自然の光が一切届かない洞窟の奥深く。暗闇の中で連続して響くのは風を切る音と短い金属音。規則的に響くそれらは音楽のように、聴く者を魅了する何かがある。一際大きく金属音が響いて、音が消えた。訪れる静寂を一つの声が打ち破る。

『解析、完了しました』

無機質に響く声に1人の青年が笑みを浮かべて答える。

「丁度10分、上出来だ」
『ありがとうございます』
「どんな感じだ?」
『ここはどうやら昔炭鉱として使われていたところらしいです。原因は不明ですが、現在は廃坑になり、そこに目をつけたのではないかと思われます』
「ま、そんなことだろうと思ったがな」

青年、アル=ランチェスターは目の前で槍を構えた男、ウィル=ハルフォードを視界に納めたまま近くの固まった鉱石に目をやる。完全に目を離せないのは、下手するとそれだけでアルの体に無数の穴が開くからだ。

「すると、そこら辺にあるのは……」
『はい、石炭です』
「なるほど……使えるな。洞窟内の粉塵濃度は分かるか?」
『――――正確な数値を出すためには時間がかかりますが、爆発が起こるぐらいには浮遊しています』
「はっ、そうかそうか」

アルは小さく笑うとウィルに焦点を合わせた。ウィルも槍を構えたままアルから視線を外そうとしない。獲物を狩る肉食獣のような瞳はアルの姿を捉えたまま、瞬き一つせずその姿を射抜く。

「そう怖い顔で睨むな。そろそろこっちは退散させてもらうから」
「…………逃がすと思うか?」

殺気を孕んだウィルの低い声に勘弁してくれとばかりに首をすくめるアル。(正直、ぶつかり合ってよく火花散らなかったよな)と冷や汗を流しながら、視線をウィルから外さずに足を器用に使って足元にある物を目の前に上げた。空いている左手でそれを掴み、ウィルにも見えるように顔の横に持ってくる。手に収まっているのは野球のボール大の黒光りする鉱石。

「これ、何か分かるか?」

返答は求めていないとばかりに鉱石をウィルの足元に投げた。しかし、ウィルは転がる鉱石には目もくれずただアルを睨んでいる。

「それは石炭だ。ここはどうやら炭鉱だったらしくな、あちこちに転がっているぜ。――――で、だ。俺達がこの場で殺し合いを続けるなら、けっこうな確率で俺とお前が死ぬような事故が起こる。お互いにそれは困るからな。ここで退くことを提案したいんだが――――」
「――――悪いがお前の言うことは信用できない。ハッタリの可能性を否定する根拠が無いのでな。故にここで討たせてもらう」

言ってウィルは表情を変えず、槍を深く引いた。同時にエネルギーの急激な上昇をアルは肌で感じる。

「っておいおい!? だから言ってんじゃねえか、ここでやりあうのは拙いって!」
「そういって、逃げるつもりだろう?」

事実、そのつもりだったためアルは否定することも出来ない。
エネルギーの上昇と共に洞窟内の温度も上昇していく。既にサウナ状態となった洞窟内にもかかわらずウィルは汗一つかかずに熱で赤く染まった槍を握り直した。

「――――炎熱解放。燃やせ、神炎」
「よりにもよって炎!? っの、馬鹿や――――!」
「ぬっ――――!?」

突き出した槍から炎が出た瞬間、洞窟内で ゴォォォォォォォォォォォン!! とアルの罵声とウィルの驚きの声を掻き消して轟音が響き、爆発が起きた。





体中が煤だらけになりながら、アルは爆発が起きた洞窟内から転がり出た。

「ぶはっ! あいつ、警告したのに炎出すとは……『炭塵爆発』って言葉を知らんのか?」

悪態をつきながら未だに黒煙を上げている洞窟を睨む。
爆発が起きる直前、あらかじめ詠唱しておいた防御魔法を展開して熱と衝撃波の一部をやり過ごしたが、完全には防ぎきれなかったのかアルは体中煤だらけになっていた。

『そうとも限りませんよ』
「あ?」
『あの人が槍にエネルギーを溜めた時、彼の身にも魔力が纏われたのを感知しました。恐らく防護のためのものかと。事実彼はあの気温の中、汗一つかいていませんでしたし』
「……つーと?」
『爆発が起きると知っていてやった。加えて彼は無傷だと考えるのが自然と思われます』

げ、と表情を引き攣らせながらアルはもう一度洞窟に目を遣ると急いで腰のポーチから野球ボール大の宝玉、ディメンションリンクを取り出した。

「追ってこられると厄介だな。ここはとっとと退散するぞ」
『はい』
「我が魔力を糧に起動せよ、ディメンションリンク」
『発動に必要な魔力を感知。対象は人間1人。目的地『時空管理局本局』 登録コード「ディメンションリンク」起動』
「――――にしても、ウィル=ハルフォードっつったか。あいつ、相当やばいな……」

ウィルはディメンションリンクが発する光に包まれながら、防御魔法で防ぎきれなかった炎で焼かれた左腕を見て、そう呟いた。





魔法少女リリカルなのはLOC
第28話「とっておき」





――――何か企んでいるか。

フェイトとの高速戦闘の最中、ルシファーの頭の中に一つの疑念が生まれた。
ルシファーがそう思った理由は二つ。
一つ。全力で、本気で潰すというほどの勢いが途中からいきなり相手をいなす程度のものに変わった事。何度も衝突している故にその違和感はすぐに気づいた。先ほどまで全力の衝突、例えるならラグビーのボールキャリアーとタックラーの真正面からの衝突ほどの勢い、がいきなり力を受け流されるようになった。
そして二つ。衝突から次の衝突までの間隔が長くなった事だ。疑念を抱いてから2、3度衝突して、回り込むルートが大回りになっていることに気づく。恐らくどこかに誘導するつもりなのだろう。
何を企んでいるか、ルシファーにそれを知る由も無い。しかし、今までに無い斬新な戦法を取ってきたフェイト達がどんな風に出てくるのか。それを考えると自然と彼の口元が笑みの形に歪んだ。
彼は無意識にこの戦いを楽しんでいた。未だかつて彼と戦った者は傷を負わせるどころか、触れる事すら出来ずに消滅していった。
しかし、目の前の少女達は違う。ユウという器の中にいるとはいえ、彼を幾度となく追いつめ、傷を負わせる事に成功している。次はどんな風に攻めてくるか、何をしてくるのか。ルシファーはフェイト達の行動を期待しつつ、同時にそれを真っ向から打ち破ることの出来る絶対的な自身があった。

――――ならば、貴様達の策を完膚なきまで叩き潰すまで!

彼は改めて光と闇の刃を握り直し、バルディッシュを構えて突っ込んでくるフェイトに向かって、何十回目か分からない突進をした。






――――あと、少し……!

クロノからの念話を受けて、指定された座標までルシファーを引き付けてくれと頼まれたフェイトは少しずつだが、着実に指定座標点まで近づいていった。
フェイトとルシファーが行っている高速戦闘は、音速に近い速度で接近して敵を討つというものだ。接近時の勢いを攻撃に使う事から自然とその動きはヒット&アウェイになる。
フェイトがルシファーに気づかれないように指定座標点に引き付けるためには、今までと同じようにヒット&アウェイを繰り返していくしかなかった。
しかし、フェイトの精神にも限界が近づいていた。
自身が高速で動いている時、周囲の色がなくなり、全てのものの動きがゆっくりになる。F-1のレーサーが感じるものと同じである。
それは同じ条件で動いているルシファーも同じであり、つまりそのスローモーションの中で相手の攻撃をいかに見切って防ぐか、それがフェイトの精神的な負担となっていた。一度の衝突でかなりの集中力を要する。そんな状況下で数十回も繰り返していれば、精神が磨耗していくのは当然の事だった。
そして、もはや何回か分からない衝突をした時、フェイトの集中力に限界が来た。
振り下ろされた闇の刃を受け流そうと、バルディッシュを構える。バチィ! という音をたてて受け止める事に成功する。――――しかし、この時フェイトは受け止めようとしたのではなく、受け流そうとしたのだ。そして刃を受け止めた瞬間、フェイトの敗北が確定した。
ルシファーは受け止められた闇の刃に更に魔力を送る。送られた魔力を受け取った闇の刃は、まるで空気を入れられた風船のように膨張した。その大きさは元の大きさの約1.5倍。闇の刃が膨張するにつれて、それを受け止めているバルディッシュからギリギリ、と嫌な音が立ち始める。そして、闇の刃が膨張しきった直後、バルディッシュはその圧倒的な圧力に耐え切れず、ギンと音を立ててその柄が両断された。

「っぁ……!?」
『Barrier jacket, Lightning form.』

しかし自身が両断されても尚、バルディッシュは主の身のために防御の薄いソニックフォームをライトニングフォームに切り替える。バリアジャケットがライトニングフォームに切り替わり、両断された自身の相棒からルシファーに視線を移す暇もなくにフェイトの背中を悪寒が走りぬけた。

「バルディッシュ!」

相棒に防御魔法の指示をすると同時に顔を上げてルシファーの姿を視界に収める。ルシファーはバルディッシュの柄を切り裂いた勢いで体を反転させ、右足を極限まで引き付けていた。

『Defensor』

バルディッシュが防御魔法を発動させ、それにやや遅れるようにルシファーの蹴りがフェイトに放たれた。その放たれる速度からその軌跡が槍を思わせる蹴りがフェイトの障壁に突き刺さる。
フェイトの小さな体がまるで隕石のように地表に向けて飛ぶ。そしてそのままなす術もなく、フェイトは先のリインフォースとルシファーとの戦いで雑草を失った大地に叩きつけられた。しかし叩きつけられるだけではその勢いは殺しきれず、地面にめり込み、周辺に皹が入ったところでようやく止まる。

「がっ、は……!」

背中から全身を貫く衝撃に肺に溜まっていた空気が全て吐き出される。加えて、ルシファーの蹴りの際に伝わった衝撃でフェイトの両手は完全に痺れていた。
更に追撃をかけようとルシファーが地表のフェイトへと虫を捕食する鳥のように飛翔する。しかし、ルシファーがフェイトへと肉薄する寸前、橙色のリングがルシファーの手足を絡め取った。

「ごっ……何……!?」
「ユーノ!」
「分かってる! レストリクトロック!」

遅れて翡翠の光の輪が更にルシファーの手足に巻きつき、頑丈にする。

「くっ、これは……!?」

高速からの急停止を食らい、圧力を受けた内臓が悲鳴を上げ、ルシファーの口から血が流れる。手足を動かそうと試みるが、微動だにしない。
その間、フェイトが痺れる手を叱咤して何とか上半身だけを上げたところにシャマルが血相を変えて飛んできた。

「そんな体で動いちゃだめ!」
「でも…………」
「いま、ユーノ君達が動いてくれているから。あとは彼らに任せましょう」
「…………はい」

少し俯き気味に頷いて、そして頭上のルシファーを見上げる。丁度、クロノとユーノがルシファーを挟み込む形で佇んでいた。

「無駄だよ。そのロックは力じゃあ解けない」
「どうやら、そのようだな……」

ユーノの言葉に同意するように手足の力を抜く。同時に真正面のクロノを睨んだ。が、クロノは軽く流しながらS2Uをルシファーに向けている。既に術の詠唱は済んでいる。後は、発動するのみ。

「ふん。仲間を囮にするとは大した作戦だな」
「フェイトを信じていたから出来た作戦だ。フェイトが奮闘してくれたんだ、僕達もそれに答えなきゃいけない」

それだけ言ってこれ以上言うことはないと左手をルシファーに掲げる。世間話をしていたらルシファーに抜け出される、先ほど嫌と言うほど思い知らされた。

「ストラグルバインド!」

クロノの掲げていた左手に水色の魔法陣が現れ、そこから同色の魔力の縄がルシファーに向かって幾筋も伸びる。そして、魔力の縄がルシファーの体に巻きついた。

「な、にっ……!? ッがぁあぁあああああああぁぁぁぁぁあああああ!!!」

思わず耳を押さえたくなるような絶叫が広がる。
その叫びに呼応するようにルシファーの胸の中心にレモン色の球体が生まれる。同時に彼の左腕の銀の腕輪から白い光が二つ生まれ、先ほどのレモン色の光球と共に地表に向かう。左手をルシファーに掲げたままその光の先を目だけで追う。
地表に降り立った光はそのままゆっくりと人の形を作っていき、光が収まる頃には光があった場所にルシファーに取り込まれたはずのゼロとはやてとリインフォースが倒れていた。

「はやて……リインフォース……」
「ゼロも……成功したか」
「貴様ら…………!」

三人の姿を確認して安堵した直後、重い殺気がユーノとクロノの全身を貫いた。視線を先ほどまでルシファーが捕まっていた場所に移すが、そこには無残にも引きちぎられた縄の痕しかなかった。

「クロノ、後ろ!」

ユーノの声がクロノに響くと同時に、クロノの背中に熱と激痛が走る。斬られた、と頭で理解するまでさほど時間は必要無かった。

「な…………」

同時にクロノの意識が遠のいた。飛行魔法を維持できずにそのまま力なく地表に向けて墜落を始める。赤い尾を引きながら重力にそって落ちる体は徐々に速度を増して地面に近づく。
しかし、もうあと2、3秒で衝突するというところで、クロノの体が柔らかい音を立てて受け止められた。朦朧とする意識で固い地面ではなく、人の手の中ということを理解する。
受け止めた人物に顔を向ける。まず最初に綺麗な黒髪が目に入った。伸ばしているのか、髪の一部分がクロノの顔に掛かっている。そして水晶玉のような漆黒の瞳と目が合う。

「すまない。ありがとう……」

それだけ言うと黒髪の少年――ソウルはクロノを連れて、シャマルの元へ向かった。
それを見ていたルシファーが顔についた血を拭いながら面白くなさそうに鼻を鳴らす。ルシファーの全身は先ほどクロノを斬った際に返り血を浴びて、赤黒く染まっていた。

「まぁいい。どの道、結果は変わらん」
「クロノッ!」
「魔力を分けるところまでは良い。だが、その後を考えなかったのは愚かだな。魔力が減ったところで、たかが武器を失ったところで、私は落ちない」

考えが甘かった。
例えルシファーの魔力が分けられたとしても、ソウルとエクスが敵に回り、圧倒的な魔力差のある状況を打破したとしても、相手はSランク級魔導師。加えて、全てを無に帰す『混沌』を治める王。
彼の言うとおり、魔力を分けられたとしても、武器であるソウルとエクスを失ったとしても、王は倒れない。
ソウルとエクスを元に戻す事が出来た反面、衰弱して戦闘に参加できないはやて達のことを考えると状況は芳しくない。むしろ、ソウルやエクスとの戦闘で消耗しているシグナムとなのは、ルシファーとの高速戦闘で負傷したフェイト、先ほど斬られたクロノと治療しているシャマルを除いてこちらの戦力は、ユーノとヴィータ、ザフィーラ、マリアとアルフの五人のみ。

「でも、ここで負けるわけにはいかない。ここで負けたら、今まで頑張ってくれたフェイト達に合わせる顔が無いから」
「…………そうか」

目を細めて呟くとルシファーは両手に、先ほどより一回り細くなった魔力刃を作り出す。
同時にユーノも構えを取る。まだ、完全に勝ち目が無くなったわけじゃない。残された5人で例の作戦を実行すれば――――。

『5人じゃ、無いよ……』

ユーノの考えを読んだかのようなタイミングで頭に念話が響く。直後、ルシファー目掛けて光の矢が飛来した。

「ぬっ!?」

光の矢を視認する間もなく、直感で闇の刃を振るって相殺させる。しかし、光の矢は止まらず、所々に桃色のスフィアを交えて飛来した。新たに闇の刃を生み出して、飛んでくる矢と弾を躱し続ける。

「くっ、これは……!」
「なのはと、エクス!?」
『急いで、ユーノ君!』
『私達の魔力も結構限界に近いの。だから、何かやるなら早く……!』
「ちぃ……!」

ルシファーは飛んでくる矢と魔力弾を弾かず、ひたすら躱していく。魔力が減少しているせいか、細くなった魔力刃では魔力弾はともかく、光の矢を弾く事が出来ず、相殺するのがやっとの状態だ。飛来する無数の矢と魔力弾を捌くには魔力刃一本では足りないので、こうして避ける事しか出来ない。

『ユーノ君……!』
『急いで……!』
『マリアさん、チャージは!?』
『まだ8割……エクス、高町、あと少し持たせて!』
『あと2割……』
『くはぁ……ちょっと厳しいかも……』

空中でなのはとエクスが弾幕を張っている真下、マリアはグラビティアクセルを二丁合わせる様に構えて、魔力の集束をしている。銃口の先には50cmほどの魔力球が生まれ、そして未だにそれは膨張し続けている。

ユーノが考えた作戦はこうだ。
フェイトが指定した座標に連れて行って、ストラグルバインドを使えるクロノとユーノで前後を、他の面子で上下左右を囲んでルシファーの逃げ道を塞ぐ。逃げられなくなったルシファーにストラグルバインドを使ってゼロ達を解放。
解放した後は大規模砲撃モードであらかじめ攻撃魔法をチャージしていたマリアがルシファーを打ち抜くという算段だった。
だが、フェイトがルシファーに敗れ、ユニゾンを解除した後もルシファーの動きが予想以上に早かったため、クロノとシャマルは戦線離脱し、マリアのチャージもまだ間に合っていない。
時間が経つに連れて、なのはとエクスの弾幕が薄くなっていった。空を覆い尽くすほどの弾幕は、今ではまばらになりつつある。

『ごめん……もう、無理……』
『ごめん、ね……』

それだけエクスとなのはは呟くと、力尽きたように地表に向けて落下する。同時に張られていた桃色と白の弾幕が途切れた。
弾幕がなくなったことで自由になったルシファーは異様な魔力の上昇を肌で感じ取り、そちらに目をやる。そこには銃口に集まった魔力が2メートルを越えても尚、膨らみ続けている青の光があった。

「あれは……!?」
『気づかれた!? マリアさん!』
『あと、1割……!』
「ちぃ!」
「行かせねぇ!」

翼を羽ばたかせて接近するルシファーとマリアの間に赤い影―――ヴィータが割り込む。当然のように無視しようと速度を上げるルシファー、しかしヴィータは不適に笑みを浮かべ、手に衝撃弾を生成する。

「アイゼン!」
『Eisengeheul』

叫んで、生成した衝撃弾を手前に放り、グラーフアイゼンを叩きつけた。――――それによって発せられる閃光と音がルシファーの真正面からぶつけられるように。

「な……がぁ!?」
「ユーノ!」
「チェーンバインド!」

閃光と音を間近で食らったルシファーの体が仰け反り、手で顔を覆う。
ヴィータの声に呼応して、翡翠色の鎖がルシファーを絡めとる。視覚と聴覚を奪われて尚、何をされたか気づいたルシファーは抵抗するが、魔力の鎖がそれを阻む。

「くっ、貴様……!」
「マリアさん、急いで!」
「例え動けなくとも……!」

ルシファーが諦めたように動きを止め、代わりに両の瞳が金色に輝いた。同時に50を越えるスフィアが現れる。ヴィータとユーノが気づいて止めにかかるが、

「行け」

ルシファーの一声で金色のスフィアはマリアへと殺到した。

「しまっ……!?」
「マリアさん!!」
「っ!?(ここで止めるわけにはいかない…………何か、何か、策は!?)」

銃口をルシファーに向けたまま思案するマリア。しかし、無情にも策は浮かばず、ただスフィアは何にも阻まれずマリア目掛けて直進する。

「このぉぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉおおお!!」

マリアへと当たる寸前まで近づいたスフィアはしかし、彼女の前に張られた橙色の盾によって阻まれた。

「アルフ!?」
「早く…………!」

マリアの前に庇うように前に出たアルフは手を掲げ、ラウンドシールドを張ってデルタレイを防ぐ。プロの剛速球を受けているような感覚に、徐々に腕が痺れていく。右手だけでは盾を支える事が出来ず、左手を添えるがそれでもやっとの状態だ。

「(スフィアが一つでも後ろにそれたらこっちの負け。全て真正面から受け止め、後ろに流すことなく、弾く!)」

両腕に魔力を込め、連続で襲い掛かるスフィアを弾くが、徐々に弾くスフィアの角度が後ろに逸れていく。シールドの強度は問題ない。シールドを破って伝わる衝撃がアルフのバランスを崩そうと襲い掛かっているのだ。

「く…………ぁ…………」

半分ほど防いだ所で、彼女の腕がふっ、と彼女の意思に反して力が抜ける。それを狙ってか、スフィアは休む間もなくアルフに襲い掛かり、バギンと音を響いた。

「うぁ……やばっ……!?」

アルフの右腕が宙ぶらりんになり、シールドが消える。しかし、アルフのシールドがあった場所に入れ替わりで白いシールドが張られ、襲い掛かるスフィアを防ぎ始める。力が抜けたアルフは左手でシールドを張りながらぼそっと呟く。

「…………遅いんだよ」
「すまない、遅れた」

いつも通りの調子で小さく返した守護獣はアルフの折れた右腕を横目で見て、声を掛ける。

「無理をするな…………」
「無理をさせたのは誰だい。こんな状況になるまで1人でやらせておいて」
「…………すまない。お前は休んでいろ」
「そうも言っていられないだろ。それに、あんたが来てくれたんだから。格好悪いところは見せられないよ」
「ふっ」

アルフの返事にザフィーラは小さく笑う。まるで、最初から答えを分かっていたかのように。
アルフがシールドを張っていた無事な左手をザフィーラの右手に添えてシールドを重ねる。これで強度はおよそ二倍。破られる事もなく、衝撃もほとんど伝わってこない。白と橙が混ざったシールドはスフィアを障害としてとらないほど強固なものとなった。

「……………………出来た!」

残るスフィアもその数が残り一桁に突入した時、アルフとザフィーラの背から歓喜に満ちた声が響いた。彼女の方を振り返らずに確認するアルフ。

「本当かい!?」
「ええ。二人とも、弾幕が止んだ瞬間にシールドを解除して射線上から離れて。一気に解放するから」
「了解した」

数発スフィアがシールドに弾かれて衝撃が来なくなる。弾幕が、止んだ。
即座にシールドを解除して、ザフィーラは倒れこみそうになるアルフを抱えてマリアから離れる。マリアはザフィーラ達が射線上から居なくなったのを確認して、ルシファーに照準を合わせる。射線上にはユーノのチェーンバインドで動きを封じられたルシファーしかいない。ユーノとヴィータはザフィーラから念話が入り、事前に退避していた。

「終わりね。ルシファー」
「直撃を受けたらひとたまりも無いな。だが――――」

体をくねらせてチェーンを掴む事が出来たルシファーは手から魔力を流して、チェーンバインドを強制的に解除する。同時に翼を羽ばたかせてマリアへと一直線に向かう。

「なっ……!?」
「まずっ……!?」
「受ける前に終わらせる!」

慌てて引き金を引こうにも、自由になったルシファーには撃ったところでギリギリのところで回避される。
あくまでマリアの砲撃は彼の行動を封じて、というのが前提だ。動き回れてしまっては幾らマリアの腕でも当てる事は困難。
光の刃を振りかぶり、魔力刃を生み出しそうとするルシファー。このタイミングで撃ったとしてもルシファーは回避する事は出来るだろう。
万事休すか、と歯噛みした瞬間、ルシファーの体に異変が起きた。光の刃を振り抜こうとした体勢のまま、ルシファーの動きが止まっていた。

「なん……だと……!?」
『そこまでだ、ルシファー』

ルシファーの頭に声が直接響く。どこかで聞いたことがある、しかし彼の声ではない。感情をなくした声は淡々と響いた。

『お前は少し暴れすぎだ。その辺りで止めさせてもらう』
『貴様…………!!』
『何よりソレは俺の体だ。お前の好き勝手にしていいものじゃない』
「グラビティアクセル!」
『Yes,ma'am』

キィン、と甲高い音がルシファーの耳に届く。見ればグラビティアクセルの銃口の魔力球が一際青く輝いていた。

『エネルギーライン、全弾直結』

感情を灯さぬ声がグラビティアクセルから発せられる。

『ランディングギア展開、アイゼン、ロック』
「ロック確認。加圧開始」
『チャンバー内、正常加圧中』
「80、90、加圧完了」
『ライフリング回転開始。システムオールグリーン』

グラビティアクセルの内部のリングが回転して、キィィィンと機械独特の音を上げる。
ルシファーは未だに動けず、光の刃を振り上げたままだ。緊張を張り詰めたまま、深呼吸してグラビティアクセルの次の言葉を待つ。これは自身の魔力の大半を圧縮して一気に解放する魔法だ。失敗すれば、自分に返ってくるダメージはでかい。

『――――撃てます』
「! カラミティ――――ブレイザァァァァァァァァァ!!」

叫びと同時にトリガーを引き、青い魔力が解放される。ダムが決壊して溢れ出る水のように青い魔力はルシファーへと迫った。
――――もしこの時、ルシファーが動けたならギリギリのところで、足の一本を持っていかれながらも、直撃を避ける事は出来ただろう。しかし、ルシファーの意思と反して体は指一本たりとも青い砲撃の射線上から動く事が出来なかった。

「お、おおおおぉぉぉぉおおおぉぉぉおおおおお!!」

ルシファーが腹の底から雄叫びを上げる。
それは恐怖によるものではなく、1ミリたりとも動けなくても尚、視界を覆う青い光に対して前に一歩進み出ようとする力強い雄叫び。
青い砲撃がルシファーの体を濁流の如く飲み込む。そのまま砲撃は一直線に空へと伸び、雲にたどり着くかというところでその光は徐々に細くなり、消えた。
砲撃の後に残ったのは、黒白の翼が無残にも散り散りとなり、莫大な魔力によって体のあちこちが焦げて嫌な匂いを漂わせた少年が猫背のまま佇んでいた。一瞬間を置いて、ぐらりと少年は体を傾け、重力のまま地表へと落下を始める。
それに気づいたソウルが翼を羽ばたかせて、シグナムとの戦闘でボロボロとなった体を叱咤させて少年の下へと全速力で飛んだ。地表にぶつかる寸前で音も立てずに少年の体を抱きとめる。少年の体は異常といえるほど軽かった。

「ユウ…………」
「……………………………………う……そう、る?」
「…………! …………ああ」
「ぼく……は……?」
「今はゆっくり休め。ボロボロなんだ、このまま寝てもバチは当たらん」
「…………うん」

少年は漆黒の瞳でソウルの顔を見つめた後、力なく、小さく微笑んでそのまま気を失った。ふぅ、と息をついてマリア達を見る。マリアは大半の魔力を使った反動か、肩膝をついてこちらに、終わったのか、と目で訊ねてきた。それに頷いて返す。それを見ると、マリアははぁー、と大きく息をついてそのまま青い髪を辺りに撒きながら仰向けに倒れた。
ソウルはそれを見て小さく笑みを浮かべると直ぐに笑みを消して、アースラへ通信を繋ぐ。通信にはエイミィが出て、ソウルの直ぐに横にモニターが表示される。

「エイミィ、医療班を大至急準備してくれ」
『了解。こっちから人員を送るからそっちで待機してて』
「急いでくれ。中でもリインフォースとゼロの容体が酷そうだ」
『うん……ソウル』
「何だ?」
『おかえり』
「――――ああ」

モニターを閉じてリインフォース達を見る。既にリインフォースはアインスモードを解除して、いつもの小さい姿に戻っている。しかし、どこか苦しげに呼吸しており、シャマルもどうしたらいいものか分からず、必死でクラールヴィントと共に原因解明に挑んでいる。
ゼロはもはやピクリとも動かず、それだけでかなり危険な状況だということが分かる。はやては顔色は悪そうだが呼吸が整っている辺り、ただ衰弱していただけなのだろう。

「被害は甚大……その上、やらなければいけないことはまだ多く残っている」

現状を言葉にして更に気が重くなる。だけど、

「だが、それでも……今だけは、休んでも構わんだろう?」

誰に言うでもなく、ソウルは暗雲の隙間から覗き込む太陽の光を静かに、眩しげに見上げながら、そう呟いた。










ルシファーとフェイト達が戦闘を行なっている時、本局の方でも慌ただしく局員が動いていた。

「敵の現在位置は!?」
『現在、侵入者は第二格納庫に侵入しています!』
「第二格納庫を隔離! 同時に第一と第三以降の格納庫を一時閉鎖! 他にも仲間が居るかもしれないわ!」
『第二格納庫に残されている局員は?』
「一箇所に固めさせなさい! それから本局に残っている武装局員を一個小隊、第二格納庫へ」
『了解!』
「それと、リオ=ブレイズフィード提督は? アースラが本局にある以上、居るはずなのに……」
『リオ=ブレイズフィード提督は捜索中ですが、まだ……』
「とにかく、急いでちょうだい」
『了解!』

疲れたように息をついて1人の提督が各方面に指示を飛ばしながら足を運ぶ。向かう先は第二格納庫の内部が見下ろせる管制室。管制室はここから走れば一分もかからない場所にある。ミントグリーンの髪を揺らしながら提督、リンディ=ハラオウンは歩きながら頭の中で幾つか思考を巡らせた。

(格納庫に侵入したということは、恐らく侵入者の目的は次元航行船の奪取。レオナールに真っ直ぐ向かっている辺り、試験運用中のアルカンシェルが装備された事がどこかから漏れたようね……)

はやて達がルシファーと交戦を始めてから直ぐ。本局にもまるで見計らっていたかのように襲撃が入った。アースラを降り、本局でデスクワークをしていたリンディは襲撃の報告が入ると同時にこのように指示を飛ばしていた。
僅かに目を厳しく細めて目の前の管制室の扉が開く。中では数人の管理局員が慌ただしく動いており、その先のガラス張りの壁から『レオナール』を見下ろせるようになっている。リンディに気がついた1人の局員が、作業を止めてこちらに敬礼する。リンディも敬礼を返すと、周りも彼女に気づいたらしく慌てて敬礼をした。

「状況は?」
「はっ。現在、侵入者は整備員達を気絶させた後、アルカンシェルを試験搭載したXV級次元航行船『レオナール』に侵入し、ブリッジを奪取。レオナール内部にいた局員を全員艦内から追い出し、レオナールには侵入者しかいません」
「レオナールとの通信は繋がるかしら?」
「現在、繋ごうとしていますが、向こうからの通信拒否が出されており、それを解除しているところです」
「(リオがいないのが痛いわね……) 侵入者の数は?」
「レオナールの乗員達の証言からですが、数は3人。十代前半の少年、少女と、二十代前半の女性です」

局員の情報と先日クロノが家で見せてくれた敵のデータの一部が一致して、侵入者が彼女達なのだろうと確信する。
リンディが指示を飛ばそうとした時、彼女の声を通信士の動揺した声が掻き消した。

「レオナールから通信が!」





XV級次元航行艦船『レオナール』内部のブリッジ。
鮮やかなオレンジ色の髪を揺らしながら、セルマはコンソールを叩いていた。緑色の瞳に幾つものモニターが映っては消え、映っては消えていく。ブリッジには他にイリアが彼女の相棒『ミョルニル』を肩に担いで、カイルが『含光』を手にして、セルマの後ろに立っていた。セルマの正面に現れる無数のモニターにカイルが感心したように声を上げる。

「すげぇ〜。パスワードとかどうしたの?」
「レヴィンの電気を応用すればそんなもの朝飯前よ」
「レヴィンって、確か精霊の……?」
「そ、雷の精霊。それより、こっちはちゃんとやっているんだから邪魔が入んないように見張っててよね。あんたの要望で局員全員殺さないで追い出したんだから」

振り向かずに言い放つセルマにカイルは「分かってるよ」と軽く口を尖らせた。

「でも、ウィル兄ならきっとこうしてた……」
「ウィル、ねぇ。あんた、ウィルにべったりなのはいいけど、それに私達を巻き込まないでくれる?」
「べったりって……」
「違わないでしょ。言っておくけど、これからの戦いで誰も殺さないなんてくだらない事考えているんだったらこの計画から下りなさい」
「なっ……!?」

セルマの言葉にカイルとイリアがセルマを見る。ただし、カイルが驚愕を顔に貼り付けているのに対して、イリアの表情には感情がない。セルマはコンソールを打つ手を止めると座ったままカイル達に振り返った。普段の軽い調子は無く、冷たいものが宿っている瞳に射抜かれて背筋に悪寒が走る。

「それだけこの計画が重要なのよ。この計画に誰かを殺さないなんて考えている甘ちゃんは要らない」
「あ、甘ちゃんだと!」
「犠牲を出さないで目的を果たそうなんて妄想よ。あの混沌を宿す子みたいに絶対的な力を持っていれば別だけど、あんたがそんなこと出来るわけ無いじゃない」
「そんなこと、やってみなきゃ分かんねぇじゃねえか!」
「別にあんた達がそれで勝手に死のうが私には知った事無いわ。だけど、この計画に私は全てをかけているのよ。それをあんた達の勝手なことで潰されるなんて冗談じゃないわ。それなら、最初から降りてくれたほうがこっちとしては助かるわ」

冷たい瞳と底冷えする声で淡々と話すセルマにやや怯んだように一歩後ろに下がる。イリアは相変わらず表情も変えなければ身動き一つしない。
そんな二人の様子にセルマは目を細めたと思うと、再び正面に向き直りコンソールをたたき始めた。浮かび上がっていたモニターが次々と現れては消えていく。

「とにかく、あんた達が計画の邪魔になるようだったら、私は貴方達を殺すわ。これは警告よ」
「……………………」
「この計画にかけられている思いを、考えてみる事ね」

それだけ言うとセルマはカイルには目もくれず、最後のモニターを消して、通信画面を開いた。通信画面の先には戸惑いながらこちらに視線を向けている管理局員の姿。

「はーい、管理局の皆さん♪ こちらはレオナールブリッジよ」

先ほどの態度とは一転して、明るく声を上げるセルマ。先ほどカイル達と会話した時の様子は微塵も見せずに、にこやかに笑みを浮かべている。

「突然だけど、そこに提督クラスの人っているかしら?」
『――――時空管理局本局提督、リンディ=ハラオウンです。貴方達の要望は何かしら?』
「流石提督、話が早いわね。こっちはこの船、『レオナール』を借りるだけよ。正確にはこの船に搭載されているアルカンシェルを、ね」
『……アルカンシェルは小規模の組織が持つには余る物よ。そう簡単に渡すわけには行かないわ』

厳しい表情を崩さないまま予想通りの返事をするリンディにセルマは、そりゃそうよね、と小さく呟いて目を細めた。

「無論、こっちもあっさり渡してもらえるとは思っていないわ。ただ、これからレオナールを奪還するために『あること』をするわ。なるべく被害は抑えたいっていう奴がこっちにもいるから、今すぐ局員をレオナールから離れさせろって事を言っておくわ」
『あることですって……?』
「答える義理は無いわ。それじゃあね、警告はしたわよ」

言うだけ言って、セルマは一方的に通信を切る。警告はしたものの、管理局が大人しくそれに従うとは思えない。準備を早める必要があるだろう。

「カイル、ディメンションリンクはセットできた?」
「ああ。座標軸、転送用の魔力、その他もろもろ全部終わってるから、あとは起動させるだけ」
「イリアちゃん、艦内と周辺に人影は?」
「周辺にさっき追い出した人達がいるけど、ディメンションリンクの範囲外。艦内は私達三人しかいないよ」

イリアが近くの椅子に座ってレオナール艦内の地図を表示させる。レオナール艦内のクルーの部屋など描かれている中、ブリッジに三つの点が赤く点滅していた。

「そっか。うん、それじゃあとっととやりますか」

言って、カタカタと高速でコンソールをたたき始めた。先ほどとは比べ物にならないほどのモニターが現れては消える。もはやカイルの目では何をやっているのかさっぱり理解できない。
それから数秒後。セルマのコンソールを叩く音が止み、静寂が戻る。セルマの目の前のモニターにあるのは一つの確認画面。

『ディメンションリンクを起動させますか?』

セルマは躊躇わずに起動のためのボタンを押した。
ディメンションリンクが起動した影響でレオナールを艦内、外装ともに白い光で埋め尽くされる。

「さて、これでとりあえずミッション成功ね」

ディメンションリンクを起動させて一息ついたセルマは何気なくちらりと脇に表示してあったデータを見た。
表示されているのはレオナールに搭載されたアルカンシェルのデータ。モニターのアルカンシェルのデータの上に、何か警告のような文字が表示されているのに気がついたセルマはぼんやりとその文章を読み始める。

(どうせ、ロックとか何かでしょ……)

エドガーから指示されたミッションを終え、一息ついてそんなことを考える。
最初の文字で予想通りロックの警告だと言うことは分かった。アルカンシェルは使い方によっては艦船一隻をやすやすと沈める危険な武装である。当然、悪用を防ぐためにロックは掛かっているが、セルマにとってそれは障害と言うほどのものでもなかった。
雷の精霊『レヴィン』の力を使う事によって彼女は電子ロック、パスワードその他もろもろを全て力技ではあるが解除する事が出来るからだ。

(一応、どんなものか見ておこうかな)

コンソールをカタカタと短く叩いてロックの詳細を表示させる。表示されて上に流れていくプログラムをぼんやりと眺めていく。

(ん?)

流れるプログラムの文字に違和感を覚えた。そのまま眉を顰めたまま最後まで文字の列を読む。最後の列に記されていたのはプログラムとは全く関係ない、恐らくセルマ達に向けられた文字。

『Work hard as far as possible. (精々頑張れ)』
「ちっ!」

苛立たしく舌打ちをしてコンソールに手を伸ばす。しかしセルマの手がコンソールに触れる前に、レオナールを包んでいた光が弾けた。





----後書き----

ゼロ「本作品を読んでいただき、ありがとうございます」

悠木「よーやく終わったか」

ルシ「長かったな・・・・・・」

ゼロ「馬鹿みたいに長かったですねぇ」

悠木「やっと決戦に進む、か」

ゼロ「でも、最終決戦の前に二、三話挟むらしいですよ」

悠木「(ぷち) あ、い、つ、はああああぁぁぁぁぁ!!」

ルシ「落ち着け」

悠木「これが落ち着けるか!」

ゼロ「つまり、悠木はちゃんと終わるのかが心配なんですね」

悠木「考えてみろ。あいつがここに初めて投稿したのが二年前だぞ。一体いつまで続けるつもりだ」

ルシ「あいつが納得できるまでだろう」

悠木「そもそも終わらなかったら意味ねえだろ!?」

ゼロ「何でも二部の構成もそこそこ出来ているけど、かなり長引くようなら一部で終わらせることも考えているとか」

ルシ「まぁ、中途半端になるよりはマシだが……」

ゼロ「そこら辺は続編を希望する人がいたら、続けるらしいです」

悠木「何でも良いからとりあえず一部を終わらせろ」

ゼロ「それが当面の目標ですよね」

ルシ「終われば良いがな」

悠木「フラグ立てんなあああああああああ!!」

ゼロ「そ、それでは次回もよろしくお願いします」





BACK

inserted by FC2 system