ワイルダーネスでユウ達を連れ去った後、ウィル達は再び人がいない緑豊かな世界に戻っていた。 未だに気を失ったままのユウ達を地面にそっと降ろす。視界の端ではエドガーが漆黒のローブからなにやら小道具を出して並べていたが、そんなことよりも目の前の女性にたくさん言いたいことがあった。 「どういうつもりだ?」 「ん? 何がよ?」 「何故あの星の住人を巻き込んだ?」 極力熱くならないように、押し殺した声で訊ねる。彼女は時空管理局からの追跡を撒くために『ワイルダーネス』で地の精霊で大地に干渉して地震を起こした。―――近くにあった大きな街を巻き込んで。セルマはさも当然のように言いのける。 「ああでもしなければ逃げられなかったからよ」 「他に方法があった筈だ」 「無いわよ。あるにしてもリスクがかなり高いわ」 「しかし―――、っ!」 突然向けられた殺気に思わず怯む。セルマの明確な殺気を含むほど鋭い瞳がウィルを射抜いたのだ。 「あの場に利用できるものがあったから利用した。それの何が悪いの?」 「……他人の命を巻き込んでいる」 「はっ、そんなの関係ないわ。どうせ名も知らない赤の他人。死んだところで私達に何にも害は無いわ」 ウィルの言葉を鼻で笑い飛ばす。自分達とは無関係の人間なら別にどうなろうと関係ない、というセルマの考えに怒りが沸いた。 「貴様……!」 「貴方、無関係な人間を巻き込むのが好きじゃないみたいね。いや、それだけじゃない……人が死ぬのが嫌いなのね」 「当たり前だ!」 「それじゃあ、貴方が雇った傭兵は?」 ―――セルマの口から出た言葉で急激に怒りが収まっていく。 「貴方が『ワイルダーネス』で雇った傭兵は? どうやらあの子に殺されたらしいけど」 代わりに湧き出た感情は驚愕。セルマは暗に『お前が無関係だった彼らを雇わなければ彼らも死なずに済んだ』と言っているのだ。セルマは先ほどの殺気を消して軽く呆れた表情でウィルを見た。 「そういうことよ。私達の計画は無関係な人間を巻き込まないで成功するものじゃない」 「…………」 「どの道この計画でたくさんの人が死ぬわ。貴方もそれを理解した上で彼に協力しているんじゃないの?」 くいっ、と首でエドガーを指す。エドガーは何やら小道具を五芒星の形に並べて儀式の準備をしていた。小道具の中には不気味な色をした液体があり、漆黒のローブを纏ったエドガーが扱う様子はさながら怪しい実験をしている魔術師のようだ。 口を開けないウィルの隣を通って、エドガーの元へと歩く。 「現実を見なさい。でなければ貴方達の世界が滅びるのよ。」 耳元でそっと囁いて、エドガーの元へと向かう。ウィルは振り向かず俯いて、何も言うことが出来ずにただ己の力不足を情けなく思い、唇をかみ締めた。 魔法少女リリカルなのはLOC 第21話「再臨」 「死者50人、重軽傷者1000人越え、か」 報告された被害を見て思わず口から出た言葉に更に気分が重くなった。リオは艦長席に寄りかかってため息をつく。 「この被害で済ませられたのは不幸中の幸いか……」 セルマが起こした地震は『ワイルダーネス』の一番大きな街に多大な被害をもたらした。家屋は半数が倒壊、死傷者の被害は先の通りだ。しかしクロノ達の迅速な救助のためか、死者は50人までに収めることが出来た。一番大きな街とはいえ、総人口1500人近くの被害をここまで減らすことが出来たのだ。文句を言うのはそれこそ贅沢というもの。モニターを消して立ち上がりエイミィにブリッジを任せてからその場を立ち去る。向かうは幾度と無く使われた会議室。 アースラは既に本局に帰還していたが、クルーはほとんど艦内から出ることは無かった。 会議室に着くとそこには暗い雰囲気が漂っている。なのはやクロノ達も顔に憂いの表情を浮かべていたが、中でも暗いのはフェイトとはやてだった。 クロノの隣の席に座って、耳打ちをする。 「おい、この暗い空気どうにかしろよ。何か一発ギャグでもやってよぉ」 「……この状況でそれが出来たら呆れを通り越して尊敬しますよ」 クロノはため息をついて暗い雰囲気をかもし出している原因の二人を見る。 (まぁ、無理もないか) はやてとフェイトは密かにユウに想いを抱いていたが故に彼がいなくなったショックも大きい。加えて、はやての場合はマリアの話によると自覚がないらしいので余計やり辛い。 「黙っていても仕方ない。とにかく何か話そう」 口を開いたのはアルだった。 「そうね。まず彼らの目的だけど」 「混沌の王の力を使って『ある世界』の消滅、だったな」 「ある世界?」 ユーノが首を傾げて、アルは腕を組んで唸る。 「恐らくは奴ら―――多分エドガーが関係している世界だろうな」 「何故?」 「エドガーがリーダーだからだ。他の奴らはあいつに協力しているだけだろうな」 マリアの問いにアルが答える。その言葉を聞いたヴィータがぽつり、と呟いた。 「あいつ、あたしの攻撃を受け止めやがった……」 「それも指二本だったわね」 「カートリッジを使っていなかったとはいえ、ヴィータの攻撃を指で受け止めるなどそうそう出来るか?」 「指二本に魔力を集中させて高密度のシールドを張ったんだろうな」 シグナムにアルが解説して納得する。言葉では簡単に言うが、極小の高密度シールドを張って相手の攻撃を受け止めるのはかなりの技術と見切りが必要だ。数センチずれるだけで攻撃はシールドに阻まれず、術者を直撃する。 「エドガーと関係している世界、か―――」 「奴が何者で、何を目的に世界を滅ぼすのか分からない限り動きようが無いな」 「エドガー達の動きはエイミィ達が掴もうと目を見張らせている。動いたら直ぐに分かるさ」 「そうか。そうすると次の問題だな」 ちらりと沈んでいるフェイトとはやてを見る。 「いつまで、そうしているつもりだ?」 アルの言葉に二人はビクン、と身体を震わせた。 「事態は急激に動いている。いつまでも下を向いている暇は無い」 「アルさん……」 なのはが少しきつい言い方ではないかと口を挟むが敢えてそれを無視する。 「…………っ」 「……っとる。分かってますよ。でもあそこで私が油断せなかったらユウ君は連れてかずに済んだんや!」 自分に言い聞かせるようにはやては声を張り上げた。フェイトも隣で小さくなってそれを聞いている。 「あの時、私がちゃんと反応できていたらユウ君は私を庇って連れて行かれることも無かったんや!」 「はやて……エドガーの裏切りは誰にだって予測外のことだった。不意を突かれたのは仕方ない」 「ユウ君が捕まった時も私、何も出来んかった。ヴィータ達が必死に助けようとしても動けへんかった……」 クロノの言葉が聞こえていないのか、構わずどんどん言葉を続けるはやて。その声には涙が混じっていた。頭の中にはユウが自分を庇って落ちていく映像が映っている。 「はやてちゃん、ユウ君が連れて行かれたのははやてちゃんのせいじゃないよ」 なのはが声を掛けるが返答できない。頭では分かっている。しかし感情がそう考えることを許してくれない。自分がちゃんと反応できたら、とどんどん自分を責めるように頭が働いていった。 「もう、どうすればええのか分からへん……」 「はやてちゃん……」 なのは達ははやてのここまで弱気な姿を見たことがない。かける言葉も見つからずただ押し黙って、会議室にはやての嗚咽だけが響いた。 「だからと言ってこのまま自分を責め続けても何も解決しないわよ」 「…………わかっとるよ。分かっとるけど……」 顔を上げないはやてにマリアは軽く息をついて、はやて、と呼びかける。 「―――1つ質問するわ、ユウはどうして貴方を助けることが出来たと思う?」 突然のマリアの問いにはやてはぴくりと震える。俯かせていた顔を上げてマリアを見る。マリアは優しい笑顔を浮かべていた。 「あ、う……え…と…」 「ユウは一度信用した人間はとことん信じ続けるわ。信じていたエドガーに裏切られてショックが誰よりも大きいのにも関わらず誰よりも早く動けたわ。どうして?」 口をパクパクさせて言葉が出ないはやてに、笑顔で言葉を続ける。はやての頭はマリアの問いに一つの回答を導き出したが、はやて自身がそれを否定した。 そんな筈は無い、自意識過剰だ。しかし――――それ以外の理由が思い浮かばない。その回答が正解であることを望んでいるように。 「ユウは貴方のことを守りたいと思ったのよ。だから頭が状況を理解する前に体が反応してくれた」 「あ――――」 マリアの言葉が自分が行き着いた回答と同じということを理解すると同時に顔が熱くなっていくのが分かった。以前マリアとユウの話をした時に浮かんだ理解出来ない感情。それが再び込み上がってきた。 「さっき貴方はどうすればいいのか分からない、って言ったわよね?」 こくんと頷く。それなら、とマリアは手を自分の胸に押し当ててさらに訊ねる。 「貴方はどうしたいの?」 「え――――」 「どうすればいいか、じゃない。貴方が何をしたいのか、それが重要なのよ」 はやては胸に自分の手を当てて、目を瞑って考える。 浮かんでくるのは、はやてを心配するユウ、からかわれて少し怒っているユウ、呆れてため息をつくユウ、優しい笑顔を浮かべているユウ。 どれもユウのことばかりだ。それではやては自覚した。自分の中でユウはそれほどまでに大きい存在なのだということを。そして自分がユウのことを好きなのだということも。 「私は―――」 目を開ける。涙はもう無い。開いた視界の先には皆が笑顔でこちらを見ていた。 「私は、ユウ君を助けたい」 はやての言葉にマリアは満足そうに頷く。 「頑張ろうね、はやて」 「うん、おおきに」 「主はやて、微力ながら我等もお手伝いさせていただきます」 「うん。ごめんなぁ、心配かけてもーて」 取り合えず元気になったのを確認してほっとする。フェイトも心配だったが微笑を浮かべているので大丈夫だろう。 「彼らは混沌の王の力を使うと言っていたからユウ達が殺されることは無いだろう。各自、休息を取っておこう」 「いざって時に動けないと拙いからね」 クロノの言葉にユーノも付け足す。それでその場は解散となった。 「はやてちゃん、元気が出て良かったね」 「うん、そうだね……」 アースラで割り当てられた部屋に戻る途中、なのはとフェイトは歩きながら話していた。なのはは、はやてが少し元気になって安堵しているが、フェイトはやや浮かない顔をしている。 「フェイトちゃん―――、元気出して。ユウ君なら大丈夫だよ」 「うん―――」 頷くが表情は明るくならない。どうしたものか、とおろおろしだしたなのははフェイトが足を止めたのを見て一緒に足を止める。顔は俯いてよく見えないが、なにやら呟いている。やがて、よし、と小さく頷くとフェイトは顔を上げてなのはを見た。そこには決意が灯っていた。 「なのは、ごめん。はやての所に行って来る」 返事を待たずに歩いてきた方向へと走り出す。なのはは少し呆然としながら遠ざかっていくフェイトの背中を見た。そして彼女が何を決意したのか分かって、小さく微笑んで呟く。 「頑張ってね、フェイトちゃん」 会議室での一件の後、はやては既に割り当てられた部屋に戻っていた。特にすることも無くベットに座り込む。リインはあの後どこかに行ってしまったらしく、部屋にははやて1人だった。 来客を知らせるブザーが鳴った。 『はやて、今いい?』 「フェイトちゃん? ええよ」 扉が開いて少し落ち着かない様子でフェイトが入ってくる。どうしたのかと思ったはやてが尋ねる前にフェイトが口を開く。 「はやてに聞きたいことがあるの」 「なんや?」 「はやてはユウの事が好きなんでしょ?」 ………ッ、とはやての言葉が詰まった。フェイトははやてをじっと見たまま動かない。気圧されて思わず視線を逸らそうとするが、フェイトの瞳がはやての瞳を射抜いて逸らすことが出来ない。 「目を逸らさないで、答えて。はやて」 フェイトに念を押されて頷く。目を閉じて深呼吸をしてから、もう一度頷いた。 「うん。好きやよ」 「そっか……。私もね、ユウのこと好きなんだ」 「うん、知っとったよ」 お互いに少し俯いて沈黙が部屋を満たす。内心はやては心の中で怯えていた。はやてはユウが好きという感情に気が付いていなかったが、先ほどのマリアとの会話でその感情を自覚した。しかしフェイトもユウの事が好きだということを知っていたので、ユウが好きという感情と同時にこのまま友達でいられるのだろうかという不安も溢れてきたのだ。 「フェイトちゃん、私達……」 まだ友達でいられるだろうか、という質問は目の前に止めるように出された手によって遮られた。フェイトを見れば首をゆっくり振って、微笑んでいる。 「その先は言っちゃダメ」 「でも……」 「大丈夫だよ、ちゃんと私達は友達で居られるよ」 「…………フェイトちゃんは苦しくないんか?」 「……実はちょっとだけ苦しい」 少し困ったように笑った。はやてはそんなフェイトの様子に胸が痛んだ。何を当たり前のことを聞いているのだ。友達が自分と同じ人が好きだったら苦しいに決まっている。 「でもね、はやてなら良いって思うんだ」 フェイトの言葉の意味が分からず首を傾げる。えーと…、と頬を掻きながらフェイトはどのように言うか言葉を選んだ。 「上手く言えないけど、他の人がユウを好きになるんだったら何だか嫌だけど、はやてなら良いって感じがするんだ」 やっぱり上手く言えないや、と困ったように笑うフェイト。しかしなんとなくだが、フェイトの言いたい事は分かった、そんな気がする。 「うん。おおきに、フェイトちゃん」 「頑張って、ユウ達を助けようね」 「うん」 互いに同じ人を好きになった二人は、決意と共に互いの手を取り合った。 --------------------------------------------------------- 「そっか。はやてちゃん達は持ち直したんだ」 「はい」 メンテナンスルーム。暗闇の部屋で輝いているディスプレイの前にいるのはマリエルとリインフォース。部屋の中には二人しかいなかった。 「――――正直、デバイスマイスターとしてはこの機能の起動は承認できないよ」 「それでも、きっと必要になると思います」 リインフォースの言葉にマリエルは俯いて何も言えなくなった。ディスプレイに映っているのは夜天の書と蒼天の書のデータ。実は以前はやてがファンシーショップに出かけた際にリインフォースはここに来てマリエルと話し合いに来たのだ。 「はやてちゃんのサポートをするのに私はまだまだ力不足です。でもこれを使えばそれも出来ます」 『ルイン』での戦闘やマリアとの模擬戦を思い出して、自分の実力不足を痛感しながら言葉をつむぐ。はやてが聞いたらリインフォースは生まれたばかりなので仕方ないと言うだろうが、生憎はやてはこの場にいない。 「はやてちゃん達が悲しむよ……」 「使わないで済むなら私も使わないです。でも、きっと使う事になると思います」 リインフォースの声に感情は灯っていない。ただ予測を述べているだけ。マリエルはリインフォースを想うが故にでも、と批判を続ける。 「やっぱりしてほしくないよ。自分の身を犠牲にする、夜天の書の最後のページの魔法なんて……」 --------------------------------------------------------- 「――――よし、彼を陣の中へ」 エドガーに言われてユウとゼロを抱える。ふと、視界に入った二人の安らかな寝顔を見てこれからしようとすることを思うとウィルは心が痛んだ。 「ウィル」 「……分かっている」 頭を振って歩き出す。確かに可哀想なことをしようとしているが、こうでもしない限り自分たちの世界もユウ達の世界も無くなってしまうのだ。これは仕方の無い事と割り切るしかなかった。ユウとゼロを五芒星の陣の中に並べて寝かせる。五芒星の頂点にはどれも色が違う薬品が入った瓶が置かれている。それが何なのかウィルには知る由も無いし、知っても意味の無い事だった。 エドガーはそれを確認すると、聖剣と魔剣をユウとゼロを挟むように地面に刺す。そして陣の中から出ると、陣の端に両手を付く。その顔にはまるで誕生日プレゼントを待っている子供のような期待感溢れた表情が広がっている。辺りは一帯に漂う異様な魔力に反応してか、空には暗雲が広がり、強風が吹いて木々が煩く揺れた。 カイルは突然変わった空気に驚いて辺りを見回し、ウィルも眼を細めた。セルマはまるで予期していた事かのように淡々とした目でエドガーを見ている。イリアは内心驚いているかもしれないが、感情表現が乏しいせいか反応を示さない。エドガーが陣の端に付いた手に魔力を込めた。 バチィッ 「ん……?」 魔力を込めた瞬間、陣から稲妻が走る。異変に気が付いたユウが目を覚ますが、直後に五芒星の陣から目が眩むほどの光が上がる。 「っ……がぁぁぁぁああああぁぁぁぁああああ!!!」 ユウが仰向けに倒れたまま絶叫した。目を見開いて体に起こる異変を感じるが、どうすることも出来ない、そんな感じだ。体の内から奴が出てくる。必死に抑えようとするが、徐々に意識が奴のものへと塗り替えられていく。 「うっ、ぁぁぁぁぁあああああ!!」 続いてゼロも叫び声を上げる。少しでも痛みに耐えるように目をきつく閉じて、痛みを誤魔化すように声を大きくしたが、身体が軋むような痛みは変わらない。同時に何かに引き寄せられる感覚。二つに分かれた物が一つの物に戻ろうとする感覚。 光が一層輝いて、辺りを包んだ。同時に天から何かが落ちたような衝撃が響いて、傍にいたエドガー達の身体を吹き飛ばした。 「ぬぅっ!?」 「うわぁ!?」 「くっ!」 「きゃ!」 「っ!」 辺りを包んでいた光が消えて、辺りの風景が視界に入ってくる。木々は薙ぎ倒され、地面は所々抉れていた。空は依然と暗雲が立ち込めている。五芒星の陣があった場所は頂点に置かれていた瓶は中身を辺りにぶちまけて、粉々に砕かれて―――そんな竜巻の通った場所に少年が傷一つ無く佇んでいた。 「…………」 瞳を閉じて、手を握ったり開いたりして感覚を確かめる。一体、どれくらい久しぶりなのだろう。こんな風に身体の感覚を確かめるなんて。 エドガーを除くウィル達は何が起きたか分からなかった。短い茶髪、銀のブレスレット、黒がベースで所々白いラインが入ったバリアジャケット、そこにいたのは確かに彼らが『ワイルダーネス』で対峙した城島ユウだった。 しかし、この異様な空気は何だ? 少年が佇む場所を中心とした一帯は明らかに異常だった。まるで自分がコップに入った水でこれから飲まれるような恐怖。そんな感覚が辺りを支配していた。 ごくり、と誰かが喉を鳴らす。その音に彼の耳が動いた――気がした。ゆっくりと彼は目蓋を上げる。ここで城島ユウとの相違が現れた。城島ユウの瞳の色は黒だが、目の前の少年の瞳は金色だった。 「来たか、ルシファー」 いつの間に起き上がったのか、エドガーが彼――ルシファーに声を掛ける。それでようやくウィル達も理解した。 ―――――ここに混沌の王が降臨した――――― ----後書き---- カークス:「拙作を読んでいただきありがとうございます」 ルシファ:「ようやく私の出番か」 カークス:「今まで出番なかったからね」 ルシファ:「ところでもう1人の司会進行役はどうした?」 カークス:「君に取り込まれたから少し休憩。本編で再登場したらまた出てくるよ」 ルシファ:「そうか。さて今回も軽く解説をするのだろう?」 カークス:「改めて出てきたルシファーについてだね。ユウの体内にルシファーがいるので外見はほとんどユウと変わりありません」 ルシファ:「ただ違うところといえば作中にもあったように瞳の色か。私が金で奴が黒だな」 カークス:「性格に関しては今後分かる事だから置いておくとして――――」 ルシファ:「『ワイルダーネス』で地震の被害にあった者達はどうなったのだ?」 カークス:「救助された人達は近くに街の近くに張ったキャンプで暮らしている。んで管理局が少しづつ補助しているって感じ」 ルシファ:「そうか……。随分短かったな」 カークス:「今回ははやての自覚とルシファーの登場がメインだったからね。後は伏線張ったりで。……空いた分どうしよう」 ルシファ:「それは貴様の落ち度だ。…………余談だが私は最近ライトノベルという物に読んでみたのだが、その後書きが中々面白い」 カークス:「…………はっ、まさかそれは後書きで作者が様々な方法で殺害される事がある最近新装版が出ているあれでは!?」 ルシファ:「というわけで私もそれに倣ってみようと思う。幸い後書きが短いという理由もあるのでな」 カークス:「幸いじゃない! むしろ残念なことだぁ! というかパクりだ〜云々とか言われるぞ!」 ルシファ:「元よりこの話を読んでくれている物好きなどそれこそ片手で数えられるほどだろう」 カークス:「悲しいこと言うなぁぁ! 当たっていそうだから反論できんわぁぁぁ!! つかその魔力刃しまええぇぇ!」 ルシファ:「今回はシンプルに行こう」 カークス:「まっ」 ザシュ さて三枚に下ろされた奴は後で掃除するとして、次回予告というものだな。 次回はディメンションリンクの解析結果。そして少しずつだがエドガー達の目的も露になる。 もしかしたら私と時空管理局の誰かが接触するかもしれんな。 最後に今まで出なかった召喚の詠唱で閉めよう。 それでは、失礼する。 大地の精霊 ガイア「気高き母なる大地よ、地上を汚す者どもに怒りの波動を! 契約者の名の元にその力を我が前に示せ!」 ノーム「大地を統べる無限の躍動! 我が眼前の敵を滅ぼせ!」 氷の精霊 フラウ「冷徹なる氷の少女よ、凍える吐息にて目前の敵を凍てつかせよ!」 セルシウス「蒼ざめし永久凍結の使徒よ、契約者の名の元にその力をここに示せ!」 |