4月1日(火)29時30分 ・春季企画のお知らせ。 †都合によりシグナムはリストラされました。† 「 帰 っ て き た ぜ ! 」 「猫は喋るなぁっ!」 「秘儀・兎変化!」 「もう何でもありだなぁおいっ!?」 「ボルテッカァァアアア!(挨拶) 全国の魔法少女のみんなっ! 元気にしてたかなっ!」 「挨拶で反物質をぶちこむな! って言うか、全国の魔法少女って何だよ……」 「にゃぁ〜(くしくし)」 「そこで猫に戻んなよっ!?」 「にゃ!」 「誰か、あたしに代わりに突っ込んでくれ……」 「なんでやねん!」 「お前じゃねぇよっ!」 「にゃ〜(くしくし)」 「そこで猫に……! あぁ、もう、天丼じゃねぇかぁっ!?」 「時空管理局ラジオ、毎週土曜日22時から放送開始☆」 「今度は何だよ唐突にぃっ!?」 「全国の魔法少女と言えばどじっ子パーソナリティが送るWEBラジオのキメゼリフ!」 「どじって……それ、番組として回るのか?」 「愉快な仲間たちが手伝えば百人力!」 「もういいよ……」 「混沌とした時代に救世主現る! マスクドライダーオディ参―――」 「帰れぇぇえええっ!」 「―――ウェーイッ!?」 ―――それは病だった。 人間には五感と呼ばれるものが備わっている。外界に存在する情報を感じ取る五つの器官を総称したものだ。 もちろん、人間以外の生物にも五感は備わっている。有名なところでは犬の嗅覚だろう。彼らは臭いに対して人間を一億倍するほど鋭い嗅覚を持ち合わせている。これはよくよく話題に挙がる事例だろう。 ところで。嗅覚は、しばしば視覚以上の情報を教えてくれる。水の臭いを感じると言って湖を探し出してしまう人の話を例に出すのは極端が過ぎるが、臭いによって安心できるものかどうかを判別した経験は誰しもが持っているだろう。異臭を放つ物体には手出し無用というやつだ。 臭いは、時に危険を知らせてくれる。鼻につく煙の臭いは火事を教えてくれるし、鼻が曲がってしまいそうな異臭は腐った物の所在を教えてくれる。 さて。 紅色をした光が差し込む夕暮れ時。昼と夜の狭間に、影法師が長く伸びる頃。 夜闇に向かいつつある紅の世界に抗うような、蒼白な面持ちをした少女がいた。 「うそよ…………」 ストレートに流した少女のブロンドが、彼女の呟きに合わせて細かく震えた。よく見れば指先や唇も小刻みに震えている。 彼女――アリサ・バニングス――は、翡翠が掛かった双眸でただ一点を凝視していた。 呆然として道路に尻餅をついているアリサ。車の通行の邪魔である。轢かれても文句は言えない。しかし、その心配は無い。 周囲にあった全ての車はエンジンを止め、ドライバーはアリサと同じ一点を凝視していた。 「うそよ……!」 つん、と。鼻につく臭いを感じた。そして、半瞬も経つと臭いは強烈なものに変わる。 どろりと絡みつきずしりと重い、咽て吐き出してしまいたくなる臭い。 誰もが顔をしかめている。誰かが誰かに携帯電話越しに怒声を浴びせていた。しかし、臭いがそれらを現実でないどこか別の場所で起きている物事のように思わせる。 臭いは、アリサに情報を与えていた。 「すずか」 与えられた情報は、危険。 感じていたものは、血臭。 目にしていたのは、事故。 「すずかぁ……っ」 ほんの数分前。アリサとすずかは歩道を歩いていた。二人で買い物をした帰りだった。一日の出来事を語り合い、談笑しながら歩いていた。 アリサは、彼女の右隣を歩いていたすずかの方に向いていた。そして、運悪く暴走車がアリサの左から突っ込んできた。 結果として、左隣を歩くアリサに顔を向けていたすずかが暴走車に気づくこととなり、すずかがアリサをはね飛ばして助け、車と壁に押し潰されることとなった。 顔面を蒼白にして呆然としたアリサに血臭が告げる。 すずかはもう助からない。 「お願い、返事をして……生きているなら、お願い……すずかぁっ!」 この日。月村すずかの歯車が狂った。 そして、アリサ・バニングスの歯車もまた、狂うこととなる。 「ここで終わんのかよっ!?」 「 春 季 企 画 の お 知 ら せ ! 」 「どうして何事も無かったように再開できるんだお前はよぅっ!?」 「第4回リリカルラジオやるよ!」 「聞いてねぇ……」 「今回もパーソナリティ投票を経てお便り募集! 詳しい話はこちらを参照!」 「…………」 「さらに!」 「まだ何かやるのかよ」 「サイト内投稿企画発動!」 「何だよそれっ!?」 「参加条件をうちに投稿経験を持つ人に限定した投稿企画なりよキテレツー!」 「だから、具体的には何をすんだよ……」 「本日4月1日〜12月10日まで、クリスマスSS募集! 12月24日24時00分に特設会場にて一挙公開!」 「随分と息の長い話だなぁおいっ!?」 「さらにっ!」 「まだ何かやんのかよ……」 「チャット会のお知らせ!」 「もう好きにしろよこんにゃろうっ!?」 「日時はゴールデンウィーク辺りを予定。参加希望の方は『howlingspirit■hotmail.co.jp(スパム防止のため■を半角の@に変えてね)』まで。うぃんどうずめっせんじゃーのアドレスも兼用してるよっ」 「お前、そろそろ自分のキャラが分からなくなってきてるだろう……?」 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「スーパーティアナタイム!」 「ボケに脈絡がねぇんだよぉっ!」 「秘儀・兎変化!」 「人の話は聞けぇぇええええっ!」 ショッキングな映像は鮮明に焼きついて、いつまでも消えてくれない。アリサを身震いさせる陰惨な光景は、恐らく一生彼女を苛ませ続けるだろう。 車と壁に押し潰されたすずかの姿は、一言で表せば無残だった。 小さな身体が事故の衝撃に耐え切れるはずもなく、本来は呼吸器を守るためにある肋骨が肺に突き刺さり、柔らかな臓器は破裂してしまい、車と壁に挟まれてしまった腕や腰の骨は砕けてしまっていた。背中や腹の肉は裂けていたかもしれない。すずかの足元に、すぐに大きな赤い水溜りができていたから。 十人が十人とも即死と断定する不幸な事故だった。 それでも、一縷の望みに賭け、すずかはすぐさま救急病院に搬送された。 アリサは、血相を変えて病院に飛び込んできたすずかの姉と彼女の無事を祈った。 しかし、祈りが天に届くことはなかった。 故にして、アリサは事故に遭って無残に潰されたすずかの姿を忘れることは生涯不可能だろう。 月村すずかとの新しい記憶を紡げないのだから。悲劇を塗りつぶす方法が無いのだから。 風が血臭を運んでくる度に、アリサは親友の最後を思い浮かべるだろう。 「なんですずかが死んで……あたしが生きてるのよ……」 翌日、夕方。 すずかの傍で一夜を越したアリサだったが、今日は家に帰されてしまった。すずかと二人で歩いていた夕暮れ時の道を、今日は一人で歩く。 孤独な影法師に涙が滲んだ。 傍らには、誰もいない。 「すずかとあたしだったら断然すずかが良い子よ。死神は目が節穴よ。連れて行くなら、すずかじゃなくてあたしでしょう……?」 アリサの瞳は虚ろだった。様子は、憔悴し切っていた。もしも魔導師の任務で連絡が取れない場所に出向いているなのはたちがここにいたなら、絶対にアリサを一人にはしなかっただろう。 もしも道行く人がいたならば、ふらふらとした危なっかしい足取りで歩くアリサを心配して一声を掛けたかもしれない。 だが。 昼にも夜にもなれない夕方という時間には、アリサ以外の人間が存在していなかった。 「お嬢さん。前を向かねば転んでしまいますよ?」 アリサの耳に飛び込んできた声。落ち着き払った成人男性の声は、アリサの知らない誰かのものだ。 執事に代表される主に仕えた者が持つ独特の色を孕んではいたが、当然バニングス家執事鮫島のものであろうはずはない。全く聞いた覚えの無い声だ。 声の主は、いつの間にかアリサの眼前に現れていた。 燕尾服に身を包んだ細身も男性だ。短すぎず長すぎない漆黒の髪は吸い込まれそうな闇色をしていて、見る者に何か背徳的な禁忌の印象を与える。 瞼は一目には閉じているように見えるほど薄くしか開かれておらず、彼の瞳の色を窺い知ることはできなかった。 「誰よ、あんた」 いぶかしんだアリサの声が街路に響いた。 男が口元に薄い笑みを浮かべた。 ぞっとするような冷たい笑みだった。 アリサは思わず息を詰まらせ、足が縫い付けられたかのように動けなくなってしまう。嫌な汗が噴き出してきた。 怖い、と思った。 「いずれ知る時が来るでしょう。今日は顔を見せに来ただけです」 男は深く身を折って一礼する。その仕草は溜め息が漏れてしまうような優雅さを持っていたが、アリサはそんな感慨に浸れる心境ではなかった。 一刻も早く目の前の男の消えて欲しいと思った。 「それでは」 頭を上げた男はアリサに背を向けて歩き出した。この場を去るのだろう。 安心したアリサが安堵の溜め息を付こうと胸に手を置いた。 その時。 「え…………?」 まるで、元からその場に居なかったかのように、男の姿が掻き消えてしまった。 アリサは、自分が幻でも見ていたのかと疑った。しかし、服を背中に貼り付ける嫌な汗が寸前まであった光景が現実のものだと教えている。 身震いをした。背筋に氷刃が滑り落ちるような寒気を覚えたからだ。 「早く帰ろう……」 雑踏の無いひっそりとした夕方の路地を行くアリサ。そこには誰もいない。 彼女以外の人間は誰一人としていなかった。 「アリサちゃん、大丈夫かなぁ」 「何で出てきてるんだよっ!?」 「?」 「不思議そうな顔をしてぇっ!?」 「魔法の力で何でも解決だよ?」 「魔法使えねぇだろぉぉぉおおおおおおっ!」 「?」 「もーいーです……」 「あ。最後のお知らせはCMに関係しているんだよ」 「まだ何かやんのかよ」 「リリカルマジカルにサークル参加するんだって」 「…………は?」 「一つは、私とアリサちゃんがメインのお話。ハイブリッド学園サスペンス『R-DX』」 「“ 「もう一つは、エリオ君とヴィヴィオちゃんの 「ちょっと待てぇっ!」 「―――『聖王様の花婿』って、なあにヴィータちゃん?」 「エ、エエエ……!」 「?」 「えっちなのはいけないと思うぞっ!」 「“エリオはあたしのだ!”じゃないの?」 「ち、違ぇよ! あのバカのことなんて別に……っ!」 「くすくすくす」 「う、うー……ぁー……。あぅあぅあぅ」 「『R-DX』のサンプルはこれとこれ。続きのページになってるよ」 「あぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅ」 「ヴィータちゃん、まだ復活しないね。可愛いなぁ。っと、『聖王様の花婿』のサンプルはこちらになります」 「あぅあぅあぅあぅあぅ」 「 「あたしは別にぃぃいいいいっ!」 「くすくすくす♪」 「い、以上で告知は終わりだぁっ!」 「 「でもさ」 「?」 「今日……4月2日だぜ」 「…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「スーパーアリサちゃんタイム!」 「だからだからだからぁっ!?」 「それじゃあ、嘘以外も話そっか?」 「何をだよ……」 「『祝福の風はいまだ吹かず』の書籍版が、11月のリリカルマジカル5目標で頒布予定だって」 「おお」 「初回限定版にはきれいなシャマルさんの目覚まし時計とシグナムさんの双丘マウスパット、それにリインフォースさんの腕時計とヴィータちゃんのハンカチがついて豪華ヴォルケンリッター勢ぞろいアイテムつきだって」 「嘘を言うなぁっ! って言うか、ザフィーラを忘れてやんなよぉっ!?」 「?」 「もーいーです……」 「ヴィヴィオちゃんの話や、ヴィータちゃんとエリオ君の話はまだまだプロット開発中なんだって。残念だったね、ヴィータちゃん」 「だから、あたしは別にエリオのことなんて……っ!」 「出番はまだまだ先で残念だったねって意味だったんだけど……」 「!?」 「くすくすくす♪」 「あたし、なんでこんな良いように弄ばれてるんだ……」 「好きな人ができたからじゃないかな?」 「だからあたしは、別にあのバカのことが好きとかそういうんじゃなくてだなぁっ!」 「へー(バレンタインチョコ的なまなざし)」 「うわぁああああんっ!?」 「けどまぁ。エリオ君もヴィータちゃんも複雑なんだよね。そんなわけで、“Red Color“一部予告どうぞ」 人生観は、たった一つの言葉で変わってしまう。それは、濁流のように激しい生き方を強要された人間には馴染みのある感覚だろう。 医師から診断結果を言い渡された少年――エリオ・モンディアル――は、そんな感覚を知る人間だった。不幸ながら、今の瞬間に改めて感じさせられていた。 彼の顔からは表情が消えていて、強いて表現すれば顔面蒼白と呼べようか。 放心した様で金魚のように口を開閉させ、言葉にならない言葉を発している。 「残念ながら事実です。そして、私たちの技術ではどうすることもできません。生命工学分野で名高い、かのジェイル・スカリエッティならば解決することができるかもしれませんが、彼が手を貸してくれるとは思えません」 医師は力無く首を振り、手の施しようが無いことを告げる。 少年が喉からか細い声を出した。望みを絶たれた者特有の、色が抜け落ちた声だった。 打ちひしがれる彼に、医師は再び言う。彼を打ちのめした、彼の身体に起こった変異の形を。 「エリオ・モンディアル君。貴方の身体からは、生殖能力が消失しています」 ◇ ◇ ◇ ままごとみたいだ。それは、誰に言われずとも自分が一番よく分かっていた。 自分――紅の鉄姫ヴィータ――と、あいつ――雷光の槍騎士見習いエリオ・モンディアル――の師弟関係は、正にままごとだった。 悪いとは思わない。 あの日。生気の抜けた表情で屋上のフェンスに寄り掛かっていたエリオを救うには、自分にはこんな方法しか思いつかなかったのだから。 「――つまり、戦闘スタイルと戦場の噛み合わせは戦闘時の大きなファクターになる」 こうして、エリオに自分の技術や知識を教えることも、悪い気はしていない。エリオは素直で変な癖も持っていないし努力家だから、師としてはとても教え甲斐のある弟子だった。 彼のストラーダがグラーフアイゼンの推進機構を受け継いでいることも幸いした。 デバイスの取り回しも教えてやりやすかったのだ。とは言え、教えるために何日も悩みはしたが。 「戦場を選べばエリオが単騎でフェイトに勝つのも……まぁ、不可能じゃねえ。フェイトは飛ぶがお前は跳ねる。その違いを巧く突っ込めれば、な」 ただ、一抹の寂しさも感じる。 もしも、始めから純粋な師弟関係だったのなら、と。 そうだったら、今みたいに詮無いことで悩むことは無かっただろう。 「いいか? 遭遇戦で一番危険な相手は、自分のための戦場を作り出す相手なんだ。能力が全力で発揮できる場所で戦う相手の技を初見で見切るのは並大抵のことじゃないんだ。だから、そういう相手が出てきたら、逃げろ。じゃないと、お前は死ぬ」 救うために結んだ師弟でなく、騎士を継がせるために結んだ師弟、なら。 「もっとも、敵に背中を見せるのは騎士のすることじゃねぇし、そういう相手と戦っても引けを取らないようにしごいてやる。けど、今はまだ、逃げろ。あたしは弟子の死に顔を見たくねぇ」 ◇ ◇ ◇ 最近、妙に仲が良いと思っていた。 始まりがいつなのか思い返せば、彼を除くライトニング分隊で遠い世界に出向いていた日からだろうか。 いつの間にか彼はヴィータ副隊長にべったりになり、ヴィータ副隊長が彼を見る目も以前とは異なるものになっていた。 寂しい、と思う。彼は。エリオは、一緒にお風呂に入ろうと誘っても絶対に応じてくれなくなった。 以前は、押し切ればまだいけたのだけ、ど。 「ティアさん。女の人が以前と違う目でとある男の人を見るようになったって……どういうことだと思いますか?」 二月十三日。私たちは、機動六課食堂奥の厨房を間借りしてバレンタインチョコを作っていた。 甘い匂いはおいしそうだけど、落ち込んでいる――そう、落ち込んでいる――私には、あまり幸せなものには感じられなかった。 スバルさんは嬉しそうにチョコの匂いに包まれている、けど。 「んー? 誰のことかは分からないけど、それは好きになったってことじゃないの?」 チョコレートをつまみ食いしようとしたスバルさんを叩きながら、ティアさんはそう言った。 スバルさんがティアさんに抗議の声を上げるけど、ひと睨みされてしぶしぶと引き下がっていた。 「やっぱりそうですよね……」 そっか。ヴィータ副隊長はエリオ君のことが好きなんだ。 私は、胸のつっかえが一つ取れたような気がした。 でも。 「ふっふーん。エリオのことよね? あの子は意外と人気あるから、キャロも気が気じゃないわよね」 「そ、そんな! 私は別に!」 「でも。あの子、誰が好きなのか今一分からないのよね」 「…………」 「キャロ?」 …………エリオ君は、誰が好きなんだろう? それを考え始めると、私の胸は、つっかえ棒でぐぐぐっと押し広げられるような、冷たい何かで締め付けられるような、息苦しさを訴える。 はぁ。 「チョコレート、渡せるかな…………」 ◇ ◇ ◇ 愛とか、恋とか、そういうものはまだよく分からない。でも、大切だってことだけは分かる。 大切な人が笑ってくれると胸の奥が温かくなって、大切な人が泣いていると胸の奥がきゅうきゅう痛くなる。 大切な人が傍にいてくれると知らない内に頬が緩んで、大切な人がどこかへ行ってしまうと知らない内に目を伏せてしまう。 そういうことは知っていたから。 「エリオ君がね。ヴィータ副隊長のこと、好きみたいなの」 面会室の硝子越しに話すキャロが大切な人だって、改めて思い知らされた。 沈んだ声と表情に、元気の無い顔。キャロは落ち込んでいる。 だから、私も……泣き出してしまいそう。 「ヴィータ副隊長もエリオ君のことが好きみたいなの。両想いだよ。おめでとう、だよ」 キャロは全然嬉しそうじゃない。悲しいような、寂しいような。 辛い、と叫んでしまいそうな気持ちを胸に抱えているように見える。 声色がそう伝えている。 「なのに全然祝福できなくてね……。私、悪い子だよ」 大切な人が悲しんでいる。 私は、何をしてあげれば、悲しみを和らげてあげられるのだろう? 「……そんなことない」 「ルーちゃん?」 一つ一つ、言葉を吟味しながら。私は、思うことをキャロに告げていった。 ◇ ◇ ◇ 『赤』という色がある。血液の色だ。炎をイメージする色でもある。しばしば、情熱も赤で表される。 これは、燃える生命の原動力を表す色なのだろう。 魂を奮わせる熱い色。 どうしようもないほど身体を駆け巡る、制御不能の赤い色。 明るくなれば誰かを光で照らすほどに輝き、消えてしまえばうすら寒い。 『赤』と呼ばれる話があった。 フィナーレの一部のみは皆が知るが、それ以外はあまり知られていない物語だ。 一人の少年と三人の少女。そして、名を授けられなかった一人の少年が紡ぐ物語。 もしも興味があるのなら、もうしばらくのお付き合いを願う。 「ここから先は―――R指定だ」 「嘘言うんじゃねぇよっ!」 「…………」 「だ、だから! あたしはエリオと……その……R指定なシーンを繰り広げるわけじゃなくて……だな……」 「何を言っているんだ? 繰り広げるじゃないか」 「ばっ! だ、だから―――」 「流血戦」 「―――そ、そうだな」 「(じー)」 「な、なんだよ」 「(にやにや)」 「うぁぁぁああああああああああんっ!?」 「まぁ、ヴィータ弄りはこれくらいにするとして、だ」 「オチが思いつかないんですよね」 「ああ、そうだ」 「そういうメタな話はしていいのかよっ!?」 「オチがつかないので、エリオを呼んでみた」 「こ、こんばんわ」 「!?」 「あの、ヴィータ副隊長。僕、ずっとヴィータ副隊長に言いたいことがあったんです」 「な、なんだよ……」 「(ヴィータの顔が面白いように赤くなっているな)」 「(くすくすくす)」 「えっと……言ってしまってもよろしいでしょうか?」 「もったいぶらずにさっさと言えばいいじゃねぇかよ! い……言えばいいじゃねぇかよっ!」 「(にやにやが止まらないな)」 「(ヴィータちゃん、かわいいなぁ)」 「ヴィータ副隊長!」 「お、おう!」 「(わくわく)」 「(どきどき)」 「(な、なんだ……なんなんだっ!? こ、告白か!? で、でも告白なんてされても、あたし……いや、でもエリオなら……ど、どうしよう……)」 「服の後ろが破れてパンツが見えているんですけど…………」 「…………」 「…………」 「…………」 「ご、ごめんなさい。けど、どうしても気になっ―――」 「うわぁあああんっ! お前の記憶をグラーフアイゼンの頑固な汚れにしてやるぅぅぅうううっ!」 「―――ま、待ってくださいヴィータ副隊長! 死んじゃいます! それ、僕、死んじゃいますっ!」 「光になれぇぇ―――!」 「う、うわぁぁあっ!?」 「なんと言うか……」 「ぜんぜん落ちてませんね」 「にゃぁ」 「そういえば。シグナムさんはどうしてリストラされたんですか?」 「…………orz」 「(すずか、恐ろしい子――!)」 「あ、あれ?」 |