私たちの知る地球によく似た世界。
 そしてそこに存在するひとつの町、里々香瑠市
 ここはまさに混沌のフラスコ。
 さまざまな事象、現象、法則、存在が危ういバランスで成り立っている町。
 そして、今宵新たなる勇者がこの町に爆臨する。





 超勇者戦記コンブレイバー「第一話・勇者、参上」





「ふふふ。また極上のサンプルが手に入りましたね」

 フード姿の男が含み笑いをあげながら、視線を奥のほうにやる。
 そこに眠っているのは、小さな少女たちである。

「フッ。この俺にかかれば、この程度造作もないわ」

 黒い装甲服のような体を持つ怪人がさも当然と言うように、胸を張る。
 ここで説明しよう。
 こいつらは悪の組織“ワルモノーデス”という極悪非道な組織の幹部候補である。
 あくまで候補なので基本的に末端の兵士たちと立場は変わらない。

「雑用雑用また雑用の屈辱の日々………」

 フードの男が、フルフルと震えながら拳を握り締める。

「ですがっ! そんな日々とももうおさらばです! 彼女たちの持つリンカーコアを改造! 我が組織の忠実なる下僕としてしまえば、私の株は一気のに上昇!」
「そしてその際の作戦実行部隊である俺は、お前と共に手柄を立てられると言うわけだな」
「ええ、まったく。我々にとっていいこと尽くめで、非の打ち所のない作戦でしたね」
「まったく同意するよ。これも全て完璧なお前の作戦のおかげだな」
「いえいえ。あなたの作戦実行能力の高さがなければ、こううまくはいきませんでしたよ」
「ふふふ、そうか?」
「ええ、まったく」
「「あっはっはっはっは………」」

 なんとも理不尽な会話を続ける二人。
 だが彼らは失念していた。
 こういう場合に出てくる、いわゆるお約束の存在………。

「か、係長!」
「ええい、役職名で呼ぶな! ハデス様と呼べといつも言っているだろう!?」
「は、すいません係長!」
「おちょくっとんのか!?」
「まあ、落ち着けハデス。で、一体なんの用だ?」

 いきなり部屋に踏み込んできた下っ端工作員に怪人が目を向けると、下っ端は大慌てで報告した。

「はい! つい先程、自らを“勇者”と名乗る不審者たちが現れ、現在本基地内で大暴れしております!」
「「………はい?」」

 二人は開いた口がふさがらなかった。
 そう。こういう場合のお約束。
 それは、正義の味方と言う存在だ!





「ひ、ひぃ………!」

 おびえる下っ端戦闘員。
 その視線の先には、白と青を基調とした機械の体を持つ人間を先頭とした三人の人間が写っていた。

「フ……他愛ないぜ」
「まったくだ。こんなんじゃ、腕がなまっちまうな」
「フム。思ったほどではない」
「な、なんなんだよ! お前ら一体なんなんだよぉ!!」

 恐怖の悲鳴を聞いて、三人組がピクリと体を震わせた。

「俺たちが何者か?」
「そんなに聞きたいか?」
「ならば、教えて進ぜよう!」

 まず、白銀のコート姿の男が腕を大きく左のほうに振る。

「我こそはブラボー技、継承者! そして同時に彼らの魂に共感せし者!
 キャプテン・ブラボー、サイモン・ユージ!」

 次に、装甲服と剣を装備した仮面の戦士が背を向けながら振り返る。

「俺はW78星雲から来た、オンドゥル星人に事故られて融合されて変身する複眼戦士!
 仮面ライダーブレイド、文明!」

 そして真ん中に立っている機械人間が、右人差し指を天に向け左手を腰に当てる。

「俺は魂の伝道者! 全ての魂の解放者! 更なる高みと熱血と萌えを目指す者!
 勇者にして有機生命体アンドロイド、R−1・コン!」

 そしてそれぞれが、思い思いのポーズを取る。

「「「我ら、勇者戦隊! コン・ブレイバーズ!!!」」」

 全然統一感がなかった。
 しかしこの時下っ端戦闘員は不覚にも、こいつらちょっとかっこいい、と思ってしまった。

「無用な殺生は好まん」
「もう悪さすんなよ」
「真っ当に生き、そして自身の魂を開放するんだ」

 言うだけ言うと、コン・ブレイバーズの三人は下っ端戦闘員をそのままに先に進んだ。
 このあと、下っ端戦闘員は彼らに多大な影響を受け、著名な燃え&萌え小説家になるのだがそれはまた別の話。

「むっ」

 やがて三人は、少し広いドーム上の場所にやってきた。

「ここは………?」
『ようこそ。コン・ブレイバーズの諸君』

 どこからかマイク音声が聞こえてくる。

「誰だ!?」
『フフフ………。そうだな、とりあえずダガーとでも名乗っておこうか』

 声の主――ダガーは余裕たっぷりに三人に自己紹介する。

『たった三人でこのワルモノーデスの前線基地に乗り込んでくる勇気は認めよう』
「ふっ。褒められて悪い気はしないな」
『だがっ!!』

 ダガーが気合を入れて吼えると、周囲からわらわらと下っ端戦闘員が現れた。

『フハハハハハ!! この数の暴力の前にはいたし方あるまい! 自身の勇気と無謀を履き違えた愚かさに絶望するが良い!』

 三人は互いに背中合わせになるように、周囲の下っ端戦闘員を見回した。

「うおお。なんか俺たちスーパーピンチ?」
「いや、どうだろう。微妙に敬遠されてるような気がする」
「よく見ると、俺たちが吹き飛ばした連中もいるみたいだな」

 よーく見ると、ところどころ衣装が汚れてたり、微妙に泣きそうになっている連中もいた。
 やられた連中を再利用したらしい。
 それでも百人近い人数がいる。
 ここで採る彼らの選択肢は?

「それは……」
「もちろん……」

 文明とサイモンがコンに振る。

「全員ぶっ飛ばす!」

 それを合図に周囲の戦闘員たちが一斉に襲い掛かってくる。

「ぬぉおおおおお!!」
「ガンホー、ガンホー、ガンホー!!」
「給料アップ! これであのソフトが買える!」
「うわーん! 生まれてきてごめんなさーい!」

 三人はそれぞれに前進し、互いの必殺技を発動した。



「行くぜ! G・T・リヴォルバー!」

 コンは叫んで両腰の巨大なリヴォルバーを引き抜いて、両手に構える。

「おらおらおら!」

 そして回転するように身体を前進させつつ、戦闘員たちを叩きのめしていく。

「!」
「バカめ! わざわざ自分からつっこんでくるとはな!」

 あまりにつっこみすぎて、周囲を戦闘員たちに囲まれても、コンは余裕で腰だめにリヴォルバーを構えた。

「甘いぜ! G・リヴォルバー、ランダム・シュート!」

 そして背中のスラスターをふかし、回転しながら周囲にリヴォルバー弾頭を叩き込みまくる。

「「「ぬぁぁぁぁぁ!?」」」

「シュート、シュート、シュートォォォォォ!!」

 そして全てを撃ち尽くす頃には、周りの戦闘員は全員戦闘不能になっていた。

「ふっ。百年早いんだよ」



 文明は、どこからか取り出したカードを剣のスリットに滑らせる。

《MACH、THUNDER》
「うぉぉぉぉ! 稲妻招来!」

 掲げた剣から、容赦ない雷光がとどろき、そして文明は戦闘員たちの間を高速で駆け抜ける。

「必殺………稲妻剣、音速斬り!」

 次の瞬間、放電が連鎖し、文明が斬った者のみならずそばにいたものまで全てがダメージを受ける。

「「「しびればびれぼあー!?」」」

 倒れ付していく戦闘員。
 文明はそんな彼らを見てこうつぶやいた。

「ふ、またつまらぬものを斬ってしまった………」



 サイモンは、一気に間合いをつめると腰だめに拳を構える。

「ゆくぞっ! 十三のブラボー技のひとつ………」
「「「死にさらせおんどりゃぁぁぁぁ!」」」

 芸のない脅し文句でつっこんでくる戦闘員。
 そんな彼らを迎えたのは硬いサイモンの拳だった。

「ぶふっ!?」
「ブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラブラァァァァァァァ!!」

 叫びと共に放たれる無数の拳。
 容赦なく砕かれる顔面。
 やがてその場に立っているのはサイモンだけとなった。

「これぞ、粉砕ブラボーラッシュ………!」





「なんだとぉぉぉぉ!?」

 司令室のモニターで闘技場の様子を見ていたダガーは、思わず絶叫していた。

「C級とはいえ、わずか一分で百人の戦闘員をノックアウト………!」

 同じくモニターを覗き込んでいたハデスも戦慄と共につぶやく。

「まずいぞ! このままだと奴らがここに到着するのも時間の問題だ!」
「くぅぅ。ようやく実験がスタートした所だというのに………」

 悔しそうにうめくハデスの視線の先には、ホルマリン漬けのように妙な容器の中に浮かぶ茶髪を二つくくりにした少女の姿が。

「仕方ない。この基地は放棄し、次の基地に………」
「いやしかし、素材を全員連れて行くのは無理だぞ!?」
「ならば厳選すればよいだろう!? 今ここでくじけていいのか!? 一生下っ端街道だぞ!」

 ダガーの叱咤に、ハデスは悔しそうにうつむいて、金髪のツインテール少女と黒髪のロングヘア少女を指差した。

「ではこの娘とこっちの娘を」
「それは良いが何故この二人なのだ?」
「勘だ」
「そうか」

 他愛のない会話を交わし、さくさく脱出の準備を進める二人。
 と、その時。

「はぁっ!」

 叫びと同時にサイモンが体当たりで司令室のドアをぶち破った。

「うわ、はやっ!?」
「何故そんなに早いのだ!」
「いや、ここまでの道のり一直線だったから」

 文明があきれたように言うと、ハデスが悔しそうに地団太を踏んだ。

「くそう! 前線基地だから経費削減とか言って、簡単な構造にしおってぇぇぇぇ! おかげで逃げる時間もないではないか!」
「さあ、少女たちを解放しろ!」

 コンが一歩踏み込んでそういうと、ダガーがその前に立ちはだかった。

「ダガー!?」
「ゆけぃ、ハデス! しんがりは任された!」
「すまん!」

 ハデスがそう言って、二人の少女を抱えて奥のほうに逃げる。

「逃がすかよ!」

 文明が言って追おうとするが、一瞬早くダガーが弓を引いた。

「うおっ!」
「行かせん! 貴様らはここでこのダガーに倒されてもらおう!」

 剣にもなる弓を構えて、ダガーがコン・ブレイバーズに立ちはだかった。

「ならばダガーよ! このコンが相手だ!」

 立ちはだかるダガーに向かってゆくコン。

「ぬう! 喰らえぃ、コスモボウガン連射!」

 ダガーは叫んで弓を連続で引くが、コンにはかすりもしない。

「ば、ばかな!?」
「今度はこちらだ! T−Linkナックル!」

 コンが叫んで、光り輝く拳を叩き込む。

「ごふっ!?」
「はぁぁぁ、っ破ぁぁぁぁ!!」

 そしてさらにつきこむと、エネルギー波動がダガーを貫いた。

「がはぁぁぁぁぁ!!」

 壁にたたきつけられるダガー。

「ふぅ………」
「やったな、コン!」
「こちらも救出成功だ」

 サイモンがシリンダーを破壊して、中に浮いていた少女を救出する。

「よし。今回はこれにて………」
「フフフフフ………」

 コンが締めくくろうとすると、ダガーが不気味な笑い声を上げた。

「! 生きていたのか!?」
「くふぅ。もうじき死ぬさ。だが、ただでは死なん。貴様らも道連れよ!」

 そういうと、ダガーの体が輝き始める。

「まさか自爆!?」
「そんなの今時流行らねえっつーの!」
「文明! 残りの少女たちを!」
「おうっ!」

 文明がまだ倒れていた少女たちを担ぎ上げるのを確認して、三人は大急ぎで基地から外に出た。
 そして外に出た瞬間、基地の中から巨大なダガーが姿を現した。

「ぐおぉぉぉぉぉ!!」
「巨大化かよ!?」
「お約束といえばそうだがな」
「ダガー! ならば俺もお前に答えてやるぜ!」

 コンは叫んで、右手を大きく上げた。

「来いッ! SAaaaaaN!!」

 説明しよう。
 有機生命体アンドロイドであるコンは、自分の意思で相棒たるデバイスカー“SAN”を呼ぶことができるのだ!

「ぐぶっ!?」

 そして超高速でやってきたSANは、通り道にいた文明をなぎ倒した。

「文明ぃぃぃぃぃぃ!? しっかりしろぉぉぉぉぉ!!」

 慌てて文明を助け起こすサイモン。
 そしてSANの中から誰かが降りてきた。

「猫、参上!」
「って、紫電改かよ!?」

 説明しよう。
 彼女の名は紫電改。死にかけていた子猫(♀)に、コンが有機生命体アンドロイド手術を施し、ネコ耳幼女型アンドロイドとして蘇らせたサポート係だ!

「何でお前が乗ってんだよ!」
「暇だから」
「暇なら俺をひき殺すのかぁぁぁぁぁ!」

 やってきた紫電改とコントを繰り広げる文明を置いて、コンはSANに乗り込んだ。

「行くぜ! チェェェェェンジ、コンサァァァァン!!」

 叫びと共に走り出したSANは、瞬く間にロボットへと変形を済ませる。

「さあ、俺の魂はとっくにクライマックスだぜ!」

 ―――Soul Link system LvMAX―――

 どこからか聞こえてくる、謎の機械音。
 同時に次元を越え、巨大車両“ブレイブ・バン”が出現する!

「うおぉぉぉぉぉ!」

 大きく飛び上がり、コンサーンはブレイブバンに取り付く。

「ソォォォォル、イグニッショォォォォォン!!」

 魂の咆哮と共に、ブレイブ・バンが変形。
 そしてコンサーンがその胸部に収まり、巨大ロボットとなる。

「闘魂勇者、コンブレイバー! ここにけんざぁぁぁぁん!!」

 説明しよう。
 有機生命体アンドロイド・コンはその体内に込められたSoul Link
systemが高まることでコンサーンに、そしてそのレベルがMAXに到達することで、次空間を越え召喚されるブレイブ・バンと融合合体。闘魂勇者・コンブレイバーへと進化するのだ!

「待たせたな、ダガー!」
「ぐおぉぉぉぉぉ!」

 コンブレイバーはまずダガーに詫び、律儀に待っていたダガーはそれに絶叫で答えた。

「そうか! ならば行くぜ!」
「というか、今ので会話が成立していることにつっこむ猫」
「やかましい黙れ」

 紫電改がぼそっとつぶやいている間に、拳と拳の応酬が始まる。

「うおぉぉぉぉ!」
「ぐがあぁぁぁ!」

 ほぼ互角にも見えるが、ややコンブレイバーが押している。

「がぁっ!」

 一声吼えたダガーは、一度距離をとり、人間時にも使用していた弓を召喚する。

「むっ! ならば、チェンジ・アイアムコン!」

 一旦防御形態に変形して、ダガーの弓矢攻撃をやり過ごすコン。
 そして防御を維持したまま、コンはダガーに体当たりをかける

「ぐっ!」

 体勢が崩れるダガー。
 コンはダガーをつかむと、そのまま中空へと投げ飛ばした。

「ごあぁぁぁぁ!!」
「さあ! 魂の奥底から懺悔しな!」

 そしてアイアムコンを中心に巨大なエネルギーが渦巻く。

「Soul Connfession!!」

 渦巻くエネルギーは、そのまま柱をなしダガーを塵へと変えてゆく。

「ぎゃぁぁぁぁぁ………!」

 なすすべなく消え去るダガー。

「フッ………。昇華しな。次こそは、真っ当な道を行くために、な………」

 コンは完全に消えたダガーに、鎮魂の言葉を述べた。





「しかし、ワルモノーデスは一体何をたくらんでいるのだ?」

 腕を組んだサイモンが疑問を投げかける。

「そうだよな。何であんな女の子ばっかり………」

 送り返した女の子たちの顔を思い出しながら、文明が不思議そうに首を傾げる。

「ちなみに発生した誘拐事件は全部で十数件。あそこにいた女の子たちだけじゃ全然足りないニャ」

 紫電改がそういうと、しばし暗い雰囲気が漂う。

「ワルモノーデスがたとえ何をたくらんでいようと、俺たちには関係ない」

 コンがそういうと皆足を止め、コンのほうを振り向いた。

「俺たちは力の限り闘うだけだ。そう、この胸に宿る勇気の命ずるままに!」

 コンのそのセリフに、皆は力強くうなずいた。





 私たちの知る地球によく似た世界。
 そしてそこに存在するひとつの町、里々香瑠市
 この町に、今危険が迫ろうとしていた。
 だが、時を同じくして立ち上がった勇者たちの存在も忘れてはならない。
 戦いは始まったばかりだ。



 その魂、限りなく燃やし尽せ、コンブレイバー!









to be continued.










―あとがき―
 ………嘘ですよ?(汗)
 さすがにこれはシリーズ化しませんよ? 期待なんかしないでくださいね?
 いやまー、今回は難産でしたわー。
 いっちょかっこよくするか!と息巻いたのはいいのですが………。
 駄目でした。ストーリ仕立てにするとどうしてもうまくいきません。
 コン君って、つくづく面白キャラなんだなぁ………。(しみじみ)
 でもまあ、何とかうまく話にできてほっとしております。
 文明さんと紫電改は友情出演ということで。(笑)
 それではっ!
 ………しかしリリなのキャラ全然出てないなー、とお思いのあなた。よく見なさい、さりげなく出てるでしょう?





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