あまりにも長い剣。 シグナムとフェイトの模擬戦を頻繁に見ているなのはは剣は見慣れている。 が、あの剣は長すぎる。 刀身だけでも3m近くはあるだろうあの剣は。 なのはは知らないが、形状はツヴァイハンダー、クレイモヤと呼ばれる剣である。 槍兵を薙ぎ払うための大剣。 それゆえの長さ。 ゆらり、と、幽鬼のように高く構えをとる。 「待って!お話を聞かせて!」 それを聞いて、ゆっくりと構えを解いた。 「お話を聞かせて、どうしてこんなことをするの?」 「聞いてどうする」 「えっ」 睨まれ、思わず息が詰まる。 「言ったところで管理局が手伝うとは思えない」 「でも、このままだとあなたは犯罪者に」 おもむろに右腕を上げた。 袖からでてきた黒い手錠が目に入る。 「既に罪人だ、目的を果たすまで止まれない」 くっと、身をかがめ四半秒。 一瞬で至近にまで迫り、剣を振り上げている。 ≪Protection Powered≫ 「レイジングハート!?」 ガキっと嫌な音を立てて桜色の盾と長剣がぶつかり合った。 剣よりも硬い盾、このままでは破ることはできないが、 「アラストル!カートリッジロード!」 ≪Explosion≫ 刀身の腹の装甲が滑り、硬い音を立てて薬莢を一つ吐き出す。 ≪Grosse Kraft≫ 盾と鍔迫り合っていた剣が赤く熱し、光りだし、盾に喰いこみ出した。 「叩っ切れ!」 「レイジングハート!」 ≪Barrier Burst≫ 盾が爆ぜ、噴煙が場を支配した。 3話 アーレア・ヤクタ・エスト 「はぁっ!」 「けぁっ!」 剣と剣がぶつかり合う、これで幾合になるのか、 桃色の髪の騎士と赤毛の剣士は両者とも右に剣、左に鞘を握り、切り合っている。 「やるなシグナムとやら、これほどの剣の使い手に出会えるとは思わなかったぞ」 「それはこちらの台詞だ、私もこれほどの強者はテスタロッサ以来だ」 率直な感想を述べる二人、切り合い、殺し合ってるはずなのに二人にはどこか楽しげな雰囲気がある。 「だが、そちらには時間が無いのでは?」 「確かに・・・・・・、手の内を隠したままでもいられないようだな」 そう言い、レヴァンティンの峰の ≪Schlangeform≫ 刃が分裂し、正に蛇のごとくうねり、猛っている。 「ほぅ、蛇腹剣か」 「受けてみろ!我が毒蛇の舞を!」 「それが奥の手・・・・・・否、まだ何かがありそうだな」 話すうちにケーファの周りを刃が鳥籠のように囲む。 「ならば、もう一刀使わせてもらおうか」 「もう一刀・・・・・・・・・だと?」 いままで逆手に持っていた鞘を持ち替える。 そして、 ≪Zwillingeform≫ 「・・・・・双剣・・・か」 先程まで鞘だったものが形状が変わって、右手の剣と全く同じ形状の剣に変わった。 しかし、右の剣の刀身はガンメタブルー、左の鞘だった剣はガンメタレッドである。 「円舞――――」 体勢が低く沈み、両の腕を広く、高く構えをとる。 両剣から薬莢が落ちる。 刃の葬列が殺到するが、しかし、 「――――飛燕!」 ただ回転するという動作。 それが魔力を纏った高速回転ならば話は別だ。 風圧、剣圧によって、周囲を取り囲んでいた連結刃が弾かれていく。 紺鉄色の風が渦巻き、さながら小型の竜巻のようだ。 ケーファの周りに存在していた刃が全て弾かれ、シグナムの下に戻る。 「・・・・・・これを受けきるか」 ≪Schwertform≫ 風が弱まり、回転の勢いが落ちていく。 風の無くなり、路面は円形に抉れていた。 「しかし、これで手の内が全て無くなったわけではあるまい」 『あー、ごめん、基点を壊された。数分もしないうちに結界が消えるから』 頭の中に響いた声に水をさされた。 『そうか』 両刀を逆手に持ち替えて同じように低く構える。 しかし、カートリッジは二度ずつロードされ紺鉄色の風を両の刃が纏っていく。 足元に同じ色のベルカ式魔法陣が出現する。 「すまないが、こちらも時間が無くなった」 「そちらの最大技か・・・・・・ならば!」 レヴァンティンを鞘に納め、カートリッジを一発ロードする。 納めたまま頭上へ高く構える。 薄い紫色のベルカ式魔法陣が足元に現れる。 「飛燕――――」 「飛龍――――」 ケーファは刃が十字に交叉するように切り上げる。 シグナムは抜刀しながらシュランゲフォルムに変形させ大きく薙ぐ。 「――――断雲!」 「―――― 一閃!」 二つの高威力の斬撃は、両者の半ばでぶつかり弾け、周囲を蹂躙し尽くした。 赤の光が空色の光を追う。 「ちょこまか、逃げるなー!」 「そんなのに当たったら痛いじゃないかー!」 ≪Schwalbefliegen≫ 手のひら大の鉄球を取り出し、グラーフアイゼンで弾き出す。 魔力を帯び、加速を受けた鉄球がネーベルに向かう。 「うぇ!」 ≪Eismauer≫ 前方に現れた氷壁が鉄球を受け止める。 勢いを殺がれた鉄球が転がり落ちていく。 「あっぶなー、ありがと、キューレ」 ≪無問題≫ 「ラケーテン!」 「っえ?」 ヴィータは鉄球を囮にラケーテンフォルムで後ろに回りこみ、すでに肉迫していた。 「ハンマー!」 「キューレ!」 六つの金属環の付いた尖端が駆動し、カートリッジがロードされる。 ≪Eismauer Dreifach≫ 空色の魔法陣が展開し、先程とは比べ物にならない硬度・密度の氷壁を造り出し痛烈無比の一撃を防ぐ。 スパイクヘッドが直撃した部分の氷が少々欠けただけで罅すら入っていない。 むしろ、撃ちつけたアイゼンのほうに小さく罅が入っている。 「なっ!」 「ちょっと硬すぎたかな?ごめんね」 謝ったのはアイゼンに罅が入ったこと、それも心から謝ってはいない。 「・・・・・・おまえ、ベルカの騎士か!」 「・・・私は・・・・・騎士ではないですよ」 苦渋の満ちた表情で告げた。 ふとすれば今にでも涙を流しそうな顔。 「私たちは騎士ではない、国と主を救えなかった我らが何故騎士といえようか!」 「すく・・・・えなかった?」 怒りに、自らへの怒りに満ちた表情に変わった。 しかし、すぐに最初の緩やかな 「お嬢さんには関係ない話でしたね」 「・・・・・・・・・・」 ≪Eiszapfen≫ 五個の氷の槍を生成する。 「・・・・・・フォイエル」 浮遊する槍に指向性を持たせ、ヴィータ目掛けて撃ち出す。 「くぁ!」 外れたのか外したのか、騎士甲冑を掠めただけで大きな負傷にはならなかった。 「・・・・・・なぜ、避けないのです」 「・・・・なんでだよ」 「?」 「なんで!泣きながらこんなことができるんだ!」 肺にたまった空気を全て吐き出すように叫んだ。 「泣いてませんよ」 「泣いてるだろ!そんな顔をして!」 息が詰り、言い返すことが出来なくなった。 泣いてはいない、しかし、泣いている。 言い返そうと息を吸い込んだが、 『あー、ごめん、基点を壊された。数分もしないうちに結界が消えるから』 『分かった』 「時間がなくなりました。子供の戯言は終わりです」 手を上にかざすと、周囲から温度が奪われていった。 冷気が渦巻き、宙に巨大な氷の塊が生成されていく。 ≪Gross Eisklumpen≫ 「この一撃受けなさい!」 無慈悲にかざした手を振り下ろす。 ゆっくりと、だが、確実に標的を圧殺する質量がヴィータに向かう。 「アイゼン!」 ≪Gigantform≫ 「轟天爆砕!」 巨大化したハンマーヘッドを振り上げると同時にさらに巨大化し、 目の前の迫り来る氷塊並の大きさになった。 「ギガント!シュラーク!」 迫る氷塊に向けて振り下ろす。 強大な質量同士の激突は周囲を震わせた。 粉塵となった氷が周囲を埋め尽し、まるで幻想的な空間となっていた。 目標の場面まで終わらせることが出来ませんでした。 次回こそなのは戦を終わらせてみせます。 それと、前回題名をラテン語で書くと言いましたが、思った以上に長くなりそうなのでラテン語はやめます。 それでは、今回の単語を Grosse Kraft 意味:光炎万丈 紫電一閃のように光熱を剣に纏わせて切りつける。 光炎万丈の意味は光り輝く炎が高くたちのぼること。 Zwillingeform 意味:双子形態 鞘のカートリッジを一つ使用し鞘を同型の剣に変える。 Eismauer 意味:氷の壁 目の前に氷の盾を作り出して攻撃を防ぐ。 Eismauer Dreifach 意味:氷の壁 三倍 硬度・密度の上がった氷の盾。 Eiszapfen 意味:氷柱 氷の槍を五個作り出して撃ち出す。 Gross Eisklumpen 意味:大氷塊 氷の塊を頭上に作り出して落とす。 なのは戦で結界の効力が発揮するので結界はまた次に。 感想を戴くと執筆速度が上がるのでよろしく。 |