前回のあらすじ。 惑星から除外された冥王星がキレた。そんな感じ。 「うぉーい…………」 ん? クロノくん、ツッコミにキレがないね? 「あんな状況で放置されて、つっこむ気が起きるわけないだろう………」 それもそうか。 魔法少女バーニングアリサ/!! 「終焉」 前回までのあらすじ。 自動人形のノエルを倒し、月村邸の地下室へと侵入した一行。 そこで待ち受けていたのは、どこか吸血鬼っぽいすずかだった。 圧倒的な力で追いつめられる一行。 しかし中でも一番扱いがひどいなのはが暴走。ついに冥王が覚醒する。 「一番扱いがひどいのって俺だと思うんですけど」 「お前の場合それがデフォだろうが。文句言うな」 「そですね」 「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」 なのはの哄笑の中、ある意味のんきに会話するクロノと局員。 まあ、このくらい泰然と構えていないと精神のほうが先につぶれるだろうが。 現に。 「……………(チーン)」 「あわ、あわわわわ」 フェイトは無言のまま気絶。 はやては腰を抜かして立てなくなっている。 「すごいじゃないのよ………」 「やるね、なのはちゃん………」 この二人がそれでも戦闘意欲をなくさなかったのは、ある意味賞賛に値するかもしれない。 「…………」 唐突に笑い声がやむ。 「!」 その瞬間、アリサが双翼を広げてなのはに斬りかかる。 「てぇええええい!」 だが、強固な障壁に阻まれ、刃はなのはに届かない。 「くっ! よけないとはなかなかいい度胸してるじゃない」 「よける? それは弱者の選択肢なの」 なのははゆっくりと拳を振り上げる。 「王者の選択肢は、ただ目の前の羽虫を叩き潰すことなの」 振るわれた拳を、羽を使ってガードするがそのまま吹き飛ばされる。 「なのはちゃん」 「なの?」 すずかの呼び声に珍妙な返事をするが、その答えは鋼の銃弾だった。 幾度も叩き込まれる炸裂鉄鋼弾。 「無駄なの」 だが、障壁はこの蹂躙者の存在すら通さない。 「今度はこっちの番なの」 そう言ってゆっくりと上げられる右手。 「プルートバスター」 つぶやきとともに放たれた一撃は、砲と呼ぶのもおこがましいものだった。 これは壁だ。 「…………ッ!!」 なすすべなくその一撃に蹂躙されるすずか。 「というかなんだアレは? 使用魔力量が普段のなのはとは桁違いだぞ?」 クロノが呆然とそうつぶやくと、レイジングハート・プルートの開発者たる局員がそれに答えた。 「アレは次元連結システムの恩恵です」 「次元連結システム?」 「はい。亜空間飛翔魔法の原理応用で、よその空間に存在する魔力をこちらに引き込んで術者が使用するというものです」 「とんでもないアホ技術だな。そんなのレイジングハートが持たないんじゃないか?」 「ですので、彼女は術式の行使は一切せず、ただ魔力制御だけに集中してもらってます。ほら、さっきから一言もしゃべってないでしょ?」 局員の言うとおり、レイジングハートはさっきから沈黙を保っている。 「いやむしろアレは過剰魔力のせいで、オーバーヒート起こしてるんじゃないのか?」 「そういう意見もありますね」 しれっと言う局員。 とりあえずもう一回吹っ飛ばしておくか、とクロノがS2Uを向けると、 「何のお話をしてるの?」 冥王がこちらに向いた。 「私も混ぜて欲しいの」 「執務官がですねー! なのはさんステキーって!!」 「そんな安っぽいおべっかが通用するような」 「ありがとうなの」 「通じた!?」 にっこり微笑むなのは。 現状を考えなければ、誰もがときめく笑みだったろう、とクロノは後に親しい者に語った。 「でも、なのははユーノくんのものなの」 そう言ってゆっくりと手の甲の発射体をこっちに見せ付けるように掲げる。 「だから」 「うおりゃぁああああ!!」 背後から、アリサが一閃。 だがやはりその一撃は届かない。 「アリサちゃん。お行儀の悪い子にはお仕置きなの」 なのははそちらに向こうともしない。 だが次の瞬間、アリサの身体が桜色の閃光に包まれた。 「なんだ今のは!? 明らかになのはの攻撃なんだが、モーションがまったくわからなかった!!」 「だぶん、次元連結砲ですね」 「なんだそれ」 「詳しい原理は省いて説明すると、次元連結システムの応用で、空間を超えて魔力を叩きつけるものです」 「もう何でもありだな」 クロノのつぶやきとともに、なのはは先程のセリフを再開する。 「だから、さよならしなきゃなの」 「待ってくれー、なのは。こういう場合、紳士いやさ淑女的に見逃してくれるとかそういう選択肢はないだろーか」 「じゃあね」 クロノの懇願も無視して放たれる一撃。 「畜生結局こうなったかじゃあ仕方ない無能局員バリアー!!」 「へ?」 叫びと同時に、局員を目の前に突き出す。 目を焼くような閃光が炸裂し、後に残ったのは黒焦げの局員だった。 「フッ。対衝撃用専用装備、無能局員バリアー。これさえあれば大抵の危険から身を守れる優れものだ。でもまあ、一応使用回数に制限はあるからその辺は考えないとな」 「一応デスか………」 手に持った局員がなんか言ってくるが、今回は無視。 「さすがだね、クロノくん」 なのはは実に愉快そうに言って、今度はもう一方の手も上げる。 「でも、今度はそううまくいくかな………?」 「クッ、時間差二連攻撃か! おいバリアー! なんかこう、増えろ! 質量を持った残像を産め!」 「無理です。というか執務官、微妙にキャラが壊れてきてますよ」 そんなクロノたちの向こう側で、すずかがよみがえった。 「すごいよ、なのはちゃん………」 その顔はだらしなく笑み崩れていた。 「これなら、私も本気になれるよ。 今からなのはちゃんを分類SSS以上の魔導師として認定」 途中から声に表情がなくなり、しかし顔の笑みは崩れない。 「拘束制御術式、第3号、第2号、第1号、開放。状況A「プルート」発動による承認認識。目前の敵完全沈黙までの間、能力使用限定解除開始」 途端、すずかの姿が黒色の結界に包まれる。 「さあ、おいで………。ディス・レブ、フルドライブ………」 そして、結界の崩壊とともに最悪の兵器たる銃神が現れる。 「フフフ………」 すずかの、バリアジャケットの形が変わっていた。 今までのものは、黒一色のゴスロリチックなドレスだったが、今はその背中に六枚の羽を生やし装甲板のようなもので身体を包んでいる。 ビキニ鎧というとわかりやすいだろうか。 だがそこに艶かしさはなく、あるのはある種の禍々しさだけだ。 「うわー。見てくださいよ、執務官。すずかさんがなんかエロ鎧に身を包んでますよ」 「エロいだけならいいんだがな」 クロノの懸念の通りだった。 肩からせり出してきた砲身を、すずかはなのはに向けた。 「なーのーはーちゃーん」 「なの?」 同時に、その一撃が放たれる。 「メス・アッシャー♪」 「なのぉおおお!?」 友達を家に誘うような軽い一言とともに放たれた一撃は、だが町ひとつ消し飛ぶんじゃないかと言う威力を秘めていた。 砲撃は障壁とぶつかると、ありえない轟音を立てた。 「フフフ。どうかな? 私の銃神の力は」 「なのぉおおお………。そうこなくちゃ面白くないの………」 ニイィィィ………、と頬を歪めたなのはは即座に砲撃で返す。 飛翔するすずかは、華麗にそれを避け、右手に握ったショットガンらしきもので応戦する。 「なんだアレ。彼女はあんなもの持ってたか?」 「さー。………あっ。ひょっとしてジャッカルですかね? すずかさんのパワーアップに引きずられてアレもパワーアップしたとか」 「あー、理論的には納得できないはずなんだけど、なんかもうそれでいいやとか思ってる自分がいるー」 脱力したようにつぶやくクロノ。 故に。 ガシッ。 「へ?」 「どうした局い……」 彼女の存在に気がつかなかった。 「あ、アリサ?」 「こいつの存在を借りるわよ………」 「わーイヤなヨカーン」 局員はなされるがまま、紅蓮の結界に包まれる。 「―― か細い悲鳴が聞こえ、局員の魔力が消える。 「―― 局員を包んでいた結界が消え、その中に内包していた魔力がアリサを包み込む。 「――“ そして世界が紅蓮に包まれる。 「―――ッ!!」 「………っ!?」 なのはとすずかが振り返ったその先にいたのは、炎。 まさしく紅蓮そのものとなったアリサだった。 白いチャイナ服のようなバリアジャケットは完全になくなり、紅蓮の炎だけがアリサの身を包んでいた。 「私だけのけ者なんてひどいんじゃないの?」 「し、執務官………。わ、私の代わりにあのエロい姿のアリサちゃんを撮影してください………」 「ごめんこうむる。ばれたら間違いなく殺される」 局員が差し出してくるデジカメを払いのけ、クロノは慌ててフェイトとはやてがいる場所まで行く。 「フェイト、はやて」 「…………(魂が半分くらい抜け出している)」 「あわわ、わわわ」 どうやら混乱しているようだ。返事がない。 「………このままここに置いてくぞ(ボソッ)」 「なに、クロノ?」 「どうしたんや、クロノくん?」 脅しは効果があったようだ。 パッチリ目を覚ましたフェイトと、目の焦点があったはやてがこちらを見返してくる。 「ここから逃げるぞ。あんなのに巻き込まれたら命がいくつあっても」 「塵一つ残さず分解してあげるの………」 「廻って、インフィニィティ・シリンダー………」 「――血の流れより紅きもの、この心より熱きもの――」 言ってる間に、三人の周囲の魔力がとんでもなく膨れ上がってゆく。 「ソニックフォームっ!!」 「ああ!? フェイトちゃんずるいっ!? リイン、ユニゾン!!」 「ユニゾンイン、です!!」 「しつむかーん。置いてかないでくださーい」 「ちっ。めんどくさい………」 大急ぎでクロノたちが退避していくが、三人には彼らのことは見えなかった。 眼前にあるのは、ただひたすらに憎い恋敵のみ。 「消え去るのぉおオオオオ!! スターライトブレイカー・メイオウッ!!!」 「アイン・オフ・ソウル、デッドエンドシュート!!!」 「 チュッドーン。 「いや、チュドーンなんて生易しいものじゃないだろう、これ………」 クロノの独り言につっこむ者はいない。 ただ目の前にある半径500m超のクレーター(故・月村邸)を眺めるだけだ。 「やー。派手に壊れたわねー」 「すずかお嬢様すごいですねー」 「なんといってもお嬢様ですからね」 のんきな月村家主従。 「あは、あはははははははははは」 「すごいですー。リインもがんばってこれくらいはできるようになるですっ!」 「お願いやからがんばらんといて、リイン………」 深く沈みこむアースラ一行。 そんな中、なにやら端末のようなものを操作していた局員が、今思い出したようにつぶやいた。 「そういえば執務官。よろしかったんですか?」 「なにがだ?」 「ユーノくん。確か、地下室の中にいたはずじゃあ………」 「「「………………あ」」」 すっかり忘れてた。 結論から言えば、ユーノは生きていた。 あの後、スクライア一族の皆様方にも手伝ってもらい、月村邸跡を必死で掘り起こしたところ、結構深い所に埋まっているのを発見された。 医者によると、瞬間的にありえない量の過剰魔力を受けたせいで、逆に仮死状態になって奇跡的に助かったとのことだ。 三人娘はというと、こちらは捜索に難航した。 どうも魔力同士が衝突した瞬間、空間がゆがんでしまったらしく、どこかへ強制転移されてしまったようなのだ。 アースラに協力してもらって捜索を続ける中、クロノはこんなことを考える。 (ひょっとしたら、このまま見つからないほうが世界のためなんじゃないだろうか………) ―あとがき― 「終わった! とりあえず終わった! 魔法少女バーニングアリサ/!! これにていったん閉幕となります!」 「よーし。じゃあまずやるべきことがあるはずだ」 「?」 「日本全国のバーニングアリサ創作者、およびそのファンの皆様に謝れぇええええええ!!」 「Why?」 「なぜと問うか!? こーれーのーどこがバーニングアリサだ!! 言ってみやがれ!!」 「燃えてたじゃんアリサ。最後に」 「燃え尽きるほどバーニーング、ってあほかぁああ!! あれでバーニングアリサなら、アリサが焼死体で発見されたとしてもバーニングアリサになるわっ!!」 「これが俺のバーニングアリサだぁああああ!!」 「いばるなっ!! ふんぞり返るな!! まずはいったん吊って来い!!」 「まあ、待て。俺の言い分も聞いてくれ」 「なんだよ?」 「バーニングアリサってさ、結構いろんなとこで増殖してるけど、いざssにしようとするとどうしてもシリアスな展開になっちゃうんだよね」 「ああ。確かにアリサが魔法少女になろうとすると、相応の理由が必要になるよな」 「俺がまあシリアスssにちょっとしり込みしちゃうこともあって、そういったssを読んでなかったりする」 「単純にお前がチキンだ、ってだけだろ」 「そういう感じで、ちょっと悔しかったんで、誰でも手軽に読めるssということでチャレンジしたのがこのバーニングアリサ/!! だ」 「それにしたって読む人選ぶだろうが。なに、このパロネタの嵐」 「いいんだよ、このくらいで。こういうのはノリが命なんだから」 「まあ、そうだけど………」 「これの元になった、初期案のバニアリ系のssなんて、なのはとアリサがユーノをめぐって真剣ガチバトルって内容だったし」 「そっち書けよ、オイ!?」 「それじゃあ、皆様。ひとまずはここでお別れとなります」 「あ、それから!! アリサやすずかが魔法少女になった経緯とかきちんと文章化しとけよ!!」 「このあとがき内で募集しておりました『作者の相方お名前募集のコーナー』は、今回のssの掲載をもって終了とさせていただきます」 「人の話聞けって!! お前いつもそうだよな!!」 「それでは、しーゆー♪」 「ああもう!! またなっ!!」 ―魔法少女バーニングアリサ/!! 没ネタ― アリサ「私は、アリサ・バニングスじゃないわ………。アリサ・Burningよ!!」 クロノ「Burningってなんだ」 アリサのこの名乗り上げ。諸事情によりカット。 |