「…………また」

目の前に広がるのはもう何度も見た光景。燃えさかる炎、焼け崩れる家屋、血まみれの肉塊、地獄と化した少年の街。

「何回見せれば気が済むんだ……」

少年は背中に白と黒の翼を生やし、体中がそこいらに転がっている肉塊と同じように血まみれだった。辺りに転がっている肉塊は少年の知人も混じっている。鼻を突く死臭が風と共に漂う。同時に声が風に乗って聞こえた。


助けて    痛い   痛い   死にたくない


   苦しい    辛い   辛い   生きたい


炎の中に佇む少年に向けられた言葉。かろうじて息をしてる少女が少年に手を伸ばす。しかし、少年は手を取らない。取る事が出来ない。街を滅ぼした張本人は滅ぼした者に救いの手を伸べることは出来ない。
少女は震える手を伸ばしきった後プツン、と糸が切れたように手が落ちた。

「……………………ごめん」

意味の成さない呟きとともに少年の意思とは別に翼が羽ばたいて黒煙が立ち上る空へ舞い上がる。
少年が空に舞い上がると死の街は光に包まれた。みるみる内に瓦礫となった家屋が修復され、焼き払われた草木は元の緑を戻し、肉塊は生命溢れる人の姿へと再生する。
光が収まると地獄は少年が焼き払ったとは思えない、生活感溢れる一つの街が出来ていた。空に立ち込められた黒煙も晴れ、快晴とも呼べる天気になっている。

「…………セット」

そんな一見平和な光景とは裏腹に少年の苦痛の呟きは彼の周りに数十のスフィアを出現させた。
街の人々は空に居る少年に気づいた様子は無い。皆が笑顔を浮かべており、見た者が満場一致で平和だと断言出来るほど温かい。

「……………………ごめん」

何十も重ねた言葉。その言葉にはこれから起こる街の惨劇への罪悪感ともう止められないという諦めが混じっていた。
何度繰り返されたか分からない、ユウの手による殺戮が再び始まろうとしていた。





魔法少女リリカルなのはLOC
第24話「悪夢、再び」




ガキィン、と。
リインフォースに向かって振り下ろされた刃は彼女の体に届く前に一本の剣と鞘によって受け止められた。

「む……?」
「シグ……ナム……?」
「そのくらいにしてもらおう。うちの末っ子にお前の相手は辛い」

2本の剣を弾かれて、距離をとる。リインフォースの窮地を救ったシグナムは彼女を抱きかかえると地上に降り立った。いつの間にかにはやてを包んでいた結界も解除されている。
そしてシグナムが降り立った地には――――各々のデバイスを携えた管理局の面々が待っていた。はやてがシグナムに抱えられたリインフォースの姿を見るなり、涙を溜めながら2人に向かって駆け出す。

「リイン!!」
「マイスター、はやて……」
「もう、何しとんねん! こんなに心配させて……」
「…………っ」

リインフォースははやての事を直視する事が出来なく顔を背けた。戻ろうと言ったはやてに背いてルシファーと戦って、加えてユウ達を助ける事も出来ずに返り討ちにあってしまったのだ。はやてに合わせる顔がない。
はやてはそんなリインフォースの様子を見抜き、目に溜まった涙をぬぐって優しく、しっかりとした手つきで彼女の顔を包んだ。

「マイスターはやて……?」
「お咎めはあとや。無事か、って傷だらけやな。シャマル、お願いしてええか?」
「はい。クラールヴィント」
『Ja』
「静かなる風よ、癒しの恵みを運んで」

シャマルがシグナムに抱えられたままのリインフォースに治癒魔法をかける。ルシファーによってつけられた傷がみるみる消えていき、ほとんど空になった魔力が体の活力がみなぎると同時にほぼ完全に戻るのが分かった。

「ありがとうです。シャマル」
「外見はリインフォースのままでも、中身はやっぱりリインちゃんのままね」

申し訳なさそうに言うリインフォースを見て、シャマルは小さく笑う。シャマルの言葉に軽く頬を赤くしてリインフォースはシグナムに降ろしてもらった。
彼女の傷が塞がってほっと安堵の息をついたはやてはリインフォースを助けたシグナムに、表現しきれないほどの感謝の気持ちを込めてお礼を述べた。

「シグナムも……。ほんま、ほんまおおきに」
「申し訳ありません……私達が遅れたばかりに……」
「ううん、ええんやよ」
「ありがとうございます……しかし、驚きました。リインがまさかリインフォースの姿になるとは……」
「うん。私も見たときびっくりしたんや」

ちらり、とリインフォースの姿を観察する。細部の違いはあるがやはりそこにいるのは2年前、雪の日に別れた初代リインフォースの姿だった。彼女の主であるはやてとしては彼女の姿を見て動揺を隠せない。今すぐにでも飛びつきたい衝動に駆られるが、それを押しとどめる。
彼女がどんな姿をとっていても中身はリインフォースツヴァイのままなのだ。あの日別れたリインフォースとはもう会うことは出来ない。

「リイン、説明できるか?」
「あ、えと……これは――――」
「まだ、続くのか?」

リインフォースの言葉をうんざりした声が遮って一同がざっ、と声のした方へ振り向く。そこには腕を組んで今頃気づいたのか、とため息をつくルシファーの姿があった。傍には人間形態のエクスとソウルが表情を消して控えている。
S2Uとデュランダルを構えてクロノが問う。

「こちらも分からない事だらけなんだ。出来ることならまだ待っていて欲しい」
「そこの小娘には言ったが私も忙しい身だ。本来なら君達を無視しようとは思ったのだが……」

ため息混じりにクロノ達の横に視線をやる。そこにはグラビティアクセルを構えたマリアの姿があった。その表情に迷いは無く、ただ動いた瞬間に寸分違わずに眉間を撃ち抜くという殺気が滲み出ていた。

「この通り、狙いを定められてな。動く事も出来ないから君達に声を掛けたというわけだ」
「白々しい。私の狙いなんて簡単に外せるくせに」
「おや、そう思うか?」

苛立たしく舌打ちをして銃を下ろすマリアに余裕の篭った笑みで返すルシファー。火花を散らしあう二人の視線の間にフェイトがバルディッシュを構えて割り込んだ。

「ユウを返してください」
「出来ない、と言ったら?」
「貴方を拘束してそれから考えます」
『Blitz Rush』

ガキィン、とバルディッシュの言葉がなのは達に聞こえると同時に二人の刃が交わった。フェイトとルシファーの間隔はおおよそ30メートル。その差をフェイトは瞬きする間に詰めたのだ。以前より格段にスピードが上がっていることにソウル達でさえ驚愕している中、ルシファーは楽しそうな声を上げた。

「中々のスピードだ。だが……」

バルディッシュの刃をダークネスブレードで弾き返し、左手にシャイニングブレードを創る。

「まだ遅い」
「!?」

フェイトは下から振るわれた光の刃を顎を逸らす事で紙一重で回避、地面を蹴ってルシファーから距離をとる、がただでは終わらない。左手に雷光の槍を創り出す。

『Plasma Lancer』
「……!? ちぃっ!!」

右足を下ろして足場を固定する。右手のバルディッシュが呼応する様に点滅して、複数ではなく単発の、しかし威力と速度を最大限にまで高めた雷光の槍を発動した。

「ファイア!!」

振りぬいた左手から雷光の槍が打ち出され、それはルシファーの顔面に向かって一直線に伸びていく。プラズマランサーを放つと同時に爆発に巻き込まれないように発射の反動で更に距離をとる。雷光は振りぬかれると同時に、ほぼ視認不可能の速度でルシファーに迫った。
回避も防御も不可。通常の魔術師相手ならば槍はバリアジャケットに阻まれて致命傷にはならないだろう。しかし、相手はユウの姿をしたルシファーだ。防御が薄いユウはバリアジャケットを着けていようと一度攻撃を貰うとそれが致命傷になりかねない。加えて、先のリインフォースとの戦いで彼のバリアジャケットは所々破れており、本来の防御性が低くなっている。意識を失わせるまではいかないでも、行動を制限するには十分だ。
そんな回避も防御も不可能な雷光の槍がルシファーに伸び――――直撃する前に弾けた。

「!!?」
「ちっ……!」

驚愕しているフェイトを置いてルシファーは跳んで距離をとる。フェイトは目の前で起きた出来事が信じられずにいた。魔力をそれなりに込めたランサーは通常ならば回避するどころか反応する事さえ難しい代物だ。しかし何の前触れも無しに、ルシファーの金色の瞳が輝いたと思った瞬間にはランサーは弾けていたのだ。

「なるほど、戦い慣れている。これは中々厄介だな」

ルシファーは厳しい目つきでフェイトの肩越しになのは達を見据えた。目で相手の数を数えていき、相手が10人以上いるのを確認すると左手をソウル達に向ける。同時にソウル達がルシファーの傍へ瞬間移動した。
そのことだけでも目を見開くなのは達にルシファーは更に言葉を続ける。

「12か……この数は些か面倒だ。数を減らさせてもらうぞ」

刹那、ルシファーは40メートル近くあった距離を一瞬で詰めてはやての背後に出現した。はやてが反応してルシファーに振り向く間もなく、彼ははやての肩を掴む。

「我が内で眠れ」

たったそれだけ。ルシファーが呟くとはやての体が金色の粒子へと変化し始めた。
はやての身体から溢れ出る粒子は、空に昇りながら霧散していく。

「!?」
「主はやて!」
「マイスターはやてぇ!!」

シグナムがルシファーに神速で刃を振るう。が、ルシファーは左手で生み出した闇の刃で受け止めた。バチバチと互いの刃が競り合っている間にリインフォースがはやてをルシファーから引き離そうとはやての体に手をかけた瞬間、

「君の力も厄介だ。主と共に眠れ」
「あっ……!?」

リインフォースの身体からも粒子が溢れ出て、強く輝いたと思った直後、はやてとリインフォースの姿はその場からいなくなっていた。その場にいた全員の目が見開かれる。
くっ、と笑うとルシファーは剣を弾き、ゼロシフトでその場を離脱した。

「テメェ、はやてとリインを何処にやったぁ!!」

ヴィータが自身の主とその融合騎がこの場からいなくなったことに苛立ちながら声を荒げる。周りの者も言葉にはしないがルシファーに完全な敵意を向けていた。それに対してルシファーは、

「さて、何処だろうな? 世界の果てかもしれんし――――あるいは混沌に還ったかもしれないな」

何でもないように言ってのけた。終わった事には興味が無いとばかりに。
ドゥ、と紅い閃光がルシファーに向かって伸びる。血が滲むほどグラーフアイゼンを握り締めたヴィータは体を回転させる事で生まれる遠心力のエネルギーを乗せてルシファーに叩きつけた。しかしその衝撃は直接ルシファーには伝わらない。

「ぬるい」

ガキィン、とソードフォームとなったソウルイーターがグラーフアイゼンを阻んだ。しかし勢いまでは殺せずルシファーの身体がその場でコマのように回転する――――それが彼の狙いだった。

「怒りに任せた攻撃ほど隙だらけなものはないな」

ギャギャギャ、と高速で回る体を右足で無理矢理止めて左足でヴィータの顎目掛けて蹴り穿つ。勢いに乗ったヴィータがそれを回避する術はない。

『Panzerhindernis』

ヴィータの顎を狙って放たれた蹴りはグラーフアイゼンが自動で発動した障壁によって阻まれた。しかし脚に強化魔法でも掛かっていたのか、強固な古代ベルカの盾に徐々に皹が入る。離脱するために勢いに乗った体を軋ませながら踏みとどまって無理矢理後ろへ跳ぶ。跳んだ瞬間、障壁は音を立てて割れた。

「ぐ……ぁ……」
「ふっ!」

首を反らすことでギリギリ回避したヴィータは視線の先のルシファーを見て防御の姿勢をとる。蹴りの勢いを体の反転に利用して剣を振るうルシファー。
咄嗟に構えたグラーフアイゼンがそれを受け止めるが不安定な姿勢でそれに耐えられるわけがない。ルシファーの斬撃はヴィータの小さな体をシグナム達がいる40メートル地点の半分辺りまで吹き飛ばした。

「ぐ、がはぁ……!!」

地面に叩き付けられた後も20メートル近く転がり、シグナムの足元でようやく止まった。

「ヴィータちゃ――――ザフィーラさん?」
「心配はない」

ルシファーに吹き飛ばされて泥まみれになったヴィータに近づこうとしたなのはがザフィーラに手で遮られて怪訝そうに彼を見上げる。ザフィーラの瞳には何の心配もない、只長年共に戦ってきた仲間を信頼する目をヴィータ達に向けていた。
地面に仰向けに倒れたヴィータは徐々に曇り始めた空を見上げる。視界が紅く染まる。どうやら額から出血しているらしい。首を横に動かしてはやてから貰った大事な帽子を見つける。幸いにも帽子に破れている箇所はなかった。その帽子を拾い上げる者がいた。
シグナムだ。彼女は帽子を持ってヴィータを見下ろしている。瞳には何の感情も灯っていない。ただ見下ろすという行為。しかし、ヴィータはそれを見て口に出しては言わないがやっぱり彼女はヴォルケンリッターの将だと再認識した。

「ヴィータ」
「……あんだよ?」

シグナムの口が開いてヴィータが答える。シグナムの声は顔に張り付いている無表情とは別に、仲間への信頼を秘めていた。すぅ、と息を吸ってヴィータに訊ねる。


「……目は覚めたか?」


ああ、と呟いて起き上がる。視界が未だに紅いままだが支障は無い。身体の至る部分の痛みも慣れたものだった。
目の前にいるのは先ほどの無表情とは打って変わって力強いものを瞳に秘めた烈火の将。

「上っていた血が抜けて頭が冴えてきた」
「そうか」

シグナムはふっ、と笑って帽子をヴィータに乗せる。そしてシャマルとザフィーラに視線を送る。二人とも同時に頷いてくれた。

「感謝する、というのはおかしいのかもしれないな」
「む?」
「貴様が主はやてをここから離れさせたおかげで我等も全力で戦える」
「……何故ここから離れさせたと言える?」
「簡単な事だ。我等は主はやてからの魔力供給を受けている身だ。薄くはなったが繋がりは今も感じている」
「はっ、何をほざくかと思えば――――」

鼻で笑うルシファーの言葉は突如充満した殺気によって遮られる。

「お前が主はやての思い人、城島ユウの姿を取っている為、主はやてはお前を撃つ事が出来なかった」

だが、とシグナムはルシファーに明確な殺意を向けて自身の相棒――レヴァンティンを構える。

「私達にそんな事は関係ない。無傷で捕らえるのが一番良いのだがお前は主はやてとリインに危害を加えた。腕の1、2本は覚悟してもらうぞ」

刹那、大気が爆ぜた。神速とも言える速度でルシファーに迫るシグナムとヴィータ。
何の合図も無しに駆け出し、それとほぼ同時に動いたシグナムとヴィータは完全に息が合っていた。ただ、ルシファーを潰すという明確な殺意の下、ヴォルケンリッターの前衛は獲物を狩りに飛び掛る。
それに対しルシファーはつまらないという風にソードフォームになったエクスカリバーも加えて二本の剣を構える。

『Sturmwinde』

機械的な電子音と共に振るったレヴァンティンの刃から衝撃波が生まれる。衝撃波が向かうは彼女達とルシファーの間の地面。勢いを持った風は大地を抉り、それによって生まれた粉塵が3人の姿を隠した。

(なるほど、目潰しか)

基本的な戦術だな、とルシファーは思いつつ白と黒の一対の羽を背中に出現させ羽ばたかせて空に舞い上がる。粉塵から出ると同時に3つの鉄球が真下からルシファーに襲い掛かった。
体を少し横にずらす事でこれを回避する。鉄球はルシファーのいた場所を通過すると弧を描いてルシファーの頭上から狙い打った。

「くだらん」

聖剣の一振りで鉄球を全て両断する。その瞬間、タイミングを見計らったかのようにヴィータが真下から殴りかかった。

「ダァ!!」
「ちっ……」

ヴィータの一閃を後ろにずれることで躱し、勢いを殺せずそのままルシファーの目の前まで来たヴィータの無防備でがら空きの胴を魔剣で薙ぎ払う。
しかしその動作は突如背筋を走った悪寒によって中断させられた。

「!?」

実行している動作を途中で中断する事は出来ても咄嗟に回避する事は出来ない。
魔剣をヴィータの脇腹の寸前で止めてその場から動こうとしたが、ルシファーが動きを止めて間髪入れずにルシファーの腹から手が生えた。

「な……に……!?」
「外された!?」
「シャマル!」

シャマルの驚愕の声が響き、ヴィータが早く離脱しろと言う風に声を上げてその場から離れるが、それはルシファーの耳に入らず、ただ彼は自分の腹を驚きの眼差しで見下ろしていた。
見下ろしている自分の腹から細長い女性の手が生えている。その場から動く事は出来なくとも、寸でのところで身体をずらしたことによって直撃は避けたらしい。手は何かを探すように動いている。真っ当な神経の持ち主なら気を失うか、極度の驚きと恐怖で身動き一つ取れなかっただろう。
しかしルシファーは混沌の王を冠する者。自身に異常を見つけても戦闘に支障が無い事と手が何を探しているのか察すると、苛立たしげに舌打ちしてルシファーの魔力を蒐集しようとした手を斬りおとすべく聖剣を振り上げる。

「この……!」
「おおおおおぉぉぉぉぉ!!」
「っ! ちぃ!」

裂帛の気迫と共にレヴァンティンを構えて突っ込んでくるシグナムに驚愕の表情を止めて思わず聖剣を止める。その隙に手はルシファーの腹に戻っていき、完全に姿を消した。
逃した事もそうだが、裂帛の気迫に一瞬たりとも押された自分に怒りを覚えながら振り上げたまま行き場の無い聖剣でシグナムに対処する。
刃と刃が幾度となく交わりあい、火花が散った。
一瞬の気の緩みが死へと続く斬り合いに水を差すかのように、ヴィータの鉄球が真横から突進してくるのをルシファーは横目で確認した。
その危険ともいえる行動にルシファーはシグナムから注意を逸らさないまま驚愕する。

(……正気か!?)

こんなに近距離で打ち合っているところに遠距離攻撃を仕掛ければ余程の腕が無い限り、味方も巻き込んでしまう。しかし先ほどの鉄球の制御を見るとあまり上手いとも思えない。ヴィータも子供のなりはしているが、ヴォルケンリッター。そんな事は分かっているはずだ。それ故に彼女がとった行動をルシファーは理解できなかった。
シグナムと打ち合いながら鉄球をギリギリまで引き付けてゼロシフトでその場を離れる。ギリギリまで引き付けられた鉄球の進路は当然変える事は出来ず、一直線にシグナムへと進む。
本来ならシグナムは急に目の前に現れた鉄球に反応できず、何もする事が出来ずに鉄球が直撃するだろう――――本来ならば。
迫ってくる鉄球を目の前にシグナムは笑っていた。チラリとルシファーの位置を確認して腰から上を捻る。そこでシグナムはルシファーには考え付かない方法を使った。

「はぁっ!!」

捻った上半身を勢い良く振ってレヴァンティンの刃の背で鉄球を打った。鉄球はバットで打たれたようにルシファーへ向かって一直線に伸びる。
考えてみればそう有り得ないことではなかった。ヴィータとシグナムが念話で互いの考えを伝える。練習や訓練が全くナシのぶっつけ本番だが、生憎彼女等はそんなことはくぐり抜けてきた幾多の戦場では何度もあった。今更急なことが起ころうがそれぞれの咄嗟の機転で何とか対処できる。

「やるな……」

キン、と音を立てて鉄球を聖剣で切り裂く。どれ程の速度を持ったとしてもロングレンジの攻撃は彼にとってはほとんど無意味。
確かにいきなりの行動に驚愕したのは認める。しかしこんな程度では混沌の王は堕ちない。
――――しかしその考えを凌駕してこそ幾たびの死線を潜り抜けてきたヴォルケンリッター。
鉄球を打った後、シグナムは体勢を整えて再びルシファーに突撃しようと腰を低く落とす。刹那の後、残像を残してルシファーへ突っ込む。その速度はわずか2秒足らずでルシファーに肉薄する程の物。接近するシグナムを視認すると同時に彼女の剣が炎を纏う。それは過去に一度、ルシファーがユウを通して見た斬撃。

「紫電――――」
「ちっ……ソウルイーター!」

鉄球を切り裂いた後で、ゼロシフトで後退する事も出来ず即座にエクスカリバーを待機状態に戻してソウルイーターを抜刀の姿勢で構える。魔力を込めている時間は無い。元々ソウルイーターが持っている魔力で目の前の攻撃を防ぎきるしかない。
ソウルイーターはその名の通り『魂を喰らうもの』。対象の魔力を吸収し、自身の魔力に変換することが出来る能力を持つ。その魔剣に秘められた魔力は彼女の技に対抗するにはお釣りが来るほどの量だった。しかし、それを瞬時に解放できるかは別だ。

(どこまで引き出せるか……)
「無影――――」

短く呟き、ソウルイーターの魔力が膨れ上がる。足元に闇が出るのを待たず、身体的変化が起こる前に魔剣を一閃する。それよりやや早くシグナムがレヴァンティンを振り下ろした。

「「――――、一閃!!」」

闇を纏った魔剣と炎を纏った魔剣が激突する。ギギギギと膠着状態に陥り、火花が散りあう。紫電一閃を受け止められたシグナムは届かなかったか、と悔しさで奥歯をかみ締め、ルシファーはにやりと笑みを浮かべる。しかし、ピシリッと何かに皹が入る音が響いた瞬間、二人の表情が同時に驚愕へと変化した。
互いの剣は闇と炎に包まれているため直接刃を確認する事は出来ない。確認するためには纏っているものを解除する必要がある。しかしそれは死合に負けることを意味する。

「ソウルイーター!」
『……Liberate』

次の瞬間、ソウルイーターを纏っていた闇がシグナムに向かって放出された。視界が一瞬にして闇に閉ざされて動きを止めるシグナム。

「なっ!?」

1秒も経たずにシグナムの身体が闇に包まれた。ルシファーは剣を弾くと翼を羽ばたかせて闇との距離をとる。エクスカリバーを左手に出現させて、闇に向かって一閃。

『Shining saver』

聖剣から撃ち出された光の刃は中にいるシグナムごと闇を切り裂いた。しかし、闇があった空間にシグナムの姿は無い。
とある考えが頭に浮かんで地上にいるシャマル達に目を向ける。そこに闇の中にいたシグナムの姿もある。シャマルが息を乱している辺り、ルシファーの考えの通り彼女が無理をしてシグナムを闇の中から連れ出したらしい。
右手にある魔剣を顔の前に持ってきて無表情で刀身を眺める。悪魔の羽を催した刀身には一筋の皹が入っていた。先ほど呼びかけたときも反応が遅れたのはそれが原因だろう。
再び地上を見下ろしてから翼を羽ばたかせて地上に降りる。
肩で息をするシャマルにシグナムがレヴァンティンをルシファーに構えたまま感謝した。

「すまない、シャマル」
「大丈夫……それより」

この状況は拙いのではないか、と視線だけでシャマルがシグナムへ問いかける。ルシファーを真正面に見据えながら、どうしたものか、とシグナムは思考した。
ヴィータとの2人により波状攻撃は回避され、隙を見つけたシャマルの魔力蒐集も紙一重で避けられた。咄嗟に考え付いた方法でルシファーを出し抜いたのは良かったが、結局は対応されてしまった。
ヴォルケンリッターが揃っているこの状況下でこれだけ対応されてしまうと、打つ手はあるのか、と疑問が浮かんでしまう。しかし向こうも防戦一方の状態である。攻撃させる隙を作らず、連続で叩き込むしかない、と決意した時シグナムの隣にフェイトが並んだ。

「私達も一緒に戦います」

達、という言葉を聞いて後ろを振り返る。そこには怒りの炎に代わって強い意志の灯火を瞳に灯した面々が揃っていた。

「あいつは一発殴ってやんないと気がすまないよ」
「私達もユウ君達を助けたいから」
「貴方達が戦っているのに私達が見ているわけにもいかないでしょう?」
「怪我をさせずに拘束するのは僕の得意分野ですよ」

アルフが拳をたたきつけ、なのはがレイジングハートを、マリアがグラビティアクセルを構えて、ユーノは笑いながらこちらを見ている。その3人を割ってクロノが前に出た。

「皆、君たちと同じ気持ちだ」

微笑みながらかけてくる言葉にシグナムは肩に掛かる重みが軽くなった気がした。ふっ、と笑う。感謝と呆れが入り混じったそんな感情が籠もった笑み。

「すまない、力を貸してくれ。主はやてとリイン、そして城島達を取り戻す!」
《おぅ!!》

力強く答える皆を心強く思いながらルシファーに向き直る。ルシファーは彼女達とは真逆で表情が無かった。感情を灯さない声で呟いてソウルイーターに魔力を込める。ソウルイーターの刀身に黒い靄がかかり、数秒もたたずに霧散した。刀身に入っていた皹は消えて元の光沢を取り戻していた。

「低く見ていたことを詫びよう―――しかし」

魔剣を一振りすると同時に大地が振動するほどのプレッシャーがシグナム達に襲い掛かった。圧倒的なまでの威圧感、気を抜いたら押し潰されかねないプレッシャーがその場を支配する。

「ぐっ…………」
「お前達では届かない。王の力、その目に焼き付けろ」



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「う……」

朦朧とした意識の中、はやては頭を振りながら起き上がる。どうやら倒れていたらしい。ここがどこなのか、どうして自分が倒れていたのかも分からないまま辺りを見回す。周りの光景が目に入った瞬間、はやての意識は一気に覚醒した。

「な、なんやねん……これ」

どうやら自分は住宅街だったところに倒れていたらしい。しかし、今はやての目に映っている家屋は全て炎に包まれている。パチパチという音を立てて柱が焼け落ちた。

「う……」

うめき声を上げてはやての背後で誰かが起き上がった。振り向くと頭に手を置いたリインフォースがいた。

「リイン!?」
「ま、マイスターはやて……」
「なんでリインまで……?」
「分かりません……マイスターはやてが光になって、助けようとしたらここに……」

その言葉ではやては直前まで自分がどのような状況の中にいたのか思い出す。

「せや、ルシファーは!? シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラもおらへん!?」
「なのはさん達もいませんよ!?」

慌てて辺りを見回すが、彼女達の知り合いは誰もおらず、取り囲んでいる建物が赤々と燃えるだけだった。リインフォースも初めてそれに気が付いたようで周りの様子を見てぎょっとする。

「マイスター、これって……!?」
「リイン、辺りに人間がおらへんかサーチお願いできるか?」
「は、はい!」

はやての言葉に頷き、目を瞑ってエリアサーチをするリインフォースをよそにはやては辺りを見回して本来あるはずの感覚がなく、違和感を感じた。

(熱く、ない……?)

勇気を出して、手を震わせながら近くの炎に手を伸ばす。本来ならば肌が熱を感じて反射的に手を引っ込めるのだが、思ったとおり熱を感じなかった。それどころか、触れているという感覚も無い。
手を引っ込めて手を握り直すがやはり熱を感じない。
湧き上がる疑問に首を傾げながらリインフォースに目をやる。まだ終わっていないらしい。しかし彼女の体の向こう側、崩れかけた家屋の傍に信じられない光景を見つけた。

「っ!?」

叫ぶより早く足が動く。あまり走り慣れていないため速度は上がらないが、それでも懸命に足を動かす。リインフォースから数十メートルも離れていない地点、そこに小さな女の子が倒れていた。

「っは、はぁ、はぁはぁ……」

息をつきながら足元の少女に視線を落とす。少女は既に事切れていた。傍から見ても分かるほどに身体は火傷だらけで肌は熱で溶け、腹部から生きるのに必要であろう臓器が飛び出ている。

「っ………」

胃袋から込みあがってきたものを咽そうになりながら口を押さえる。しかし再び少女だった物を見てしまい、我慢が出来なくなってしまった。

「か、は…………はぁ、はぁはぁ」

認めたくなかった。こんな小さな女の子がどうしてこんなにも残酷な死に方をしなければならないのだろう。まだ幼い顔つきが残る、およそ10、11歳ぐらいだろう。だからこそはやては認めたくなかった。自分と同じくらいの年で尚且つ、自分と似たような容姿をした女の子が死んでいるのを。
茶色い髪を二つの髪留めで止めている少女は絶望を顔に貼り付けたまま、涙と鼻水と血で顔をぐしゃぐしゃにしていた。

「…………誰がこんなことを……」

このようなことをしたやつに怒りが沸きあがった。しかし怒りは次の瞬間に驚愕に塗りつぶされる。
呟いた直後、傍の建物が轟音を立てて崩れた。焼き尽くされた柱が支える家の重さに耐えられなくなった、そんなものではなく、外部からの衝撃によってのもの。何かが超高速で飛来して直撃したのだ。
飛び散る瓦礫からシールドを張って身を守る。幸いにも大きな破片は飛んでこず、小さな、大きくても野球ボールぐらいの瓦礫しか飛んで来なかった。パラパラ、と雨のように細かい破片が降る中、瓦礫の中から1人の女性が手にした剣を杖代わりに血塗れのまま出てきた。
――――それははやてが何年も見続けてきた大切な家族の姿だった。

「シグナム!?」

慌てて彼女の元へ駆け寄る。シグナムは見るからに傷だらけで傷が無い所が無いのではないかと疑うほど血まみれだった。レヴァンティンも刀身全体に皹が走っており、あと一撃でも喰らおうものなら砕ける寸前だった。
シグナムの身体がバランスを崩して落ちる。はやては慌てて身体を支えようとして――――手が身体を通り抜けた。

「…………え?」

呆然としている間にシグナムがどさっ、と地面に倒れた。
シグナムが苦痛に満ちた表情を隠そうともせず頭上を見上げる。その目にははやての姿は入っていない。ただ目の前の敵を見つめ、殺気に溢れていた。
釣られてそちらを見ると白と黒を生やした少年が無表情のままはやて達を見下ろしているのが分かった。少年はシグナムに負けず劣らず血塗れだったが、それは返り血なのだと直感する。

「ユウ君…………」

ユウははやての声に反応したように、ちらりとはやてを一瞥するが直ぐにシグナムに視線を戻す。手には彼がいつも手にしている魔剣と聖剣はなく、魔力で作られた闇の刃が握られていた。ユウの姿はいつものバリアジャケットを着ておらず、休日とかに着るような私服を着ていた。茶色の髪は漆黒に染まり、瞳も紫が掛かったものとなっている。

「マイスターはやて、サーチ完了しました。周囲に人間の反応ありません!」
「なんやて!?」

大声を上げたはやてにリインフォースがびくっ、と震える。しかし声を上げずにはいられない。目の前には確かにシグナムとユウがいる。なのに、リインフォースは人間の反応はない、と言い切った。

「どういうことなんや……」



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目を開くと目の前には洞窟があった。山を人工的に削ったそれは一見、どこにでもあるようなものだったが、洞窟の入り口に張られた侵入者探知用のサーチャーが異質な物へと変えている。
アルは周囲に気を配りつつ、洞穴へ歩き出す。侵入者探知のサーチャーを気にせず洞窟内に入った瞬間、異質は異常へと変貌した。

「探知魔法だけじゃなくてマジックプロテクトも掛けていたか」

あからさまとも言える空気の変化に、アルは笑みを浮かべながら洞穴の壁を叩いた。叩いた箇所から砂が零れ落ちたが、思っていたより頑丈でちょっとやそっとじゃ崩れないようになっている。
手から光球を生み出して洞窟の奥へと投げ込む。投げ込まれた光球は洞窟内部を照らし出したが、それでもそこには何も無い。ただ奥へと通じる一本の通路が無機質に続いていた。それを見てもアルは場所を間違えたとは思わない。確かに彼が入り口で感じたのは自分の知らない探査魔法とマジックプロテクトだった。
マジックプロテクトとは対象、又は広域範囲の魔力反応を隠すために使われる魔法。代わりにその影響下で魔法が使えなくなるという欠点を持つが拠点を隠すにはもってこいの魔法だ。

「無限書庫での知識が役に立ったな」

ソウル達が混沌について調べている横で1人こちらの世界の魔法を調べていたことを思い出しながら前に歩き出す。しかし、数歩歩いたところで通路の奥から放たれた敵意に足を止めた。ふむ、と手を顎に当てて一層笑みを深めた。

「ビンゴ♪ さて、ここから先は――――」
「何があるというのだ?」

通路の奥の闇から届く声に自然な動作で構える。闇から音を立てずにウィルが現れた。厳しい表情で右手に槍を携えたままアルと対峙する。

「あんたらの拠点だよ。マジックプロテクトまで掛けてまぁ、随分用心深いよな。こっちの魔法の勉強大変だったろ?」
「問題ない。セルマとイリアが知っていた」
「へぇ、ってことはあの姉ちゃんと嬢ちゃんはこっちの世界の住人か」
「さて、な。――――彼女達が自ら出来る仕事をやっているのだ。私が仕事をしなくては彼女達に面子が立たない」
「別に俺はここから先に進む気は無いぜ」
「ここの居場所を知られるわけにはいかない」
「目撃者は消すのみ、か。古いねぇ、迷い込んだやつとかにはどうするつもりなんだか」
「そこはちゃんと考慮してある。ここに迷い込ませないように術式は張ってある。万が一紛れ込んだとしても記憶を消して元の場所に戻す」
「ありゃ、そうなの? なら俺も記憶を消すって方法にしてくんないかな〜、なんて」

ウィルはふっ、と笑みを零すと槍を構えてアルを真正面から見据えた。

「お前は例外だ。捕虜になってもらうが、最悪の場合消す」
「おお怖。それじゃあ俺もさっさと用事を終わらせないとな。エーテル」
『Set up』

電子声が洞窟内に響くと同時にアルの何も無かった右手に剣が生まれる。剣は刀身が光球による反射で輝き、金色の柄は刃との繋ぎ目に色鮮やかな宝石がはめ込まれている。ただし刀身が足から膝までの短刀というほどでも無いが短いものだった。

「随分豪勢な剣だな」
「代々家に伝わるやつでね。気が付いたら豪華になってたよ」
「そうか。――――セルマの話ではお前の武器は杖だと聞いたが、私は舐められているのか?」
「ああ、本来はこっちなんだ。あんたを認めているって証拠だから胸を張っていいぞ」

両手ではなく、片手で軽く握るように掴んでウィルに刃の先端を向ける。アルは不吉に唇を歪ませて―――――手首を捻って刀身を横に寝かせた。
光球の光が鏡のような光沢を放つ刀身に反射してウィルの目を焼く。

「っ!」

目を瞑ってからしまった、と後悔した。実力が分からない相手から眼を離すなど、隙を突いてくれと言っている様なものだ。もし相手がアルでなければウィルはそのまま距離を詰められて不意打ちをくらっただろう――――相手がアルでなければ。

「俺じゃなかったら、今のは痛かったな」

視力を回復して警戒した視線を前に向けると、そこには先ほど対峙した時と変わらない体勢でにやにや笑みを浮かべているアルがいた。

―――――やられた。

そこでアルの技量がようやく分かった。アルはウィルが目を眩ませた隙を突いてウィルを殺す事も出来ただろう。しかしそうしなかった。完全にからかわれた事に自嘲の意味を含めたため息をつく。それでもアルから視線を逸らすことは無かった。
アルはウィルと対峙しながら、彼に聞こえない声で口の動きを最小限に抑えながらエーテルフローズンに訊ねる。

「周囲の地形、洞窟の層からその他諸々の情報。探索、解析時間は何分掛かる?」
『最低でも15分は……』
「長すぎる。10分で終わらせろ」
『また無茶を……。分かりました。何とかやってみます』

エーテルフローズンの返事に満足しながら、目の前の相手を見据える。
手を抜いて戦える相手ではない。一瞬たりとも隙を見せたら殺られる。直感で悟る事が出来たアルは表情から笑みを消す。

「アル=ランチェスター。相棒の名は『エーテルフローズン』」
「ウィル=ハルフォード。共に駆るは神槍『グーングニル』」

周囲の空気が一変する。ウィルの敵意で満たされていた空間はアルの殺気も混じって常人では入ってくることすら出来ない空間と化していた。
その場に音が無くなり、洞窟内を通る小さな風の音だけが響く。

「…………行くぜ」
「塵も残さん」





----後書き----

カークス:「拙作を読んでいただきありがとうございます」

ルシファ:「八神はやてとリインフォースは取り込まれ、アルは別の場所で戦闘か」

カークス:「こういう風に同時進行しないととてもじゃないけど終わらないです」

ルシファ:「しても大して変わらないだろうに。しかし今回は色々と補足をしなければ分からない部分も出てきたな」

カークス:「というわけで行ってみようー。まずははやて達が飛んだ場所。あそこはルシファーの意識下の捕獲空間です」

ルシファ:「簡単に言ってしまえば闇の書の意思がテスタロッサを取り込んだ時と同じだ。ただしあいつの場合は対象の深層意識が望んでいる夢を見せるが、私の場合は対象が望まない夢、つまり『悪夢』を見せる」

カークス:「闇の書の意思の場合は『闇の書』という捕獲場所があるのに対して、ルシファーはゼロが生まれた際にユウが貰った銀の腕輪が捕獲場所です」

ルシファ:「まぁこれ自身は深いところまで行くと面倒なのでそこまで深く考える必要はない。ただ闇の書の意思の夢の『悪夢』バージョンとでも思っておけばいいだろう」

カークス:「ちなみに二人以上が取り込まれている場合、対象全員が望まない悪夢を見せられます」

ルシファ:「本来ならば対象は夢の中を外から見る傍観者だが術者、つまり私が望めばそこに実際に居ることとなる」

カークス:「要約すればルシファーの意思でその場に存在するかしないかは決められるということ。はやての手がシグナムの身体を通り抜けたのは『存在していない』状態だったから」

ルシファ:「あとはもう一つだな。今回の後半ではやてが見つけた自分に似た少女というのはユウの妹の美奈だ」

カークス:「ちなみに美奈の年齢は11歳。本来なら14歳なんだけど、最後にユウが美奈を見たのは11歳の時だから。その時の姿で補完されているわけです。美奈については外伝の前編をどうぞ」

ルシファ:「まぁ、とりあえずはこんなところか」

カークス:「他にもまだまだあるけどね。そこは聞かれたら随時答えていこうと思う」

ルシファ:「ならば今回はここで退散するとしよう。話す事も特にない」

カークス:「それでは、失礼します。…………ザフィーラの戦闘シーン、どうしよう」





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