その1
その2
その3
その4
その5
その6






†ヴィータ師匠の鬼修行その1†


「こんの―――バカ弟子がぁぁぁああああああああああああっ!」

「ごぶぅっ!?」

「何度言ったらわかるんだっ! そんな腰の引けた取り回しじゃストラーダは振れねぇんだよっ。ストラーダはアイゼンの推進機構を受け継いでんだから、生半可で扱えると思うんじゃねーっ!」

「(ぴくぴく……ぴくっ ぴくっ)」

「って、あら……気絶してらぁ」

「(ぶくぶくぶく)」

「泡まで吹いてやがる。ってぇっ!? え、エリオッ!? 大丈夫かエリオー!」

「(……ガクリ)」

「エリオォォ―――ッ!?」







†ヴィータ師匠の鬼修行その2†

「今日は山に来たぞ!」

「ヴィータ副隊長、寒いです」

「そりゃ、山の上は寒いからな」

「雪も積もってます」

「そりゃ、2月だからな」

「ところでヴィータ副隊長、今日は何をするんですか?」

「あぁ。やっぱりまだお前は足腰が鍛え足りねぇかんな。今日は足腰を鍛えるためにここに来た」

「まさかひたすら山の上り下りですかっ!?」

「まさか。今日の修行は―――」

「しゅ、修行は?」

「―――雪ダルマを作るんだよ!」

「遊びに来たんですかっ!?」

「違ぇーよっ! でっけぇ雪ダルマを作るのは重労働なんだよっ! だから今日は、雪ダルマを作りながら足腰を鍛えるぞ!」

「……それは本当に修行なのでしょうか」

「あぁん?」

「疑ってごめんなさいっ! はい、今すぐ作りますね雪ダルマッ!」

「それでいい。あ、あたしも作るからな」

「どうしてですかっ!?」

「あたしよりも早く、そして大きな雪ダルマを作るのが今日の課題だ! それ始めるぞー!」

「うわ、もう始めるなんてずるいですよヴィータ副隊長っ!? 待ってくださいヴィータ副隊長!? …………楽しそうに雪ダルマ作ってるなぁ、ヴィータ副隊長」







†ヴィータ師匠の鬼修行その3†


「今日は休むぞ!」

「いきなりサボり宣言ですかっ!?」

「違ぇーよ! 修行の話だよ。体を作るには休むことも必要だからな。今日は休養日だ」

「そうですか。ふぅ……ひさびさにほっとできるなぁ」

「んー。なあ、エリオ」

「はい?」

「どうしてお前はいつも短パンなんだ?」

「…………」

「な、何でそんな落ち込んだ顔をするんだよっ!?」

「フェイトさんがね。許してくれないんです」

「へ?」

「短パン以外を、許してくれないんです」

「…………」

「僕、どうしたらいいんでしょう…………」

「よ、よし! 夕陽に向かって走るぞっ!」

「今日は休みじゃなかったんですかっ!?」

「うるせー! とにかく走るんだよっ。着いてこい、遅れんなよっ!」







†ヴィータ師匠の鬼修行その4†


「エリオ! 今日も足腰を鍛える特訓をするぞ!」

「今回は何をやるんですか……」

「なんだよー。やる前から疲れた顔をするなんてたるんでるぞ。しゃっきりしろよ!」

「ヴィータ副隊長が一晩中テレビに付き合わせるから寝不足になったんですよ!?」

「面白かったろ怪傑Zバットっ!」

「面白かったですけどっ!」

「っつーわけで、今日はタイヤ引きだ。腰に紐を巻き付けてタイヤを引っ張るぞ」

「あ、あの」

「なんだ?」

「雪山に上って雪だるまを作ったりするよりも、最初からこれをやっていればよかったんじゃ……」

「雪だるま作るの楽しかったろっ!」

「ヴィータ副隊長はすごく楽しそうでしたけどっ!」

「っつーわけで、走れ」

「はい……」

「あ、そうだ」

「なんですか?」

「走るコースは隊舎を1周。あたしよりも一緒に走るけど、あたしより先にゴールしないともう1周追加だからな」

「が、がんばります」

「ああ、がんばれよ。それじゃ、スタート!」

「って、フライングですよヴィータ副隊長っ!? ず、ずるいっ!」

「早く来ないと置いてくぞーっ!」

「う、うわーっ!?」







†ヴィータ師匠の鬼修行その5†


「そーいやさ、エリオ」

「はい?」

「お前、どうして“騎士”なんだよ」

「何がですか?」

「……お前を救ったフェイトは“魔導師”だろ。なのに、どうしてお前は“騎士”を目指すんだよ」

「あぁ、そのことですか」

「ちょっと気になってな」

「うーん……笑いませんか?」

「笑うか、ばか」

「話すと長くなるんですけどね?」

「ああ」

「…………」

「も、もったいぶらずに話せよっ!」

「やっぱり、秘密にさせてください」

「えー。なんだよー」

「秘密です」

「こんにゃろー! ここまできて秘密はねーだろーっ!」

「って、痛ぁっ!? ヴィータ副隊長、アイゼンは酷―――(ぐしゃぁっ)」







†ヴィータ副隊長の鬼修行その6†


「うーん。ちょお寂しいなぁ」

「どうしたの、はやて?」

「うちの三女がお宅の長男にべったりでなー」

「……エリオとヴィータのこと?」

「ヴィータ、最近はずっと生き生きとしてるんよ。エリオの訓練メニューを考えるんが楽しいみたいよ?」

「最近キャロに元気がないのはそのせいなのかな……?」

「あー。かもなぁ。前まではキャロがエリオにべったりやったもんなぁ。フェイトちゃんとなのはちゃんみたいに」

「もう! からかわないでよはやて!」

「あははー。はやてはちょっと頭の悪い女の子ですからー」

「わけわかんないよっ!?」

「まあ、生き生きしてるのはええんよ。ただなぁ。訓練で帰るのが遅ぅなって、家族で一緒にご飯を食べれへんのが寂しいなぁって」

「そっか。はやてたちはご飯の時間を合わせてたもんね」

「昨日なんて“足腰の特訓”って言うて出たっ切り、朝帰りだったんよー」

「え……? 足腰の特訓で朝帰り…………?」

「(こくこく)」

「ひ、一晩中?」

「(こくこくこく)」

「一体何をしてたのぉっ!?」

「ナニかもなぁ」

「ちょっとエリオの所に行ってくるっ!」

「いってらっしゃーい」





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