それは、小さな出会いでした 初めは優しくてかっこいいお兄さん 次に出会ったときは、とても強い謎の魔導師 そして、もう1人の黒い髪の魔導師 新しい出会いが、新たな戦いの幕開けになろうとしている 魔法少女リリカルなのは light and darkness 始まります 謎の魔獣の群れと戦った二日後、はやては騎士達と共に管理局に来ていた。 廊下を歩きながらこの間のことを思い返していた。 「は〜、結局わけ解らんまんまや」 「はやてちゃん、まだ気になるですか?」 「まぁ、はやてちゃんの気持ちもわかりますけど…」 はやてはこの二日間彼らについて考えていた。 一体どこの誰なのか?、本当に管理局の局員なのか?、目的は何なのか?、 それらを何度も何度も循環させて考えてみるものの、結局、謎の一文字で終わってしまうのだ。 「でも、はやてがこんなになるなんてな…」 「ヴィータ、これは事件なんや!捜査官としてこの謎を解明せな!」 無駄に気合が入っているはやて。確かに、事件といえば事件だが…。 「なんにせよ、私はそのカノンという男と一度手合わせしてみたいものです」 「出たよ、バトルマニア」 「黙れヴィータ」 コツン、と1発小突くシグナム。なにすんだテメェ!と、食って掛かるヴィータ。 いつものことなので、スルーしている3人と一匹。 そこへ、反対の廊下から声が聞こえた、 「はやてちゃん!」 「お、なのはちゃん!フェイトちゃんも!」 振り向くと、なのはとフェイトがこっちに来ていた。 「フェイトちゃん、今日はクロノ君と一緒とちゃうんやな」 「うん。兄さん、いつもより速く出たから…」 「どうしたんだろうね?クロノ君」 クロノとフェイトは兄妹であり、アースラの艦長と執務官という関係上、仕事が一緒の日は大体一緒に出勤するのだが、今回は違った。 フェイトが朝食を摂っている間に、クロノは出たのだ。 最近不可解なことが多い、とその場の全員がう〜んと唸っていた。いつの間にかシグナムとヴィータの喧嘩(ヴィータが一方的に怒っているだけ)も終わっていた。 すると、別方向からこちらに駆け寄ってくる人がいた。その人はショートカットの茶色の髪をした女の子だった。 「ねぇねぇ、クロす…じゃない、ハラオウン提督はどこにいるかわかる?」 「えとっ、提督でしたら今ならアースラの艦長室だと思いますけど…」 「そっか。てことは、アイツも…」 尋ねてきた女の人は、何やらブツブツと呟いていた。 すると、彼女が来た方から男性の声が聞こえた。 「何をしている!リムエナ!」 「あっヤバ!…あいがとね!!バイバイ!」 バツの悪そうな顔をしながら、フェイトにお礼を言い、男性の方に急いで戻った。 そして、二人はどこかへ行ってしまった。 「なんだったんだろ?あの人たち」 「女の子の方は、雰囲気なのはちゃんに似てますね」 シャマルの発言に、そうですか?と疑問を浮かべるなのは。フェイトは確かに元気なところは似てるかも、と思った。 だが、1人だけ険しい顔をしている人が1人いた。そう、はやてだ。 「ふふふふ…」 突然不気味な笑いをするはやて。一同引いている。 「は、はやて…?」 ヴィータが恐る恐る尋ねてみた。 「臭う、臭うで!!」 「な、何が?」 「さっきの二人、私服やったやん!この管理局広しと云えど普段から私服で勤務しよる人はユーノ君ぐらいや!」 確かにはやての言っていることは最もだった。時空管理局は与えられた部署によって制服が決まっている。私服で働いているのは無限書庫の司書長を勤めているユーノぐらいだ。 「それに加え、クロノ君の居場所を聞きに来たちゅうことは、もしかしたらカノンさん達の仲間かも。クロノ君はカノンさんのこと知っとるみたいやし、これはもう追跡せな!!」 とんでもないことを言い出すはやてに、反論しようとする一同。しかし、それより速く、ほないくで!!と走りだした。 みんな慌ててはやての後を追う羽目になった。 先ほどの男女はとある部屋の前にいた。そう、アースラの艦長室である。 「ふふふ、追い詰めたで…」 遠くの曲がり角からこっそりと覗いているはやてと他一同。 別に追い詰めたわけじゃないのに…、と突っ込みたいが今のはやてには通用しないだろう。 すると、はやて達とは別方向から、二人に近づく人影があった。 その人を知っている者が中にいた。なのはが念話で話しかけた。 『フェイトちゃん、アレ、トウヤさんじゃない?』 『うん。トウヤさんだ』 『やっぱりや!私の推理は当たっとったな!』 そう、トウヤだ。この間の戦いで現れたカノンの仲間。 一度に数十体の魔獣を殲滅し、はやての封鎖領域を破壊した人物だ。 『主はやて、あの男は…』 『トウヤさん。フェイトちゃん一押しの人や!』 『はやて!私は別にそんなこと思ってないよ!!』 『でも、フェイトちゃん、結構トウヤさんの名前言ってるよね』 『まぁ、フェイトちゃんもついに恋する乙女ですか?』 何やら話が脱線しているような気もするが、放っておこう。 向こうは向こうでトウヤが近づいて来るのに気付いたようだ。 「あ、トヤッち!」 「やぁ、リムエナ、キリト」 「お前もやはり気になるか」 トヤッちとは、恐らくトウヤのあだ名だろう。長身で、銀髪の男はキリトと言う名なのだろう。 三人は気になることがあってここに来ているようだ。 「まぁ、たぶん。そうなるかなって」 「暴走しないよね?」 「ヤツも馬鹿ではない。最悪、俺が止めればいい」 暴走?、止める?、何のことだと思っているはやて達。すると、 「どういうことだ!!そりゃぁぁぁ!!!」 いきなり、艦長室から怒鳴り声が鳴り響いた。 「やっぱり…」 「どうすんの?」 「どうもこうもない。行くしかないだろう」 三人が一斉にため息を付くと、艦長室に入っていった。 「調査の必要性なし?!!どういうことだ!説明しろ!!」 今にも飛び付きそうな勢いでクロノに猛抗義している人物。そう、カノンだ。 「まあまあ、カノン君、落ち着いて…」 「エミ姉…」 エイミィのお陰で少し落ち着きを取り戻したカノン。それでも、まだ落ち着けてはいない。 「仕方がないだろ。上の連中が決めたことだ」 「納得できるか!!ワケを説明しろ!ワケを!」 バン!!と、机を叩いてカノンは怒鳴る。すると、 ドス! と、カノンの脳天に手刀が落ちた。 「〜〜〜〜!!!」 声の出ないほど痛いとはこの事だろう。頭を抑えながらしゃがみ悶絶するカノン。 例えるなら、タンスの隅に足の小指をおもいっきりぶつけた時ぐらいの痛みだろう。これは痛い。 「落ち着かんか。馬鹿者」 気配を消して手刀を降ろしたのはキリトだった。 「キリト…、脳天割れるっつうの…」 涙目に成りながら抗議するカノン。まだ、微かに痛みに震えている。 「これくらいでどうにかなるほど、柔ではあるまい」 さも当たり前のように言い放つキリトにジト目で視線を向けるカノンだった。 「キリトさん、トウヤ君、リム久しぶり」 「ああ、久しいな、リミエッタ」 「久しぶりだね、エイミィ」 「やっほうクロ助。エミ姉久しぶり!会いたかったよぉ!」 再会の挨拶をする面々。リムエナは喜びのあまりエイミィに抱きついている。 「カノンの暴走、止めてくれてありがとう、キリト」 「気にするなハラオウン。いつものことだ」 「とりあえず、説明してよ、クロノ。でないと、またカノンが暴れるから」 「そんなに暴れたことあるか?!」 「そうだな、その方がいい。リムエナいい加減エイミィから離れたらどうだ?」 そだね、とエイミィから離れるリムエナ。一方カノンは流されたことで、ガクン、と垂れている。 「クロノ君、嫉妬?」 「別に、何でもいいだろ…」 エイミィの問いかけに、微かに頬を赤くしているクロノだった。 「第一に、データが飛躍的すぎている」 仕事モードに入ったクロノが説明を開始した。カノン達も先ほどとは打って変わって、真剣な顔になっている。 「君たちのデータの内容自体が、でっち上げではないか、と言っている連中もいたよ」 「ふざけやがって!こっちが2年間費やして集めたデータだってのに!あのジジイ共…」 カノンは怒り心頭中といった具合に、握り拳を作っている。 「第二に、上は自分達が認知しない限り調査隊を動かすことはできないそうだ」 「そんなんだからいつも後手後手に回るんだろうが!!」 カノンの怒りは治まらない。 カノンの言っていることは事実である。時空管理局は自分達に通報や調査の依頼が来ない限り無断で部隊を動かすことは出来ないのだ。そのせいで、後手に回るケースは珍しくない。 「僕に言うな。飽く迄も僕は管理局の一提督であり、一艦長に過ぎない。上の連中に訴えるほどの権限はないんだ」 「よく言うぜ、俺達の存在を認めてるくせによ。自分達が理解できないことは無かったことにするのがここのやり方かよ、え?!」 「何度も言わせるな!!僕にその権限はない!!」 バン!、と机を叩き立ち上がったクロノ。一触即発といった険悪なムードになってしまった。このままでは乱闘に成り兼ねない、そんな雰囲気だ。 そんな中、キリトはドアの方を向いた。 「どうかした?キリキリ?」 リムエナが尋ねた。キリキリとはキリトのあだ名だ。トウヤ同様キリトもあだ名で呼ばれるようだ。 「盗み聞きなどせず入ってきたらどうだ?」 一同目を向けると、ドアが開いた。 「君達!」 「あちゃ〜〜」 クロノは驚き、エイミィはバツが悪そうなまずい顔をしていた。 そう、さきほどの会話は全てはやて達に聞かれていたのだ。 「何で…、なのはちゃん達が?」 カノンは何で?、と言わんばかりの表情を浮かべていた。 「どうやらつけられていたようだ」 「つけられ…!!リム!テメェドジったな?!」 「そ、そんなことするわけ…」 急に容疑を掛けられ動揺するリムエナ。だが、 「…ドジったかも」 「こんのぉバカ娘!!」 「な、何よぉ!!別にいいじゃん聞かれたぐらい!」 「それが一番マズイんだよ!!」 先ほどの雰囲気がぶっ飛ぶぐらいギャア、ギャアわめきだしたカノンとリムエナ。 なのは達は先日とのギャップに動揺していた。そうしていたら、 ドス!、ドス! と、先ほどのキリトの手刀が再び振り下ろされた。今度はリムエナも一緒に。 「き、キリトっ…、に、二発目…」 「取り乱すお前が悪い」 「いった〜い!酷いよキリキリ!」 「お前も同罪だ」 飽く迄も平然を装っているキリト。周りはちょっと怖さを覚えた。 「でも、聞かれたのは不味かったね。どうする?」 トウヤは冷静に状況を判断し、カノンとクロノに投げかける。 彼女達には聞かれたらマズイことを聞かれた。 この場合はどうするべきか、カノンはマルチタクスをフルに働かせ答えを導き出そうとしていた。が、 「わかった。話そう」 「ぅおいちょっと待て!!」 先に答えを出したクロノにカノンはおもいっきり突っ込んだ。 「もう、隠す必要はないだろ?先日からフェイトにお前達のことを聞かせろと何度も言われてたからな…。それに、この件本当にお前達だけで片付けれると思っているのか?だから、わざわざ戻ってきて調査の依頼を頼みに来たんだろ?」 何やら開き直ったかのように言うクロノにトウヤが聞いてみた。 「へぇ〜、さっきまで上の決定に仕方がないの一言ですましてた提督さんはどうしたのかな?」 「僕だって上の老人達の決定に腹を立てていたんだ。第一、これでもお前達を信用してるんだ。僕を見くびってもらっては困る」 皮肉を込めたトウヤの言葉に、本心を言うクロノ。もっと素直になればいいのに…。 「でもよう。やっぱ彼女達を巻き込むわけには…」 「諦めろカノン。現にハラオウンが言っているように、俺達だけで片付けれる問題ではないことはお前とて承知の上だろう?」 まだ諦めきれないカノンにキリトが止めの言葉を投げかけた。カノンは、はぁ〜、と特大のため息を付いた。どうやら、腹をくくったようだ。 「じゃぁ、話してくれるの?クロノ君」 代表してなのはが尋ねた。クロノは座り直し、一息つくと重い口を開いた。 「ああ、話すよ。彼らのこと、そして、これから起こることも…」 艦長室が一瞬静寂に包まれた。 第1話「新たな仲間その名は“アーカム”」 「まず彼らについてだ。彼らは管理局の特殊部隊だ」 「「「「「「特殊部隊?!」」」」」」 シグナムとザフィーラを除く6人は、聞きなれない単語にオオム返ししてしまった。 シグナムとザフィーラも驚きの表情を浮かべてはいるが。 「そう。彼らは管理局でも特別なポジションにいてな。主な任務は現地へ赴き、そこで出現する魔獣の排除及び、被害者の救済や支援だ。当然、時空犯罪に携わることもあるが、メインは前者だ。部隊名は“アーカム”」 「アーカム…、そのような部隊名は聞いたことがない…」 シグナムは、管理局の武装隊に所属しているが、アーカムという名は初めて聞いた。 「当然だ。知っているのは上層部と結成時その場にいた僕やエイミィ、母さん、管轄しているレティ提督と、当時のカノンの知り合い程度だ。しかも、全員口止めしているからな、必要以上に話さないようにしているんだ」 と、言ってはいるが、そうなるとアーカムはそれだけ特別な部隊だということだ。知らないのも無理はない。 「みんな、自己紹介をしてやってくれ」 「じゃぁ、ボクから」 そういって、リムエナが一歩前に出た。 「ボクの名前はリムエナ。リムエナ=レイゴールド、19歳の女の子です。よろしくね♡ あ、喋り方は気にしないで、癖だから。で、普段はみんなの機械整備とかデータ解析をしてるの。で、戦闘だと、後方支援担当です。コードネームは『ガンナー』。えっと、階級は三等陸尉です」 「アーカム一のメカオタトラブルメーカーの間違いだろうが…」 「カノンノ!聞こえてるよ!」 嫌味を込めたカノンの台詞になのは達は、あぁ〜そうなんだ、と納得した。 カノンもあだ名で呼ばれている。 「次は僕だね。こないだは戦闘中だったからまともにできなかったけど。 僕の名前はトウヤ=キリシマ。普段はアーカムの医療系を担当しているよ。戦闘ではみんなのサポートが主かな。コードネームは『プリースト』。階級は三等空尉」 「俺はキリト=キリク。アーカムの副隊長を務めている。戦闘では、前衛を任せられている。コードネームは『グラップラー』。階級は一等陸尉だ」 キリトまでの自己紹介が終わった。すると、はやてはおかしなことに気付いた。 『なるほど…、私らが知らんわけやな。にしても、キリトさん雰囲気悪いな、うちのザフィーラより暗いで。…ん?、キリトさんが副隊長?、え?てことは…』 はやての考えをよそにカノンの自己紹介になった。 「改めて、始めまして。俺はカノン=リコルヌ。公私共にアーカムの隊長を務めているよ。戦闘じゃぁ、前衛と中衛の両方かな。コードネームは『セイバー』。階級は一等空尉。よろしく」 「えぇぇ〜?!カノンさんが隊長なんですか?!てっきりキリトさんかと…」 人を見た目で判断してはいけないとよく言うが、はやては特殊部隊と聞いてキリトが隊長だと思ったのだ。だが、実際はカノンが隊長である。すると、カノンは、 「ハァ〜、やっぱな。初対面のとき絶対そう思われるんだよなぁ…」 凹んでいた。しかも、部屋の隅で影を落としていた。 「また凹んじゃったよ、カノンノ」 「放っておけ、いつものことだ」 「カノン君大丈夫だよ。カノン君頑張ってるし、カッコいいし」 「…ありがと、エミ姉」 エイミィが近寄り励またお陰で何とか復活した。この前もそうだったが、意外とデリケートなんだなと思ったなのは達だった。 「さて、カノンはどうでもいいとして「んだとゴルァ?!!」エイミィ!データを表示してくれ」 クロノはカノンの喰いつきを流しながらエイミィに指示をした。 立体モニターに表示されたデータのタイトルはこうあった 逃れられない脅威について 「何なんですか?これ?」 「我々がこの2年間で調査したある組織についてのデータだ」 「このデータが通らなかった要望の中身ですか?」 「完全じゃないけどね。まだ調査途中だから…。通らなかったのはその所為でもあるね」 はやての質問にキリトが、フェイトの質問にトウヤが答えた。 「でも、いったいどんな組織についてのデータなんですか?」 「これからちゃんと説明するよ。なのはちゃん」 カノンがモニターに近寄った。 「俺は昔からある組織について気に掛けていた。そして、2年前から本格的に俺達で調査を開始した。それがこいつら“闇の使徒”だ」 モニターを操作しながらカノンは説明を開始した。 「はっきり言って、こいつらの目的はさっっぱりわからん。ただ、言えるのはこいつらのお陰でぶっ飛んじまった世界がいくつもあるってこと」 「具体的には、主要地上世界が壊滅した世界が十数、世界そのものが消滅したところでも数ヶ所ある」 「そんな?!!こっちではそんな報告…」 「無いよ。今のとこ襲われた世界は管理局の指定外もいいとこだからね。気付かれないようにするのはお手の物って感じだよ」 トウヤの言葉に唖然とするフェイト、いや彼女だけではないデータを始めて見る者全員が同じ反応を示していた。 「今んとこわかってるのは、こいつらのトップと幹部人数、所有しているその他戦力の一部ぐらいだな」 「幹部は全部で13人だ」 「何で、13人ってわかるんですか?」 「奴らはこの世界を構成する13の属性にそれぞれ当てはめられているからだ」 13の属性?何のことだ?とはやてが思っていると、クロノが説明を加えた。 「僕達が使用している魔法の魔力の質、言わばリンカーコアが持っている先天的な性質のことだ」 「殆どの魔導師は13の属性のどれかに当てはまるんだ。まぁ、複数当てはまる人もザラにいるけど。」 「木、火、土、金、水、とこれら5つを統括する光。そして、月、風、氷、雷、とこれら4つを統括する闇。それから、今言った11の属性すべてを統括する元素。最後に時」 「そんなこと考えへんかったわ…」 「細かい説明はいずれする。今回は後回しにさせてもらう」 はやては黙って頷いた。だが、これから自分の魔法についてもっと知ることがあったことに喜びを覚えているのは確かだった。 「一番重要なのは、闇の使徒の幹部:“ゾディアックブレイブ”はこの13属性の達人。言わば極限まで極めた連中で、平均がSランクってこと」 「え?!」 「特に、光、闇、元素、時はSS−を超えている」 「アホな?!!」 「しかも、そいつら単体で管理局の武装局員数百人は軽く倒せるぐらいの実力はあるよ」 「そんな?!!」 三者三様のリアクション(ヴォルケンリッターも驚いているが)をしている。自分達よりも断然上のランクが13人、しかも中には全く歯が立たないぐらいのランクのヤツまでいるのだから。一応、はやてはSランクだが、単独での戦闘は得意ではないため、かなり厄介だ。 「で、さらに強いのが奴らの頭。推定でもSSSはあるかな」 カノンはさらり、と言った。SSS、そんなレベルの魔導師など見たことない、とその場にいる全員が一斉に思ったであろう。 「さて、あとはその他戦力だけど、なのはちゃん達とこの間戦ったよな。人造魔獣」 「あれも、闇の使徒の…」 「人造魔獣は人為的に遺伝子操作を施した強化魔獣だ。特徴としては生命活動が停止すると、強化段階の負荷が原因で魔力となって空気中に散霧する。指示を出すヘッドタイプは脳に特殊なチップが埋め込まれている」 「じゃぁ、カノンさんはそのチップを抜き取ったんやね?」 「それから何らかの情報が得られればと思ったんだけど…、大したデータはなかったよ」 「そうだったんですか…」 以前のカノン達の不可解な行動がようやく解明できた。はやてはだいぶスッキリしたようだ。 「あと、よくある傀儡兵に、それの強化版みたいな人造魔兵とか。で、量産型で一番たちがわるいのがこれ!」 そう言って、カノンは操作パネルを操作すると、モニターに画像が映し出された。 それは金属的な装甲と重重しい重火器を握っている人型の機械だった。 「うわぁ〜カッコいい!!」 「カッコいいです!!」 「ヴィータちゃん、リインちゃん、今そんなこと言ってる場合じゃ…」 「ロボット…ですか?」 「うん。性格に言えば、FTM(エフティーエム)だね」 フェイトの問いに答えるトウヤ。確かにヴィータとリインが言うようにカッコよくはあるが。 「Fullmetal Tactical Meireの略称。人型戦略機動兵器で、サイズは15m前後。デカイものになると30mはいくやつもある」 皆へ〜、と感心した様子。もう何が起こっても驚かないと思ったのだろうか。だが、 「厄介なのは、これを奴らは際限なく所有しているということだ」 「なんやて?!」 「僕たちは奴らのFTMを数百機近く倒しているけど、弱まった雰囲気はないよ。むしろ、勢いを増してるぐらいだ」 「え?トウヤさん達も持ってるんですか?」 トウヤの発言にフェイトは気になった。彼ら闇の使徒のFTMと戦って来たということは、カノン達アーカムも持っているということになる。 「ああ、持ってるよ。特別製を。ただ、俺達4人分しかなくてね。そこら辺の支援も含めて、本局上層部に掛け合ってもらおうと思ったんだ・け・ど」 「上の意見は、すでに我々時空管理局はFTMの開発を中止している。よって支援はできない、だそうだ」 「これだよ。ったくなんでどいつもこいつもクロノみたいに堅物なんだか…」 「誰が堅物だ!誰が!」 また、カノンとクロノの口喧嘩が始まろうとしている。真面目な話はどこへやら… 「大体さぁ、エミ姉。何でこんな堅物と結婚しようと思ったんだよ」 「待てカノン!!どこで聞いた?!!」 「ん?ヴェロッサから聞いた」 「何でお前がヴェロッサと!」 「俺たちは情報が命だからな。管理局側の情報は定期的にヴェロッサから聞いてんの」 「あ、だから私達のこと知ってたんですね」 「そうさ、なのはちゃん」 クロノに向ける表情とは違い、とても優しく答えるカノンだった。当のクロノは、今ここにいない親友の口の軽さに頭を抱えていた。 「ま、そんな堅物さんでも可愛いとこがあるからね…」 照れながら答えるエイミィ。何となく可愛く見えた。 「ふぅ〜ん。っとまぁ、俺達はこれからコイツらと戦わないといけないわけ。他に質問ある人…」 ピピピピ…、といきなり何かのアラームが鳴った。 何事かと思っていると、それはカノンの通信機のアラームだった。 カノンが操作し立体ディスプレイを表示すると、 『よう、チビ旦那』 「なんだよ、エド。それと、そのチビはやめろよ。一応、170あんだからさぁ」 『は、何センチになろうと、何歳になろうと、あんたはチビ旦那だよ』 そこに移っていたのは、中年の男性だった。カノンのことを“チビ旦那”と呼んでいる。気になったのでフェイトはトウヤに聞いてみた。 「誰ですか?」 「エドワルド=ハリス。僕達の巡航艦“エルザ”の艦長だよ。自分より背の低いカノンが隊長だからそう呼んでるんだ」 「ちなみに、キリキリはそのまま旦那って呼んでんだよ」 「私にしたら、誰でもあだ名で呼んでるリムエナさんがすごいわ」 「ボクの特技だよ、はやはや。後、エドにはね“トニー”っていうオス猫の使い魔と“サキー”っていうメス狐の使い魔がいるんだよ。あ、ボクのことはリムでいいからね」 もうすでにはやてをあだ名で呼んでいるリムエナ。すごい(?)。 「で、どうしたんだよ」 『なぁに、状況確認をと思いまして』 「状況は、上の連中の了解は得られなかったけど、心強い助っ人が入りそうだ」 『例のお嬢ちゃん達ですね。…チビ旦那、いいんですかい?その子等巻き込むの良く思ってなかったんじゃぁねぇですかい?』 「まぁな、でも、現実がそうさせてくれそうにないからな…。正直、今でも巻き込みたくはなかったと思ってるよ」 『チビ旦那らしいですね。ま、腹ぁくくりましょうや』 「もう、くくってるよ」 苦笑しながら答えるカノン。それまでの会話で、なのは達はカノンの気持ちを理解した。特に、変な疑いをしたはやては、自分が恥ずかしくすら思っていた。 『そうそう、ソル・クレイヴァーがチビ旦那に会いたがってましたぜ。行ってやってくださいせぇ』 「わかった。これから行くよ。んじゃ」 そう言って、電話を切った。すると、はやてがカノンを凝視していた。 「ど、どうした?」 「カノンさん!ホンマ、すみませんでした!こないだはカノンさんの気持ちも知らずに失礼なことを…」 「別に失礼とか思ってないよ。だから、気にすんな」 そう言って、優しく微笑み、はやての頭を撫でた。 はやては思った、この優しさがアリサを虜にしたモノだと。 そして、さらに虜にした人が、彼の恋人ミリアさんだと。 これなら、アリサがお兄さまと言ったり、ヴィータやリインがお兄ちゃんと言いたい気持ちがわかるというものだ。正直はやて自身も、そんな風に言いたいと思ってしまっているのだ。 「悪いな、俺先にエルザに戻るわ」 「わかっている。ソルのところに行くのだろ」 「僕達も後で行くから」 「カノンノ、ゼッちゃんにすぐに行くって言ってて」 あいよ、と手を振り艦長室を後にするカノン。 それを、クロノが止めた。 「待てカノン」 「なんだよ」 「お前は、万が一誰の協力も得られなかった場合を考えているのか?」 艦長室に再び静寂が訪れた。 「お前のことだ。何か考えていることは分かっている。だが、最悪なのは達や僕を含む全員が敵になる場合だってないとは言い切れないんだぞ」 クロノの言っていることは間違ってはいない。カノンの性格上、上層部の命令を無視しかねない。いや、しているも同然だか。そこで上層部は反逆者としてなのは達を使ってカノンの排除を言い渡す場合もあるだろう。そうなると、全部を敵に回すことになる。 だが、当のカノンは、 「ふふふ、ハハハ…」 笑い始めた。そして、挑戦的な顔で答えた。 「…お前さぁ、10年以上の付き合いでまだ俺のこと分かってねぇな。俺は俺の道をひたすら突っ走るだけだ。誰から与えられたモノじゃない、俺が作り選んだ道をだ。たとえ、上のジジイだろうと誰だろうと俺の邪魔立てはできねぇ。大体、俺はお前の言う“正義”ってモンが嫌いだ。それはそいつがそう思えばどんなことも正義になる。誰かの幸せを奪うことも、だったら俺はそんな正義はいらない。いるのは、どんなことが起こっても動じない強い“意志”だけだ」 誰も何も言えなくなっていた。カノンの言葉に皆、なんとも言えない勢いを感じたからだ。 「だから、敵になったときは、なったときで…、ぶっ飛ばすだけだ」 最後の言葉だけ、とても冷たく、鋭かった。それだけで、なのは達は背筋に悪寒が走った。 が、 「ま、そんなことにはならないけどね、じゃ♪」 先ほどの優しい表情に戻っていた。カノンは手を振り、艦長室を後にした。 「ふぅ、全く相変わらず自分勝手なやつだ。だが、だからこそアイツらしい」 「カノン君、昔から、我が道を行く、だからね。で、いつもクロノ君と喧嘩してたっけ」 「今でも、でしょ、エイミィ」 昔を懐かしんでいる二人にトウヤが軽く突っ込みを入れた。 突然、ヴィータとリインが、ワナワナ、と振るえ初めていた。何事かと思っていると、 「カッコいい!!ギガカッコいいよ“カノン兄ちゃん”!!」 「すごいです!カッコいいです“お兄ちゃん”!!」 「ちょ、ヴィータ、リイン、もうお兄ちゃんか?!速すぎやで!」 「で、でもはやてちゃん、カッコよかったですよ、カノンさん////」 「私はユーノ君がいるもん。大丈夫だもん」 「でも、カノンさんも恋人いるよね?」 カノンの台詞があまりにも効いたのか、女性陣がざわつきだしたが、フェイトの言葉で静まった。だが、さっきからずっと黙っていたシグナムが口を開いた。そして、 「カノン殿////、是非、後日手合わせしたいものです…」 シグナムが頬を赤くしている。そう、あのシグナムですらカノンに惚れたのだ。 「我々も行くか」 半ば呆れ気味にキリトが言った。どうやら、この場の空気に耐えられなくなったようだ。 「そうだね。正直、今日の用はもう済んだし」 「じゃ、行こっか」 「あ、待ってください」 行こうとしたキリトを、何かを思い出したはやては止めた。 「あの、今度、属性とか色々教えてもらってもいいですか?」 「すまんが、俺が教えてもためにはならんだろう。悪いがカノンかトウヤに教わってくれ」 そう言って、キリトは出て行った。 「あ…」 「気にしなくていいよ。別にみんなが嫌いなわけじゃないんだ」 「キリキリって、フィジカル専門だからね。属性とかそういった細かいこと教えれないんだよね」 「リムエナは決まったことしかできないもんね」 「も〜、トヤっちのバカ!」 「ハハ、…とにかく、都合があったときに僕とカノンで教えるから。じゃ、またね」 ふて腐れたリムエナとトウヤも出て行った。残ったメンバーはというと、 「やった〜!!、よ〜し、カノン兄ちゃんにあたしのすごいとこ見せてやる!」 「リインもお兄ちゃんに見せてあげるです!」 「今の私でカノン殿に勝てるかどうか…。だが、情けない姿をさらすわけにはいかん!」 「三人とも、ちょい気合は入りすぎや!」 カノンに惚れた(ヴィータとリインはただのカッコいいお兄ちゃんだが)三人はワクワクしていた。だが、フェイトは少し違った。そのことに、なのはがいち早く気付いた。 「良かったね、フェイトちゃん。色々教えてもらえるんだって」 「な、なのは!!私は別にトウヤさんのことは…」 「フェイトちゃん、別になのはちゃんトウヤさんとは言ってませんよ」 「へ〜、フェイトちゃんはトウヤ君が好みなんだ」 「え?あっ////…」 なのはのカマかけにまんまと引っかかったフェイト。動揺しすぎである。 ついでに、シャマルとエイミィの追撃もくらってしまった。 顔は湯でダコみたいに赤くなっている。 「わ、私仕事があるから!!」 そう言って、走って艦長室を出て行った。 「からかいすぎちゃったかな?」 「どうやろ?」 「さぁ、君たちもいい加減仕事に戻った方がいい。ただし、この事は他言無用だいいな」 クロノの言うこのこととは、カノン達アーカムではなく、闇の使徒。彼らの存在が明るみになるわけにはいかないのは当然である。 全員頷き、それぞれの仕事に戻った。 新暦72年1月14日、この日アーカムの存在を知ったもの達はそれぞれ思うことは様々である。だが、1人。フェイトは初めて芽生えた感情に激しく動揺していた。 「私、本当にトウヤさんのこと…」 そう、恋をしたのだ。 フェイトの恋の物語も始まろうとしていた。 同時刻、ミッドチルダから遥かに遠いとある世界。 その世界の主要地上世界のとある軍事施設で、 ドッガァァァァンッ!!! 巨大な爆発が起こった。 「や、やめてくれ!た、たの…がぁぁぁ!!」 兵士が1人心臓を貫かれ殺された。殺した男の手には禍々しい紋様が刻まれた処刑鎌が鮮血に染まり握られていた。 「動くな!!武器を捨てて投降しろ!!」 鎌を持った男は、マシンガンを構えた兵士に取り囲まれていた。 だが、全く動じない。それどころか笑みを浮かべ、 「ハハハハッ、お前等バカか?」 挑発してくる始末。耐えかねた兵士たちは、撃てぇぇぇ!!の合図で一斉射撃を開始した。 ドドドドドドドドドッ 何百発もの弾丸が発射され、土煙が舞い上がる。その男に全弾命中している…はずだった。 撃ち終わるとそこには、 全く無傷で立っている男と、氷漬けになっている弾丸が落ちていた。 兵士達は、理解できずその場から動けなくなっていた。 鎌を持った男は再び笑みを浮かべ、 「終わりか?じゃあ死ね」 その手にある鎌を、高速で薙ぎ払った。 ――無音で振られた鎌から、ビュゥ、と冷たい風が放たれた。その風はその周囲にあるもの全てに一瞬で行き届いた。 何が何だかわからない、そう兵士達が思っていたら、1人が、 ボトッ、 と、上半身が落ちた。それを合図にしたかのように、次々と血を噴出し、同じく上半身と下半身が分裂し断末魔を放ちながら絶命していった。 「へ、弱ぇなぁ。こんなもんかよ」 「相変わらずえげつないな」 鎌を持った男が死者を見下していると、オレンジ色の髪をした男が近づいてきた。 「よぉ、あんたの方は終わったのかよ」 「…」 オレンジの男は黙っていた。鎌の男は彼が来たほうを見ると、 「おいおい、あんたも十分えげつねぇじゃねぇか」 そこには、何十人ともいえる焼死体があった。しかも、識別できる死体がないほどに。 「行くぞ」 「へいへい」 そう言って、二人は未だ炎が立ち上るその施設からどこかへ行ってしまった。 その後、その世界の主要地上世界がたった3日で壊滅したという知らせをある情報機関からアーカムへ知らせが来た。 闇は確実に広がっている。 だが、それを知るものはあまりにも少なかった。 ―あとがき― 第1話です。では、解説をいれます。 キリト=キリク(年齢は言えません。重要ごとなので)〔イメージCV:小杉十郎太〕 魔導師ランクS− 魔力光:レモンイエロー 装備:基本素手。一応デバイスありますが、ここでは伏せます。 格闘戦オンリーの近接型。それだけで、S−なので実際、近接戦はカノンを超えています。普段の近接戦のみの模擬戦でカノンは勝ったことがありません。後、階級が一等陸尉ということは陸戦魔導師の分類に入ります。よって、飛べません。でも、強いです。 見た目、というか雰囲気は月姫の軋間紅摩みたいな感じです。あそこまで、ごつくないけど。でも、優しい父親的な部分もあります。 今後、八神家の面々と絡むことが多くなります(予定) リムエナ=レイゴールド 19歳〔イメージCV:坂本真綾〕 魔導師ランク:AAA+ 魔力光:赤色 装備:拳銃型アームドデバイス・アグニ 拳銃を使った中・遠距離型。防御魔法も得意です。キリト同様、陸戦魔導師なので飛べません。でも、あることをすれば飛べます。それは後ほど。 見た目は、ガンダムSEED Destinyのルナマリアの髪を茶髪にし(アホ毛なし)、元気を増やし(なのは以上)、軽く馬鹿にした感じです。因みに、ボクっ娘にしたのは、友達が『ボクっ娘いないの?』と言いわれて、変に意識し始めたからです。それまで普通だったのに。カノンが唯一『バカ娘』と呼ぶ人物。 彼女は可愛いもの好きなので、ヴィータとやたら絡ませます。 エドワルド=ハリス 55歳〔イメージCV:石塚運昇〕 通称『エド』。親分肌な艦長です。カノンと出会ったエピソードも簡単に話の中に入れます。 トニー 外見20歳後半〔イメージCV:子安武人〕 エドワルドの使い魔。アーカム戦艦“エルザ”の操舵手。元ネタを知っている人はいるはずです。そこは突っ込まないで…。 サキー 外見16歳前後〔イメージCV:折笠富美子〕 同じくエドワルドの使い魔。エルザのオペレーターを務めています。礼儀正しくて、誰でも『様』を付けて話します。が、カノンは『チビ様』と呼んでしまいます。これも元ネタを知っている人、突っ込まないで。 今回、管理局の雰囲気が若干悪く見えますが、気にしないでください。後、なのは達のランクはこんな感じです。 なのは:AAA+ フェイト:AAA+ はやて:S クロノ:S ユーノ:AA(もう直ぐAAA−になる) シグナム:AAA+ ヴィータ:AAA シャマル:AA ザフィーラ:AAA− アルフ:AA クロノとユーノが高いように思えますが、これは…本編で二人があまり目立たなかったから。クロノは強いんですよ!! で、飽く迄もメインはアーカム達なので、メインを強くしようということでこんな風になってます。 後、属性云々はΛの個人的観点で決めました。こんな感じかなっていう具合で。 FTMは完全に趣味です。ロボット、特にガンダム大好きなので。その中でも、SEED系。 カノンのFTM:ソル・クレイヴァーは、ほぼデスティニーです。だって、あれカッコいいじゃないですか!!で、AI付です。 第二話では、バトルメインで行こうと考えてます。では。 |