「エリオって女の子みたい(に可愛いよね)」 「え? ……うん、そ、そうだね」 親友の何気ない言葉に頷いた。 思えば、それが全ての始まりだった。 まさか当人が一連のやり取りを聞いていただなんて、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは思いもしなかったのだ。 「フェイトさん。僕は――男です」 「ご、ごめんね。うん、エリオは男の子、」 「違うんです!」 「ふ、ふぇ!?」 「僕は男なんですよ、フェイトさん!」 それは男の子の意地と誇りを賭けた一世一代の大勝負。 「――っと言うわけで、二週間後にフェイトさんと模擬戦をすることになりました」 「唐突に無茶ぶりしてきたわね!?」 「へー。エリオ、がんばってね!」 「でも、エリオ君。フェイトさんに勝てるの……?」 「僕だって騎士の端くれだから戦うなら勝つよ。って言いたいところなんだけど……」 「正直、今のエリオじゃ無理よね」 「はい。ですから、みなさんに付き合っていただきたいことがあるんです」 「新技の開発だね!」 「あはは。二週間で用意した付け焼き刃には頼れませんよ」 「そ、そうだね」 「付き合っていただきたいのは作戦会議とシミュレーションです」 男の子、がんばる! 「へー。エリオ、そんなこと言ったんだー」 「軽いよエイミィ!?」 「いや、微笑ましいじゃない」 「そうなの?」 「フェイトちゃんはあんまりケーケン無いからわからないかな? まあ、彼氏いない暦イコール年齢だもんね」 「そこは突っ込まないでよ!?」 女の子、とまどう……? 「フェイトちゃん、エリオのことまだよく分かってないんじゃない?」 「……エリオがすごく優しい子だってことは知ってるよ」 「にゃはは。男の子にあるのは優しさだけじゃないんだよ、フェイトちゃん」 「そうなの?」 「うん。男の子にはみんな、どうしても折れない何かがあるの。その何かをプライド、折らないって決意を意地って呼んで――二つ合わせて男の世界、なの」 「初めて聞いたよ、それ」 「今度カラオケで歌おうか、ルパン。――それはさておき、エリオも男の子なんだよ」 「でも、エリオは自分のことを『男の子じゃありません、男です』って」 「微笑ましいよね」 「なのはまでエイミィと同じことを言うよう……」 「にゃはは。私、彼氏いない暦零年だし。フェイトちゃんと違って」 「そこは突っ込まないでよう!?」 男の子は決意を胸に。 女の子は困惑に心を揺らしながら。 「エリオ君はフェイトさんのことが好きなの?」 「うん。だから、男に見られてないって知って――悔しいって思ったんだ」 「そっか……。そうだよね。好きな人にそんな風に思われてたら辛いよね」 「うん。だからがんばるよ。『僕は男だ』ってフェイトさんに認めてもらうんだ」 「……ところで、エリオ君」 「なに?」 「エリオ君にとっての私って、何かな?」 「家族だよ。妹みたいなもの、かな……こんな風に思っちゃ迷惑、かな?」 「……ううん。そんなことないよ」 「そっか。ありがとう、キャロ」 「がんばってね、エリオ君――ううん、おにいちゃん」 「ぶふっ!? え、ちょ、キャロッ!?」 「あはは、冗談だよ。……うん、冗談、だよ」 ――決戦の日がやってくる。 「ルールの確認です。時間無制限の一本勝負。先に降参するか魔力切れになった方が負けです」 「うん。……でも、本当に戦うのエリオ?」 「戦います。だって――」 「けど、危ないよ? もしかしたら怪我させちゃうかもしれないし、」 「――勝って、フェイトさんに伝えたいことがあるんです」 「え……え?」 模擬戦をしようStrikerS! 〜 雷光対決剣槍激突 〜 「―――エリオ。私も本気で行くからね? ライオットザンバーァァァアアアッ!」 「―――打ち抜くよ、ストラーダ!」 果たして、少年は男と認められるのだろうか。 |