FF4プレイメモ 〜 ゲームは1日1時間! 〜act0 act1 act2 act3 act4 act5 act6 act7 act8act2〜2人旅〜旅立つ前にカインのステータスをチェック。クラスは「竜騎士」。利き手は左。 レベルは10で、HPは190とカインより10低い。ただし、精神が高いので魔法に対する防御力はセシルよりも高いのでしょう。それに、竜騎士なら「ジャンプ(注※1)」もあるでしょうしね。 ステータスのチェックも終えたので、城を出て城下町を訪れます。折角お金も手に入ったので、町の探索がてら旅の準備を整えましょう。 1軒の民家に入り、中にいるお婆さんに話しかけてみます。 バロン国を護るセシルが相手です。何かこう、尊敬される的な言葉を期待してみて話しかけてみたのですがっ! 「ローザを変なことに巻き込まないでおくれよ!」 …………あ、あれ? 気を取り直して、町を散歩している老人に話しかけてみます。 こ、今度こそっ! 「バロン王は何を考えてらっしゃるのだ。暗黒剣を兵士に教えるなぞ何事か!」 ……え。えーっと。 どうやら、陛下やセシルは町の人々にあまりよくは思われていないようです……。 気落ちしたセシルの肩を叩いて慰めるカイン、という姿が目に浮かんできそうでした。 さて。物語冒頭で強奪に入ったミシディアへのワープゲートを発見。 物語中でミシディアへ再び赴くことがあれば使うのでしょう。 もしかしたら、ここで「ミシディア」の名前が出たことでまた気落ちしたセシルの肩を叩いて慰めるカイン、という光景が(ry 町の北では踊り子発見。話しかけるといきなり踊り始めます。宿屋に踊り子募集の張り紙があったので、もしかしたらこれは踊り子を連れていけ! というイベントなのだろう。と思って何度か宿屋と踊り子の女の子を往復してみたのですが、何も起こりませんでした。 ……orz また、おばあさんの情報から、町の西にある扉は城の水路への道であるらしいことが分かりました。今は封鎖されているらしいのですが……。これで城にあった水路への出口の意義発見! きっと、ミシディアからワープゲートを使って強行突入し、水路から城へ潜入するイベントがあるんですねっ! そして、悪の巣窟と成り果てたバロン城に乗り込んで、襲い掛かるベイガンを薙ぎ倒しながらバロン王を成敗するんでしょう。 飛空艇はバロンが唯一の保有国のようですから、他国の地上兵団では上空から爆撃なりされて手の出しようが無いでしょうし。っとなれば、やはり少数の精鋭で乗り込んで成敗! しかないですよねっ! 実際の所がどうかはプレイしていかないと分かりませんがっ。 町の水路に流されて遊ぶのも飽きたので、そろそろ出立を考えます。 現状、白魔導師がいない男2人旅では回復はアイテム頼りです。 宿屋の周辺でレベル上げを行い、ステータスを底上げして安全に先に進むという手もありますが、宿屋では50ギルを支払わなければならないので、ダメージを食らっても最低でも50ギルは稼いでいないと回復できません。モンスターからいくらお金が入ってくるかは分かりませんが、あまり良い手段ではないでしょう。 結局、町を後にして真っ直ぐに北西の洞窟を目指すことにしました。 水と緑が溢れる。バロン国の強大さを表すかのような豊かな町を後にして。 2人の騎士が旅立とうとしていた。 「ねえ、カイン」 「どうしたんだセシル。これから旅に出るってのに弱気な声なんて出すものじゃないぞ」 「……そうだね」 「なに、心配するな。幻獣討伐なんて簡単に片が付くさ。何せ、暗黒騎士のお前と竜騎士の俺が戦うんだからな」 「……頼りにしてるよ」 「ああ。すぐに終わらせてこの町に、この国に帰ってこよう」 「そうだね。……でも」 「でももだってもない。そんなんじゃ、ローザに笑われちまうぜ?」 「なっ!? カ、カイン! ま、待て!」 「ふっ。待てと言われて待つ奴がいるかっ! 早く来ないと置いて行くぜ!」 「待てぇーっ!」 少年のようにはしゃぎ、気落ちも鬱屈な感情も吹き飛ばしてしまったようにして。2人は「ミストの村」を目指して旅立った。 町を出る彼らを見送る者はなく、吹く風のみが彼らを送り出す。 そして、彼らが消えた頃。風が立てる音が声色に変わり、紡がれなかった言葉を奏でた。 僕か、君か。あるいは、両方か。 そのどれかは分からないけれど。 何だかもう、この国には帰ってこれないような気がしたんだ。 さてはて。 幸いにしてモンスターとエンカウントすることもなく洞窟に到着。だだっ広い草原を抜け、今度は洞窟の突破を目指します。 と、ここで初エンカウント! 戦闘! 勝利! 28ギルと75の経験値を手に入れました! 被ダメージは11! これなら、2回戦闘しても被ダメージは22程度。15回程度の戦闘なら、恐らくは安全圏でしょう。ボス戦闘を考えなければ。 入手経験値は75なので、10回で750付近は手に入ると思われます。現在、レベルアップに必要な経験値はセシルが300アンダー、カインが700アンダーなので、まぁ歩き回っているうちに11レベルにはなるでしょう。 と、皮算用をしていたら……被ダメージ30以上の戦闘きたー!? 代わりに入手ギルは52、入手経験値は123……あ、あんまりおいしくないぞう。 とりあえず、ゴブリンとソードラット、インセクタスは1撃で倒せるらしいことが判明しました。戦闘では相手の手数を減らした方が有利でしょうということで、そっちを優先して狙うことにします。いや、蝶っぽいのが毒をもってそうで怖いんだけど。色的に。 「モンスターなんか敵じゃない! 俺は、バロン国竜騎士隊長カインだ!」 「カイン! そんなに調子に乗って戦っているといつ大怪我をするか分からないぞ!」 「心配するな。この程度、うちの新兵ですら無傷で倒せる」 「カイン! 前! 前!」 「ん? 何をそんなに焦―――」 「シャァアアアアッ!」 「―――ぎゃぁぁああああっ!?」 「ほら……だから気をつけろって…………」 洞窟を歩いていると、どこからともなく『引き返しなさい』の声が。『だれだ!』とセシルが叫びますが、それっきり声は消えてしまいます。 これは何かあるなと思いながら歩を進めていると、洞窟の最深部に到着しました。再び『引き返せ』と言われ『引き返しますか?』と選択肢が出ます。ここは当然、引き返します。 いや、だってHPが減っているんですってっ! とりあえず回復! 何を置いても回復! かーいーふーくーっ! ぴっぴっぴろりーん。 ……無事にHPも回復し、幻獣戦です! きっとこれはボス戦なので気を引き締めて戦います。 相手は霧を集めてドラゴンを召還しました。ドラゴンからのダメージは1。 ってぇっ!? ドラゴン、姿を霧に変えましたよっ!? しかも、霧になっている間は無敵ィッ!? 何その性能っ! しばらく待つと実体に戻るので、その間にぼっこぼっこにしてやんよ! とばかりに攻勢を掛けます。戦いの最中でセシルの固有コマンド『暗黒』も試してみることに。 ……あれ。『戦う』より弱いんですけど……? しかも『暗黒』は自分のHPも削れる! 使えないよこれ……。 結局『戦う』連打でドラゴンを撃破。 幻獣討伐の任務も完遂し。洞窟を抜け、「ボムの指輪」を届けるべくミストの村へ向かいます。ミストの村はのどかで小さな村です。まったりとできる穏やかな場所でしょう。セシルたちもほっと一息を付けたのではないでしょうか。 ところが、村に着くと陛下に渡された指輪が光り、町に火を放ってしまいます。愕然とするセシルとカイン。 「何故だぁっ! バロン王!」 と、悲痛な叫び声を上げます。 平和な風景が一転、阿鼻叫喚の地獄絵図に。彼らの耳には人々の悲鳴と怨嗟の呻き声が聞こえてきていることでしょう……。 そんな彼らに、子供の泣き声が飛び込んできました。どうやら彼女の母親が『ドラゴンを倒されたから』死んでしまったようです。 つまり、セシルたちが彼女の母親を殺してしまったようです。 そして、気づいてしまいました。 『魔物を呼び寄せられる、召喚士』そう呼ばれる存在がいることを。 また、セシルたちはこの村に住む召喚士たちを全滅させるために送られたということを。 カインが、手に持つ槍を泣き叫ぶ子供に向けます。 戸惑い、制止の声を挙げるセシルに『やらねば俺たちがやられる!』と返すカイン。『子供だぞ』と言われれば『陛下に逆らえるのか?』と返されます。 バロン国王陛下。 それは、各国で唯一「飛空艇団」を保持する世界最強の軍事国家の主です。 また、セシルにとっては尊敬する父のような存在でもあります。 セシルは、バロン王の命があったからこそ、自らも望まぬ『暗黒剣』を極めて『暗黒騎士』になったのでしょう。 バロン王に畏敬の念を抱いていたからこそ、自らも納得していない『ミシディアでの強奪任務』に従事したのでしょう。 そのバロン国王陛下に、セシルは逆らうことができるのでしょうか? セシルの、存在意義すらを問う言葉。それに……彼は、即答しました。 「こんな殺戮を繰り返してまで、陛下に従う気は無いっ!」 セシルとカインの間に緊張感が走ります。 揺らめく炎に囲まれる中、一触即発の雰囲気に包まれる2人。 それを破ったのは、カインでした。彼は破顔して槍を納めます。 「ふっ、そう言うと思ったぜ。1人でバロンを抜けるなんて、させやしないぜ」 と。地獄を共にすると告げてくれました。 「いくら陛下に恩があるとはいえ、竜騎士の名に恥じる真似をできるわけなかろう」 カインはセシルの友で。そして、誇り高き騎士でした。 彼は続けます。 「だが、バロンは世界一の軍事国。俺たち二人がいきがったところでどうにもなるまい。他の国に知らせ、援護を求めんとな。ローザも、救い出さんと!」 あぁ、もう。格好良いなカインッ! 彼の言葉にセシルが感謝を示すと、カインは「べ、別にお前のためなんかじゃないんだからね!(意訳)」と言いました。 不思議そうな顔を浮かべたセシルに、カインは意味深な間で返し。 数拍の呼吸を置いて、村からの脱出の提案と、泣き叫ぶ少女の処遇の相談をセシルに告げます。 自分たちのせいで孤児になった娘は自分たちが連れていくしかないと言うカイン。 しかし、母の仇である彼らに、少女は素直に着いて行こうとはしません。当然の反応です。 力ずくでも女の子を連れて行こうとした二人に対して、女の子は『タイタン』を召喚します。タイタンの力はすさまじく、ミストの村全体を揺らし……セシルは、女の子とどこかの森の中へ飛ばされてしまいました。 ぐっばいカイン! さて。セシルはなんとか無事でしたが、女の子の方はタイタン召喚の影響もあってかぐったりとしています。このまま放っておけば万が一が起こるかもしれません。 しかし、ミストの村に戻ろうにもタイタンの影響で地形が変化して戻れません。また、戻れたとしてもミストの村は焼け野原でしょう。 任務を放棄してしまったので、セシルはバロン国にも戻れません。もっとも、戻ろうとしても山脈に阻まれて不可能なのですが。 セシルは、行く宛てを失ってしまいました。 それだけではありません。彼の力になると言ってくれた心強い友も、セシルは失ってしまいました。 ……この時、セシルは腕に抱えていた何もかもが零れ落ちた気分を味わったかもしれません。 セシルが尊敬していた、気高く優しいバロン王は、もうどこにもいません。 セシルが信頼していた、気さくで力強い友のカインは、どこにもいません。 セシルは行く宛ても無く、途方に暮れるばかりです。何かをするにしても、指針がありません。 何をしていいかが、分かりません。 ……その、彼に。 唯一希望が与えられたとすれば、それは彼と共に飛ばされてきた少女でしょう。消耗し衰弱し、今にも命の灯火が消えてしまいそうな、名も知らぬ少女。 彼女の母親を自らの手で殺めてしまった、自身の罪を償わなければならない少女。 セシルがこれからしなければならないことがあるとすれば、それは彼女を救うことです。 それは、贖罪のために。 自らが救われるために。 セシルは少女を抱え、旅を始めます。 元々は飛空艇団所属のセシル。空から地理関係は大まかには把握しているはずです。 地理の知識の下、少女を助けるために彼は最も近くにある町を目指し北へ進みます。 モンスターが出る平野を腕の中の少女を護りながら進み。灼熱の砂漠を乗り越えて、彼はオアシスの町に辿り着きました。 砂漠の民を潤す奇跡の至宝、オアシス。そこに辿り着いた時、腕の中の少女を救えると思えた時。 セシルの心は、どれほどの安堵に満ちたのでしょうね。 砂漠という場所は悉くが生命の敵である。 木々は育たぬし、土は風化して砂に変わるし、だから水が定着しない。 訓練された兵士ですら砂漠を行くのには相当の装備を必要とし、万全を期しても全員が自らの足で砂漠を渡り切ることは無い。必ず、誰かは倒れて誰かに運ばれる。 完璧な準備をしても己を進ませることで手一杯になる場所、砂漠。 灼熱の悪魔が住まうその場所を、身動き取れぬ少女を抱えて歩く1人の騎士の姿があった。 「助けるから……君は僕が助けるから……」 凡そ砂漠の行軍に向かぬ漆黒の鎧を纏った騎士は、『助ける』という言葉を呪文のように呟いていた。 彼の心を突き動かすものはたった1つ。腕に抱えた少女を死なせたくないという、願いである。 「助けるから……」 さて。砂漠という場所は悉くが生命の敵である。しかし、例外も存在する。 砂漠という過酷な環境に完全に適応した種族に取ってみれば、砂漠とは快適な居場所である。何せ、年がら年中気温と気候は変化しないし、外敵も少ない。 何より。 「助けるから」 砂漠に適応できず、熱砂にやられて弱った獲物が迷い込んでくる。 今もまた、小さな少女という極上の馳走を抱えた獲物が無防備に歩いていた。 騎士の前方に突如として砂柱が湧き立つ。いや、それは砂柱ではなく、巨大な蚯蚓だった。 砂漠に住む巨大蚯蚓、サンドウォーム。瞳が退化し、変わりに発達した触手でもって、それは騎士と少女に狙いをつける。 「フシャ―――ァアアアアッ!」 サンドウォームが、巨大蚯蚓とは思えぬ俊敏さで騎士へ襲い掛かった。 砂漠の行軍で騎士は疲れ果てている。抵抗する力なぞ残っておるまい。サンドウォームはそう目算していた。 事実、巨大な口が騎士を飲み込む直前までサンドウォームはそう思っていた。 「助けるんだ!」 しかし。 「邪魔を―――するなぁっ!」 初めて味わう感触。それは、決して騎士と少女の食感ではない。食事のように満足感を伴うものではなく、むしろもっと悲劇的な。自らの身体を引き裂かれる感覚。 サンドウォームは正しかった。事実、彼は身体を真っ二つに裂かれている。 「……助けるんだ……助けるんだ……」 葬った巨大蚯蚓なぞ目もくれず、騎士はただひたすらにオアシスを目指して歩む。 その足取りは疲労で頼りないものとなっていたが、決して弱々しいものではない。 また、サンドウォームは目を持たないので知りえなかったが。騎士が歩んだ道には、まるで標のようにモンスターの屍骸が転がっていた…………。 北の砂漠を横断し、オアシスに面した村「カイポ」へと辿り着きました。一安心して村に入ると、町の様子を観察することも無く真っ先に宿屋を目指します。 宿の主もセシルが抱える少女の顔色が悪いことに気づき「御代はいいから早く休んでください」と、中に通してくれました。 ベッドの上で身体を休めたことでようやく気がついた女の子。 彼女に、セシルは告げます。 「君のお母さんは僕が殺したも同然だ。すまなかった」 これは、告げることが当然である謝罪の言葉。少女から母親を奪ったのはセシル。だから、彼が彼女に告げなければならない言葉。義務に押された言葉。 けれど、この言葉を告げるために、セシルは勇気をどれほど振り絞ったのでしょうか。 懺悔を告げるために、心はどれだけ震えたのでしょうか。 親の仇を睨む少女の瞳に、セシルの心はどれだけ刺されたのでしょうか。 そして。 「だが、君のことは僕に護らせてくれないか?」 ……贖罪の言葉を告げる唇は、震えていたのでしょうか? 分かりません。真実は分かりません。 ただ、分かることは。 セシルの言葉に、少女は何の言葉も返してくれなかった。ということ。 女の子が眠り、セシルも仕方なしに眠りに付きます。 精神が休まることは無いでしょうが、身体だけは休まる時間が訪れます。 しかし、しばしの休息もままなりません。 城からの追っ手「ジェネラル」が現れます。手勢を率いた彼の狙いは、ミストの村の少女。 彼から少女を守るように間に立ったセシルに、ジェネラルは告げます。 「バロン王の命令だ。ミストの生き残りの子供を引き渡せば許してくださるそうだ。ミストのものは危険な存在らしいのでな!」 しかし、セシルは答えません。 苛立ったジャネラルが叫びます。 「女の子を渡せ!」 セシルにとっては、これがバロン国に戻る最後のチャンスです。この機会を逃せば、たった1人で強大なバロン国に挑むことになってしまいます。 友も消え、自らですら忌避している暗黒剣だけを頼りにする戦い。それは無謀で、無茶で、達成不可能な自殺行為です。 ここでセシルが女の子さえ渡せば、己の意思を殺して狂ってしまったバロン王に従いさえすれば、セシルは戦いから逃れることができます。 そして、拒否すれば辛い戦いに身を投じることになります。 セシルが口を開きました。彼の今後を決定付ける、運命の一言です。 「断る!」 セシルはジェネラルたちと戦闘に入り、女の子を護って彼らを打ち倒していきました。 残念ながらジェネラルには逃げられてしまいましたが、女の子のことは無事に護ることができました。女の子に告げた「護る」という言葉を守りました。 ……そのために、己の明日を半ば犠牲にしても。 セシルの姿に心を許したのか、少女は自分の名前をセシルに教えてくれます。 彼女の名前は「リディア」。 あの、焼けてしまったミストの村が持っていた和やかな景色と同じ色の髪をした少女。 彼女は…………。 白魔法を持っていました。 ケアルです。念願の回復魔法です。これがあればカインなんていらねーよ。でかしたリディア! しかし、リディアはまだケアルを覚えていないので、ケアルを覚えるレベルまでモンスター狩りを行おうと思います。 何はともあれケアル! これでポーション代が節約できるぜっ! …………ごめん。 ―――おかあさんが、大好きだった。 おかあさんはとっても優しかった。 おかあさんの傍にいると陽だまりにいるみたいですごく気持ち良よかった。 でも、おかあさんはいない。もういない。 目の前のお兄ちゃんが、おかあさんのドラゴンを殺してしまったから。 だから、おかあさんは死んでしまった。 お兄ちゃんのせいで、死んでしまった。 「怯むな! いくら暗黒騎士でもこの数を捌けるはずがない! 一気に畳み掛けるんだっ!」 お兄ちゃんは、真っ黒な鎧に包まれた人。顔すらも仮面に隠して見えない、よく分からない人。分かっていることは、おかあさんの仇ということだけ。 きっと冷たくて、怖い人。きっとすっごく……悪い人。 今は、お兄ちゃんは私に背を向けている。 そうして、お兄ちゃんの鎧に比べれば貧相な鎧を着込んだ人たちと対峙している。 「で、でも将軍! 暗黒騎士と言やぁ、噂じゃ大人数を1度に叩っ切れるとか!」 「迂闊に間合いに入れば即座に首が飛ぶと聞きやしたぜっ!」 「俺たちゃ怖いですよ! まず将軍が切りかかってくださいよっ!」 お兄ちゃんと対峙する男の人は4人。1人が奥にいて、あとの3人がお兄ちゃんに剣を向けている。 彼らの言動は聞いているこっちが情けなくなっちゃう。いくじなし。 「つべこべ言うな! 突撃ーっ!」 「ええい、もうどうとでもなれェェ―――ッ!」 3人の男の人が、お兄ちゃんに一斉に飛びかかった。 向かってくる剣は3本。でも、お兄ちゃんの剣は1本。お兄ちゃんが1本の剣を受け止めて、残る2本に切られて終わりだ。 あぁ―――それでいいじゃない。だって、お兄ちゃんは大好きなお母さんを殺したんだもの。 だから、これは当然。当然の結末。 なのに。 ―――君のことは、僕に護らせてくれないか? 私の胸がズキンと痛んだ。 お兄ちゃんが切られてしまう所を見たくなくて、思わず目を背けてしまう。 「う、うわぁ―――っ!?」 鈍い斬撃の音が響いて、液体が飛び散る耳障りな音が聞こえた。 あぁ、そういえば。お兄ちゃんの次は私の番だっけ。 ……私は、怖かったけど。反らしていた目を戻して目の前を見た。 そして、息を呑んだ。 「さあ、どうする。残るはお前だけだ」 どんな魔法を使ったのかは分からないけど、そこには切られていたはずのお兄ちゃんが立っていて。 お兄ちゃんの前には、3人の男の人が倒れていた。 奥にいた男の人が震えている。きっと、お兄ちゃんが怖いんだ。 「お……覚えてろよっ!」 結局、男の人は逃げてしまった。お兄ちゃんも後を追わず、ほっといて剣を納めた。 騒ぎが気になって部屋を見に来た宿屋のおじさんが、倒れている3人の男の人を見て「うっ」と呻き声を上げたけど、お兄ちゃんの目配せを受けて彼らを引きずり出していった。 男の人たちにはまだ息があったみたい。きっと、手当てをするのだろう。 「…………あ」 ふと。お兄ちゃんと目が合った。 仮面に隠れて表情は分からないけれど。 お兄ちゃんは、悲しんでいるように見えた。 「……………」 痛い思いをした男の人たちを可哀想と思ったのかな? けれど。お兄ちゃんは冷たい人じゃなかったのかな。 私のおかあさんを殺した、悪い人じゃなかったのかな……? ―――君のことは、僕に護らせてくれないか? また、胸が痛んだ。 私は何かを間違えているのかもしれない。 事実は。お兄ちゃんがお母さんを殺したという事実は変わらないけれど。 でも。私は、何かを間違えているのかもしれない。 そして、それはきっと…………お兄ちゃんと話してみないと分からない。と、思う。 だから私は口を開いて―――。 ―――お兄ちゃんと一緒に、旅をすることにした。 act3へ・脚注リスト。 【ジャンプ】 FFの「竜騎士」固有の特技。まず大ジャンプして画面から消え、しばらくしてからジャンプした勢いでもって敵を串刺しにするというもの。 ジャンプ中は当然のことながら敵からの攻撃の対象にはならないが、味方の回復・補助魔法の対象にもならないという、考えようによっては使い辛い特技。 なお、竜騎士がジャンプで画面から消えている間に戦闘が終了し、勝利のファンファーレを浴びる中に竜騎士だけが居ないという光景はFFではよくある話である。 |