「ゼロはオーバーホールするのは初めてだっけ?」
「はい」
「今回はレイジングハートやバルディッシュとかもいるから待っている間話し相手には困らないと思うよ」

ユウとゼロ、なのはが他愛のない会話をしながら廊下を行く。三人は今デバイスのオーバーホールのためゼロとレイジングハートをマリーの元へ持っていくところだ。ちなみにエクスとソウルは先に向かっている。

「一人一人するんですか?」
「うん、一遍にするより1つずつの方がちゃんと見れるからね」
「まあ、問題はなさそうだけど一応、ね」

三人が廊下を歩いていると反対方向からユーノが来た。

「あ、ユーノ」
「こんにちは」
「こんにちは。どうしたの?」
「今からゼロとレイジングハートをマリーさんのところに持っていくの」

なのはの言葉を聞くとユーノはああ、と納得したように頷く。

「デバイスのチェックか。ゼロとレイジングハートはしっかりと検査を受けてきてね」
「はい!」
『問題ありません』
「うん、良い返事だ。それじゃあね」

レイジングハートとゼロの返事に満足するとユーノはそのままなのは達の脇を通りすぎようとした。――――が、くんと後ろに引っ張られた。首を傾げながら後ろを向くとなのはがユーノの服の裾を引っ張っている。

「えーと、なのは?」
「あ…ご、ごめんね!」

なのはは自分のしたことに気が付き、慌てて手を離した。

「いや、いいけど…。何か僕に用があるの?」
「え!?え、えーと、休み…そう!ユーノ君今度の休みはいつ?」
「いつも何も休暇を貰えばすぐにでも休めるけど…」
「あ…そ、そうだよね…」

なのはがしゅんと俯く。耳を澄ませば、何を訊いているんだろう私、と呟いている。ユーノはなのはの様子を見て1つのことに思い至った。

「なのは、次の休みの時に会いたいの?」
「ふぇっ!?え、いや、その―――」

あたふたするなのはを見てユーノは首を傾げる。ユーノとしては直接会わなければならない用事なら付き合うという意味で言ったから彼女が何故慌てふためくのか分からない。

「えっと、だから、私は、その―――」
「なのは、そんなに慌ててたら何も分からないよ。はい、深呼吸」
「え、う、うん。すーはーすーはーすーはー。はぁ」
「落ち着いた?」
「う、うん」
「それで、どうかな?次の休みの時に会いたい?」
「え、う〜〜…うん」
「分かった。それじゃあ次に休みを取る時に連絡頂戴。僕もそれに合わせるから」
「あ……うん!」

満面の笑顔を向けるなのはとその笑顔を見て優しげな笑顔を浮かべるユーノ。その様子を廊下の端でずっと見ていたユウはげんなりしていた。―――が、

「――――――――」

その様子を首を傾げながら見るゼロの姿もあった。




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「2人は付き合っているの?レイジングハートの恋心」




マリーの元に行った時には既にエクスとソウル、ベルカ組とレイジングハートを除くミッド組のデバイスは揃っていた。そして今はマリーを含む技術部の人が一機一機チェックをしているところだ。ちなみに今はグラーフアイゼンの番。

「エクス、ソウル。少しいいですか?」
「ん?何かな?」

ゼロがふよふよ漂いながら人間形態のエクスとソウルに廊下での出来事を説明する。

「それで思ったんですが、あの2人は付き合っているんですか?」
「ふむ、難しい質問だね」
「ゼロもそういうことに興味を持つようになったんだね」
「興味があるというか、ただ気になったので」
「それを興味を持つって言うんだよ」
「はぁ…それでどっちでしょうか?」

エクスとソウルが同時に腕を組んで考える。いや、ソウルはいつも腕を組んでいるから正確にはエクスだけが腕を組んだのだが。

「ソウルの言うとおり難しいね。あれは付き合っていると考えるのか…」
「だが、本人達に自覚がないのならそうは言わないのではないか?」
「確かにそうだけど、周りから見て分かるんだから―――」
「「う〜〜〜ん」」

ソウルとエクスは意見を交し合うがほとんど決まらない。これは解決しないなと悟ったゼロはベルカ組に意見を聞くことにした。

「あの〜、少しいいですか?」
「ゼロ、どうしたんですか?」
「少し訊きたいことがあって…」
『俺らで答えられることだったらいいぜ』
『なんでも訊いてみて』

ゼロは暇をもてあましているリインとレヴァンティン、クラールヴィントに廊下での出来事を説明する。

「――――、ということであの2人は付き合っているんですか?」
「むむむ……」
『これは……』
『どういったものかしらねぇ…』

ゼロの予想通り3人とも難しい声を上げる。

『俺の意見としては、傍から見て皆分かるんだから付き合っているんじゃないか?』
『でもねぇ、やっぱり付き合うっていうのは本人の意思があって初めて言うんじゃないかしら?』
「リインには分からないです〜〜」
「……………」

ゼロはみんなに気づかれないように小さく息をつく。エクスとソウルの意見とほとんど同じで解決する空気が全く見えない。

「というか、私たちが考えなくてもなのはさんといつも一緒にいるレイジングハートに訊けばいいんじゃないですか?」
「あ」
『そういえば』
『そうね』

リインの意見に3人は気づいたように声を上げる。そうすると直ぐにゼロはレイジングハートの元へと向かった。

「レイジングハート、少しいいですか?」
『はい、どうしたんですか?』
「実は――――」

三度目の廊下での出来事を話し、みんなに訊いた質問をする。ゼロの説明の最中に答えが知りたくなったのか後ろにはエクスとソウル、レヴァンティンとクラールヴィントを抱えたリインがいる。

「―――というわけであの2人は付き合っているんですか?」
『現時点では付き合っているとは言えませんね』

即答。みんなの疑問をレイジングハートはあっさり答えてしまった。

「え、な、なんでですか?」
『現時点では彼女達は自覚がないというところですね。マスターはなんとなく自覚が芽生えつつありますが、ユーノの方は全く自覚がありません。最悪、ユーノは良い友達程度にしか思っていない可能性もあります。それに本人達にに聞いたらまず否定するでしょう』

レイジングハートの見事な説明にゼロ達は感心した。

「それにしてもよく分かったな」
『長い付き合いですから。マスター達の身の回りの状況も把握する必要がありますし』
「でも、普通それだけじゃあ分からないと思うよ。やっぱりレイジングハートもそういう経験があるのかな?」
『えっ、いや…その…』

何気なく聞いたエクスの言葉にレイジングハートは慌ただしく点滅する。その様子にエクスはにやりと笑みを浮かべる。

「何々、やっぱりあるの?そういう経験」
『え、えっと……』
「私聞きたいな〜。ねえ、教えて♪」
『あの…その…』
『これこれ、そういじめるでない』

レイジングハートがうろたえている時に、エクス達の背後から老人の声が聞こえた。誰かと思い振り向くとそこにはミニチュアのハンマーが置いてある。

《アイゼン老(orさん)!》
『うむ、時にエクスよ。本人が話したくなさそうなのじゃ、そういう時は無理に言わせるものではないぞ』
「というか、いつ帰って来たの?」
『大体『現時点では……』からじゃのう。今はわしと入れ替えでバルディッシュが検査を受けておる』
「結構前のところからいますね…」
『そ、そうなんですか……バルディッシュが……』

ほっと息をつくように呟くレイジングハートの反応にゼロは少し気になる点が浮かんだ。

「あれ、もしかしてレイジングハートって………」
『!!っち、違いますよ!べ、別に私はバルディッシュのことを好きだなんて思っていませんよ!』
「へ〜、バルディッシュのことが好きなんだ〜。しかも経験って現在進行形だったんだね」
『あ、あうあう〜〜〜〜』

へぇ〜とみんな(リインとゼロ除く)の視線がいやらしくなる。レイジングハートは観念したように話し始めた。

『〜〜〜…そうです。私はバルディッシュが好きです。だってバルディッシュは格好いいじゃないですか」
「うんうん、そうだよね〜。具体的にはどの辺りが好きなの?」
『ええと、その無口だけど優しいところとか間違っていたらしっかり教えてくれるので…』
「バルディッシュはしっかりしていますからね〜」
「真面目ですしね」
『でも、バルディッシュは真面目すぎるんです。いつも仕事で会える機会が少ないですし、こう全然会えないと本当に寂しくて壊れちゃいますよ』
『いや、うさぎじゃああるまいし…』
『でもでも、本当に会えないんですよ。バルディッシュとはいつも会えないのに、マスターはユーノと毎日のように会っていますし…本当にもう…私の気持ちも知らないで2人でいちゃいちゃとして…。私もバルディッシュとああいう風にい、いちゃいちゃしたいです』
「だが以前君とバルディッシュに擬人化システムを組み込んだじゃないか」
『はい。ですからあの時は本当に幸せでした。出来るならあのままずっといたいと思ったりもしました』

しみじみと語るレイジングハートの言葉にゼロ達は途中で言葉を挟みながらも聞いていた。最初のからかい半分の態度はどこに行ったのか皆真剣だ。

「技術部に頼み込めばまた作ってもらえるんじゃないか?データは保存してあるんだ、もう一度人間形態になることなど訳ないだろう」
『いえ、忙しいところに私用で頼んでは悪いですし』
「試しに訊けばいいよ。何事も行動に移さなきゃ」
『向こうから来ないなら自分から行けよ』
『あなたもこのままは嫌なんでしょう?』

エクスの言葉を後押しするようにレヴァンティンとクラールヴィントが続ける。

『………はい、頼んでみます』
『何をだ?』

レイジングハートが決意した時、後ろから低い男性の声が聞こえた。振り向けばそこには金の台座が―――

『ば、バルディッシュ!?!?』
「い、いつからいたんですか!?」
『つい先ほどからだ。なにやらレイジングハートが何かを頼むようだが、誰に何を頼むのだ?』
『な、何でもないです!!き、気にしないでください!』
『?、そうか…』
「ひそひそ(どうやら聞かれてないようだね)」
「ひそひそ(危なかったです〜。もし聞かれていたらレイジングハートがオーバーヒートしちゃうところでした)」

バルディッシュを除く皆がほっと息をつくと、マリーが入ってきた。

「それじゃあ次はレイジングハートの番だね」
『あ、はい。よろしくお願いします』
「うん、それじゃあ持っていくね〜」
『あの、お願いがあるのですが……』
「ん?珍しいね、それじゃあそのお願いは検査中に聞くよ」
『あ、ありがとうございます』

扉の向こうへ消えるマリーとレイジングハートを皆は温かい目で見守っていた。そしてその後はレイジングハートが戻ってくるまでは皆そわそわするだけだった。


それから十数分後、レイジングハートが戻ってくると皆一斉に寄って行った。

「どうだった?」
『試作タイプでいいのならいつでもいいと…』
「良かったですね〜!」
「あとは使う機会だけど、それはなのはちゃん達に頼めば何とかなりそうだね」
『はい、皆さん助言ありがとうございます』
「気にしない気にしない。ところでゼロ、向こうでマリーさんが呼んでいるから早く行ってきなよ」
「あ、はい。行ってきます」

ゼロはマリーが呼ぶ声を聞くと扉へふよふよ向かっていった。その後、ユウ達が迎えに来るまではレイジングハートとバルディッシュの関係を発展させるための考えを各々が考えていた。




全員の検査が終わりユウ達が迎えに来て家に戻る途中、エクスは気になる点が浮かびソウルに尋ねた。

「ひそひそ(ねぇ、思ったんだけどAIってあそこまで感情を持つものなのかな?)」
「ひそひそ(……これはあくまで推測だが、あれは擬人化システムを組み込んだ時の後遺症みたいなものだろう)」
「ひそひそ(1度人になったからそのときに感情が芽生えたっていうの?)」
「ひそひそ(あくまで推測だ。もしかしたら普段からその感情を持っていた可能性もある)」

2人でちらっと横にいるなのはとフェイトを見る。正確には首に掛けられているレイジングハートと手に持たれているバルディッシュを、だ。

〈あ、あのバルディッシュ…その…以前2人で人に変身したじゃないですか。あの時、そのどういう感じでしたか?〉
〈む?特に何も感じなかったが、そうだな…強いて言うなら、サー達の視線でなかなか面白かったな〉
〈そうですか…もう一度人に変身したいと思いますか?〉
〈もう一度も何もきっとこの先人に変身することはあるだろう。少なくとも一回は必ずだろうな〉
〈えっ、それって…〉
〈サー達が命令すれば変身するし、仕事などでやむを得ない場合もある。そういう時はこの先最低一回はあるだろう〉
〈あ、そういう意味ですか…〉
〈他にどんな意味があるのだ?〉
〈もういいです。―――――ばるでぃっしゅのばか…〉
〈?〉

なんて会話が展開されているだろうということは冷静に予測できた。

「ひそひそ(バルディッシュも後遺症が残っていると思う?)」
「ひそひそ(同じものを組み込んだから、残っているとは思うが…)」
「ひそひそ(どう見てもいつもと変わらないじゃん!)」
「ひそひそ(そう言われてもな……)」
「ひそひそ(こうなったらもう一度使わせるとか…)」
「2人して何をこそこそしているの?」

ユウが2人のひそひそ話を聞き、振り向く。

「な、なんでもないよ」
「お前が気にすることじゃない」
「ふ〜ん、そう…」

ユウが首を傾げながら前を向き直すと、ゼロがユウに話しかける。

「ユウは今誰か好きな人はいますか?」
「いきなりどうしたの?」
「少し気になったので」
「んー、恋愛感情としてはまだいないかな。そういうゼロはどうなの?」
「僕はみんな好きですよ。ユウやエクス、ソウル、なのはさん、フェイトさん、はやてさん、リイン…今まで会った人で嫌いな人はいません!」
「そう…その気持ちは大事にしてね」
「…ユウ?」

少し俯きげに呟くユウの言葉の意味が分からずゼロは首を傾げる。ユウは直ぐに顔を上げ、笑顔を向ける。

「さ、早く帰ろう」
「はい」




----後書き----

カークス:「皆さん読んでいただきありがとうございます」

ゼロ  :「今回は文明さんがリクエストしてくれたので書いたんですけど…」

カークス:「なんともまぁ、リクエストにお答えできていないというか…」

ゼロ  :「なのはさんとユーノさんの関係を聞くところまでは一応出来たんですけどねぇ…その後のレイジングハートの愚痴なんか一行あるかないかしか書けてませんね」

カークス:「いやまぁ、愚痴となると「自分が好きな人に会えないのになのはが会っている」ってところとかぐらいしか思い浮かばなくて」

ゼロ  :「というか前半と後半で少し話の中心が変わっていますね」

カークス:「最初はゼロで後半がレイジングハートだからね。正直ゼロの疑問はレイジングハートの答えで解決しちゃったからね」

ゼロ  :「見返してみると、今回初めてベルカ組のデバイスが出てきましたね」

カークス:「本編でほとんど出ていないベルカ組をここで出そうかなって思って。デバイスだけだけど…」

ゼロ  :「本編でベルカ組を出す予定はあるんですか?」

カークス:「少なくともベルカ組の中でシグナムとヴィータは目立つと思うよ。シャマルとザフィーラは…まぁ後半に出てくると思う」

ゼロ  :「最初の2人は戦闘専門で後半の2人は補助が得意ですからね〜」

カークス:「とりあえず出せる時が来たら出すつもり」

ゼロ  :「ところでレイジングハートとバルディッシュの会話の中にもう一度擬人化するとありますけど予定はあるんですか?」

カークス:「正直分からない。リクエストがあればやるし、なかったらやらないかも…」

ゼロ  :「いい加減ですね。というか、リクエストはこれからも受けるつもりなんですか?」

カークス:「リクエストはこれから随時受け付けにしようかなと思う。書くのは遅くなるけど…」

ゼロ  :「その場合本編はどうするんですか?」

カークス:「本編→リクエスト→本編…の順番で書いていこうと思う」

ゼロ  :「まぁ、リクエストがくればの話ですけどね」

カークス:「痛いところつくね。とりあえずリクエストは受け付けるのでどんどん言っちゃってください」

ゼロ  :「ない場合は本編とNG集を進めていきます」

カークス:「それでは最後に、文明さんへ。ちゃんと書けていたか感想いただけたらと思います。不満等等は真正面から受けます」

ゼロ  :「さて次回は本編。どういう風に進めるんでしょうか?」

カークス:「ユウの嘱託試験。クロノとの対決だけど一体どうなるか!?もう、書き終わっているけど」

カ&ゼ :「「それでは、失礼します」」





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