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“『それぞれの休暇〜剣と指輪の場合〜』”

「良い天気ですね」
「ああ」
「絶好のピクニック日和……ってやつでしょうか?」
「そうかもな」

今日、とある連休の二日目。天候にも恵まれ暖かな陽が降り注ぐなか、レヴァンティンとクラールヴィントは二人でピクニックに来ていた。
彼等の主達----ヴォルケンリッター含むアースラチームは、度重なる激務の結末として、強制休暇を言い渡されていた。

ヴォルケンリッターとその主、八神はやてと、さらにフェイトの使い魔アルフは揃って時空管理局提督、コウ・バークフリートとその妻シオンのところに遊びに行っている。
また、それぞれのデバイスも今日は好きに過ごすといいとのことで、リィンフォースUははやてと共に行動し、シュベルトクロイツはデュランダルのところへ、グラーフアイゼンはせっかくだからと盆栽仲間にして茶飲み友達の月村恭也宅----といっても高町家に遊びに行った。
高町なのはは忙しい恋人、ユーノ・スクライア司書のところへ手伝いも兼ねて会いに行き、フェイト・T・ハラオウンとクロノ・ハラオウンもはやてと行動を共にしており、レイジングハートとデュランダルは遊園地のチケットをコウに強引に渡され、遊びに行ったし、デュランダルは前述の通りシュベルトクロイツと一緒、最後にS2Uは----リンディ・ハラオウン提督、レティ・ロウラン提督と共に翠屋へと足を運んだらしい。

そして、若干の悪意と多大な親切心という名のお節介により、レヴァンティンとクラールヴィントはピクニックに来ていた。

「なぁ」
「はい?」
「それ、重くないか?」

と、指差す先にあるのはクラールヴィントの手にある大きなバスケット。
対してレヴァンティンは手ぶらだった。
どうにも、手持ち無沙汰でかつ、どこか居心地が悪い上に情けなさも感じながら、彼は聞く。

「そうでもないわよ?」
「………そう、か」

そして、ぐいっと、彼女が両手で持つバスケットを奪い取った。

「あ、こら………」
「まぁ、重たくはないわな。だがよ、流石に女に重いもん持たせて自分が楽しているようには見られたくない訳よ」
「でも…………」
「ちっぽけな男のプライド。立てるためにも、持たせてくれねぇか?」

そう、ちょっと困ったような表情を浮かべながら、彼は微笑みかけた。

「う………はい……」

対してクラールヴィントは、若干頬を紅くすると、手持ち無沙汰に手を腰の後ろ当たりで組んだ。

レヴァンティンの右をクラールヴィントが歩き、彼の左手にバスケットが持たれる。
当然、彼の右手----つまるところクラールヴィントの方の手----は空いているのだが

「…………ぅ」
「どうした?クラール嬢?」
「い、いえ、なんでもありませんことよ?おほほほほ………はぁ」
「?」

そろそろと、クラールヴィントは伸ばしたり引っ込めたりを繰り返していた左手を神速の速さでまた後ろに回した。
そんな彼女の手の動きに気付かないようで、レヴァンティンは小さく呻いた彼女を案じ話し掛けたが、返ってきた少々おかしな対応に目を白黒させていた。

そのあとも、幾度かそんな攻防(?)は続いた。



「そろそろ飯にしないか?」
「そうね……」

どこか消沈しているクラールヴィントの様子に頭の上に?を浮かべるレヴァンティン。
だが唯単に疲れたのだろうと、手早くレジャーシートを広げ、その上に座る。

「おぉ」
「どうかしら?」
「これは中々どうして……うまそうだな」

広げられた弁当を見て、感嘆の声を上げるレヴァンティン。
そして、若干不安そうながらどこか誇らしげなクラールヴィント。

「こいつはクラール嬢が?」

と、弁当を指差しながらレヴァンティンが聞く。

「えぇ。はやてさんやマスターに教わって」
「見事なものだな」

そして、始まるランチタイム……………なのだが。

「ときにクラール嬢」
「なにかしら?」
「いや。見た感じ、というかいくら探しても何故か箸が一膳しか見つからず、揚句の果てにはその他の食器----つうかスプーンないしはフォークがみつからんのだがそこんとこどうなっているのだ?」
「えぇ!?」

ガサゴソとバスケットを漁るも、どこにも箸やフォークといったものは見つからない。

「お、おかしいわ……私、間違いなく三膳お箸を入れた筈な…の……に?」

そして、彼女はとあるものを見つけ、急にプルプルと震えだした。

「ど、どうしたのだクラール嬢。な、なんか怖い……って、紙?なんだこいつは………ってなんじゃこりゃ〜〜〜〜〜っ!!!」

そう叫び、地面にその紙----裏面に剣十字が描かれたカードを叩きつけた。
そのカードには、こう書いてあった。

『お箸二膳、確かにもらっていくのです。

いしし、楽しんできてね〜〜

from祝福の風二世&剣十字の乙女八世』


「で?」
「でって……」
「どうするよ?あのちみっこどもは後できっちりお仕置きとしても、現状をどう乗り越える?」
「う………」
「?」

途端、クラールヴィントは顔を真っ赤にしてしまった。何かまずいことでも言ったかと、困惑顔になるレヴァンティン。

すっと、箸に摘まれた卵焼きが眼前に差し出された。

「は?」
「は?じゃないわよ。はい、食べなさいよ」
「……いやいや待て待て待てぃ!!!飯はおにぎりだし、基本おかずは固形物だし!!!箸を一本ずつに分けて刺して食べりゃぁいいんじゃ………」
「うぅ………はい!!!」
「く、クラール嬢?」

必死の抗議も空しく、クラールヴィントは頑として箸を下ろそうとはしない。だが、その顔は真っ赤である。

「……………」
「うぅ〜」
「……………………」
「うぅ〜〜」
「…………………………………」
「ううぅ〜〜〜〜〜〜〜!!」

涙目になりつつあるクラールヴィントを見て、レヴァンティンは観念すると

「あ、あ〜ん」

ぱくっ。
自ら口を空け、卵焼きに喰らいついた。
二人とも、顔が真っ赤である。

「………どう……かしら?」
「ん………んまいぞ」

そういって、真っ赤な顔で笑うレヴァンティン。その表情を見て、クラールヴィントは頬を緩めた。

「じゃあ私も………」
「ん?」

といって、差し出された箸を見てまた困惑顔になるレヴァンティン。

「…………私にも、食べさせて…………ね?」

ランチタイムは終始甘い空気でうへぇな感じで終わった。



「あ〜〜、腹一杯。満足満足〜〜〜〜〜」

言って、レジャーシートに寝転がるレヴァンティン。

「クラール嬢、ごちそうさん」
「お粗末さまでした」

弁当をバスケットに片付け終えたクラールヴィントがやわらかく笑う。

「良い天気ですね」
「あぁ……」
「眠く、なっちゃいますよね……」
「あぁ……」
「枕、欲しくないですか?」
「あぁ……」
「……………膝枕、してあげますね」
「あぁ…………って、へ?」

慌てて身を起こし、傍らのクラールヴィントに目を向けようとして----そのまま、肩を引っ張られ、頭はやわらかいものの上に----

「な、く、クラールヴィン………!?」

ト、と言おうとしたが、それは口に当てられた人差し指に遮られた。

「だめですよ」

やわらかく、けど、紅い顔で微笑みながら

「女の子が、精一杯の勇気を出してるんですから」

どこか、母性を感じさせながら

「それを無下にしちゃ、ダメ………ですよ?」

クラールヴィントは、そう言った。

「そう、だな」
「えぇ」

そして、静かな時が流れる。
レヴァンティンは目を閉じてそね身をクラールヴィントに任せ、クラールヴィントはレヴァンティンの硬く、逆立った髪を優しく撫でる。

「なぁ……」
「はい?」
「昼飯、恥ずかしくなかったか?」
「恥ずかしかった………ですよ?」
「俺も………恥ずかしかった」
「ふふ。でしょうね…………あ、でも………」
「でも?」
「それ以上に、あなたに食べさせて、あなたに食べさせてもらったことが、凄く、嬉しかった」

満面の笑みで言う、クラールヴィント。

「そうか………奇遇だな………俺も、だ」

負けず劣らず満面の笑みで、レヴァンティンも言いながら、クラールヴィントの翠と蒼のオッドアイを見つめながら、その緑の髪を優しく撫でた----




日も傾き、夕焼けのオレンジに周りが染められる中、来たときと同じように、レヴァンティンはクラールヴィント側の手を空けながら、バスケット片手に歩いていた。

「…………」
「…………」

ともに、無言。されど、決して悪くない空気が二人を包み込む。

「……………っ!」
「………………ん」
「………………ぁ」

意を決して手を伸ばし、触れた手は、伸ばした手を確かに握った。

「…………えへへ………♪」
「…………どうしたのだ、急に笑い出して」
「そういうレイヴァンだって、笑ってるわよ」
「…………ふん」

レヴァンティンの顔が紅く見えるのは、きっと、この紅い夕焼けのせいだけではないだろう。

「…………ねぇ、レイヴァン」
「…………なんだ?」
「もう。話し掛けられたらそっぽを向いてないで、こっちを向きなさいよ」
「…………なん………」
「…………ん…………」
「…………ん、く……」
「………ん、ちゅ……」
「………ぷはっ。い、い、いきなりなにをするかっ!?」
「あら?いやだった?」
「ぐ………その問い掛けは、卑怯だぞ」
「ふふ………でも、悪くはないでしょう?」
「む………まぁ、な」
「ふふふ」

そういって、繋いでいた手を一旦離し、クラールヴィントはレヴァンティンの腕に抱きついた。

「…………なぁ」
「はい?」
「……………好きだぞ」
「………な、なによ今更!!」
「………これで、おあいこだ」

二人は結局、八神家付近で関係者一同と鉢合わせになるまで腕を組んでいたという。

それぞれの休暇〜レヴァンティンとクラールヴィントの場合〜
終了。






“『それぞれの休暇〜戦斧と心の場合〜』”

きっかけは、唐突に

「「は?」」

いつだって、待ってくれないで

「遊園地……」
「の、チケット、ですか」

ただひたすらに、何かを押し付けていく。



ことの発端はとある任務を終えた後、皆に強制休暇の報が入ったときだった。
その報を伝えに来たのはコウ・バークフリート提督であった。

「………てな訳で、お前ら最近働き過ぎ。人事部では『クロノ提督が艦長になってから、彼の悪い病気が主要クルーにうつった』とまで言われてる。レティ提督も流石に頭を痛めてな。苦渋の選択として時空航行八番艦アースラは明日より二日間のメンテナンス。艦長始め所属魔導士、嘱託問わずに強制休暇を命ず。これに関して一切の抗議は受け付けない。さらに言うと、時空管理局内で訓練を行うことも禁止。まぁ、戦う者なら休めるときに休んどけってことだな。何か質問は?」
「はーい」
「はい、八神はやて特別捜査官」
「コウ提督、なんでそないに息続くんですか〜〜?」
「それは俺が七ツの肺を持つからだ!!」
「なんでやねん!!」

まぁ、コウ提督のわかりづらいボケに八神はやての鋭いツッコミが入ったりしたが、問題はそのあとだ。

「ふむ。はやて、良いツッコミだ。師匠感激ってまぁ、それはおいといて………レイジングハート、バルディッシュ」
「はい」
「なんでしょうか」
「お前らさ、遊園地に行かないか?」
「「は?」」
「いやさ。俺の身内が経営してる遊園地があって、そこのフリーパスチケットを貰ったんだよ。だけどまだうちの子達----つか娘はまだ一歳と半だし、連れてけないし。使わないんだよね」
「はぁ……」
「なら誰かにやろっかな〜〜と思ったらさ、なのはとフェイトとはやてが口を揃えて『レイちゃんとバルディッシュにあげて』って言っててさ」
「む?ですが………」
「いや〜〜バルディ、お前は難しい顔してっけどさ、隣見てみ、隣」
「はい?レイジングハート………て」

バルディッシュが隣に目を移すと、そこには目を輝かせているレイジングハートがいた。

「バ、バルディッシュ!!!」
「はい!!なんでしょうか!!」

何故に敬語なのだろうか?

「遊園地ですよ、遊園地!!!」
「はい、そうです!!!」
「行きたいですよね!?」
「い、いえ別に………」
「い・き・た・い・で・す・よ・ね?」
「いや待てレイジングハート、何で手にそんな物騒なキャノン砲を持ってますか」

いつの間にかレイジングハートの手には巨大なキャノン砲が握られていた。
このキャノン砲は、レイジングハートのカートリッジシステムの名残である。
左右四門計八門のミサイル発射口のようなアクセルシューター発射口があり、主砲としてディバインバスター用の砲身がある。また、側面装甲には『レイちゃん専用』と書かれている。
カートリッジロードにより、スターライトブレイカー(といっても、なのはの出力の半分)も撃てる。普段はその小柄な体格故に重くてひきずっていたりするのだが………

「………カートリッジ・ロード………スターライトブレイカーフルバーストモードに移行…………」
「ま、待てレイジングハート!!行くから!!行きたいです!!行かせてくださいっ!!!」
「………なんつうか、バルディってレイ繋がりになるととてつもなく慌てたりするし、果てしなく弱くなるよな」

傍観していたコウの一言に、周りでその様子を見ていた一同、特に持ち主であるフェイトは深く頷いた。




まぁ。そんなこんなでバルディッシュとレイジングハート両名は、とあるテーマパークに足を運んでいた。

「わぁ………バルディッシュ、観覧車ですよっ!!」
「うむ……しかし、凄い人手だな」
「星型ですか?」
「それはひとで違いだぞ、レイジングハート」
「もぅ、バルディッシュ!!私達は今人間なんですよ?レイジングハートじゃなくてレイって呼んでくださいって言ってるじゃないですか!!」
「むぅ……しかし、気恥ずかしくてだな………」
「むぅ〜〜」
「む」
「むぅ〜〜〜」
「むむむ」
「むぅ〜〜〜〜〜」
「ぐっ……レイ……」
「歌手グループですか?」
「えぇい、何故に先ほどからボケボケなのだっ!?浮かれ過ぎではないか、レイ」

思わず言った言葉に、レイジングハートは静かに答えた。

「浮かれもしますよ……初めての遊園地ですし……何より……に……が……から」
「………すまない。後半がよく聞こえなかったのだが………」
「っ、き、聞こえなくて良いんです!!い、行きましょう、バルディッシュ」
「む、わかった」

そして二人で訪れたゲートには…………

「人の山ですね」
「いや、むしろ川ではないかな?」
「言い得て妙です……」

人、人、人の黒山の人だかり。流石に連休の二日目は、ひどい人手だった。

「……行こうか。早く並んだ方が早く中に入れるだろう」
「そうですね……って、きゃっ!」
「レイジングハート!?」

小柄故に人の波に呑まれ流されそうになったレイジングハートを、バルディッシュはその手を取ることでなんとか引き寄せる。
そして引き寄せてから押し寄せる沈黙。

「…って、すまない。咄嗟に手を……?」
「……………………」
「れ、レイジングハート?」

繋いだ手を離そうとしたが、こちらが手を離してもレイジングハートが手をがっちり握っているためにまだ繋がっている。
困惑顔でレイジングハートをみつめるバルディッシュ。と。

「2回、です」
「は?」

帰って来たのはどこか責めるような拗ねた声。

「バルディッシュ、レイって呼んでって言ったのに、またレイジングハートって呼びました」
「あれは咄嗟に………」
「問答無用ですっ。罰として、手を繋いでて下さいっ」
「いや、しかし………」
「それとも………」
「何かね?」
「私と手を繋ぐの、やですか?」

一瞬唖然としたが、バルディッシュは彼女がまだ手を繋いでいたいのだという意志を汲み取って----

「……いいや。小さな君はきっとまた人の波に流されてしまいそうだからな、手を繋いでいた方が安全だろう?」

----る訳がなかった。ダメダメだなこのニブチンインテリジェントデバイス。
どうやら彼はレイジングハートがまたはぐれるかもしれないと危惧しているのだと勘違いしたようだ。

「うぅ、バルディッシュ、意地悪です……」

当然、子ども扱い(バルディッシュの意図は無くても)されたレイジングハートは面白くなく、不機嫌そうな顔----といっても、内心は繋いだ手のおかげで嬉しさ一杯----をしているが

「それに、これなら離れ離れにもなるまい、な?」

この一言で、顔を真っ赤にしてしまった。

「あぅあぅあぅ………」
「む?列が進み出したようだ。行こうか、レイ」
「ぁ………はい!!」

ぐいと力強く引かれた手と、その暖かさに満面の笑顔を浮かべて、レイジングハートはバルディッシュに着いて行った。




「さて、何に乗ろうか?」
「えっと、バルディッシュ、はやてさんが『遊園地必勝マニュアル』っていうのをくれて、それに遊園地のアトラクションの乗る順番のお勧めが書いてあるんですけど………」
「八神はやてが?………なんか、引っ掛かりを感じるんだが………見せてくれないか?」
「はい、このページです」
「いや、そうじゃなくて………」

バルディッシュは手渡された雑誌を閉じると、その本の裏面をみてみた。
大概本というものには編集した者の名や、監修した者の名が載っているのだが………

「うわ………」

バルディッシュが珍しく見た目相応の声を上げる。

「どうしたんで……す……かって、あら〜〜」

そこにはこう書いてあった。
『編集:八神はやて、エイミィ・リミエッタ、シャマル
監修:コウ・バークフリート』

「………妖しさ満点だな」
「全力全開で妖しいです………」
「まぁ……」
「せっかくですし」
「「使ってみ(るか)(ましょう)」」



その1、ジェットコースター

「ババババ、バルディッシュっ!?」
「どうしたのだレイジングハート?」
「な、なんで一番前なんですかーーーーっ!!」
「まぁ、順番的に、だな」
「ととと、隣にいますよね!?」
「当たり前だろう。ほら」
「手、離さないで下さいね!?」
「あぁ、解ったから……そろそろだぞ?」

「きゃぁあぁあぁあぁあ〜〜〜〜〜っ!?」
「ほぅ……………」

「だ、大丈夫か、レイ」
「あぅあぅあ〜〜ふらふらします〜〜」
「……む!?う、腕に抱きつかないでくれまいかっ?」
「むりですよ〜〜世界が回ってます〜〜えへへ〜〜」


その2、メリーゴーランド

「…………乗るのか?」
「はいっ!!」
「…………このメルヘンチックな乗り物に?」
「はいっ!!」
「…………誰が?」
「さぁ行きますよ〜〜」
「えぇい待てレイジン……レイっ、手を離せってあぁ!?こんなところで持ち前の力持ちを発揮せんでも……………」

「…………………」
「えへ〜〜楽しかったですね〜〜」
「そうか、楽しかったか…………」
「はいっ!」
「……………ならまぁ、良いか」



その3、お化け屋敷

「うぅ〜〜バルディッシュ、暗いですよ〜〜」
「そうか?そうでも無いと思うが…………」
「って、きゃ〜〜?」
「む?」
「い、今の怖かったですよ〜〜」
「………………なぁ」
「あ、えと、その、腕、離さないでいて良いですか?その、怖くて………」
「ふぅ………仕方あるまい」

ラストの仕掛け
「きゃ〜〜〜〜〜っ!?」
「…………………っ!?」

出た後
「………………………………………………」
「あの、バルディッシュ、さっきからなんで街路樹に手をあてて、落ち込んでるんですか?」
「…………………こ」
「こ?」
「……………怖かった、最後の……………」


その4、コーヒーカップ

「あれ?」
「む?」
「抵抗、しないんですね?」
「無駄だとわかった以上、楽しむことにしただけさ」
「あ、あはははは………」

「えぇ〜〜〜〜〜い!!!」
「いやだからなんでこれまで全力全開なんだっ!?」
「あははははは〜〜」
「ぬぉ!?ソニックフォーム時で見れる光景が見える!?」

「……………あぅあぅあぅあ〜〜〜〜〜………………」
「…………なんで自滅してるのだ、君は……………」
「うぇ〜〜〜〜〜世界が…………世界が洗濯機ですよ〜〜〜〜〜」
「はぁ…………ほれ」
「え?良いんですか?」
「目が回って足元も覚束ないのだろう?」
「ぅ………お願いします」

「えへへ〜〜バルディッシュの背中〜〜♪」
「こら、頬ずりやめ、う?首筋を舐めるなっ!?」



番外アクシデント、迷子

「あれ………迷子ですか?」
「ままとはぐれた………」
「じゃあお姉ちゃんと一緒に探しましょう!!」
「うん…………」

「はて?何故に飲物を買いに行った隙にいなくなるのだ?おーい、レイ〜〜?」
「あの………」
「いかがなさいました、ご婦人」
「うちの子がはぐれてしまいまして………心当たり、ありませんか?」
「むぅ、それは困りましたな………かく言う私も連れが見当たりませんのですよ」
「あらあらそれは………」
「ふむ………最後の手段は………レイジングハート(ボソッと小声で)」

「ん?」
「どうしたのおねいちゃん?」
「いえ…………何かこう、非常に………………?」

五分後
「バルディッシュっ!!あなたまた!!!」
「おぉ、来たか」
「あ、まま〜〜」
「ミウ!!」
「あれ?」
「ふむ………万事解決といったところか」

「バルディッシュ、また私のことレイジングハートって…………」
「君も黙ってどこかへ行ってしまっただろう?おあいこだ」

…………ところで念話はどうなってるんだろうか?

後はいろいろあって…………

終局、観覧車

「もう日が暮れ始めちゃいましたね〜〜」
「そうだな」
「楽しかったですね〜〜」
「疲れもしたがな」
「バルディッシュ、そっち行って良いですか?」
「どうぞ」
「よいしょ」
「………………」
「よいしょ、よいしょ…………」
「…………ん」
「あ……………えへへへへ〜〜〜〜〜」
「…………………」
「男の人が女の子の肩に手を回すって、なんか恋人っぽくないですか?」
「……………そう、かもな」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………ん……」
「っ!………ん、む」
「…………………ッ」
「…………………ぁ」
「……………………」
「……………えへへ♪」

二人して、真っ赤。

「そろそろ終わりだな………?レイ?」
「…すー、すー……」
「疲れて寝てしまったか………やれやれ。まだまだ見た目相応の少女だな…………よっと」
「はい、終点で〜〜すって、あらあら」
「すみません、今降ります」
「はいはい………幸せそうに寝てらっしゃいますね………彼女さんですか?」
「………………えぇ。大事な…………パートナーです」



帰り道

「ん………ぅ………」

暖かな何かが、体の下にあって、ユラユラと、体が揺れている。だけど、不快じゃ無くて、手放したくなくて、もっと引き寄せる………

「ぐ!?」
「…………ふぇ?」
「…………お目覚めか、レイ」
「うに………おはよぅです、バルディッシュ……………」
「……………もうすぐ翠屋だ。ところで、今日はコウ提督宅で泊まり込みで宴会をやるそうで、少ししたら迎えに来るそうだ」
「ん…………そうですか〜〜」
「…………そろそろ、降りないか?恭也殿に見つかると、中々厄介だ」
「ん〜〜、やです」
「……………何故」
「バルディッシュの背中、気持ち良いですから」
「………………そう、か」

「……………バルディッシュ…………」
「どうかした………んぐ!?」
「…………、えへへ〜〜」
「不意打ち、か」
「油断大敵ですよ〜〜」
「あぁ、まったくもって、な」

「ねぇ、バルディッシュ」
「なんだ?っと、もうひっかからんぞ」
「もう、違いますよ………最初、あなたは私に『浮かれ過ぎだ』って言いましたよね?」
「…………あぁ」
「あれの理由はね、バルディッシュ。初めての遊園地だったし、それに…………」
「それに?」
「……………あなたが、隣にいてくれたから、ですよ♪」

レイジングハートは、バルディッシュの首に回した腕に、ほんの少しだけ、力を込めて、さらに抱きついた。


結局、翠屋までレイジングハートを背負って行くことになったバルディッシュは、高町夫妻に見られ、宴会では散々冷やかされることになるが、それも致し方ないことだろう。



それぞれの休暇〜バルディッシュとレイジングハートの場合〜

-完-






“『それぞれの休暇〜凍れる杖と剣十字の場合〜』!”


「みぅ〜〜〜〜〜、前二組がアツアツ過ぎてこっち見劣りするかも〜〜」
「いきなりなにを言い出してやがる、シュベルツ」

そんな二人がいるのはハラオウン家のマンションの、デュランダルに宛われた一室。
やはりデバイスは持ち主や制作者に似るものなのか、その部屋は彼の持ち主の部屋に負けず劣らず殺風景だった。

「みぅ〜〜。だってさ、レイちゃんにバル君は遊園地、師匠とクラール姉はピクニックだよ?ほかの皆だってお出かけしてるのになんでわたしたちだけお出かけしないのさ〜〜」
「今日は休暇だぞ?わざわざ出掛けて疲れる必要性も感じないぞ」
「みゅぅ、気分転換に出掛けるとか考えないの〜〜?」
「本を読むだけで案外癒されるぞ?」
「みゅ?何の本読んでるの………はっ、ま、まさか巨乳系のえっちぃ本じゃ…………」
「誰が読むかっ」
「そうだよね。デュランはそんなの読まないよね。だって外見年齢18の癖に外見年齢12歳のわたしに手を出す位のロ◯ペ◯野郎だもんね」
「えぇいっ!何の話だっ!エロ本など読まぬと言っているのにっ」
「ロ◯ぺ◯ってとこは否定しないんだ…………」
「…………別に、幼女趣味な訳じゃない。ただ単に----好きになったお前が、そうだっただけだ」
「……………みぅ…………キザったらしい………ロ◯ぺ◯じゃないけど、キザ野郎だよぅ…………」
「なんとでも言え。その朱い顔治したら、な」
「そういうデュランだって真っ赤じゃんさ〜〜」
「俺は良いんだよ」
「う〜〜何様のつもりさ〜〜」
「俺様」
「うわ、言い切ったよこの人」

和やかで----甘い空気が漂う中、ページをめくる音がする。

「ねぇ、デュラン〜〜」
「ん?なんだ?」
「本から目は離さないんだね………まぁ良いけどさ。何読んでんの〜〜?」
「デバイスの処理時間に関する論文」
「うわ。休みなのに………」
「興味深いぞ?まぁ、紹介されてる事例はことごとく俺より処理速度が遅いがな」
「うわ。さらに自信家発言だよ」
「仕方ねーだろ。俺は一応処理速度に特化している高性能ストレージに分類されるし、なかなかここまで高級化したのは特注でも無い限り無いんだからよ」
「みぅ………わたしよりも高性能なんだよね〜〜わたしの方が後に作られたのに………」
「お前は万能型として造られたアームドだし、どっちかってーと八神の嬢ちゃんの出力に耐え切れるように高出力に比重を置いてっからな。だけどまぁ、お前も特注のデバイスだから性能は抜きん出てんだけどな」
「だけどレイちゃんやバル君、師匠には全然勝てない…………」
「ありゃあ別格だ。そもそも全部が全部使い手が最高クラスだしな。つっても八神の嬢ちゃんが弱い訳じゃ無くて、魔導士の分類をしたときに八神の嬢ちゃんや高町の嬢ちゃんは後方火力支援に分類されるし、シグナムの姐さんやフェイトは近接戦闘に分類されっからな。もとより相性がわりぃんだよ。大体、お前とレイジングハートはそこまで戦績悪くねぇだろが」
「みぅ………なのはちゃんはこっちが一撃当たれば終わりなのにこっちが当てても耐え切っちゃうんだもん。理不尽〜〜」
「正直ボスから言わせてもらえばお前ら全員が理不尽に見えそうだがな………」
「そーゆーもん?」
「そんなもんだ」

また、ページをめくる音がする。

「なぁ、シュベルツ」
「んにゃ?」
「お前は何読んでんだ?」
「マスターの世界の漫画本〜〜」
「…………妖しいもんじゃないだろな」
「普通の少女漫画だよ〜〜」
「そか」
「うに」
「面白いか?」
「みゅ〜〜普通〜〜この程度のハプニング普段のことだし〜〜」
「…………なんでだろ。今絶対に読者的に間違った発言があった気が……」
「だってさ、誰かのお風呂上がりに誰かが鉢合わせ〜〜って、バル君とか師匠とかデュランとかクロノ提督ってしょっちゅうだよね?」
「もしくは誰かの裸や下着姿みちまうってな。だが修正しろシュベルツ。俺は一回しかハプニングでお前の裸は見ていない。故にしょっちゅうじゃない」
「みぅ、どっちかっていうとわたしの身の回りで〜〜だから、デュランがしょっちゅうやってるって意味じゃないよ〜〜」
「そうか」
「むしろ、わたし以外にしょっちゅうこんなハプニング起こしてたら……………」
「……………起こしてたら?」
「殺すに決まってるじゃない♪」
「………………できるんならな」
「ん。死んでも、殺すよ♪」
「だが、それを聞いて安心した」
「みゅ?」
「それなら、俺はお前に殺されることはこの先無いだろうからな」
「みぅ…………そういうセリフがすらすら淀み無く真顔で言えるって、彼女持ちの青年にはいらないスキルだと思うんだけどにゃ〜〜」
「そんなもんか?」
「そーゆーもの」

ぺらっ。また、ページをめくる音。

「みぅ…………デュラン〜〜」
「ん?」
「キスしていい?」
「ん」

デュランダルが短く肯定の意を示すと、シュベルトクロイツは彼の膝の上に座り、向かい合うと………

「ん…………ちゅ………」
「んむ…………ちゅ……」
「ん………………ぷはっ」
「……満足か?」
「みゅ」
「いきなりどうした?」
「マンガ〜〜」
「マンガ?」
「キスシーン、あったから………」
「感化されたってか」
「うに」
「ったく…………甘えん坊だよな、お前って奴は…………」
「…………こんなわたし、イヤ?」
「いいや。大好きだぞ?」
「なら、甘えん坊も良いんじゃない?」
「だな」

一度本にしおりを挟んで閉じると、デュランダルは目の前にあるシュベルトクロイツの額に自分の額を当てた。

「みぅ〜〜〜〜〜」

シュベルトクロイツは猫のように甘える。

「……………楽しいか?」
「うん」
「ごめんな、どこにも連れてかないで」
「ううん。良いよ」
「しかし…………」

「だってデュラン、怪我してるでしょ?」

「な………」
「なんで気がついたって?全くもう、恋人をなめないでよね」
「だが………」
「…………デュラン、この休暇の前の任務でわたしとマスターのこと、庇ったでしょ?その時に無理しちゃったんじゃないの?」
「……………おどろいた。そこまでわかるのか」
「だ・か・ら、恋人をなめちゃだめだよ?…………デュランが辛いこと、すぐにわかるんだから」
「おみそれ致しました、お嬢さん」
「ん。わかればよろしい…………だから、今日は家でいちゃいちゃしながらゆっくり休も?」
「…………あぁ。ありがとな…………」
「御礼はキスで良いよ」
「ん……………」
「あ……………」

やっぱり、甘い空気の中、暖かな氷と、剣の子猫は淫らに絡み合う…………

「…………てりゃっ」
「おわっ!?」
「えっへっへ〜〜デュランの押し倒し〜〜」
「おいこらシュベルツ」
「ん〜〜?普段やられっぱなしだし、たまにはこんなのも良いかな〜〜と」
「そうだな、たまには、な」
「…………やっぱり前言撤回。これからはこんなんもしょっちゅうあっても良いよね」
「どうかな、しょっちゅう、は」
「…………やっぱりデュランは攻めじゃ無いとダメ〜〜?」
「いきなり何を言い出しますかねうちの馬鹿猫娘は…………」
「……………デュランがイヤじゃないなら、このままだよ?」
「ん…………」
「みぅ…………そこまで自然体でいられると、抵抗されるよりこう、クルモノが…………」
「……………どうした?怖じけづいたか?」
「………そんな訳、ないじゃんさ」




結局二人は、家族が帰ってくるまでいちゃいちゃしてたという。

追記----エイミィが宴会にて今日何をしていたか聞いたところ、二人仲良く真っ赤な貝になったという。


それぞれの休暇〜デュランダルとシュベルトクロイツの場合〜

fin



あとがき

なげぇよ、おれっ!?

すいません、遅れました。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!?

ようやっと書けた………コンさんのリク…………

あ、因みにこの三組のカップルの中で最も進んでるのはデュランダル×シュベルトクロイツです。
どこまで進んでるか想像した度合いによってあなたのとあるLEVELがわかります(笑)

因みにスフィアはそこそこダメダメなLEVELだと思われます(爆)



なのでデュラシュベは短いけれどめっさ甘くなりました。これ以上甘いのは無理です。
おもわずこれ書いてる最中ずっとビーフジャーキー食ってましたもん(笑

さて、レヴァンティンとクラールヴィント、こんなんなりました。
なんやかんやで評判は悪くないと良いなぁ…………書いてて楽しいんですよ、レヴァンティン。

だけど最近思った。

あー、レヴァンティンが単なるアホキャラになった。

由々しき事態です。
そろそろ男を見せてもらわないといけません。

バルディッシュとレイジングハート。
レイジングハート、乙女ってこんなもんか?
バルディッシュが所々ヘタレに見えるのは仕様です。

クロノとバルディッシュは似たモノ同士なんです、きっと………っ

ってあれ?ちょ、なんでこちらにリボルバーの銃口と氷結の杖と歌う者が向けられてますか?ちょ、まっ…………

エターナルコフィン

スティンガースナイプ

プラズマスマッシャー
のコンボが炸裂中。

愛らしいリィンフォースUの映像をお楽しみ下さい…………


おまけ

「皆さんこんにちは、この作品でちっとも名前が出てこなかったエイミィです」
「よ、本編にでてねぇのに短篇にでてきた時空管理局提督、コウ・バークフリートだ」
「どう思います?私の扱い…………」
「はっきり言って悲惨だな」
「ですよね〜〜でも、一応このあとにでも宴会編書くみたいですよ?」
「お前さんと同じくらい出てこなかったアイゼンやS2U、リンディさんにレティさんも出てくるらしいな」
「ヴォルケンリッターもでてくるみたいですね〜〜」
「でもその分内容が多くなりそうで、メール3通分に間に合うか微妙らしいぞ?」
「うわ、なかなか…………ところでコウ提督」
「んぁ?」
「なんか、奥様も出てくるみたいですよ」
「まじかっ!?」
「まじです。あと、お子さん方も………」
「ん、こいつぁプロットか…………おぉ、シオンに我が愛息子に愛娘がいる!」
「どうやら、ヴォルケンリッターや私、リンディ提督やレティ提督と絡むらしいですね。バークフリート一家」
「ふっふっふ!!!我が子らの虜になるが良い!!!」
「はいはい…………親バカで愛妻家って言う設定ですもんね…………写真持ってたりするんですか?」
「モチのロンだっ!!!見よ、このアルバムをっ!!!」
「うわ〜〜アルバム分厚いの3冊も…………どこに持ってたんですか?」
「ふ………いい男には謎が憑き物なのだよエイミィ君」
「あまり憑かれたくないですが……………あ、それではこの辺で〜〜」
「次回、一応本編第六弾か、短篇宴会編で会おう!アデュー!!!」






“『コウ・バークフリートの憂鬱と災難』”

…………………………

あ、カメラもう回ってんのか?
皆さんこんにちはこんばんははじめましての今後よろしく。
さて、俺は今、眼下に広がる人達を見ている訳だ。
よく見知った連中が三分の二、初めて見る連中が三分の一といったところか。
いや〜〜人間ってさ、思っていた以上に冷静なもんだね。まぁ、今まで生きて来た環境にも大いに影響されるんだろうけど。
だがまぁ、流石に今まで死にかけたり、実際腕が吹っ飛んだりした俺でも、流石にこれは中々無い。だがここで注目してほしいのは中々無い、といってるところだ。中々無い、ということは、滅多に無いが以前このようなことがあったということだな。いやはや、何気なく生きて来たが、随分波瀾万丈に生きて来たらしいな、俺は。いやまぁ、この世界に関わったからには波瀾万丈に生きざるを得ない訳だけども。

あぁ、因みに俺は五体満足だぞ?腕が吹っ飛んだりしたが、その腕は非常に腕の良い治療魔導師がしっかりつけ治してくれたからな。うんうん、突然吹っ飛ぶもんだから随分と驚かされたもんだ。懐かしい。

さて、いい加減世間話は良いから現状を説明しようか。
俺の現在地、アースラブリッジ上空(?)8メートルってとこかな?
あぁ、魔法は使ってないぞ。あくまで物理的な位置が、だ。ついでに、アースラブリッジ上空(?)ってのは一応アースラブリッジという空間の床から8メートルだからな、そこんとこ間違えないようよろしく。
そんな上から見てる訳だ。
いや〜〜見てる見てる。とある提督は唖然として見上げてるし、その提督の義妹も以下同文、とある悪魔な戦技教導官は何が起こったかわからねぇって顔だし、抱き合っていたピンク髪の少女も以下同文。まぁ、他の連中も同じような…………例外がいるな。黒髪のおっとりした女性はあらあらと言った感じで頬に手を当ててるし、茶髪の少女は感嘆って顔してんな。で、淡い水色の青年はアチャーッて感じで額を抑えてっし、紅に近い黒髪のツンツン頭----なんかアイツ、見たことあるような背格好だが、絶対にアイツじゃない。だってあいつは----正座させられて説教なんてされねぇし。で、叱り飛ばしてる緑髪の女性。ついでに、我関せずと茶を啜るロマンスグレー…………

よし、俺百人会議満場一致であの茶髪の小娘がこの事態の原因と判明。あとでお仕置きじゃ、ふはははは、待っておれ小娘ェッ!!!

「……………………大丈夫、ですか?」

と、黒いような、端にいくと金髪な青年が聞いて来た。
はっはっは。青年よ、大丈夫なように見えるかね?見えるんなら悪いことは言わん、眼科か精神科行って来い♪

「…………いえ、一応」

はぁ、まぁ気遣いありがとう。
最近はこんなこと言わなくなってきたんだが、これまた久々だ。
やれやれ、だな。

つうか………

「………なぁ〜〜誰か助けて〜〜流石に頭に血が昇るよ〜〜へーるぷみーつか荒縄が、荒縄がこう、身体に…………ッ」

因みに、今俺荒縄です巻きにされて宙ぶらりん。勿論頭が下を向いてて蓑虫状態さブラザーっ!!!

「あーもう、こうなったら振り子になっちゃる!!そ〜〜れぶ〜〜らぶ〜〜ら……………うわ、酔った。盛大に酔った。リバースしちゃいそう、助けろクロスケ。いや、クロノ様っ」
「うわ、た、耐えてください。今、今すぐ降ろしますからっ!!」

ふぅ、なんとか降りれそうだ。あぁ、俺が誰だって?
俺の名はコウ・バークフリート、時空管理局提督の………………時空管理局の狗、便利屋さ。

「も〜〜〜〜〜むりぽ〜〜〜〜〜」
「た、耐えてください!!」





さて、いきなり悲惨で美味しい(?)目にあった彼、コウ・バークフリート。どうしてこうなったか語る前に、ことのダイジェストをお送りしよう。

まず、全員が集合したブリッジ、レイジングハートに続いてバルディッシュも消えたということで、皆大いに慌てた。
フェイトとなのはがブリッジを飛び出そうとしたところで戻って来たバルディッシュとぶつかった。
バルディッシュの後ろに隠れるようにしてレイジングハートはいたんだけど、モジモジしてて中々皆の前に出ようとはしなかった。
勇気を出してレイジングハートが出てみて、高町なのはと涙ながらの抱擁。
バルディッシュはフェイトに平手打ちを食らったが、それも心配故。中々の美談だが後に語ることにして今は割愛させてもらう。

で、そんなこんなしてる内にコウ・バークフリートが到着した。
コウがブリッジに入った瞬間----それは発動した。

足元のパネルが跳ね、コウが吹き飛ばされ、着弾点には何故か蓑虫にすまきにして宙にぶら下げられるというトラップがあって、見事に発動。
コウが蓑虫になるまでこの間十秒とちょっと。
そして、冒頭に至ると言う訳だ。





「あ゛〜〜気持ち悪い……………」
「大丈夫ですか、コウさん」
「大丈夫だよ、クロノ。まぁ、気分はかなり悪いが動けなくはない」

と、答えるのは両手の十指全てにバラバラな指輪をして、右腕に三個、左腕に二個の腕輪をつけ、首にはクロスのチョーカーと銀の竜が紅い石に絡み付くようなデザインのネックレスをつけた眼鏡の黒髪の青年。
彼がコウ・バークフリートその人である。

「さて、ロストロギアの解析を本局の知り合いを頼ってめっさ早く終わらせたんだけど…………」

と、周りを見渡した。

「どうやらことはもう起きたみたいだな……………」
「どういう………」
「おっとストップだ、なのはちゃん。詳しくは作戦会議室で説明してやるから……………え〜〜と、ロレックスにアンディ、ブリッジのこと頼むな」
「アレックスっすよ!!!」
「誰っすかアンディって!?」
「はっはっは、冗談だ、じゃ、移動移動」



「さて………会議に先立って聞いておきたい。お前らの名前は…………………で良いんだよな?」

と、コウは一人一人デバイスを指差して名前を当てて行った。

「なんでわかったのですか?」
「あ〜〜その辺はあれだ。説明中に、な」

スクリーンが引っ張り出され、何かを映し出す前にコウが口を開いた。

「さて…………良いニュース、悪いニュースとあるんだが、どちらから話せば良い?」
「…………ほな良いニュースから」
「了解だはやてちゃん。他の皆も良いかな?」

一同に反対は無いことを確認してから、スクリーンに文字やデータが映し出された。

「じゃぁ良いニュースから。お前達に先日の任務で怪光を浴びせたロストロギアの性能、能力がわかった」
「それは私たちデバイスを人にするというのでは………」
「バルディ、それもあるが、本質とはちょっと違う。ただ単にそれが目的にあっていたってだけだ。ちなみにバルディはお前さんの愛称な」
「はぁ………」
「では、その本質とは?」
「ふむ…………シグナム、聞くが人は一人で生きていけると思うか?」
「?それは……………」
「結論を言おう、人は一人で生きていけない。常に人は他人を求める」
「ひょっとして……」
「エイミィ、気付いたようだな…………他の一同も。そう、あのロストロギアは、人間以外の意識あるモノにヒトになる能力を付与させるモノだった」
「つまるところ………」
「猫、犬、鳥でも何でも良い、ともかく考えることができるモノならなんでも人間にしちまうらしい。これはAI……人工知能も例外じゃ無い」
「それと人は一人で生きていけないって話に何の関係性があるんだ?」
「レヴァンティン、良い質問だ。まぁ、これは解析していく内にわかったんだが………俺達が任務で向かった次元世界は、昔はかなり文明レベルが高かった………っていうことだったよな。だが見てのとおり、あの世界の文明は滅んでいた。あのロストロギアの中にメモリーがあってな。見てみたら…………」

それは、一人の科学者の話。
疫病と天災が同時に起きた。賢かった彼は事前に察知していたが誰も耳を傾けない。
何が起きようと大丈夫だ。進んだ科学により、人は自信を持ちすぎた。
いざ疫病と天災が起きても、人は耐え切った。
しかし、『それ』は突然あらわれた。
『それ』から這い出てくる魔物はキリがなく、人は日に日にその数を減らして行った。
二十年、戦った。
『それ』は活動を停止して、地中深くに埋められた。破壊は不可能だった。
五年後、彼は最後の同胞を失った。
十年後、彼は、狂った。
狂気の科学者はとあるシステムを考案、設計した。
そして、彼はそのシステムを完成させると同時に、息絶えた。

「………ということらしい、まぁ、人間が他人を求めて、他人を作り出すための装置だった訳だ」
「へぇ〜〜〜〜〜」
「で、このロストロギア、影響はデバイス達だけ…………とか思ってないか?ヴォルケンリッター」
「はい?」
「なにいってんだよ、あたしたちは何ともねーぞ」
「そりゃな…………お前ら普通にヒトの容姿してるしな…………」
「どういうことだ、コウ・バークフリート」
「ザフィーラ、シグナム、シャマル、ヴィータ、喜べよ、今度からお前ら、年取るから」

……………………………

「「「「は!?」」」」

たっぷり十秒、刻が停まった。

「ど、どういうことですか、バークフリート提督」
「私たちは夜天の書が残したシステムですよ?」
「そうだ。お前達は夜天の書が残した『システム』だ。当然ながら事件解決から六年たった今………つっても俺から見りゃ五年だが、外見が変わったことは無い。が、ここで思い出してほしいのはあのA級ロストロギアの能力だ」
「だけど、あたしたちはかなり複雑なシステムだぜ?」
「それは制作者の科学者としての腕が正しく鬼のようだったからさ。なにせあのロストロギアの正確な能力は、言うなれば『ありとあらゆる考える物体を人間にする』だからな」

コウは何でも無いように言うが、言われた本人とその周りは呆然としてしまっている。
その呆然が意味するところが制作者の執念に対する呆れなのか、コウが言っていることの荒唐無稽さに対するところなのかはわからないが。

と、そんななか…………

「一つ、いいですかな?」
「どうぞ、アイゼン殿」
「そのロストロギアの能力は、ただ単に人間にすると言うだけですかな?」
「あぁ、本人にしちゃ大問題だろうが、答えはノーだ」

また何気なく言う言葉は、一同を戦慄させた。
なにせ何が起こるかわからないのに、何か起こるといわれたのだから。

「……………と言っても、その問いにはYESとも言える訳だが」
「………茶化してんのかよ、コウ提督よぉ………」
「お、落ち着いてよデュラン〜」
「まぁいきりたつなデュランダル。あのロストロギアは確かにモノを人間にする。ということはだ、お前達にも寿命が設定されちまったんだよ」
「寿命………ですか」
「そうだS2U。モノってのは本来年は取らないから老朽化したり壊れたりしない限り生きてると言えるのだが、このロストロギアなよって人間になる能力を得たモノってのは、大破----つまり完全に破壊されるともう修復が不可能、死亡する。さらに、寿命はどうやら外見に関わらず能力を得てから八十年前後と設定されるらしい」
「八十年…………」
「では、アイゼンさんはこの容姿で八十年………ですか?」
「いいや。今の容姿は搭載人格の年齢にあったものが当て嵌められたらしいな。で、ロストロギアは親切にも詳しく書いてあったよ。どうやら外見年齢が九十を越えた辺りに、外見年齢は十代〜二十代にリセットされるらしい。だから、アイゼン殿は恐らく天命を全うするなら今の外見年齢あたりだな」
「はぁ……………」





「では、つまるところ…………」

バルディッシュが口を開いた。そして、レイジングハートが繋げる。

「私たちには、特に何も起きない、と?」

「あぁ。人間形態で病気になったりもするらしいし、デバイス形態で中破や小破をすっと人間形態になれなかったり、相応の怪我をしたりするという影響はあるだろうが、ロストロギアが原因で何か起きたりは無いだろうな」

わっと、歓声が上がった。

「でも…………あれ?」

なのはが首を傾げる。周りのクロノやフェイト、ユーノも首を傾げている。

「どないしたんなのはちゃん」
「はやてちゃん。さっきコウ提督………」
「あの、コウ提督」
「はい、フェイトちゃんどうぞ」

と、なのはがはやてに言うより早く、フェイトが質問した。

「デバイス形態、人間形態って…………バルディッシュ、デバイスにもなれるんですか?」
「あ、言い忘れてたな…………ちょうど良いや、バルディ、フェイトちゃん前に出てくれ。あと、デバイスの面面は持ち主の前に立って」

言われた通り動く。

「目を閉じて、自分のデバイスモードをイメージして……………そして、『変身』といってみ」

バルディッシュは目を閉じて思い浮かべる。自分自身を、真の姿を…………そして

『変身』

八人の声が重なった。と同時に、自分の身体が光りに包まれ一瞬無くなり、また再構築されていく感覚がしたかと思うと………

『ぉぉ』
「ほらな」

持ち主の手には、しっかりとそれぞれのデバイスが握られていた。

「問題は無い?バルディッシュ」
『Yes、sir.No problem.』


「で、また同じように人間になりたいと思え」

強く念じると、また身体が光りに包まれ無くなったかと思うと手足の感覚が先端から構築されていく感覚を覚え…………

「………………む」
「あぅあ〜〜」
「………うへぇ」
「これは………」
「中々……………」
「み、み〜〜〜〜〜?」
「うげ、気持ちわりぃ………」
「あらあら」

「どうだ?」
「この感覚は……………どうにも慣れそうにありませんね……………」

どうやら随分奇怪な感覚らしい。

「ま、せっかく手に入れた能力だ。活用するためには慣れるしかないわな」
「はぁ……………」
「で、だ。レヴァンティン。もう一回目を閉じて自分自身をイメージしてくれ」
「あ?あぁ、わかったが…………」
「そして、呼んでみてくれ」
「よ、呼ぶって…………うを!?」

レヴァンティンの手にはいつの間にかレヴァンティンのデバイスモードに酷似した剣が握られていた。

「こ、こいつぁ俺か?」
「いんや。レプリカ。どうやらお前さんらは自分自身のレプリカを用いて戦うこともできるらしいぞ?」
「…………………あの、コウさん、どうしてそんなことがわかるんですか?」
「ん?あ〜〜まぁ、勘だよユーノ」
「はぁ、勘、ですか」
「そ。勘」

が、その会話は中断される。何故なら

「あれれ?」
「あらあら?」
「こいつは………」

うえからシュベルトクロイツ、S2U、デュランダルである。

「どうした?」
「いや、それがよ…………」
「私たちのレプリカじゃなくて、なんか銃が出てきたよ?」
「私がマシンガン、シュベルちゃんがミニピストル、デュランダルはさっき出してたスナイパーライフルね」
「ふむ…………?どういうこった?」
「それなのですが提督、どうやら私もレプリカとは別にリボルバー式の拳銃が具現化しているのですが…………」
「ふむ、わしもハンマーとは別にショットガンが取り出せますな」
「俺も弓矢が出てくるな…………」
「私、なんかペンデュラムが出てきました」
「どうやらレプリカが出てくるのは武器型デバイスだけで、他は性能によって銃火器になるらしいな…………で、武器型デバイスは全員カートリッジシステム搭載だから、多分カートリッジシステムが人間形態に付与された形だろう」
「………………はて?レイジングハートは………………どこへ?」

見渡すもどこにもいない。なのはの隣にいたはずなのだが………

「あう〜〜下です〜〜〜〜〜」

下?と目を移せば…………

「あうあう〜〜〜〜〜重いですよ〜〜〜〜〜ヘルプ〜〜〜〜〜」

呼び出した巨大な重火器に押し潰されているレイジングハートがいた。

「だ、大丈夫か、レイジングハート…………っく、何て重さだ………」
「は?バルディッシュ、お前は非力なのでは…………ぐ!?」
「おいおいお前ら情けねーな……………は!?」

三人のオトコが三人とも、持ち上げれなかった。

「レイヴァン、あなたも人のこと言えないわよ………」
「デュランダルも情けない〜〜〜」

結局、三人掛かりでようやくレイジングハートを救出した。

「はぁ、重かったです……………てどうしたんですか信じられないモノ見たって顔して?」
「あ、あの、レイジングハート……………それ、両手で持てるの?」
「マスター?はい、重いですが持てますよ?」

………………………………………………

沈黙。

「あ、あの?」
「レイジングハート、こいつ、持ち上げれるか?」
「み?」

ひょい。

…………………………………………

「………………」
「こらデュラン〜〜私を試しに使うな〜〜」
「あ、あの、片手で持てちゃいましたが…………」

シュベルトクロイツがデュランダルに文句を言うが、片手で首根っこ掴まれて持ち上げられている様は猫のようである。
余談だが足がぶら下がっていることからシュベルトクロイツは室内猫のようだ。






さて、紆余曲折を経てようやく落ち着いた会議室に、コウの声が響いた。

「で、悪いニュースなんだが」

内容を要約すると

魔物を作り出していたS級ロストロギアが複数あると見られること
ある場合は少なくともあと八つはあること(ロストロギアに\の数字が彫ってあった)
あのロストロギアから吐き出されていた『泥』が魔物の材料ということ
ロストロギアの目的は不明
どうやら異次元から突然現れるということ
破壊が不可能だと言うこと
S級魔法五つの直撃にも絶え切るとのこと
完全に封印することはできず、定期的な封印が必要とのこと
現在対策としてアルカンシェルの使用も考えられていること
そして、当該ロストロギアが出現した場合、時空管理局きっての戦力を誇るアースラは最優先任務として対処に当たるとのこと
このことは人事局のレティ・ロウラン提督と時空管理局局長からの命令であること
今後当該ロストロギアが出現した場合、コウ・バークフリートも任務につくこと
そして当該ロストロギアの名称を『DIVA FROM DARKNESS』、通称『闇からの歌姫』とすること

「てなことだな」

こうして、デバイスが人となるという事件は、多大な影響と、若干の火種を残して終結した。






“宴会編”


皆の休暇〜嵐の大宴会☆色々あるよ♪〜

〜宴会に先駆けて〜

"大☆宴★会。デバイスだらけの大宴会、ぽろりもあるよ♪"

「よいしょ…………ふぅ」
「何アホなたれ幕提げてんだそこな馬鹿猫小娘」
「うに?」


〜厨房にて・準備〜

Side Hayate

「ほなこれは持ってっときますね」
「ええ。お願いします」

やほ〜八神はやてちゃんやで。私はいま、コウ提督の家で宴会のための料理を作ってます。人数が人数やからコウさんとシオンさんとじゃ手が足りへんってことで手伝っとるんや。
因みに台所はごっつ広いで。しかもキレーなんや。まるでレストランの厨房みたいやなぁ…………

「お褒めに預かり光栄です」
と、言ってきとるのはコウ提督の奥さんにして二児の母、スーパーママさんシオン・バークフリートさんや。いつも柔かな笑みを浮かべとるんやけど、その実めっちゃ頭良いねん。髪は紫色で、全体的ショートなんやけど、左のもみあげだけごっつ長く伸ばしてて、沢山の髪飾りしてんねん。……………重ないのかなぁ…………

キレイ・頭良い・何気に強い…………天は二物も三物もシオンさんに与えたみたいや。
「そんなことありませんよ。私は物理や化学………あなたたちで言う所の理系しか得意じゃありませんし…………」
せやかて英語もペラペラやないですか〜〜ズルイ〜〜
「それはまぁ、生活に必要ですし………まぁ、学校でわからない所があったら言ってください。わかる限り教えて差し上げますよ」
あはは………いつもお世話になってます………

そう、私やなのはちゃん、フェイトちゃんはよく管理局の仕事で学校を休む、早退してしまうが多いから、見るに見兼ねたコウさんが最初教えてくれとったんやけど、いつの間にかシオンさんも教えてくれるようになった。古典、現代国語、政治経済や歴史はコウさんが、理系全般と英語、外国語をシオンさんが教えてくれる。あまり機会は無いけど、数学とかはクロノ君もたまーに教えてくれる。

と、そんな中…………

ドンガラガッシャーン!!

な、なんや!?
「……何か煙(?)が上がってますね……白い」
そう、白い煙や。あれ、なんやろか………

「何やってるかなのはーーーーっ!!!」
「わわわ、ごめんなさい〜〜〜〜〜!!」

……………なのはちゃん……………
「大方ベーキングパウダー、片栗粉が入ったボウルを持ったまま何も無い空間でコケたんでしょうね…………はやてちゃん」
はい?
「なのはちゃんのあの癖、どうにかならないものでしょうか」
無理やと思います………せやかて真顔で言わんといてください、そないにしみじみと………
「五年前から変わってませんから………彼女」


Side Nanoha

うぅ〜〜また転んじゃったよ〜〜
「何やってんだなのは…………」

と、呆れ顔の眼鏡の青年はコウ・バークフリート提督。これでも二児のパパさんと言うから驚きです。
絶対いると思う、こんな高校生………
「褒め言葉と受け取っておこうか」
にはは。どういたしまして〜〜
「…………なんかユー坊とくっついてから皮肉が通用しなくなったな」
な……なんでユーノくんと付き合ってるのと関係が………
「だってお前さん、脳内いつも春爛漫って感じで脳天気になってるし」
の、脳天気って、脳天気って〜〜〜〜〜
「否定はできないだろが…………と、出来上がり。後は冷やして、と」
…………にしても、コウさんってお菓子作り上手ですよね〜〜
「はっはっは、食うのも作るのも好きだからな」
どうです、月これくらいで翠屋へ…………
「あはは、桃子さんには敵わないよ」
「あら、私としては以前みたくマルチプレイヤーなコウ君は欲しいけど?」
あ、お母さん
「桃子さんいつの間に…………」
「厨房の手は足りてるのかと見に来たのよ」
なんとかなってるよ〜〜大丈夫
「いや、せっかく桃子さんがいるんだし………なのは、お前いなくていいぞ」
がーん……………わたし………いらない子…………
「もう、コウ君、もう少し言葉があるでしょうに」
へ?
「なのは、今コウ君は、『手は足りてるからユーノくんといちゃいちゃしてこい』って言いたかったのよ」
「別にそんなつもりじゃ…………」
ホント!?えと、行ってきて良い?
「えぇ、いってらっしゃい」
そ、それじゃ!!!
………………
…………
……
「……………なぁ、桃子さん」
「はい?」
「あいつ、粉まみれでいっちまったけど………」
「……………ふふふ」
「わざとだな、わざとなんだなっ!?」
「さあ、なんのことかしらね〜〜」


Side Fate

何やらお菓子作りの方も楽しんでるみたい。
なのははユーノの所へ行ったようだ…………なのはの頭、見た限りかなり真っ白だったんだけど
「フェイト〜〜これ、はこんどくよ〜〜」
お願い、アルフ
…………ねぇ、アルフ
「なんだい?」
っていきなりつまみ食いしようとしないの!
アルフもザフィーラの所、行ってきたら?
「な、なんだい薮から棒に!!」
だってなのはをうらやましそ〜〜に見てたし………アルフとザフィーラ、ラブラブだもんね
「だ、誰があんなやつと…………」
あんなやつと、か。いいよね………あんなやつよばわりできる位に仲がいいんだし………
「いや確かになのはとユーノが羨ましくないって言ったら嘘になるけど……………(ブツブツ)」
それに引き換え私は…………クロノは気付いてくれないし、バルディッシュはレイジングハートと仲良しこよし、レヴァンティンとクラールヴィントは良い感じだし、デュランダルやシュベルトクロイツなんかあんなことやこんなことやってるのに…………はやても最近やけに積極的だし………ここは私も積極的に…………でもクロノだよ?あの朴念仁なクロノだよ?この間勇気を出して風呂上がりにバスタオル一枚でうろちょろしても全く動じなかったし…………は、まさか不能、いやでも以前ベッドに潜り込んだ朝には…………
「あ、あの、フェイト?フェイトさ〜〜ん?」
…………ま、まさか男の人にしか反応しないのっ!?最近やけにユーノやコウさん、ザフィーラに恭也さんとでかけることが多い…………ふふふ、ふふふふふ…………
「ヒィッ!?ふ、フェイト、あたしこれもってくからねっ!?」
そーかぁ、くろのは男の人にしか反応しないのかぁ…………ふふふ、誰が原因?----あんな本書いちゃってるシャマルかなぁ…………原因は、取り除かないといけないよね……………

と、良い感じにトリップ+熱暴走を始めたフェイトだが

くいっくいっ

「フェイトおねーちゃん?」

と、低い目線から大きな瞳でフェイトを見上げる幼い男の子、名をタクト・バークフリート。今年で四つになったバークフリート家の長男君である。

何かな、タクトくん?私は今、シャマルを、諸悪の根源を絶ちに行かないといけないんだよ
「あのね、クロ兄が前言ってたの」
え?クロノが?
「最近ね、フェイトおねーちゃんが綺麗になって、たまに見ると顔が熱くなっちゃうんだって」
え、それって………
「これって、びょーきかな?クロ兄だいじょーぶだよね?」
う、うん、えっとね、それは病気じゃ無いんだよ〜〜
「よかったぁ」
うん。よかったぁ…………
「はやておねーちゃんを見てもなるんだって」
え゛
「あとね、シグナムねーとシャマルねーとエイミィおねーちゃんを見てもたまになるんだって」
…………………………
「びょーきじゃないんだよね?」
ちょっとごめんね、タクト君
「うに?」
………………
…………
……
くろの…………
「ん?フェイトか。どうしたがふっ」
くろののばかぁっ!!!
「な、ナイス、アッ、パー…………何故に……………」


Side Chrono

うぅ、なんでまたいきなりアッパー………しかもフェイトはすぐにどっか行っちゃうし…………僕が何をしたって言うんだ…………
……………世界はこんなはずじゃないことばかりだよっ!!!
……………やめよう、虚しくなってきた……………
「大丈夫ですか、クロノ提督」
あぁ、大丈夫だ
「テスタロッサは一体何があったのでしょうか?」
さぁ………
「まぁ、後で謝っておいた方が無難でしょう」
なんでさ。いきなり殴られたのは僕なんだが…………
「こういうときは頭を下げた方の勝ちですよ、クロノ提督」
むぅ、納得いかないが…………まぁ、致し方なし、かな
「そういうことです。さ、次はこのテーブルです」
はぁ、疲れはしないがうんざりしてくるな。これで何個目だ?
「十個目で、これで最後なはずです」
ふぅ。なら頑張ろうか…………ザフィーラも今アイゼン、士郎さんと酒を取りに行ってるし、僕もへばってるばあいじゃないしな
「その意気です」
ところでユーノやデュランダル達は?
「私たちは机運び、S2Uとエイミィは椅子を取りに、デュランダルとシュベルトクロイツは会場飾り付け、バルディッシュとレイジングハートは遊園地に行ったこともあり寄り添って寝てしまいましたし、レヴァンティンは………その、クラールヴィントに膝枕をしたらクラールヴィントがそのまま寝てしまい、動くに動けません」
……………ユーノは?
「スクライア司書は、その……………」
……………その?
「…………高町なのはと良い雰囲気で庭に出ていきました…………」
……………………あの淫獣使い魔、後で凍らせる。
「………………とめはしません。溶かすのは私がしますから」
焦がすなよ?
「…………努力します」
一発芸は決まったな…………さて、行こうか。シャマル達も向こうにいるし。


Side Vita

さて、アタシは今、とある幼子と向かい合っている。

「…………だー」
このガキの名はミルフィ・バークフリート。コウの長女だ。本来アタシは小さい子は苦手なんだが…………
「う〜、だ〜〜♪」
何の因果か、大層懐かれちまってる。いや、可愛いんだがな…………
「あう〜〜んぐ、ん〜〜」
だ〜〜っまたやりやがった!!!こら、アタシの髪を口に入れんじゃね〜〜〜〜〜っ!!!
「あは〜〜」
こ、このガキ………何度言っても髪を食っては笑いやがって…………
「好かれてるわね、ヴィータちゃん」
好きで好かれてんじゃねーよ
「あわわわわ、今度はリインですか〜〜?」
「う〜〜、きゃっ、きゃっ♪」
今度は標的をリインに定めたらしい。
「こっちですよ〜〜」
「う〜〜、あぅ」
と、リインのことをはいはいで追い回している。
うーむ、見た感じ中々はえーな。
「はやいわねぇ」
うん。いいはいはいだよな。
「違うわよ。ミルフィちゃんが生まれてから」
あ〜〜もうすぐ一年だっけ?
「えぇ。ほんと、赤ちゃんって育つのはやいわ」
そうかねぇ………まぁ、どんどんデカくなってるのは確かだな………
「えぇ。本当に…………あら?」
どうしたんだよ、シャマル
「いえ…………ヴィータちゃん、動いちゃダメよ」
あぁ?そいつぁどういう…………
「えへ〜〜♪」
い、いつの間に背中に乗りやがった〜〜っ!!
「そ〜〜っと置いたのですよ〜〜」
おいこらリイン
「まぁまぁ静かに。そろそろおねむみたいですよ」
「あ〜〜………」
すぴーすぴー、と、寝息を起てながらねちまったらしい。
シャマルが引き剥がそうとするが…………
「あら?」
「ヴィータはやっぱりミルフィのお気に入りなのですよ〜〜」
ミルフィのやつ、しっかりとアタシの服を掴んでねちまったらしい。
指を一つずつ離して、ようやくシャマルの腕の中に移った。
「ふふふ、可愛いわね…………」
やれやれ、こいつも寝てりゃあ天使なんだけどな
「あや?起きてれば何なのですか?」
いいところ小悪魔ってとこだろ。あー、腹減った。宴会はまだかよ〜〜
「そろそろみたいよ?」
「ザフィーラたちも戻ってきたです」
宴会場になる広間に、皆が集まり始めていた。
やれやれ、ようやく始まるかな〜〜


中書き

さて、始まりました、宴会編。今回は準備編をはやて、なのは、フェイト、クロノ、ヴィータ視点かつ独白(?)でお送りしました〜〜

で、予想だにしない

フェイトさんの 大 暴 走


あぁ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいッ!

だから石を投げないでっ!!!


次回は大宴会編。
宴会の中の一コマ一コマをSSS形式でお送りしたいと思います。
であであ。

あ、エイミィさんまたでてねぇや(ぉ





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