「はやて、そろそろ休暇でもとったら?」

切欠は頼りになる部下/幼馴染/親友との、食事中に交わされたそんな一言やった。

「・・・なんやて?」

あたしは一瞬何を言われたのか、わからへんだ。
思わずスパゲティをフォークで丸めていた手を途中で止める。
九課―いや、此処は六課や。
旧家―あぁ、そういえば海鳴の家は今どうなっとんのやろか?
九科―どんな動物やら植物の何類九科やねん?
などと、我ながらつまらないにも程がある一人ノリツッコミをしてから、あたしはよ
うやく現実を見つめる。

休暇―ようするにお休み、ってことや。

いや、確かにあたしは此処―機動六課―を立ち上げてから一ヶ月とちょい、連続勤務
やけれど。
それでも適度に休みとっとるし、疲労なんて昔の特別捜査官やっとった頃より少ない
くらいやとさえ思う。
・・・書類捌くんは面倒臭いんやけどなー・・・

「休暇言うたって、あたしはちゃんと休んどるで?」

言って、あたしはフォークを回すことを再開。
そんで綺麗に纏まったスパゲティを口へと運ぶ。
・・・うん、何時食べても此処の食堂はええ仕事してくれとる。
麺は柔らか過ぎず、硬すぎず、それでいてしっかりと芯が通っていて噛み応えのある
アルデンテ。
絡みつく真赤なトマトソースは見た目も派手過ぎず、鮮やか。
具は主に新鮮な魚介類を中心として、生臭さを微塵も感じさせず食欲をそそる。
―――俗にいうペスカトーレである。地球の味、ってええよなぁ。

そんなどうでもええこと考えとったら、

「いやそうじゃなくて。ちゃんと『自由な時間』として纏まった休みを、って意味だ
よ」

やや口調を厳しげに、諭すようにして一緒に食事を摂っていた部下/幼馴染/親友の
フェイトちゃんは言った。

「そないなこと言うても・・・」

一応、コレでもあたしは機動六課のトップや。
一部隊の一番偉い人・・・自分でいうのもなんやけど。
そんなポジションにおる人間がそうほいほいと休みなんか取っとったら示しがつかへ
んやん。
ただでさえ本局のお偉いさんらから『賢しい小娘が』とか陰口言われとんのに。

「いいから。はやてはこのところ頑張りすぎだし、そろそろ休みを貰ってもいいと思
う」

うん、まぁ頑張ったあたりはそうかもしれへん。
ついこないだの初出撃を始めとしていろいろな仕事があった。
レリックのレポートだのガジェットの解析結果だの事件の顛末の報告書だの、
etc・・・

とにもかくにも、あたしが処理すべき仕事が大量に舞い込んできたのは確かやった。

具体的には紙の書類束が一メートル近く積まれたんが三つくらい。資源の無駄遣いや
ろ、コレ。
泣き言を言っとれへんのもわかっとったけど、ここまで大量に仕事があると―しかも
期日が差し迫ってる―流石に厳しかった。
まぁなんとか仕上げたけれども。徹夜で。
・・・この頃、肌がかさついたりすることがたまにあるんよ・・・

「うーん・・・でもなぁ・・・あたしはみんながおるだけで元気出るから大丈夫やで?」

確かに、纏まった、『自由な時間』として休みを取れるなら取りたい、というのが本
音や。
そろそろ日用品の買出しとかせなあかんしな。
でも、あたしが此処を離れたらどうなる?
指揮系統はどうなる?書類判は誰が押す?リインはどうする?

そんな仕事のコトばかり考えとったら、珍しくフェイトちゃんはご立腹のご様子。
流石に焦れたのやろうか、怒鳴るように、―それでいて諭すように―あたしにび
しっ、と指を突きつけつつ。

「ともかく。はやては明日はゆっくり休むこと!」

「は、はい・・・あ」

思わず返事してしもた。
・・・これじゃ、どっちが上司なのか。

まぁ、そんなこんなで。
あたしの休日は訪れたのであった。




ちなみに、リインを筆頭に守護騎士のみんなはフェイトちゃんの意見に大賛成らし
く、あたしの休日を快諾してくれたらしい。












〜八神はやての休日〜









さて、本日は記念すべき・・・なんやろうか。六課立ち上げからあたしの初の休暇や。
とはいえ、実際にこう・・・休暇と言われてもピンとこうへんのが現在の状況で。
・・・時間の無駄遣いやなぁ。
買出しの品は確かにあったけど、それは些細なもんやった。
例えば冷蔵庫のアイスとか。例えば洗濯機用の洗剤とか。
・・・一時間もあれば余裕やん。この買い物。
あたしはそう思って、午前中に済ませてしまった。
・・・余計に暇になってしまった。
ほんなら久しぶりに訓練でも・・・とここまで考えてからやっぱりやめる。
あたしは何処のXV級新造艦の艦長さんやねん。
趣味・訓練とか。あたしそんなん嫌やで、流石に。
なら、誰かと出かけ・・・みんな仕事やん。
シグナムやヴィータはもちろん、シャマルもザフィーラも、リインですら六課のほう
で仕事中や。
誰か一人くらいはあたしと一緒に休み取るかと思ったのに、全員そうはしなかった。
リインですら。
・・・まぁ、みんな気ぃ利かせてくれたんやろうな。
なのはちゃんもみんなの訓練見とるやろうし、あたしに休暇を申し渡したフェイト
ちゃんも今日は一緒らしい。
・・・あの二人こそが休むべきやとあたしは思うんやけどなぁ・・・
じゃあ、後は何をする?
せっかく貰った休暇やし、あたし自身はそんなに疲れてなんかおらへん。
まさかこのままずっと家の中で過ごすわけにはいかへんやろうし。
・・・・・・ちょっと、久しぶりに遊びに出てみよかな。
そう考えて、あたしはもう一度クラナガンの市街地へと足を運ぶのであった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――



機動六課・休憩室。

其処に一人の男の姿と、小さな少女の姿があった。
男はソファにどっかりと腰を落とし、ダレた姿で紙コップに注がれているコーヒーを
啜る。
少女は目の前にモニターを呼び出し書き込みをしている。
内容はどうやらこの前の事件の報告書・・・いや、個人的な日記みたいなモノだった。

「・・・よかったんすか?」

男は徐に口を開く。
残り少なくなったコーヒーをまた口へ運ぶ。
ずずっ、と液体を啜るはしたない音。

「何がですー?」

応えるのは小さな少女。
文字を書き込むキータッチは速い。
男のコーヒーを啜る音は完璧にスルーしている。

「部隊長・・・ご主人様から離れていて」

男は、この少女がどれほど部隊長に懐いているか知っている。
というか彼女と少女を知る者は皆そうであろう。

「・・・本当はちょっと寂しいです。わたしとはやてちゃんは、ずーーーっと一緒でし
た」

少女は本当に寂しげに言葉を洩らす。

「けど」

「けど?」

男は疑問符を浮かべながら、コーヒーを飲み干した紙コップを握りつぶす。
少女は柔らかく微笑みながら、キータッチのスピードを緩めずに答える。

「はやてちゃんは、優しいですから。周りに誰かが居ると、自分よりその誰かの方に
注意を向けてばっかりです」

変わらずに微笑みを浮かべる少女。
男は紙コップをゴミ箱に向かってシュートする。

「つまり?」

カシャ、と紙コップは見事にゴミ箱へと吸い込まれる。

「わたしが付いて行ったら、はやてちゃんは自分よりわたしを優先します。それはは
やてちゃんのお休みじゃ無くなりますから」

少女はその日記を書き終えたのか、モニターを閉じる。
その顔は、変わらずに柔らかい笑みを浮かべ続けている。

「なるほど・・・考えてるんですね、リイン曹長」

「それほどでもないですよ、ヴァイス陸曹」

そんな会話があったとか。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「おぉ・・・この辺はあんま変わってへんけど・・・む、あそこの雑貨屋さん潰れたんか
・・・」

クラナガン市街地。

時たま車を使って、この辺りを通ることはあってもじっくりと眺める機会はあらへん
だ。
一応クラナガンに住んでるとはいえ、ほとんど管理局のほうに勤め続けとったせい
か、ここら辺の地理にはあまり明るくない。
それでも、昔見た光景と照らし合わせながら市街地を散歩する。

今日は世間一般からすれば平日で、人通りは比較的少ない。
その気になれば走り抜ける程度の、適度な交通の流れを縫うようにしてあたしは進
む。
時たま洋服屋さんの大きなウインドゥに飾られた服を眺めたりして、文字通りウイン
ドゥショッピングを楽しむあたし。

考えてみたらこんな日は久しぶり・・・いや、初めてかもしれへん。
あたしが魔法に出会って、地球におった頃も、今も、あたしの傍にはずっと誰かが
おった。
シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラたち守護騎士。
祝福の風の名を継いだリインフォース。
なのはちゃん、フェイトちゃん、アリサちゃん、すずかちゃん。友達。
いろいろな人らの顔と名前が次々に浮かんでくる。
せやから、こういう風に一人で出かけるなんてことは無かったと思う。
なんや、新鮮な気分やな。

「これはちょい、フェイトちゃんに感謝せなあかんかもな」

なんか、お土産でも買って帰ろかな。
あ、でもみんなクラナガンの・・・しかも市街地にあるようなもんで喜ぶか?
でもこういうのって気持ちが一番、って昔なのはちゃんが言うとったな。
うん。ならケーキでも買って・・・むしろあたしが作るか?
そのほうがきっと気持ちが篭ってる気がするし。

そんなことを考えながら、あたしは雑踏の中を歩く。

空には鮮やかな夕日が輝いていて、もうすぐで綺麗な月が空に浮かぶだろう、そんな
夕刻。

けど。

「ねぇ、キミ。俺とお茶しない?」

なんて、今や時代遅れにすら感じるナンパの台詞と共に思考は中断されてしもたけ
ど。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


どうしよう・・・

僕は割と真剣に悩んでいた。
この突然訪れた休日の使い道に。






無限書庫。

いつものように本探して、内容読んで、編纂して資料書いて、それを頼まれた部署に
届けて。
本当にいつも通りの仕事風景だったんだ。

ところが、である。
今日はどうやらそうもいかないらしい。

「・・・よし。じゃあ次は・・・」

一つの仕事を仕上げた僕は、これまたいつも通り次の仕事に移ろうとした。

その時である。

「ユーノ」

酷くドスの利いた、えらく恐ろしげな声に呼び止められた。
聞き覚え?あるに決まってる。
ここ数年、ずっと僕の補佐をしてくれている幼馴染の使い魔―アルフ―だから。
大変御怒りのご様子であるが。

「・・・ど、どうかしたの?」

ここまで彼女が怒っているのは珍しい。
彼女は短気ではあるが、それはすぐ怒るというより我慢が出来ない方の短気だ。
怒りに関しての彼女は、むしろ寛容であるとさえ言える。
伊達にエイミィさんの子育てを手伝ってきたわけでは無いらしい。
そんなことを考えていると、彼女の口から―僕にとっては―とんでもないことを告げ
られた。

「あんた、今からオフだ。出てけ」

・・・ワッツ?

「え・・・あの、アルフさん?」

いったい、何がどういうことなのか。
何故いきなり出てけ、なんて・・・

「いいから。ユーノ、あんたもう連続勤務何日目だ?」

そんなことを言われて、思わず考え込む僕。
えーっとたしか・・・

「・・・三日くらい?」

割かし適当に言ってみる。
多分、そのくらいだとは思うんだけど。

だが、アルフはますます不機嫌な顔になっていき。
ついには僕を怒鳴りつける。

「『三日くらい?』じゃない!!本日付で三倍の九日目だよ!!しかもほとんど徹夜
だし!!何処の赤い彗星かっ!!」

あぁ、それは怒りますよね。
昔はこれくらいが普通だった気もするけど、今じゃ結構書庫の整理が出来たおかげで
そんなことは少なくなってきている。
ひとえに周りの司書たちが優秀なおかげだと思う。

「あー・・・でも、ほら。今は結構仕事が・・・」

溜まっているんだけど・・・
そう続けようと思ったんだけれど、その前に彼女は―端的に表すなら、アレは鬼の形
相ってやつだろうなぁ―大声で叫ぶ。

「いいから!ユーノは働き過ぎ!!いい加減に休みを取れって言ってんだよ!!」

「はっ、はいっ!」

・・・はっ!?しまった、思わず。
そして僕は彼女に首根っこを掴まれ、無限書庫から放り出されたのである。




「しかしまぁ・・・どうしよう・・・?」

とりあえず管理局直営、クラナガンにある寮の自室に戻ってシャワーを浴び、服を着
替えて。
ざっと部屋を見渡す。
ほとんどこの部屋に戻ることは少ないためか、部屋自体は綺麗に整っている。
精々、うっすらと埃が積もっている程度で散らかっているわけでは無い。
・・・戻ってくるのは、―アルフの言う通りだとすると―十日振りということなのか。
通りで埃が積もるわけだ、と思いつつ掃除をして。
何か足りなくなったモノは無いか、と戸棚を調べていく。
おや、そろそろ食料が危ないかもしれない。
栄養剤とか、カロ○ーメイトとか。
・・・一応、僕の主食・・・栄養源なのでコレはピンチかもしれない。


そんなわけで。
休日に食料の買出しに出かけるなんて、主夫の姿そのものだなぁ・・・
なんて、軽く鬱に入りかけつつも、僕はクラナガンの市街地へと出向くのであった。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――



さて、どうしようか。

声をかけてきたのは、見るからに軽薄そうな男の人やった。
肩口くらいまで伸ばされた茶よりも金に近い髪。
その横から覗く耳にはいくつかのピアスが通されとって。
軽く着崩した衣服にも、纏わり付くようにアクセサリーがくっついている。

うん。正直に言おか。
どんだけ時代遅れやねん。
っていうかこういう人ってまだおったんかい。

自慢やないけど、あたしはこういう手合いの人らは何人も見てきた。
まだ地球におった頃、なのはちゃんやフェイトちゃんらと出かけると行く先々で大概
声をかけられた。
あたしらはそういうの嫌いやったし、適当にあしらうのが何時の間にか普通になっ
とった。
・・・というよりもむしろ、周りにおった男性陣のレベルが高かったんかもしれへん・・・
いや三人だけやけども。
一人は超がつくほどのエリートで性格も他人思いで優しかった。今は既に妻子持ちや
けど。
もう一人は頼れるお兄さんみたいな人やな。その妻子持ちの人の親友さんで、あたし
とも仲がええ。ホンマにお兄さんしとる。
あとの一人は・・・まぁなんや。女のあたしから見ても綺麗やと思えるほど整った顔立
ちやったし。こっちは今もフリーやね。

それはともかく。

今回もまた適当なこと言って逃げよ、とそう考えて。

「ごめんなさい、あたし今日はちょっと・・・」

そそくさとその場を後にしようとして。

突然ぐいっ、と腕を掴まれ、引っ張られた。
あんまりにも突然やったせいで、大した抵抗も出来ずにあたしはそのまま引っ張られ
る。

「えっ、ちょ?」

「んなつれないこと言わないでさぁ?ちょっと遊ぼうよ?ね?」

下卑た笑みを浮かべるナンパ男。

・・・うっわ。そういうことしようって考え丸出しかい。

正直、こういう手合いにはちょいと痛い目にあわせた方が後々ええと思う。
その方がきっと平和な気がするし。
まぁ痛い目、言うても大したこと無い。
精々お巡りさんにしょっ引かれる程度のことや。
あたしはいつも携帯している管理局の身分証を出そと思ったんやけど。

「僕の連れに、なにか?」

そんな声に、あたしも、ナンパ男も動きを止めてまう。
あたしはゆっくりと声の聞こえた方へと顔を向ける。

雑踏の中なのに、何故か其処だけ切り取られたようにポッカリと空いている。
其処に立っていたのは、女性顔負けの綺麗な顔立ちをした幼馴染の姿やった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



顔なじみの薬局に顔を出すと、いつもみたいに、いつも通りの種類の栄養剤を店長
直々に手渡された。
ついでにカ○リーメイトもダンボールごと購入、あとで一緒に送って貰うようにして
おく。
・・・なんだか、酷く哀しい気分が襲ってくるのは気のせいでは無いんだろうなぁ。

そんなわけで僕の用事はこれで終了。
後は特にすることも無いし、その辺りをぶらぶらしてから帰るとしようかな。


人々の雑踏の中、当ても無く彷徨う僕。

空には鮮やかな夕日が輝いていて、もうすぐで綺麗な月が空に浮かぶだろう、そんな
夕刻。


「へぇ・・・此処の雑貨屋さん、潰れちゃったのか・・・」

最近、市街地にはあまり来ないから、じっくり見る機会が無かった。
だから、僕は今こうして市街地を見て回ることがとても新鮮に感じられた。

今日は・・・平日だっただろうか?
どうも日にちと曜日の感覚がズレている。
・・・うん。流石にコレは拙いかもしれない。アルフが休みを取らせようとしたのも今
なら納得出来るかもしれない。
でもまぁ・・・この人通りの量は多分、平日だ。曜日まではわからないけど。
混み過ぎでは無く、それでいて十分な人の行き来がある。
きっと休日なら、もっと人で溢れかえるだろうから。

そんなどうでもいいことを思っていた、正にその時だった。

眼に入ったのは、茶・・・いや、どっちかというと金髪の、軽薄そうな男。
ソイツに腕を掴まれている茶色い髪の女性・・・いや、彼女は――――――

腕を掴まれている彼女は誰が見ても嫌そうな顔をしている。
そんな彼女を見て何故だか、胸の中でぐるぐると渦巻く感情・・・コレは多分怒りだ。

僕は、彼女の腕を掴んでいるあの男に怒りを抱いているんだ。

そんな手で、彼女に触るな。

そう思った時、僕は―――

「僕の連れに、なにか?」

男に対して声をかけていた。
僕の声に男は動きを一瞬止めただけ。
声に振り向いたのは男では無く、腕を掴まれている彼女。

他でも無い、幼馴染の八神はやてその人だった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「ユーノくん・・・?」

思わぬ姿に、あたしは呆然と動きを止めてしまった。
え、なんでこんな所にユーノくんがおんの?
彼はいつも無限書庫に・・・あ、もしかしてあたしと同じで今日休みやったんか?

「なんだよ手前、邪魔すんなよ」

ナンパ男はあたしに対してかけた声とはかけ離れた、ドスの利いた声でユーノくんに
向かってそんなことを言う。
対して、ユーノくんはナンパ男のそんな声は聞こえなかった、とばかりに近寄ってき
て。

「ごめん、はやて待たせた」

「え?」

一瞬、なんで謝られるのかわからへんだけど、次の瞬間。

《とりあえず、合わせて?》

心の中に直接響くユーノくんの声。
思念通話。魔導師同士の秘密の会話。
あたしはすぐにユーノくんが何をしようとしとんのか理解して。

「遅いで、ユーノくん!」

ナンパ男の腕を振り払って、ユーノくんに向かって走る。
そんで勢いでそのまま胸の中に飛び込むように抱きついた。
・・・いや、流石にコレはやりすぎたかもしれへん。
頭の中に、あたふたするユーノくんが幻視できる。
けど意外な事に、ユーノくんはあたしをしっかり抱き止めて涼しい顔をしている。

トクン。

・・・あれ?なんや顔が熱い。

トクン、トクン。

心臓の鼓動が早くなる。

トクン、トクン、トクン。

なんだかとても心地良い。

このまま、ずっとこうしていたいと思えるほどに。

意外にしっかりとした胸板に、そっと頬を寄せてみる。
返ってくるのは、筋肉の硬い感触と、暖かな体温。

「・・・はやて?」

ユーノくんがあたしの名を呼んでくれる。
たったそれだけなのに、なんでこんなにも満ち足りた気分になるんやろうか?

「うん?」

「あー・・・その。あの人、もう行ったみたいだから」

少しだけ困ったような、そんな声を出すユーノくん。
ユーノくんからしたら、『無理に抱きつかなくていい』と思ったんやろう。
けどな?最初は確かにやりすぎたと思っとったけど、今はあたしが好きでこうしとる
んよ。
でも、ユーノくんが嫌がっとんのやったら、これ以上は吝かやないよな。

「・・・そっか」

ゆっくりと身を離すあたし。
ユーノくんはじっとしたままや。

あたしたちは、互いに黙り込む。
ユーノくんは恥ずかしかったんやろうか?だから黙っとる?
あたしは別に恥ずかしかったとか、そういう訳やない。むしろ――――――

ややあって、ユーノくんが口を開く。

「・・・そういえば今日は、どうしたの?」

出てきたのは、当たり障りの無い、ごく普通の話。
あたしはそれに苦笑しつつも答える。

「ちょっと、フェイトちゃんに言われてお休み貰ったんよ。それでちょっとお散歩や
・・・そういうユーノくんは?」

ユーノくんもまた、苦笑しつつあたしの質問に答えてくれる。

「僕はアルフに言われてね・・・あとははやてと同じかな」

それがなんだか可笑しくて、あたしとユーノくんは互いに笑いあう。

「それにしても・・・なんや、奇遇やなぁホンマ」

「・・・そうだね」

なんせ、あたしら二人とも、休みを言い渡したのが部下で、言い渡されたのが上司
や。
それもフェイトちゃんとアルフさん、っていう主従に。

それにしても、ユーノくんとこうやって話すんは何時振りやろうか?
もの凄く久しぶりな気がするのは、きっと気のせいや無いやろう。



人々の雑踏は数が減って、夕日はすっかり沈み、空には綺麗な満月が浮かぶ。
市街地に林立するビルのネオンが眩しいくらいの光を振り撒いている。



いつの間にか、あたしはユーノくんと並ぶようにして道を歩いていた。
別に手を繋いだり、腕に抱きついてるわけやない。
一定の距離を保ったまま、同じ歩幅で歩いているだけ。
それでも、こうしている時間が、たまらなく幸せやった。

「・・・もし、よかったら・・・」

ユーノくんが、呟くようにして―あたしにはしっかり聞こえる―言う。

「・・・なに?」

ユーノくんは、少しだけ恥ずかしそうにしていて。

「食事でも、どう?」

「・・・喜んで」

あたしは笑顔で快諾した。

どうせやし、今日はみんなの厚意に甘えて、お酒でもぱーっと飲むとしよか。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



・・・いや、食事しよう、って言ったのは確かに僕だけれども。

「んふふふ〜〜〜♪」

「あー・・・はやて?」

「んー・・・ゆーのくん・・・すりすり〜」

「え、ちょ、まっ!?」

なんで僕は居酒屋のカウンター席で隣に座ったはやてに抱きつかれているんでしょう
か?
それもかなり強く。いやちょっと待って腕、腕に柔いモノが!!

まったく、はやては悪乗りが過ぎると思う。
どうせならお酒でも飲もう、って言って居酒屋に半ば強引に拉致られて。
いきなり大ジョッキを一気に空ける人がいるのか・・・居たよ、此処に。具体的にはす
ぐ隣に。
・・・弱いならそんな一気に飲まないでください。

「にょろーん」

「それはエイミィさんの専売特許だよはやて」

おぉう、完全にTripin' Ride?
そのまま不可能を超えてクライマックスを掴み取りそうな勢いだ。
・・・なにわけのわからないこと考えてるんだろう僕は。
僕も相当酔いが回ってきているらしい。

「あたしはさいしょからくらいまっくすやよー?」

・・・それは一体全体どういう意味でせう?
というかもう完全に酔ってるよね、コレ。
頭がふらふらと揺れ続けてるし、言動は言わずもがな意味不明だし。
こりゃ、そろそろお開きに―――

「ぎゅー」

「うぉえあ!?」

待って待って待って待って!そんな無防備な表情で抱きつかないでください!
というかはやてさん、なんでブラウスのボタンが外れかけてるんですか!?

「ゆーのくぅん・・・」

まるで子猫のように僕の腕に縋り付いて見上げてくるはやて。
ふと、僕と彼女の視線が重なる。
それに気付いたのか、たちまち花のような笑顔を浮かべる彼女。
―――あ、なんかすごい良い笑顔。理性飛びそう。



――――――はっ!?

「頑張れ僕の心のプリズム・・・!」

もう意味不明である。
コレは拙い。流石に拙い。
そろそろ脱出しないと危ない。主に僕の理性が。

「と、とにかく、今日はもうそろそろお開きに・・・」

「やーよー・・・」

「いや、もう流石に・・・」

「ゆーのくんともっといっしょにおりたいー・・・」

―――げふぅ。なに、今の一撃必滅奥義?第一近接昇華呪法?零距離銃舞?それとも
第零封神昇華呪法?
しかも追い討ちとばかりに僕にしな垂れかかって来るはやての柔らかで暖かな身体。

待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て!!
拙いって!誰かに見られたら錆になるか頑固な汚れになるかぶち撒けられそうだ
よ!?

「ま、マスター!御愛想宜しく!!」

「あいあいよー」

どうやらマスターはこういう事態にかなり慣れているらしい。
てきぱきとした動作で淀みなくお勘定を済ませてくれる。

よし、コレでとりあえず店からは―引いてはお酒から―逃げられる。
はやては未だに僕に抱きついたままだけど。
・・・・・・それにしても、はやてって軽いな・・・

ちょっとだけそんなことを考えて、すぐに思考を切り替える。

「とりあえず、誰か迎えを・・・」

「・・・あむ」

「べほまっ!?」

ちょっと待ってはやてさん!首筋に吸い付かないでください!!
くすぐったいし生暖かくてぬるっとした感触がするんですけど!

―――負けるな僕の心のプリズム・・・!

なんとか鋼の如き自制心でいろいろと頑張る僕。
そんなことはお構いなしとばかりに吸い付くはやて。

ぐっ・・・とにかく僕の理性が保てるうちに誰か迎えを・・・!

と思ったのだが。
不意に、頭の中で誰かが迎えに来た場合の光景が稲妻のように奔った。



なのはの場合。

「へぇ・・・・・・ユーノくんとはやてちゃん、とっても仲良いんだね・・・」

なんでレイジングハートはエクセリオンモードなんだろう・・・?

フェイトの場合。

「そっか・・・・・・ユーノとはやてって、そんな関係だったんだ・・・」

なんでものすっごい軽蔑の視線で睨んでくるんですか・・・

シグナムさんの場合。

「・・・スクライア、貴様という奴は・・・」

うわぁ、あからさまに錆にされちゃいそうですね。

ヴィータの場合。

「死ね、今死ね、直ぐ死ねこのエロフェレットがぁぁぁぁ!!」

ははは・・・頑固な汚れ、か・・・

シャマルさんの場合。

「リンカーコアを、ぶ ち 撒 け ろ ! !」

一切の遠慮や容赦や手加減なぞない一撃で吹っ飛ぶ僕が見える。

ザフィーラさんの場合。

「スクライア。お前は良い友人だったが・・・」

キミの父上がいけないのだよ?牙と爪が光ってますね。

リインの場合。

「はやてちゃんになにするですかー!!」

凍てつく足枷で閉じ込められる姿が・・・でもコレって既に足枷じゃ無いよね・・・



―――駄目だ。どれもこれも死亡フラグだ。
流石の僕だってまだ死にたく無いですよ。

とするとどうするか・・・

もう時間は深夜に近い。流石にここから六課までは遠すぎる。
・・・仕方ない、かな。僕の理性よ、今晩頑張ってくれ。

僕は抱きついたままのはやてをそっと抱え直して背負う。
背負ったはやての身体は、やっぱり軽くて、柔らかくて。

「ゆーのくん・・・」

女の子特有の、甘酸っぱい匂いがする。
さっきまでアレだけお酒を飲んでいたんだからもう少し酒臭くてもいいくらいなの
に。

あぁ、でも。

この匂いに酔ってしまいそう、ってあたりはお酒と一緒かもしれない。

なんだか無性にドキドキする。
ぐっ・・・さっき理性に頑張れって言ったばかりなのに・・・

「ほら、はやて。しっかりつかまって」

聞いているのかいないのか。
やがてゆっくりとした動作で、はやては僕の首に手を回してくる。
ふわりとひろがる、甘酸っぱい香り。

「んー・・・」

半分夢の世界に居るだろうはやてを背負って、僕は夜の街を歩く。
目指すは、僕の住んでいる管理局の寮。

・・・バレたらさっきの光景が現実になるんだろうなぁ・・・






「ただいま、っと」

なんとか部屋に辿り着いた僕とはやて。
いの一番にはやてをベッドに降ろし、座らせる。
うつらうつらと船を漕ぐはやての姿は、何処と無く微笑ましい。

「はやて」

「んー・・・?」

一応、まだ起きてるみたいだ。
このまま―酔ったまま―寝かせたら、明日はきっと二日酔いに悩まされるんだろう
な。
僕は黙ってキッチンから汲んだ水を注いだコップをはやてに手渡す。

はやては、無意識なのか、若干危なげな手つきでコップを口元に運ぶ。

こくこく、と水が喉を通り抜ける音と共に彼女の細い喉が上下する。
水に濡れた口唇は、何処か艶めかしい光を帯びている。

飲み干した時に、はふぅ、と可愛らしい息を吐くはやて。
それを見て、僕は彼女に問いかける。

「・・・目は覚めた?」

「あ、あはははー・・・」

気まずそうな、苦笑いを浮かべるはやて。
うん、とりあえず目は覚めたらしい。

「えっと、その・・・ごめんな、ユーノくん・・・」

もじもじと恥ずかしそうに胸の前で指を突き合わせるはやて。
・・・可愛いなぁちくしょう。

「その、ご迷惑をおかけしました・・・」

あー・・・酔ってる間のこと、覚えてるんだ。

「・・・まぁ、誰にだってあるよ、そういうこと」

「あぅ・・・」

ばつが悪そうに、はやては目を逸らす。

その時にちらりと見えた時計の針は、短針が十一を半ばほど過ぎ、長針が六を指そう
としていた。

それを見て一瞬硬直するはやて。
そのまま恥ずかしそうに、顔を真赤にして俯く。

・・・たぶん、戻らないとみんなが心配するんだろうな。

「あの、ユーノくん・・・」

「帰るなら、送るよ?」

彼女が、なにか他の事を言う前に先んじて言う。
僕は立ち上がって、ドアの方へと歩き出す。
そして、ドアノブを捻るべく手をかけようとして―――

ぽふん、と。

酷く軽い音と、背中に柔らかな衝撃。
僕のモノでは無い、細くて柔らかな腕が、僕の胸の前で組まれる。

ドクン。

心臓の音が嫌に煩い。

ドクン、ドクン。

静かにしろよ。はやてに聞こえちゃうだろう?

ドクン、ドクン、ドクン。

振り向くな。今は振り向いちゃいけないんだ。

そんなことをしたら、きっと止まれなくなるから。



「ユーノくん・・・」

「・・・何?はやて?」



その時から、既に僕は平静じゃなかったのかもしれない。

はやての声は、緊張と期待の入り混じった、震えを帯びていて。

解る。もうはやての酔いはさっきの水で醒めてるって。

だから今、彼女は自分の意思で、僕の背中に寄り添っている。



「あんな・・・あたし・・・」

「はやて・・・」

「ユーノくんと、もっと、一緒に居たい・・・」

「――――――」

「あ、あかん、かな・・・?」



―――ダメなわけ、無い。

―――僕だって。

僕だって、はやてともっと一緒に居たい。



胸の前で組まれた彼女の手に、そっと自分の手を重ねてゆっくりと引き剥がす。
彼女は驚いたように硬直してそのままだ。
きっと、拒絶されたと考えてるのかもしれない。
だから、僕は彼女の手を握ったまま、ゆっくりと振り返る。
振り返ると、其処には涙で空色の瞳を潤ませたはやての姿。
僕は握った彼女の手に少しだけ力を加えて、強く、優しく握りこむ。
そこで、ようやくはやては緊張を解いてくれる。
それを感じた僕は、徐に彼女を抱き寄せる。
力を抜いて、安心しきった様子で僕の腕の中にいるはやて。
僕は彼女の顔がもっと見たくて、そっと覗き込む。



熱い、熱を帯びた瞳で僕を見つめてくるはやて。

僕は、彼女の顎を指で軽く持ち上げる。

彼女は、ゆっくりと瞼を閉じる。




僕と彼女の唇は、一つに重なった。




ただ触れ合うだけの、キスとは言えないかもしれないキス。

それでも、確かに感じるのは彼女の柔らかさと暖かな熱。

ゆっくりと、唇を離す。

触れていた時間は一分なのか、五分なのか、十分なのか。
異様に長く感じたその時間は、実際にはほんの数秒で。

彼女の顔には、なんだか物足りなさそうな表情が浮かんで見えるのは、僕の勝手な考
えだろうか?
もし、そうならば僕も同じだ。

足りない。

もっと、彼女に触れていたい、と。

もう一度、彼女に顔を近づける。
彼女は一瞬の躊躇いも無く、瞼を閉じてくれる。

そんな、まどろっこしいとさえ思える行為を何度も、何度も繰り返す。

繰り返すたびに、自分の中のナニカがどんどんと熱くなっていくのが解る。

繰り返すたびに、彼女の頬の赤みは増していって、潤んだ瞳は更に熱くなっていく。


繰り返すたびに、口付けは深く、甘く、絡み合うようなモノへと変わっていく。



正直に言おう。

僕は、酔っているんだ。
『八神はやて』っていう、極上のお酒に。



時刻は日付が丁度変わったところで。朝まではまだしばらくの猶予がある。



部屋の天井に吊られた照明に照らされて、僕と彼女は互いを深く求め合う。



部屋に聞こえるのは、衣擦れと、水音と、喘ぎ声だけ。






――――――――――――――――――――――――――――――――――――






「随分とご機嫌だね、はやて」

「ん?そうか?」

「うんうん。はやてちゃん、すっごくリラックスしてるもん」

昨日と同じく、フェイトちゃんと食堂での会話や。今日はなのはちゃんも一緒。
にしても、あたし、そんなに緩んだ顔しとるんやろうか?
そんな考えを感じ取ったのかはしらへんけど、はい、とフェイトちゃんがコンパクト
を手渡してくれたんで、覗きこんでみる。

…あー…うん。たしかに緩んどるなー…

まぁ原因は明らかやけど。

…うぁ。また思い出してもた。

顔が熱くなるのが自分でも分かるし、何よりコンパクトに映り込んでいる自分の顔は
林檎みたいに真赤や。

「はやて?」

「はやてちゃん?」

フェイトちゃんとなのはちゃん、二人の心配そうな声が聞こえるんやけど、あたしは
昨晩のことが頭から離れへんせいでいっぱいいっぱいや。



それは唇に触れる暖かい温度だったり。

それは口内を蹂躙する軟らかい感触だったり。

それは身体を這い回る細い指だったり。

それは脚を伝う生暖かい紅い液体だったり。

それは自分の中で感じる彼の熱だったり。

彼の行動に逐一泣かされたり啼かされたりしたあたし。



・・・おぁ・・・なんや頭がぼーっとしてきたんやけど・・・
ええぃ、まだ勤務中やし、そんなことを思い出すな自分。

・・・あーーー!やめやめ!とりあえず落ち着けあたし!!

此処は食堂、あたしらは昼食の最中!
取り合えずなんか食べ物を食べるか飲み物でも飲むかして気を紛らわすんや!

そんで、あたしは昼食のホットドックを・・・ホット、ドックを・・・

ぐっ!?ならコップに注いどいた牛乳を・・・牛乳を・・・

・・・あかん。完全に自爆してもうた。

「あの・・・はやてちゃん?そんなに真赤な顔でホットドックと牛乳を睨み付けてどう
したの・・・?」

「・・・なんでもないんよ、なんでもないから・・・聞かんといてください・・・」

なのはちゃんの心配気な声を他所に、軽く自己嫌悪に陥るあたし。

・・・どうやらあたしは思っていたよりもずっとダメな人間だったらしい。

多分、今のあたしを傍から見たらさぞ滑稽な姿やと思うねん。
食堂で真赤な顔した女がホットドックと牛乳睨み付けてんのやで?
・・・想像してみて、それが自分のことやということに更に自己嫌悪する。

そんな時やった。

「八神部隊長」

聞き慣れた、けれど六課で聞くことは無いやろうと思った声が聞こえた。
ついでに、今は仕事中やし『部隊長』って役職で呼ばれたもんで、半ば反射的に、声
の聞こえた方へ振り向く。

―――其処には。

「こんにちは、無限書庫から資料のお届けにあがりました」

なんて、普段の姿には似つかわしくない、おどけた調子で言う女の子顔負けの綺麗な
顔をした彼の姿。

「あ、ユーノくん」

「ホントだ、久しぶりだねユーノ」

「なのはもフェイトも久しぶり。元気だった?」

そう言って、彼はなのはちゃんとフェイトちゃんに微笑みかける。
なのはちゃんもフェイトちゃんも、同じようにして彼に笑みを返す。

彼のその笑顔はいつもと変わらない。
あたしに向けてくれたモノと同じ気がして。

・・・なんとなく、気に食わない。

そんな暗い感情があたしの胸の中で消えかけた焚き火のように燻ぶる。

そんなわけで。

「ユーノくん」

「どうしたの?はや―――っ!?」

「なっ!?」

「にゃっ!?」

フェイトちゃんとなのはちゃんの驚いたような声が聞こえるけど、あたしは華麗にス
ルー。
ただただ夢中で、彼の唇を強引に奪う。
彼は、戸惑ったように、けれど優しく抱き締めてくれた。
それを見て、悲鳴のような声がフェイトちゃんとなのはちゃんの口から迸るけど、
知ったことか。
あたしと彼は、じっと唇を重ね合わせたままで。










貴方があたしに笑顔を向けてくれるんは、素直に嬉しいけど。



どうせなら、誰相手でも変わらない『いつもの』やなくて。



あたしは貴方の『特別』がいいんやで?















懺悔部屋。

こっそり十は(検閲)で書こうとしたのは内緒だ☆ZE!?

・・・正直すまんかった。
電波受信したまではよかったんだけど、流石にヤり過ぎた感が否めない。
というか俺はエロイのしか書けんのか、どうしてもそっちに持っていきたいのか俺
は。
・・・orz





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