フェイト・テスタロッサ・ハラオウンにとって、クロノ・ハラオウンは最も親しい異性だった。 もちろん、最も仲の良い知人は高町なのはである。これは譲れない。フェイトを光が射す世界に引っ張り出してくれたなのはは、彼女にとって最も特別な存在だった。 しかしながら、高町なのはを差し置くと、フェイトにとってクロノ・ハラオウンという存在は随分と大きなものであった。 いや。最近では高町なのはと同等か、時折はそれ以上に大きな存在になっている。 フェイト自身にも分からない彼の存在の大きさは―――恋愛感情だと、誰かが言った。 言われてみれば納得してしまう。『好きなんだ』っと。 それから、義兄はフェイトの好きな人になっていた。 「そう……そうなんだクロノ……ふふふ」 だから、今のフェイトは鬼神になれた。 「ま、待てフェイト! 違うんだ、誤解なんだ」 義妹の豹変に激しく狼狽する情けない義兄、クロノ。 釈明しながらも、はやては胸に抱いたままだった。 「違う……?」 氷の女神も真っ青。フェイトの氷点下眼光がクロノを射抜いた。普段のフェイトは花が咲いたように笑い、見る者の気持ちを優しくしてくれる。 でも、今のフェイトは仇を見つけた般若の笑みを浮かべ、見る者の心臓を握りつぶす悪鬼さながらだった。 「そ、そうそう違うんよっ!?」 フェイトの瞳に恐れをなしたのか、慌てたはやても弁明を始める。 「まだちゅーまでや……ッ!」 訂正。状況を混乱に陥れた。 「どういうことです執務官……ッ!」 そして、剣を携えたもう1人の鬼神も誕生した。 「まさか、もうはやてちゃんに手を出していたなんて……許せません」 バックにドス黒いオーラを放つ悪魔も誕生した。 「だ……だから待てぇっ!? 僕とはやての関係は」 「実はベッドインまでしたんよー」 「クロノてめぇぶっ殺す―――ッ!」 とうとう3人目の鬼神までもが出現してしまった。 「は……はやてぇええええっ!? そ、そうだザフィーラ……君なら分かってくれるだろう……!」 一縷の望みを掛けて、友人である蒼き狼に懇願するような視線を送るクロノ。 「へー。あたしとの約束をすっぽかしたと思ったらこんな所にいたとはねぇ」 「……す、すまない」 「ごめんで済んだら執務官はいらないんだよ……ッ!」 ザフィーラは、 垂れ下がった尻尾と獣耳がどうしようもない悲哀を感じさせる。 「クロノォ……ッ!」 「は、はいぃっ!?」 鬼気迫るフェイトの一喝に情けない悲鳴を上げてしまうクロノ。冷や汗と脂汗がだらだらと、とめどなく流れ出た。 「わたしはね、クロノ。クロノさえ良ければいつでも準備おっけーなんだよ……?」 急に鬼気が消え、涙目になってクロノを見上げるフェイト。うるんだ瞳に赤くなった頬、瑞々しくて柔らかそうな唇がクロノの精神を揺さぶって……。 「……って、何の準備なんだフェイトぉっ!?」 寸での所で現実に帰ってくる。 胸の中の少女が激痛がするほどクロノの腕を抓ったことが帰還を果たした大きな理由だ。 「クロノ君もやっぱり設定に弱い男やったっちゅーことか……」 ギリギリギリギリギリ。 悲しそうに呟きながらも、はやてはクロノの腕を抓る力は緩めなかった。 「それはどういう意味だぁっ!? っというか痛いから止めてくれはやて……っ!」 「イタイのはオニイチャンスキスキビームを出してるフェイトちゃんの方やと思うんよ!」 「それはどういう意味の痛いなんだっ!?」 「じゃあ、あたしがイタイ子やっちゅーんかクロノ君はっ!?」 「だからそう言う意味じゃなくてだな……ッ!」 「我が主を、嫉妬に狂った昼ドラ対抗ヒロイン呼ばわりするとは許せん……ッ!」 咄嗟にはやてを突き飛ばし、S2Uでシグナムの打ち込みを受けるクロノ。 シグナムの瞳にはまさしく戦鬼が宿っていた。 「君は人の話を聞いていないだろう……ッ!?」 「地球には聖徳太子という一度に10人の話を聞き分けた偉人がいると主に聞きました!」 「そういう意味での人の話を聞くではなくてだなぁ……ッ!」 思いっきり踏み込んできたシグナムを嘲笑うかのように、クロノは腕の力をふっと抜いた。シグナムがバランスを崩したたらを踏む。 クロノは、シグナムが次の手を繰り出して来る前に間合いを取ろうとして――― 「旅の鏡!」 ズドン! ―――しようとしてキャンセル。背後の空間を避けるように跳躍した。回避した空間にはシャマルの五指が浮かんでいた。 シャマル奥義リンカーコアブレイク。魔導師の魔力の源リンカーコアに直接ダメージを与えるシャマルの最大奥義である。 「チッ」 「君、明らかに本気だっただろう……ッ!?」 「次! シグナムとテスタロッサちゃん!」 「誰か僕の話を聞いてくれぇええええええっ!」 クロノは、ほんの一筋の希望を掛けてザフィーラへ視線を移した。 「どうせ、あたしのことなんでどうでもいいんだろう?」 「そ、そんなことは……」 「嘘だッ!」 「う、嘘では……ッ!」 「だったら、ザフィーラはいつになったらあたしを娶ってくれるんだい!」 「今はそういう話をしているのではなくてだなぁ……っ!?」 ダメだった。使えなかった。むしろ、あの空間に入っていきたくなかった。 「剣の将シグナムが魂、レヴァンティン……」 「って、本当にやるのかシグナム!? 考え直してくれ!」 剣を掲げ、鞘を出現させるシグナム。 柄頭と鯉口を接続し、 だが、それは叶わなかった。 「ダメ……ッ! クロノはやらせない!」 疾風より早くバルディッシュをサイズフォームへとチェンジさせたフェイトが、横合いから変形動作中のシグナムに肉迫した。これにはシグナムも堪らず、変形動作を中断せざるを得なかった。 しかし、シグナムはベルカの騎士。近接戦闘でそう簡単に遅れは取らない。 紫電を纏い視線で追うよりも速く動くフェイトを感覚のみで捉えてみせ、炎がちらつく強烈な回し蹴りをお見舞いした。 フェイトは咄嗟にバルディッシュを盾にしたものの、体重の軽い彼女は大きく後方へと飛ばされてしまう。 「貰ったぜ……ッ!」 シグナムとフェイト、雷と炎の高速交錯。クロノは短いやり取りに一瞬だけ見とれてしまった。 それは、致命的な隙となる。 クロノの集中力の間隙を縫って、ヴィータが渾身の力でグラーフアイゼンを叩きつける。 「させへん……ッ!」 だが、クロノとヴィータの間に割り込んだはやてが防御魔法を展開した。 主の出現に驚いたのか、鉄槌は急激に勢いを失って蚊すらも潰せぬ弱々しい打ち込みを防御魔法に当てるだけだった。 当然、ヴィータの一撃は押し返される。彼女は素直に引き下がった。 表情に、困惑を浮かべながら。 「はやて……どうして……」 ヴィータの右手に握られた槌がだらりと垂れ下がった。 一番大好きな八神はやてが自分の邪魔をした。その事実が信じられなかった。 「ヴィータでも、だめや。クロノ君に怪我させたらあかん」 はやての語気はヴィータが知る普段のものとはまるで違っていた。日常で使うような穏やかなものではなく、もっと凛として張りのある声だ。 目尻が釣りあがった瞳からは、おいたをした子供を叱る母親の姿が連想された。 「だって……そいつは……」 ヴィータの右手から握力が消える。グラーフアイゼンが乾いた音を立てて床に落た。 幼いヴィータの瞳が涙に揺れ、頬を伝って雫が落ちた。 「ヴィータ。分かって、くれへん?」 先ほどとは打って変わって、懇願するようなはやての声。 これも、普段のはやてとは違う。ヴィータにこんな声を出すはやては初めてだった。 「そこまで……なのかよ」 そこまで彼のことが好きだというのか。 そこまで言われれば、分かってあげたかった。 だって、ヴィータは八神はやてのことが大好きなのだ。 けれど……。 「やっぱり、ダメだ」 床に落ちた相棒を拾い上げて、ぐっと握って構えた。 頬と目元の涙を拭い、クロノ―――と、彼を守るように立つはやて―――を、きっと睨みつける。 「どうして……どうしてなん……っ!?」 悲鳴のような叫び声を上げるはやて。彼女には、家族のように愛する少女がここまで意固地になる理由が分からなかった。 分からないから、分からない。 「やっぱり、そいつはだめだ。そいつだけはだめだ……ッ!」 ヴィータが戦う理由も、彼女がクロノはだめだという理由も。 はやてには何も分からない。 ヴィータはヴィータで、大好きなはやてのために今のクロノとの交際を許すわけにはいかなかった。 「ヴィータ……ッ!?」 「どけ、はやて!」 「嫌やどかへん!」 「いいから……ッ!」 弾けるようにして、ヴィータがクロノに突っ込んだ。すなわち、クロノを守るように立つはやてにもまた牙を向けることになる。 これは天秤だ。 はやてが避ければ、彼女はヴィータたちの意思を尊重したということになる。 はやてが避けなければ、彼女は自身の意思を押し通すということになる。 天秤がどちらに傾くかは―――もう、分かっている。 それでも、選んで欲しかった。 でなければ、納得いかないままの諦めなんて付けられなかった。 「僕は君ほどの出力は発揮できないんだけどな……ッ!」 しかし、天秤が揺れることはなかった。はやての身体は力強い腕に抱かれて守られてしまい、ヴィータははやてとまったく別の相手に鉄槌を打ち込むことになる。 はやてを抱き寄せたクロノが防御魔法を展開していた。 「クロノ君…………」 クロノが展開した蒼い障壁。グラーフアイゼンの一撃を真正面から受けた障壁は、あまり長くは持ちそうになかった。 鉄槌の圧力に押される度に障壁は悲鳴を上げる。誰がどう見てもクロノの劣勢だった。 しかし、クロノが引き下がる様子は無い。 「どう……して?」 クロノを見上げて、はやてが言った。彼は何の意図を持って自分を助けてくれたのだろうか。 それが、とても気になった。 「君を置いて僕だけ逃げるわけにはいかないだろう?」 その言葉は彼の口を自然に突いて出たものだった。今にも砕けそうな防御魔法を支えるのに手一杯のはずなのに、彼はその苦しみすら感じさせない。 困っている誰かに手を差し伸べることを、彼は苦にしていない。 「……クロノ君、王子様みたいや」 罪つくりな王子様。 おとぎ話に出てくる勇敢な王子様。 ただ、色恋沙汰にだけは鈍い。罪つくりな王子様。 「……僕はただの魔導師さ」 クロノは照れてそっぽを向いた。 「まあ、そう言われたら頑張るしかないよな……ッ!」 「っくぅっ。さっきは……破れ……たのにぃ……ッ!」 蒼い障壁が強度を増した。すると、ヴィータが表情に苦悶を浮かべる。 防御魔法が打ち破れない。 突撃の勢いをすっかり失ってしまったヴィータはしぶしぶ引き下がった。 「悪い子にはおしおきが必要だな」 ヴィータの攻撃を押し返したことで余裕がでてきたのか、S2Uを構えたクロノは少々挑発的なセリフを口にした。 対するヴィータは―――さっと青ざめ、がたがたと震えだした。 「僕はそこまで鬼畜に見られているのか……」 軽い衝撃を受けてくらりと揺れるクロノ。だが、よくよく見るとおかしいことに気がついてしまう。ヴィータの視線はクロノの背後を捉えていた。 嫌な予感に押されるように背後に振り向くクロノ。 「へぇ……やっぱり違くないよね。クロノ」 そこには、ぼろきれのように悲惨な姿で床に転がったシグナムを降したフェイトの笑みがあった。 笑みと言っても、瞳だけは底冷えするように冷たいものだった、が。 テスタロッサは強い。 自身の周囲を高速で飛びまわるフェイトを勘頼りに追いながら、シグナムはそう思った。 戦う度に速くなっている点も見逃せない。 「相変わらず。いや、お前の機動はますます鋭さを増しているな、テスタロッサ!」 フェイトの動きを目で捉えることは、既に不可能に近い。シグナムは、彼女が攻撃に移る際に発せられる闘気のようなものを感じ取って彼女の相手をしていた。 故にこその勘頼りである。 今もまた、鋭い気勢を感じて当てずっぽうでレヴァンティンを振るう。空を斬る音はせず、代わりに甲高い金属音が響いた。 鈍い衝撃が腕全体を襲う。手ごたえあり、だ。 「けれど、貴女にはまだまだ敵いません―――………ッ!」 シグナムが追い討ちを掛ける前に高速機動に戻ろうとするフェイト。だが、フェイトが足を止めた好機を易々と逃してしまうほどシグナムは弱くない。 フェイトの一撃を受け止めて痺れている右手は無視し、レヴァンティンの鞘を呼び出して左手で握る。 レヴァンティンと同じ硬度を持った鞘を、フェイトに向けて思い切り叩きつけた。 「でも」 鞘はフェイト本体を捉えられず、彼女の手甲で受け流されてしまう。流石のシグナムも更なる連撃は行えず、みすみすフェイトを逃がしてしまった。 手痛い失敗だった。だが、シグナムは心から湧き上がる楽しみに唇を歪めた。 テスタロッサが強くなっている。 歓喜が湧き上がる。ライバルの成長がただただ嬉しかった。 だが、花を持たせてやるにはまだ早い。歓喜を胸の奥に押しやり、シグナムは思考を戦闘に落としていく。 感覚を研ぎ澄ませると微風が肌を押していることに気づいた。風の発生源はフェイトだ。 シグナムは、肌で感じる風からフェイトの動きを予測する。 「レヴァンティン!」 《ja》 「バルディッシュ!」 《yes,sir》 中空に雷光を纏ったスフィアがいくつも浮かび、レヴァンティンは刀身に炎を灯した。 シグナムが火炎剣を振るい、フェイトが電撃の魔力弾を打ち込む。 轟音が鳴り、けたたましい破裂音がいくつも響いた。 「正面からの直射魔法で私を捉えられるとは思うまい! 次はどうする気だハラオウン……ッ!」 全てのスフィアを叩き落したシグナムが勇ましく叫んだ。 シグナムはただの一発も被弾していない。 「こうです!」 フェイトは連続でカートリッジをロードし、自身の機動を強引に最高速まで持っていった。視覚不可能な閃光となり、斧杖の一撃を見舞うべくシグナムに突貫する。 「連携か? それにしては、技と技の繋ぎが遅すぎるぞ……ッ!」 対するシグナムは、剣の鍔元を唇前に持ってくる八相の構えを取った。フェイトがどのような太刀筋で攻めてこようと切り伏せる構えだった。 柄を握る両手に、微かな緊張が走る。 それは高速で迫るフェイトも同じようで、表情が僅かに強張っている。 互いの距離が急速に詰ってゆき―――。 「―――そこだ!」 フェイトが刃を振り下ろすよりも速く、シグナムの切っ先がフェイトを捉える。 空を引き裂く鋭い切り込みがフェイトを襲った。 しかし、フェイトは握り締めた戦斧を振り下ろさずに急上昇を行う。 標的を見失ったレヴァンティンが虚しく空を斬った。 「賭けはわたしの勝ちです!」 フェイトが視界から掻き消えることでシグナムは初めて理解した。フェイトが、自らの身体で一発の魔力弾の存在を秘匿していたことに。 回避か防御を行いたかったが、渾身の一撃を振り切ったばかりのシグナムでは身動きが取れない。 シグナムに緊張が走る。 「っく……レヴァンティン!」 《Panzergeist》 咄嗟に愛剣に命じて障壁を出現させるが、半瞬間に合わなかった。バリアが出現するよりも早く、フェイトの放った電撃魔法がシグナムに突き刺さった。 高圧電流がシグナムの四肢に襲い掛かる。 「ぐぁああああ―――………ッ」 全身を引き裂いてしまいそうな鋭い痛みに絶叫を上げるシグナム。高速を誇るフェイトの前で、それは致命的な隙となってしまった。 フェイトの姿がシグナムの眼前に現れる。 「取りました」 全身を気だるい感覚に襲われる中、シグナムは首筋に魔力の刃を突きつけられてしまった。 勝敗が決した瞬間だった。 「今日は負け続ける日のようだな」 苦笑いしか出てこなかった。 テスタロッサは、自分の好敵手は本当に強くなった。 「そういう日もありますよ」 「そう言うものか?」 「ええ。そうです」 そうか、と。大真面目に言う彼女の言葉に納得してしまって。先ほどは押し殺してきた歓喜と、どこがおかしいような気持ちが混ざり合って。 くくく、と笑みが漏れてしまった。 最初は驚いた表情を見せたフェイトも釣られて笑い出す。 ―――このまま。 このまま平穏に終わってくれればよかった。 けれど、そうは問屋が卸さなかった。 フェイトは見つけてしまったのだ。 クロノが、はやてのことを庇う様を。その両腕で華奢な少女を抱きしめている姿を。 「テスタロッサ……?」 怯えたような好敵手の声が聞こえた気がするが、フェイトは無視した。 だってクロノが王子ではやてがヒロインなのだ。 許すことも許容することもできやしなかった。 「ど、どうか穏便に納めてくれテスタロッぐあぁあっ!?」 煩い蝿がいたので、叩き落した。ついでに、中途半端にローダーに残っていたカートリッジを全てロード。 フォトンランサーを打ち込んでおいた。 悲鳴が聞こえた気がしたが、気のせいだ。 「バルディッシュ」 《y…yes,sir》 スピードローダーをセットし、戦闘態勢完了。 見れば、クロノはヴィータに押し勝ったようだ。 まぁ、それは当然。だって、わたしの大好きな兄なのだから。 けれど。 クロノが守ったのははやてで。 「悪い子にはお仕置きが必要だな」 聞こえた彼の声で、ふっ切れた。 「そうだよね。お仕置きが必要だよね……」 幸い、自分は自分以外が知らない秘密の場所を数多く知っている。 母を手伝っていた時に見つけた時空管理局の管轄外世界は、それこそ数多く渡り歩いた。 ちょっと監禁してちょっと鞭で叩く時間を確保できる場所くらい、いくらでもある。 「へぇ……やっぱり違くないよね。クロノ」 自分に嘘をついた彼には、少しお仕置きをしてしまおう。 一方その頃。 「あたしのことなんて、どーせ遊びなんだろーだっ」 「ど、どうしてそんなことを言うんだアルフ……ッ!?」 「ふーんだ」 「お、俺はお前のことが……ッ!」 「あたしのことが好きだってのかい?」 「あ……あぁ」 「なら、ミーちゃんって誰?」 「!?」 「あぁん? 答えられないよーな仲なのかぁあああっ!」 「そ、それは……っ」 「ネタは上がってるんだよっ。お前がその猫と街を歩いてたってさぁっ!」 「う……」 「何だい? そうか、そういうことか。アンタ、犬より猫がよかったのかい」 「だから……アルフぅっ!?」 「あたしみたいな粗雑な犬ッコロのことは捨てて、とっととその猫のところにでも何でも行っちまえ、このバター犬んぅううううっ!」 「ま、待て……アル……アルフーっ!?」 まだ修羅場ってた。 戻る 小説トップへ 次へ |