アリサさんが魔法少女になった。以上。

「ちょっと待て! これで終わりか!? もっと細かい経緯の説明とか、そういうのがあるだろうが!!」

 それはまあ、気が向いたらということで。

「ちゃんと責任持てよ!! グダグダだろこんなの!!」
「どうしたの、クロノ?」
「あ、いや。なんでもない」

 フェイトの声が聞こえ、我に変えるクロノ。
 いや、現実逃避だというのはわかってる。
 だが、生来のツッコミ気質がどうしてもあのような地の文を許すことが出来なかったのかもしれない。

「………いや、詭弁だな」

 そう、詭弁だ。
 自分はただ現実逃避がしたかっただけなのだろう。
 なぜならば。

「……………(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ)」
「……………(ドドドドドドドドドドドドドドドドドド)」

 なんでか知らないが、件のアリサ嬢となのはがものすごい威圧感と存在感で向き合っているからである。
 そして彼女たちに挟まれるように生贄、もとい仲裁者が立っている。

「な、なあ二人とも? なんでこんなことになっとるか知らへんけど、けんかはやめよーな?」

 はやてがいつもの営業スマイルで話しかけるが、まったく返事もしない。

「え、えーと。なんかこー、本日もお日柄がよく……」
「昨日の夜から雪が降ってるわよ」
「あ、そ、そうやったん? せやったら、えーと……。ひ、人という字は支えあってですね」
「ここは結婚式場じゃないの。怪我したくなかったらとっとと尻尾巻いて逃げたほうがいいの」
「ハイソウシマス」

 ネゴシエーション失敗。

「はやて!」
「あかんて、聞く耳もってへん! てゆーか私が殺される! まちがいなくKILL MEや!」
「はやてのゼロ円スマイル交渉も効かないなんて………!!」

 まさしく戦場。正しく決闘場。
 今この訓練室は、あの二人による、あの二人のための闘いの場と化した。

「どうするの、クロノ!」
「ク、クソ。こうなったらやむ終えない。桃子さんを呼んで何とかしよう」
「自分で何とかしようという気はないんやね」
「うるさい、黙れ。じゃあ、僕は翠屋に………」
「それでは、合意とみなしてかまいませんね!?」

 クロノが急いで駆け出そうとした瞬間、どこからともなく現れた覆面の審判姿の男がそんなことをのたまった。

「ええ、もちろんよ」
「叩き潰してあげるの、アリサちゃん」
「それでは!! リリカルファイト、レディ〜〜、ゴ――――!!」

 審判が叫んだ瞬間、二人が激突を開始する。

「いくの!! アクセルシューター!!」
「なめんじゃないわよっ!!」
「貴様ぁあああああ!!」

 そんな二人をよそに、クロノは審判に駆け寄って、飛び膝蹴りを勝ち食らわす。

「おや執務官じゃありませグフゥウウ」
「誰だ!? 誰なんだ貴様っ!?」
「あれ、お忘れですか? 私ですよ、局員ですよ」
「局員って、時空管理局の?」
「もちろんですよ。それ以外に何かあります?」
「いや、覆面なんかしとるからただの怪しい人にしか見えんし」
「ハハハハこれは手厳しい。まあ、こんな一場面にしか使われない限りなくモブキャラに近い存在ですので、このような仕様になったそうです」
「仕様って何?」
「そんなことはどうでもいい!! なぜあの二人をあおるようなまねをした!!」
「なぜと聞かれれば、私が国際リリカルファイト委員会の公認レフェリーだからです」
「国際リリカルファイト委員会?」
「はい。常に美少女、美幼女、美女の影でこれらを見守り、彼女たちが困ってるときはさりげなく助け、そして争っているときは公平に審判を執り行う全時空を超えた組織です」
「へー」
「ちなみに時空管理局非公認です」

 そんな馬鹿なことを言い合っている間に、二人の戦いは空中戦に移行していた。

「さっさと消えるの! この泥棒猫!!」
「消えんのはあんたよ! この洗濯板!!」
「なのぉおおおおおお!!」
「てぇええええええい!!」

 激しくぶつかり合う、デバイスと刀。
 飛び散る火の粉、舞う魔力光。

「どうでもいいが、アリサのデバイスは刀ではなかったように記憶しているのだが」
「あ、あれはですね、我々リリカル委員会が用意したデバイスでして。アリサさんのご要望に沿う形で製作いたしました」
「要望って?」
「なんでも、どっかの天壌の業火の契約者が持ってそうな刀が良いそうで」
「やけに具体的なのが気になるわー」

 混迷を極める戦場。
 そこにあるのは混沌とした闘いの情熱だけだ。

「いくら小難しそうな文章でごまかそうとしても、戦闘の表現力不足は補えんぞ」
「さっきからどうしたの、クロノ?」
「独り言ばっかりぶつぶつつぶやいて。もっと私の相手してーなー(ガバッ)」
「うわっ。いきなり抱きつくな」
「ムッ。お兄ちゃん、私も(ギュゥウ)」
「いいながら、首にかじりつくのはやめてくれ」
「オオ! 合意とみなし、リリカルファイトを始めて」
「お前は黙れぇええええええ!!」

 さて、こっちはこっちでカオス化しだしたが、それは置いといて。
 アリサとなのはの闘いは平行線をたどっていた。

「なのぉおおお!!」

 なのはの叫び声と同時に、アクセルシューターが鋭い動きでアリサに迫る。

「甘い!」

 弾道の全てを見極めたアリサは、一刀のもと全てを斬り伏せる。

「甘いのはそっちなの! ディバインバスター!!」

 アリサの動きが止まるその一瞬、狙い澄ました砲撃が放たれる。

「舐めんじゃないわよ!!」

 だが、その一撃も背中に生えた炎の羽の制動により、あっさりとかわされる。

「今度はこっちの番ね!」

 言うが早いか、急速に加速したアリサは、なのはとの間合いを一気につめる。

「燃え尽きなさい!!」

 そして一切の加減もない、灼熱の炎をなのはにぶちまける。

「こんな炎でぇええ!!」

 障壁を張ったなのはは、その場で踏ん張り炎をやり過ごす。

「なのはを溶かせるのは、ユーノくんの情熱の愛の炎だけなの!」

 恥ずかしげもなく宣言し、アリサに向かって逆に突貫する。

「喰らうの! フラッシュインパクト魔砲斬りぃいいいいい!!」

 正面からぶつかる、アリサ。
 その身体は、ピクリとも動かない。

「私を動かしたかったら、せめて」

 左手で刀を構えたまま、右手を大きく振りかぶる。

「このくらい気合入れなさい!!」
「!」

 障壁を再度張るも、あっさりと破られアリサの拳をレイジングハートで受け止めるなのは。
 そのまま吹き飛び、地面に叩きつけられる。

「ハン。意外ともろいわね。まあ、私の愛のほうがあんたより少しだけ強かったってことかしら」

 アリサはそう言って、髪の毛を掻き揚げる。
 紅蓮に染まった紅い髪が、ふわりと後ろに流される。

「…………えーと。アリサが使ってる魔法って、現在にはない魔法なんだよな?」
「ええ。精霊契約式、仮にスピリット式とでも呼びましょうか。リンカーコアが未発達、あるいは何らかの欠損が見られる世界の魔法でして、外部装置としてリンカーコアの代替品を用意して、それを利用して魔法を使うというものです」
「そんなこと出来るんですか?」
「出来る出来ない以前に、今目の前に存在しますからねぇ。まあ、過去の遺失技術が使われてるのは間違いありませんから、あれも立派なロストロギアですね」
「せやったら、あれも危険な技術なんですか?」
「いえ、言うほど危険ということもありませんね。形式としては、あれはユニゾンデバイスに近いものですが、単体の意思が存在しませんから。ただ、何らかの適正な必要なようでして、現在の技術で復元できたとしても有効利用は難しいでしょうけどね」
「なんだか急に難しい話になってきたな………」

 クロノはアリサの胸にかかっているペンダントのようなものに視線を向ける。
 二つの金の輪が、交差するように黒い石を囲っているデザインのものだ。
 名前はないらしい。

「だとすると、彼女にも相応のふさわしい名が必要か」
「名前?」
「ああ。ミッド式では魔法を使うものは魔導師というが、ベルカ式では騎士と呼ぶだろ?」
「ああ、せやね」
「では魔法の習得の仕方から、契約者と呼びましょうか」

 戦闘ももう終わったように見え、ほのぼのとした空気があたりに流れ始める。
 が。

「まだなの…………」

 すさまじい轟音を立て、なのはが立ち上がる。
 音源は、どうやら石突をつきたてたレイジングハートらしい。

「まだ、終わってないの………」
「やめときなさい。あんたに勝ち目があると思ってるの?」

 完全に悪役のセリフをはいて、見下すように顔を上げるアリサ。

「レイジングハート!! アレで行くよ!!」
《待って下さい、マスター。あのモードはまだ不完全な上、コントロールに成功しても確実にフレームが粉砕》
「良いからやるのぉおおお!! あのクソアマに思い知らせてやるのぉおおおおお!!」
《………わかりました》

 悲壮な覚悟を決めるレイジングハート。
 そして、なのははレイジングハートを高らかにあげる。

「レイジングハート、カートリッジフルロード!!」
All right


「なによ、まだ隠し玉があったんじゃない」

 嬉しそうににやりと笑うアリサ。
 その顔は、まるで狩りの喜びに震える獣のようだ。

「ま、まだ続くのか!?」
「っていうかなのは、なに!? レイジングハートにまだ変形モードがあったの!?」
「聞いてへん!! 私らなにも聞いてへんよ!?」
「あ、それも我々が」
「「「今すぐ死ねぇええええええ!!!!」」」

 三人から袋叩きの目にあう局員。

《………バルディッシュ》
《なんだ、レイジングハート》
《もし私が粉々に壊れたとしても、私のことをけして忘れないでください》
《………わかった。約束しよう》
「え、ちょっと待って!? 何で二人してそんな大人な空気かもし出してるの!?」

 デバイスたちの突然の会話に、余計に混乱するフェイト。

「あかん。ここは地獄や!! リインフォースははよ逃げぇ!!」
「ま、マイスター!!」

 生まれたばかりの我が子だけでもと、自分を盾にする覚悟を決めるはやて。

「っていうか、誰でも良いからこの子達を止めてくれぇええええええ!!」

 もはや神に祈るしかないクロノ。
 はたして、その願いが聞き届けられたのかどうか。

「あのー………」

 プシュンと軽い音がして、訓練室の扉が開けられる。
 そこに立っているのは、三人の足元で袋叩きにされた局員とまったく同じ(覆面込み)格好をした局員だ。

「局員さん分身!?」
「ってお前じゃない!! 僕が呼んだのはお前じゃない!!」
「あかん!! せやったらこの子だけでも連れて逃げてください!!」
「いやですマイスター!! リインも一緒が良いです!!」
「あの、とりあえず落ち着いてください」
「こいつ(といって足元の局員を踏みにじる)とそっくりな風貌のお前にそういわれるのはそこはかとなくむかつくが、なんだ!?」
「いえ、すずかさんというお嬢さんから伝言を頼まれまして」
「すずかが?」
「ていうかなんで局員さんに?」
「『ユーノくんは私が預かったよ。返してほしくても返してあげないから、探さないでね♪』………だそうです」
「「「「「……………………は?」」」」」

 その場の空気が凍った。闘っていた二人の空気さえも。
 そんな中動いていたのは、不思議そうな(といっても顔は見えないが)局員と、ただ泣きながらはやてにしがみつくリインだけだった。










 アリサに続き、すずかも魔法少女化!
 そして誘拐されてしまうユーノ!
 少女たちは、己の想いとプライドをかけ、ユーノの奪還のために動き出す!!
 なのはは叫び、フェイトは泣き、はやてはボケ倒し、クロノはツッコミの伝道師となる!
 局員たちは続々増殖!! っていうかほんとに収拾つくのか!?
 そしてアリサは最強必殺の奥義を繰り出す!!

 次回、魔法少女バーニングアリサ/(スラッシュ)!! 「総てを焼き尽くす炎の裁き」!!

 けして期待しないで待て!!!





―あとがき―
「さーて、混沌としてきたぞー。どうすんだよこれ、むちゃくちゃじゃん、ウフフフフフ」
「てめえで生んだ物語だろ。てめえで責任取れや」
「だれよあなたっ!?」
「自分で生んだキャラ忘れるな!!」
「あー、ユーノくんの幼馴染(男性キャラ、二つほど年上)かー。でもなんでこんなとこにいるの?」
「デモも何もてめえが呼んだんだろうが」
「そういえばそうだねー。よしっ!! ここで君のお名前募集コーナーを開こう!!」
「行き当たりばったりかおいっ!?」
「採用された方には、彼のお名前がそのままつきます。リクの受付は………コンちゃんのお仕事だから受け付けません。ちなみに細かい設定は、型のアームドデバイスを使うベルカ式の騎士で、スクライア一族の血縁ではなく拾われ子で、スクライア一族でのお仕事は自衛団です」
「やめろよおい、人様のサイトでそういうことをするのは!?」
「応募の方法は、掲示板にそれとなく書いといてください。見て気に入った方のお名前と、こいつの名前を掲示板に再び張ります」
「だからやめとけって!! なに言われるかわかったもんじゃ」
「それではまた会う日まで。しーゆー」
「人の話し聞けよおいっ!?」





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