 「あー、大丈夫大丈夫。なんとかするから。それならどうすればいいかな?」 『先ほど実験室でも言ったが、俺らがゼロにつけばいい』 「なるほど、そうすれば2人見れるってことか」 『ああ、それに一応俺達でもお前に言われたところを注意してフェイトを見ることぐらいは出来る』 「見ている間はユウがゼロに教えることが出来るってことだね」 『そういうことだ』 「はい、おしまい。というわけでそれでいいかな、ゼロ?」 「はい、ありがとうございます。マスターユウ」 ユウがソウルを机の端に置きソウルは人間形態になった。ユウが少し複雑な表情になる。 「ねぇゼロ。そのマスターって外せる?」 「何故ですか?」 「何だかマスターって言われるの初めてだから慣れなくて…」 「嫌ですか?」 「嫌ってわけじゃないんだけど……」 「でも、僕のマスターはマスターユウしかいないのでこれ以外に呼び方が無いと思いますけど…」 ユウが困ったように腕を組み、う〜んと唸った。 「やっぱり、どうしてもマスターを外せないかな?」 「でも、マスターを呼び捨てなんて…」 「僕は全く気にしないから」 「ええと…ゆ、ユウ?」 「うん!そっちの方がいいや。言いにくいかな?」 「い、いえ!そんなことは無いですが…」 「ユウ、あまり無理を言うな。ゼロは上の人には礼儀正しくするように設定されているのだろう、いきなりそれを変えるように言われても難しい」 ソウルのため息まじりの言葉を聴きながらゼロを見れば、ゼロは少し困った風に俯いている。 「それもそうか……じゃあさマスターをつけ外す外さないは君が決めて。あまり強要はしないことにするよ」 「え、ええと。それじゃあプライベートの時はマスターを外して、それ以外はマスターをつけます」 「どうして?」 「普段は気をつければ外せますが、咄嗟になるとつけちゃうと思うので…」 「そっか、分かった。とりあえず頑張ってね」 「はい、ユウ」 翌朝 ユウ達は5時前に起き、すでに屋上で訓練をしているフェイトとアルフの元へ向かった。フェイトは物干し竿で素振りをしておりアルフは横で見ている。 「おはよう」 「おはようございます」 「あ、ユウ、ゼロ。おはよう」 「なんだい、ゼロも来たのかい?」 あの後、ゼロと人間形態のエクスとソウルをリンディ、アルフに紹介したので既にアルフは知っている。あの時はゼロがアルフとエイミィにいじられ続けて泣きかけていたがそれ以外特に問題は無かった。当のゼロは眠たげに目をこすっていた。 「うう〜、眠いです……ふぁ〜〜」 「眠いなら寝ていなよ」 「いえ、僕もフェイトさんの隣で訓練したいです」 「邪魔じゃないならだけどね」 「ううん、構わないよ」 「それじゃあ僕はフェイトにつくから、エクスとソウルはゼロについて」 『分かった』 『任せといて!』 エクスとソウルはすぐに人間形態になり、ゼロの元に駆け寄った。ユウはそれを見るとフェイトに向き直り 「とりあえず、フェイトは最大速度は良いんだけどそれまでが遅いから瞬発力をつけようか」 「でも具体的にどうすればいいの?」 「魔力を体全体に効率よく循環させることかな?もし瞬発力をつけるのが面倒なら代わりに気配を消すことをすればいいよ」 「気配を消す?」 「そうそう。人ってそれぞれ独特の雰囲気みたいなものを持っているんだけど、それを消すことによって相手に存在しているということを思わせないってところかな」 「よく分からないよ…」 う〜、と唸るフェイトにユウは苦笑する。 「まぁ、実際にやってみれればいいんだけど、ここで模擬戦みたいなこと出来ないでしょ?」 「うん、ここは魔法が知られていないから」 「それなら、瞬発力をつけるしかないね。それじゃあ実際にやってみようか」 ユウは屋上の端の柵に行き、向かい側の柵に向いた。 「それじゃあ、いくよ」 ユウの言葉を合図にフェイトとアルフは動作等を注意しながらユウを観察した。ユウは右足を後ろに引き、身を低くする。 「ふっ!」 息をはく短い音が聞こえた。次の瞬間、ユウの姿が掻き消えたと思ったら既に向かい側の柵に立っていた。 「「え?」」 フェイトとアルフが間抜けな声を出した。柵から柵まではおよそ15メートルはあるだろう。その距離を瞬きする時間の間に走ったのだ。フェイト達の驚愕の視線をを背中に受けながら、ユウは少し顔を顰める。 (やっぱり、魔力が落ちたせいで制御がしやすい代わりに速度や威力が落ちている…) 「す、凄い……」 フェイトの呆けた声が聞こえ、ユウは我に返った。向き直ればフェイトとアルフは口を開けて唖然としていた。 「とまぁ、こんな感じかな」 微笑を浮かべフェイト達に近づく。フェイトはユウが近づくと開けていた口を閉じ、ユウに質問した。 「ねぇ、どうやったの?」 「さっきも言ったけど、身体中に魔力を循環させるんだよ。肉体だけじゃあ瞬発力に限界があるから魔力で補うんだよ」 「で、でも魔力を身体中って…」 「正確には脚に魔力を集中させるけどね。脚以外に循環させるのは突然の加速のGに耐えるためだよ」 「そんなのできるのかい?」 「訓練すれば誰でも出来るよ。魔力の総量で個人差はでるけど、みんなある程度は早くなるよ。とりあえずやってみようか」 「う、うん」 ユウはフェイトを柵まで促すとそのまま指導に入った。 「ちゃんと、やっているみたいだね〜」 「俺らもやるぞ」 「は〜い」 ソウルとエクスはゼロに向き直る。 「命中率を上げる方法だっけ?」 「はい」 「ならば的が必要だな」 ソウルは短く言うと、右手を宙に上げ魔力の的を作り出した。的とゼロの距離は大体15メートルくらいあるだろう。 「あれに魔法を当ててみろ、命中率を上がっていくと同時に距離を離していく」 「は、はい。ムーンランス!」 ゼロは魔力の槍を生み出し、的に向かって投げた。槍は少し右にずれたが、ギリギリ的に当たった。 「ふぅ」 「まだだ、このくらいの距離は全て狙ったところに当てられなければならない」 「私がお手本を見せてあげるよ」 エクスが的に向かい、大人の拳大の金色の光球を3つ作り出した。 「デルタレイ!」 3つの光球は全て同時に的のど真ん中に当たった。的は光球が当たると同時に霧散した。ソウルが呆れ顔でため息をつく。 「少しは加減しろ」 「ソウルがもっと丈夫な的を作ればいいんだよぅ」 「はぁ……」 ソウルが再びため息をつくのを無視して、エクスはゼロに向き直る。 「ゼロの魔法は高速直射弾だね。それならまず真っ直ぐ撃つようにすればいいよ。弾の速度はけっこう早いからそれだけでも十分いいと思うよ」 「はい、ありがとうございます」 「それでは、もう一度だ」 「はい!」 ----後書き---- カークス:「皆さん、読んでいただきありがとうございます」 ゼロ :「はい、1つ質問です」 カークス:「何かな?」 ゼロ :「どうして、僕の属性が“月”なんですか?」 カークス:「それはある技をやりたかっただけなんだよね〜」 ゼロ :「ある技、ですか?」 カークス:「ネタバレだからここでは言わない。いずれ本編で出てくるよ」 ゼロ :「そうですか、今回は日常編だったせいか質問も少なく、後書きも短くなりそうですね」 カークス:「日常編の間にも今後の伏線をどんどん張っているんだけどね」 ゼロ :「今後はどんな風に進むんですか?」 カークス:「ん〜、とりあえず日常編をあと一回。その後、名前だけでしか出なかったあいつが登場かな」 ゼロ :「2人のうちのどっちでしょうかね」 カークス:「さぁね〜、もしかしたら2人同時に来るかもしれないし」 ゼロ :「そうですか」 カークス:「そうです。今後も頑張りますのでみなさんよろしくお願いします」 カ&ゼ :「「それでは、失礼します」」 |